【碁を打つ女の話 ~ ある霊的体験から の巻】
碁盤職人の平七が語る不思議な話に、
本因坊も「さては」と思った。
が、顔色を変えず、わざと渋面を作って言った。
「年甲斐もないことを言い出して、
大事な碁盤にケチを付けては困るじゃないか。
好きなタバコでも飲み過ぎて、
気分がどうかしていたんじゃないか。
盤は信濃屋さんにも貸す約束をしている。
さっさと取り掛かってもらいたいね」
取り付く島もなく、仕方なしに平七は、
「へい、それでは」と言って下がった。
(つづく)
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