「ああ、偽善で売名ですよ。偽善のために今まで数十億を自腹で使ってきたんです。私のことをそういうふうにおっしゃる方々もぜひ自腹で数十億出して名前を売ったらいいですよ」
阪神淡路大震災から21年目、東日本大震災5年が過ぎました。そして再び九州で大きな災害が発生しました。
被害に遭われた方には、心からお見舞い申し上げます。
刻一刻と被害に関するニュースが報じられる中、日本国内の各地から、世界各国からの支援のニュースも聞かれるようになりました。そして、もう少し落ち着いたころになるとボランティアの方々などによる復興支援のニュースになると思います。一刻でも早く、その日が来ることを祈っています。
そんな折、思い出されるのは東日本大震災直後、被災地にボランティアに駆けつけた時のボランティアのコメントです。
「偽善とか売名と言われることもあると思いますが…」と聞かれ「ああ、偽善で売名ですよ。偽善のために今まで数十億を自腹で使ってきたんです。私のことをそういうふうにおっしゃる方々もぜひ自腹で数十億出して名前を売ったらいいですよ」と答えたのが、俳優の杉良太郎さんでした。
このとき、奥さんの歌手の伍代夏子さんとスタッフら総勢30人体制で1日早朝に東京を出発。車両12台(20トントラック2台、タンクローリー車1台、冷蔵・冷凍車2台、車7台)に水2トン、男女下着類4000枚、歯みがきセット1万セット、入れ歯洗浄剤500個、クレベリン業務用セット2000セット、だるまストーブ21台、石油ストーブ8台、灯油・ガソリンなどの燃料……など、考えに考え抜かれた救援物資を大量に積み込み、宮城県石巻市雄勝町に向かいました。現地ではカレーライス5000食、豚汁5000食、野菜サラダ3000食を提供。杉さんたちは車中で寝泊まりし、支援を続けました。当時、支援物資が東京では手に入りにくいこともあり、大阪まで手配に向かったというのです。
この活動の最中に「偽善で売名ですよ…」の発言がありました。
杉さんは15歳の頃から慈善活動に取り組んでおり、最も長く続けている活動が刑務所への慰問活動です。50年以上に渡って慰問活動をしています。また、ベトナムへの支援を20年以上に渡って続けています。中でも、孤児院で生活している孤児を養子として80人以上を迎えています。
以前には政府高官から「杉さんのやっているそれって、やはり売名行為ですか」と真面目に聞かれたことがあるそうです。「はい。そのとおり」と答えると、相手は「やっぱり」と言ったそうです。
「昔から『売名』って言われてきた。最近は面倒くさいから、そういう人には『はい、売名です』って言うんです。僕が今までやってきたこと、あなたもぜひやってみてくださいと思う。昔は『俺がいつ売名行為をした』って怒っていた。でも考えてみれば僕、若いころから有名でしたしね。一生懸命他人に尽くしている行為を、売名と切り捨てる人のことは、腹の底では、『寂しい人間だなあ』と思っている。それでも、中傷ばかりがつきまとうと、やっぱりつらいし傷つくんです。だからボランティアをやっていることを隠していた時期が30年くらいあります。地道にずっと続けてきましたが、東日本大震災の後、宮城に炊き出しに行ったら、突然えらく持ち上げられて、本音を言えば面食らいました。本当に名前も売りたくないし、いい格好もしたくないですから。(ボランティアの動機には)目的も理由もありません。取材にはよく『自然体でやっています』って答えています。ただ、自然体だけれども、生易しいものではない。芸能界に入って悩んだことはないけれど、ボランティアでは2回も3回も死にたくなったことがある。福祉の現場では、自分の無力さを突きつけられる。『もっと力があったら助けられるのに』、って自分を責めたりね。でも今は、過去を忘れていけるようになりました」
ボランティアをやったことがなく、理屈を並べ、批判ばかりをし、善意の行為を理解出来ないような人格の者が、政府高官という大事な立場にいて、国の仕事を任せられるのかと感じたそうです。
杉さんは次のようなことも言っています。
「福祉をやるには確かに時間とお金がかかる。特にお金がないと見栄えのいい福祉はできません。でも、お金がない人は時間を寄付すればいい。お金も時間もない人は、福祉に対する理解を示し、実際に活動をしている人に拍手を送るだけで十分。それでもう立派な福祉家なんです。福祉ってそういうもんです」
(何も出来ないので、せめて熊本の製品を買って応援)
地震などの自然災害はいつ、どこで遭遇するものかは判りません。また、その力の前では私たちは無力です。
そして、明日は我が身かも知れません。
熊本、阿蘇、大分には何回か行ったことがあり、実際に行った場所が地震で壊れた映像には心が痛いです。