前回投稿「ノゾキの魔力」の実戦例を掲載します
【狙いを秘めた一撃の巻】
■3年前、碁界に衝撃を与えた「人類最強VS人工知能(AI)」の頂上決戦。
「グーグル ディープマインド チャレンジアップマッチ」の第1局です。
序盤、AIが「ノゾキ」を起点とした鮮やかな手順で、イ・セドル九段から「技あり」を取ります。
◇
■この対局の流れをざっくり説明しておきます。
・序盤で、AIが定石外れを打って小さな驚きが広がりました。
・この後、さらに強烈な一手を繰り出して技あり。
・人類最強もアノ手コノ手の勝負手を繰り出しました。
・しかし、最後まで逆転に至らず、無念の敗退となりました。
■この瞬間、コンピューターが越えられなかった最後のカベ「複雑系ゲーム」を初めて攻略したのです。
グーグル社は、このビッグイベントで「AIの進化」を大きくアピールしました。
その後、バージョンアップ版がネット碁で世界トッププロ数十人に連戦連勝。
ランキング1位との公式戦も制し、役割を終えたとして「囲碁」から手を引きました。
■AIは、これまでの「常識」が「最善ではなかった」ことを明らかにしました。
人間がコンピューターに敗れたことばかりがクローズアップされましたが、それだけではありません。
「人間の知」が、さらに進化する新たな流れを作った、と思います。
人間とAIが共存する新しい時代に入ったのです。
▼第1図 1~10
黒が小目と小目のセット
白が二連星
ここまでは、よく出てくる布石
黒7はあまり見かけない手
イ・セドルは局後、過去にも記録に残らない予選で打ったことがあると話している
「研究済みの手」で人工知能(AI)を試そうとしたようだ
しかしAIは、30秒から2分ほど考える「いつものリズム」を崩すことなく、
考慮時間1分弱で白8を打った
問題は、白10の下ツケ
わたしが持っている日本棋院監修の定石小事典では、「手順が悪く、疑問手」となっている
正しい手順は、一間トビを二つ打ってから、10の下ツケとあるのだが……
これは、AIの新手だろうか?