「手をあげて横断歩道を渡りましょう。松崎誠でございます。」
先日(2019年9月11日)、中日ドラゴンズ球団は根尾昂選手と垣越建伸選手が名古屋市中川区の道路で交通ルールを守らなかったとの通報を受け、両選手に厳重注意したと発表しました。
根尾選手と垣越選手は9月10日午後8時ごろ食事を済ませて寮へと歩いて帰る途中、名古屋市中川区の昇竜館(選手寮)近くの道路を2人が横断する際、一番近くにあった信号が赤だったため、手前の横断歩道がない場所を横切ったそうです。これを目撃した人が9月11日朝にナゴヤ球場へ通報し、それを受けて球団が確認したところ、根尾選手、垣越選手ともに認めたため厳重注意をしたというものです。球団は所轄の中川署に交通違反をしたことを報告しています。
9月11日の広島東洋カープ戦の試合前にマツダスタジアムで経緯を説明した加藤球団代表は「11日の朝にナゴヤ球場へ通報がありました。(同日の)二軍戦の後、2人に電話で、社会人としてきっちり行動するようにと伝えた。2人とも『申し訳ありませんでした』と謝罪していた」と話しています。
これが一般人であれば、話題にすらならなかったと考えられますが、プロ選手という公共性があり、子どもたちの手本にならなければ・・・ということもあり、さらに地元ということもありますから、世間からは私生活も含めて見られていることを認識していた方がいいでしょう。さらに、加藤球団代表は「別に発表しなくてもよかったけど、後からこういうことが(報道で)出てきて、ことさら大層なことを犯したように書かれたりすることの方が嫌だったので」と言っていました。当初、2人を律儀に出頭させようとして中川署に報告したら、球団処分で問題ないと回答されたそうです。
その現場らしき場所は想像がつくのですが、道は狭く、歩行者横断禁止の標識は(たぶんない)場所であり、車のとおりも少ないでしょうから・・・まあ、決して褒められる行動ではないでしょうけど。
さて、道路交通法第38条第1項では、横断歩道を横断する、または横断しようとする歩行者がいる場合に車両がその横断を妨害することを禁じています。つまり、車両が横断歩道を通過する場合には、その横断歩道を横断する歩行者の有無を確認し、必要ならば横断歩道の手前で停止して彼らの横断を妨げないようにしなければならないのです。
これを違反し、歩行者の横断を妨害した場合には「横断歩行者等妨害」に問われることになります。でも、現実は横断歩道に歩行者がいても、なかなか車両は止まってくれません。信号のない道で、車両が来ないときに道路を横断したくなるのは分からないこともありません。
さてさて、そうは言っても横断歩道がない場所もありますが、どうしても道路を横断したいときは、どのようになっているかと言えば、実は横断歩道がなくても、法律上は歩行者は横断することが可能であり、車両は歩行者の通行を妨げいけないことになっているのです。
道路交通法第38条の2(横断歩道のない交差点における歩行者の優先)
横断歩道が設けられない交差点では歩行者の横断が優先される。
車両等は、交差点又はその直近で横断歩道の設けられていない場所において歩行者が道路を横断しているときは、その歩行者の通行を妨げてはならない。
つまり、横断歩道がない場所を横断することが可能だというように解釈することが出来るのです。車両はその横断を妨げないようにしなければならないのですが、横断歩道が設けられている場所とは違い、「必ずしも一時停止の必要はなく」、「横断を開始しようとする歩行者の優先も不要」なのです。
よって、ある意味、歩行者側が安全配慮しなければならないので、覚悟を決めて横断することになります。もちろん私は推奨はしません。
道路交通法第13条第1項(横断の禁止の場所)
歩行者は、車両等の直前又は直後で道路を横断してはならない。ただし、横断歩道によって道路を横断するとき又は信号機の表示する信号若しくは警察官等の手信号等に従って道路を横断するときは、この限りではない。
屁理屈を言ってしまいますと、横断歩道がない場所では、歩行者が車両の直前並びに直後でなければ横断してもいいという解釈もできます。もちろん、それは危険を承知の上でということになってしまいますので、これまた、覚悟を決めて横断することになります。もちろん私は推奨はしません。
また、事故になった場合、人対車両となれば車両の責任が大きく問われると思いますが、もともとは道路を横断する歩行者に過失があるのであり、車両側100%という過失割合にはならなくなると思います。
2018年11月に福岡県北九州市の交差点で、70代の男性が信号無視をして横断歩道付近の道路を渡り、信号に従って走行していたバイクと接触。バイクの運転手は転倒、約1ヶ月のケガ、横断していた男性も骨折するケガを負いました。警察は、歩行者の男性にも過失があると判断し、重過失傷害容疑、バイクの運転手には自動車運転処罰法違反容疑で書類送検となりました。
歩行者が横断歩道以外や交通量の多い道路を無理に渡る行為は、道路交通法第13条(横断の方法)や第13条の2(横断の禁止の場所)に該当します。無理に横断する行為は、たとえ近道だったとしても危険な行為ですので、必ず横断歩道を渡った方が賢明です。
無理に横断する行為自体には、罰則はありません。しかし、万が一事故に遭った場合には、歩行者側に過失が認められる場合もあります。
歩行者は必ず、手をあげて横断歩道を渡りましょう!