りゅうげんひご 世の中で言いふらされる確証のないうわさ話。根拠のない扇動的な宣伝。デマ。 <三省堂 大辞林>
【流言飛語とネット社会の親和性の巻】
■大日本帝国海軍の元報道部長の回想録によると、大本営発表というのは「嘘っ八」の連続で、昭和18年ともなると、それを信じるのは国内のすこぶる知的でない大衆、および狂信者だけだったそうである。前線はもちろん世界でも相手にされなかったという。
■戦争がある段階に達した時、たいていの日本人は連合艦隊というものが、もうこの世に存在しない、という流言飛語を耳にしていた。そして具合の悪いことに、これは嘘ではなく、本当だ、と知っていた。
■さかのぼって、ノモンハンでは日本軍がソビエトにコテンパンにやられたとか、満州事変も日支事変もみんな日本の方から仕掛けた侵略戦争であるとか、そういった流言飛語を耳にしていた。このデマが、みんな真相を伝えている、ということさえ知っていたそうだ。
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■流言飛語はいつの時代にもある。ネット情報がコントロールされている中国や北朝鮮では、国民は真実を知らないのかとの心配があるが、そんなことはないのである。「知らない」と「知らされていない」はイコールではない。「知らされていない」ことの被害者はすこぶる知的でない大衆のみ。
■むしろ玉石混交のネット社会になってしまった、この国の行く末が案じられよう。
■まことしやかな流言飛語が洪水のように流れている。「玉」か「石」かは、たいていの日本人はおろかすこぶる知的な大衆でも、見分けがつきにくくなっている。
■すこぶる知的ではない大衆とたいていの日本人の割合が、70余年前と現在とでは、どうなっているのかは知らぬ。民度を測るはずの選挙制度が機能を失っているためでもある。しかし機能不全のままに制度は成立し、政治勢力に「思い上がり」やら「無力感」やらを与えている。ゆゆしき事態、ゆゆしき時代。
■巷では、極めて巧妙な「オレオレ詐欺」が次々発明され、被害は後を絶たぬ。
■そして永田町周辺では、やるやると言いながらやらない「ヤルヤル詐欺」やら、やるとはっきりと言わずに選挙で勝って「ズルを決め込み、やらかしちゃう詐欺」。この被害もじわり拡大しているようである。
■もはや「戦前回帰」なる怪奇現象の白昼夢。だがフィクションではなさそうである。果たして数年先は? たいていの日本人ならブルーにならないわけがない。