以前、ロボット審判について、2015年12月7日(https://blog.goo.ne.jp/full-count/e/975e2e7c0af9e3079fa84f42e76a4c62)に書きましたが、いよいよ、MLBでロボット球審が5年以内に導入される可能性が出てきました。
MLBとMLB審判員協会(MLBUA)は2019年12月21日に、2024年までの5年間の労使協定を締結しました。その中に、なんと「ボール」、「ストライク」を自動判定するシステムの開発とテストを協力することについて、合意したとのことです。
ロボット球審とはいうものの、R2-D2の形体はしておらず、ましてやC-3POのような人型でもなく、ボールの判定だからと言ってBB-8のような球体でもなく、ホームプレートの後ろに立つ人間の審判がiPhoneに接続されたイヤホンとおして「トラックマン・コンピューターシステム」からの判定を伝え聞き、一瞬遅れたタイミングでコールしています。正確には、ロボット球審と例えるのは、人様にちょっと失礼な表現なのかも知れません。
現時点で米国独立リーグのアトランティック・リーグにおいて、7月に行われたオールスターゲームで導入され、その後、同リーグのシーズン後半でこのシステムが用いられたほか、アリゾナ秋季リーグのソルトリバー・フィールドでも数十試合で試験的に用いられました。
ちなみに、「トラックマン(TrackMan)」とは、2003年にデンマークのTRACKMAN社が開発した、ゴルフ用弾道計測器です。元々は軍事用で迎撃ミサイル「パトリオット」の開発で生まれた技術を転用して開発された製品で、ドップラーレーダーによってボールを追尾することが出来るものです。
トラックマンではヘッドスピード、ボール初速、スピン量、それに飛距離などを26のパラメーターで測定が可能で、打ち出しから着弾までを追尾計測しているため、精度が高く、飛距離の誤差は100ヤードで30センチ以下となっています。USPGAツアー、欧州PGAツアーなどでの公式計測器にもなっています。
その後、ゴルフで流行をみせていましたが、MLBで試合が行われる全30球場にトラックマンが設置され、すべてのボールを計測しており、取得したデータの一部を公式運営サイトで公開しています。
実際にトラックマンで取得できるデータの一部は、
■投球されたボールのデータ
・球速
・回転数(回転速度)
・ボールの変化の大きさ
・ホームベース到達時のボールの位置
など
■打撃されたボールのデータ
・打球の速度
・打球の角度
・打球の飛距離
など
が計測でき、MLBでこれらのデータを活用することで、「フライボール革命」という新たな打撃理論が生み出されています。
NPBでは2015年に東北楽天ゴールデンイーグルスが最初に導入し、2020年には全球団で使用することになっています。
なお、トラックマンは内外角の見極めは素晴らしいものの、現時点では変化球、高低の見定めが弱点だそうです。特に難しいと言われているのが、大きく曲がり落ちるカーブであり、人間なら地面に落ちるカーブはボールと判定するものの、ロボットなら「ストライクゾーンをかすめた」としてストライクにすると考えられています。また、キャッチャーの構えと違う所に投げると、人間ならゾーン内でもボールと判定される傾向がありますが、これもロボットなら「ストライク」に判定すると考えられます。
生身の審判との駆け引きが面白いか、ロボット球審の正確無比な判定になり、野球の質は変わって行くのか。
そもそも、ボールとストライクの判定が毎回正確なら、誰も文句は言わないと思いますが、監督や選手はロボットに抗議できるのでしょうか?
何10年後には、生身の選手が、R2-D2のような、本当のロボット球審相手に抗議している姿を見る日が来るのかも知れません。