急に呼び出された星野達郎、思いつめたような表情の矢吹薫。道路脇の歩道を二人が並んで歩いている。
達郎「あの~なんか美味しいものでも食べませんか? どうかしたんですか?」
泣いている薫
薫 「星野さん?」
達郎「はい」
薫 「私、あなたのこと好きだって言いました。だけど、だからってすぐ、結婚っていう気持ちになれないんです ・・・ 別にもったい付けて言ってる訳じゃないんです ・・・ 前にすごく好きな人がいました」
うなずく達郎
薫 「とっても幸せな気持ちで、教会で彼が来るのを待ってました ・・・ だけど彼は来なかった ・・・ また人を好きになって、とっても好きになって、それで、また失うの怖いの、怖いんです、ねぇ怖いの。怖いの」
突然、道路に飛び出し、走ってくるトラックの前に立つ、達郎
驚く薫
運転手「バカ野郎、コラ、死にてぇのか、おまえ!」
走り去るトラック、振り返る達郎
達郎「僕は死にません! 僕は死にません! あなたが好きだから、僕は死にません! 僕が、幸せにしますから」
♪ SAY YES~
米国の心理学者アンダース・エリクソンさんは、ドイツ・ベルリン芸術大学の協力を得て、バイオリン専攻の学生を3つのグループに分けました。
第1のグループは世界的なソリストとしてのキャリアを歩む可能性がある「Sランク」、第2のグループは非常に優秀であるがスーパースターほどではない「Aランク」、第3のグループは演奏者をあきらめてバイオリンの教師を目指す「Bランク」です。そして、各グループの時間の使い方を調べてみました。
一般的な音楽大学の入学年齢にあたる18歳までに彼らが練習に費やした時間では、「Sランク」の学生は7410時間で、「Aランク」の5301時間、「Bランク(音楽教育専攻の学生たちの平均)」の3420時間よりも圧倒的に多いことがわかりました。これはトップクラスの学生たちは、誘惑の多い年代に練習スケジュールを維持してきたことを示しています。さらに、現時点でどの程度の練習をしているかを調べると、さらに興味深い結果が明らかになりました。
3クラスが音楽関連の活動にかける時間は週に50時間以上で大きな違いはなかったものの(課題の練習にかける時間もほぼ同じでした)、上位2クラスは、その時間の大半を個人練習に充てていました。具体的には1週間で24.3時間、1日あたり3.5時間。それに対して「Bクラス」の学生が個人練習にあてる時間は1週間に9.3時間、1日あたり1.3時間だけで、それ以外ではクラスでの学習でした。
このことに対して「Sクラス」の学生たちは、(たとえ集団で演奏する者であっても)個人練習が本当の練習であり、集団でのセッションは「楽しみ」だと答えています。この実験結果は「グループ学習より個人学習の方が効率がいい」という単純なものではなく、「能力が高い人間が個人学習を好む」と考えるべきだと言います。たった1人で毎日3時間も4時間もバイオリンを弾けるのは好きだからで、人間は自分が得意なことを好きになるのです。
つまり「やればできる」ではなく「やってもできない」理由は「好きじゃないから」なのかも知れません。なぜなら人間は「好きなことしか熱中できない」からで、嫌いなことはどんなに努力してもやれるようにはならないということなのかもしれません。
「石の上にも3年」ちうのも、石の上に3年も座っていられるのは「好き」だからです。そうでなければ耐えられません。「桃栗三年柿八年」というのも、柿が好きだから八年も待っていられると言うことなのです。
勉強にしろ、スポーツにしろ、歌や踊りにしろ、絵画や小説にしろ、なぜ好きになるかというと、それが自分にとって得意なことで、それに熱中するからなのでしょう。なぜ得意なのかというと、遺伝的な差はあるのかも知れませんが、それは一般に思われているよりもずっと小さな違いかもしれません。ほんのちょっとしたことかも知れません。小さいころ、足が他の子よりも速いというだけで走るのが好きになるし、親戚が集まった中で歌がちょっと上手いと褒められただけでアイドルを目指すようになったりしますから。
明石家さんまさんは、以前、テレビ番組で「努力も死語にしたほうがええよ。努力って普通にするもんやろ生きとったら。行動やろ人としての。努力という言葉は努力していないやつが作りよったんや。逃げやねんこれ」と語っていました。つまり努力というものは、して当たり前であって、「努力した」などと、発言することすらないはずであるという考えです。さらに「努力している」と思った瞬間、そのこと自体が重くのしかかります。辛いことをしても、なかなか身につきません。時間もかかります。だから「努力してもムダ」という考え方が出てきます。
さらに「こんだけ努力してるのになんで?となると腹がたつやろ。人は見返りを求めると、ろくなことがないからね。見返りなしでできる人が一番素敵な人やね」ともと語っています。努力をすれば、すぐに結果を求めてしまう。それが間違いなのかも知れません。努力は報われると思うのですが、即効性があるとは限りませんし、努力を努力だと思っていること自体が間違いなのかも知れません。
スポーツの世界で成功している人たちのエピソードは、凡人からすれば努力量の次元が違ったりします。朝から晩まで素振りしたとか、毎日走りこんでいるとか。でも、その人たちにとってそれは努力ではなくて、「やりたいこと」なのです。誰もが経験あると思いますが、楽しんだ時のこと、没頭している時のことの方が身につきます。いつの間にかやってしまっていることの方が身につきやすいのでしょう。
「好きこそものの上手なれ」という言葉があります。辞書には「何事によらず、好きなものにはおのずと熱が入るから、それだけ上達が早いということ」と書いてあります。
誰にも負けない得意なことや好きなことはありますか?
好きなことがある人は、もっともっと好きになって、誰にも負けないものにしてください。また、好きなことがない人は、いろいろなことに挑戦し、自分が好きなことを見つけてください。
それが、自分が幸せになる道でもあると思います。