埼玉西武ライオンズからFA宣言し、読売ジャイアンツへ移籍した野上亮磨選手。その野上選手の移籍に対する人的補償が、高木勇人選手と発表され大きな話題となりました。
実はライオンズはこれまでにFAで流出した選手が一番多い球団であり、野上選手が16人目の選手になります。国内の移籍では13人の選手がFAで流出しています。しかし、人的補償で獲得した選手は今回の高木選手を含めて5人と意外に少なく、偶然だと思えますが人的補償を選んだ5回のうち3回はジャイアンツからでした。
1994年 工藤公康 → 福岡ダイエーホークス / 金銭
1994年 石毛宏典 → 福岡ダイエーホークス / 金銭
1996年 清原和博 → 読売ジャイアンツ / 金銭
2005年 豊田清 → 読売ジャイアンツ / 江藤智
2007年 和田一浩 → 中日ドラゴンズ / 岡本真也
2010年 細川亨 → 福岡ソフトバンクホークス / 金銭
2011年 許銘傑 → オリックスバファローズ / なし
2011年 帆足和幸 → 福岡ソフトバンクホークス / 金銭
2013年 片岡治大 → 読売ジャイアンツ / 脇谷亮太
2013年 涌井秀章 → 千葉ロッテマリーンズ / 中郷大樹
2015年 脇谷亮太 → 読売ジャイアンツ / なし
2016年 岸孝之 → 東北楽天ゴールデンイーグルス / 金銭
2017年 野上亮磨 → 読売ジャイアンツ / 高木勇人
FAの補償は、移籍前の球団で年俸が上から数えて何番目に高かったかで内容が変わる。1位から3位までがAランクの選手、4位から10位までがBランクの選手で、それ以下の選手はCランクとなる(このシステムは2008年から適用されている)。
人的・金銭の補償が発生するのはBランク以上の選手であり、2011年の許銘傑さんと2015年の脇谷さんが補償なしになっているのは、この2人がCランクの選手だったからです。こうしてみると補償があったFA移籍の選手は11人であり、半数以上は金銭での補償をライオンズは選択していたことになります。
人的補償は相手先の球団のどんな選手でも選べるわけではなく、外国人選手と直近のドラフトで獲得した新人選手は選ぶことができず、それ以外の選手でも28名は指名を拒否するプロテクトリストに入れることができますので、これらに含まれない残った選手で、戦力になると思う選手がいれば人的補償として獲得できます。
つまり、戦力になる選手がいないと考えるのでるならば、金銭での補償を選ぶと言うことになると考えます。ライオンズが人的補償で獲得している5人のうち3人がジャイアンツからというのは、単なる偶然ではないようにも思えます。もちろん詳細は公開されることはありませんが、他の球団のプロテクトが上手かったというよりも、ジャイアンツには余剰戦力が多いという事ではないかと考えられます。
さて、中日ドラゴンズにFA移籍した大野奨太選手について、北海道日本ハムファイターズの吉村浩GMは、「人的補償を求めない」と通告しました。大野奨選手の昨季年俸は5100万円で外国人選手を除く年俸順で4~10位のBランクとみられ、60%の3060万円を支払うことになりました。
これにはちょっと驚きでして、リスト提示されたときに「非常にインパクトがある」と吉村GMはコメントしており、さらに増井選手がオリックスバファローズにFA移籍したときには、リスト入手後の早い時期に「金銭補償」を決定しており、今回のドラゴンズに対しては「今週中?週末(1月14日)まで、まあ近々には決めたい」と見通し、時間がかかっている理由に関しては「単純に金銭だったら終わってる。事情があって時間がかかっている」とコメントしています。
そこへ来ての「熟考の末に」と前置きした上で、「本日、中日ドラゴンズに対してFA移籍に伴う人的補償を求めないと回答しました」と説明。理由については「お答えできません」です。
ドラゴンズファンとしてはホッと一息ですが、この決定には何か裏があるように思えてなりません。普通に考えますと、ドラゴンズからのリストには「希望する選手がいない」ということです。ならば、最初に「インパクトがある」というのはどういう意味だったのでしょう。
ゲスの勘繰りとして、「キャッチャー全員、35歳以上の選手とケガの選手を優先的にリスト登録」なんて。ことかも知れません。これはある意味インパクトありますよね。
と、書いていたのは昨日まで。
あの東京スポーツ(東スポ)が、衝撃的FA人的補償のニュースを配信しました。
以下抜粋。
衝撃の事実が16日、発覚した。日本ハムは14日に海外フリーエージェント権を行使して中日に移籍した大野奨太捕手(31)に関し、人的補償を求めず、金銭補償を求めると発表したが、舞台裏で日本ハムはある選手に白羽の矢を立てていた。それが何と球界のレジェンド・岩瀬仁紀投手兼コーチ(43)だったのだ。岩瀬の日本ハム移籍はなぜ幻となったのか。詳細をお伝えする。
日本ハムが中日にFA移籍した大野奨に関し金銭補償で決着したことに違和感を感じた人も多かっただろう。昨年12月20日、中日から28人のプロテクトリストを提出された日本ハム・吉村浩GM(53)は「検討に値するということです。栗山監督にも報告しました。たぶんウチは金銭だと思っているでしょうけど、ファイターズとしてインパクトはありますね。すぐには決まりません。これからです」と魅力的な選手がプロテクトから漏れていることを喜々として明かした。
球界関係者によると、そのインパクトある選手が「岩瀬だった」。昨季、プロ野球新記録となる950試合登板を達成した岩瀬は、4年ぶりに50試合登板、3勝6敗2セーブ、防御率4.79の好成績を残してカムバック賞を受賞した。今年44歳となるが日本ハムサイドはまだ十分にやれると判断。当初から日本ハムは人的補償として左のリリーフ投手をターゲットにしており、誰よりも多くの場数を踏んでいる左腕の経験もチームにプラスの影響を与えることも考慮したのだろう。
日本ハムは人的補償を求めることを決め、中日にも通達。しかしその後、年が明けても日本ハムサイドからはなかなか発表はなく、吉村GMは「長引かせているわけではない。複雑な要因が絡んでいる」と何か問題が発生していることを示唆。そしてようやく14日に人的補償を求めないことを発表した。吉村GMは「熟考の末です。(理由は)お答えできない」と口を閉ざした。いったい何があったのか。
実は日本ハムから岩瀬の指名を受けた中日は、大混乱に陥っていた。中日としては岩瀬の指名はまさかの出来事で「岩瀬は超のつく大ベテラン。今季から兼任コーチの肩書もついている。球界の暗黙の常識からしても兼任コーチは選ばないと踏んでいたようだ」と球界関係者はいう。
チームを長きにわたって支えた功労者を人的補償で移籍させるなんてことになれば球団にとっては大失態。ファンから批判が噴出するのは間違いない。とはいえルールはルール。日本ハムサイドには少しの非もない。中日球団サイドはこの事実を岩瀬本人に伝え、納得してもらうよう努力した。しかし、頑として岩瀬は首を縦に振らず。「最後には『人的補償になるなら引退する』とまで言ったらしい」(球界関係者)
吉村GMの「複雑な要因が絡んでいる」とはこの舞台裏でのゴタゴタを指していたわけだ。
最終的にはそんな事情を見かねた日本ハムサイドが岩瀬の人的補償をやめる大人の対応を見せ、金銭補償で決着となった。中日・西山和夫球団代表(69)は金銭補償になったことに「こちらとしてはありがたい選択をしていただいた」とコメントしたが、それはまさに本音だったのだ。
15日にスタートした合同自主トレに姿を現したもう一方の主役・大野奨は一連の騒動を知ってか知らずか、金銭補償になったことについて「何の心配もしないでやれる」と言った後に「コメントしづらいですね」と言葉を濁した。
キャンプイン前に起きたまさかのドタバタ。球界全体としてもFAとうルールの根幹を揺るがす大問題となってしまった。
【デスクの目】今回起きた「人的補償拒否問題」はFA移籍のシステムそのものを揺るがす重大な「あしき前例」となりかねない。
東京スポーツ、通称東スポとは、自称スポーツ新聞です。グループ紙に「大阪スポーツ」(大スポ)、「中京スポーツ」(中京スポ)、「九州スポーツ」(九スポ)の各紙があります。ビートたけしさんが「客員編集長」とという肩書きを持っており、定期的に世相をぶった切るコラムを連載しています。「日付以外は全部誤報」と定評がありますが、日付も夕刊紙ゆえに翌日の日付で発行されるので、 日付も誤報なのです。また、昭和天皇崩御翌日の一面見出しが「ブッチャー流血」だった、というのは「自重しない東スポ」としてもはや伝説となっています。
ただし、東スポの名誉のために書いておきますが、サザンオールスターズ活動休止(2008年)、安室奈美恵さんの引退(2017年)を最初に報道したのは東スポです。
ネタ記事ばかりではなく、時々思いもよらぬスクープや鋭い報道をする辺り、侮れない新聞なのです。