忘憂之物

「苦情お断り」スカイマークに都が異例の抗議(読売新聞)>2012.6.5


    



「苦情お断り」スカイマークに都が異例の抗議(読売新聞) - goo ニュース


<航空会社スカイマーク(東京都大田区)が作成した接客指針「サービスコンセプト」に対し、東京都が5日、異例の抗議をした。

 5月18日から機内の座席ポケットに入れられている指針は8項目からなり、「機内での苦情は一切受け付けません」「客室乗務員は収納の援助をいたしません」などと明記。不満がある人は同社の相談センターのほか消費生活センターに連絡するよう求めている。

 これに対し、都消費生活総合センターは「社への苦情を代わって受け付けるかのような記述は容認できない」として、指針を機内から回収して会社の責任で苦情に対応することを新聞に掲載するよう申し入れた。

 同社によると、指針は機内サービスを巡る意見が乗客から相次いだことを受けて作成したという。広報担当者は「低価格で安全運航を実現するために乗客にお願いしたいことを簡潔にまとめた。従来の社の方針と変わりはない」とし、都からの申し入れには「内容を確認してから対応を検討したい」と話した>








「ちよたろさん、ちよたろさん、ちょっと来て!」


汗だくになって働いている私を(男尊女卑の私の得意はチカラ仕事)、介護員室で雑談に興じる女性職員ら(基本的に空いた時間だった)が呼び付けた。何事かと思えば、間髪入れずに「昇給あった?」との質問が来た。私は知らない、と答えた。本当だった。

女性職員らは返答に窮しながらも「交通費は?」とか「住宅手当は?」などと問うてきた。プライバシーの侵害です、と冗談を言おうかと思ったが、そこは素直に8000円と少し、住宅手当は3万円と答えた。すると「交通費、少ないと思わない?」などと同意を求めてきた。私は「べつに思わない」と賛同しなかったが、彼女らはその理由を問うことはせず「ちなみに前の会社の交通費は?」と重ねて問うから、コレも素直に「10万円」と答えると固まった。な、なんで?ということだから、交通費は非課税、だから上限が決まっていて「10万円を超える場合は10万円とする」とあるから、それを超えると課税されるから10万円でイイと言ったから、と説明した。

それじゃ、そういうことで―――と不用なモノを入れた段ボールを担ぐと、ちょっとちょっと、とまた呼び止められた。いったいなんなのか、と思ったら、要するに「昇給がないのよ!!」という不満だった。不満の根拠は「国から介護報酬が出てるのに!」だった。つまり「平成24年度の介護報酬改定が在宅1.0%施設0.2%アップ」のことだ。最近知ったそうだが、我々の給料はずっと介護報酬から出ている。溜息が出た。

上がるどころか、減額の可能性がありますよ、と言うと「なんで!」と咬みつかれた。

牙を見せながら唸り、喰らいつく古参女性職員をふりほどいてから「介護職員処遇改善交付金」のことを聞く。予想通りのナニソレ?が連呼される。介護職員ひとりに対し、既に月額1万5千円の助成金が出ている、と説明する。なるほど、それは結構なシステムじゃないかと、一旦は納得する。しかし、報酬の改定により交付金が無くなる、とすれば施設側の人件費に関する対応は変わってくる。現在は無くなっていないが、厚生労働省は平成24年度以降についても「処遇改善に取り組んでいく」と「示して」いるだけだ。コレは普通、嗚呼・・・いずれ近くには無くなるな・・・と大人ならわかる。そのための改正だ。

もちろん、その1万5千円も「事業者が介護職員にぜんぶ払う」という義務はない。あくまでも「事業者判断」であり、いわゆる「努力義務」だったりする。交付金で1万5千円出てるから、ということで全員に漏れなく全額支給しているわけでもない。また、実際の運営上、そういうわけにもいかない。やっているところがあるとすれば、よほど潤沢な資金があるところか、単なるお人好しの無計画、民主党レベル、人気取りの馬鹿だと思われる。

それに今回の介護報酬改定では時間区分が見直される。24時間体制で介護している施設は問題ないが、通所介護、いわゆる「ディサービス」のような部分が困る。多くの事業所は通所介護を併設することも義務付けられている。ならば当然、これも施設運営に大きく影響する。

通所介護の現行の時間区分は、「3-4時間」「4-6時間」「6-8時間」の刻みで設定されている。これが改定後は、「3-5時間」「5-7時間」「7-9時間」に再編される。なんだ、そんなに変わらないじゃないか、とはいかない。介護保険の居宅サービスで最も大きい市場は通所介護だ。その利用者が最も多く集中しているのが「6-8時間」だ。ボケたお爺ちゃんを朝の9時に放り込んで5時に迎える、というパターンだ。これが実に8割を超える。

当然ながら職員の勤務もそうなる。昼休憩の1時間を挟んで9時から6時までの勤務となる。コレが崩れる。介護報酬とは介護サービスの提供時間に発生するから、多くの利用者が不便を承知で「5-7時間で結構」となれば事業者、施設側は減収となる。だから「7-9時間」を推すことになるわけだが、これも弊害がいろいろと考えられる。

先ず、職員の「8時間労働」が崩れる。表立って「毎日サビ残1時間」とは言えない。つまり、交代要員を用意する必要が出てくる。それなりの職員の人数を揃えなければならなくなる。もしくは休日を増やすなど、労働管理に負担が出る。それに利用者も朝早くなるか、夜の帰宅が遅くなる。利用時間が増えれば自己負担も増える。どちらも困ることになる。

たしかに「7-9時間」になれば介護報酬は増える。「売上」とすれば増額するわけだが、それには当たり前に「人件費」というコストも発生する。それに処遇改善交付金がなくなるかもしれない、となれば、より一層、財布の紐は固くなって然るべきだ。それが健全な施設運営でもある。私が長でもそうする。

しかし、コレは更なる悪循環を生む。

普通、民間企業であれば「売上による増収」が見込めない場合、ここはコスト削減で利益を確保する。褒められた策ではないが、論理的に矛盾はしない。もちろん、それは介護施設でも同じ、備品や消耗品のコスト削減は喧しいモノだ。しかし、この「介護現場」の現状、職場風土、職業意識、あるいは施設側の人材育成への概念、理念、運営ポリシーなどを鑑みるに、どうにも「採用コスト」のリスクを軽視しているとしか思えない。実はこれが最も怖い「リスク」だったりする。


これは募集広告やら新人育成における「コスト」のことだけではなく、そのままずばり「職員の質」というどうしようもないリスクを包含する。菊池直子は偽名で「ヘルパー2級」を取得していた。天下り先を作り、国費を使ってインドネシアやフィリピンから介護士を呼ぶ。在日支那朝鮮人はもっといる。要するに誰でもなんでも来る。碌に挨拶も出来ぬ阿呆な我が子の将来を案じ、平然と人前で「それでも介護なら・・・」という親もいる。弱肉強食、厳しい民間企業から溢れ出た無能者でも、介護福祉の世界なら人手が不足しているから、ということで、今日も明日もたくさんの「うわぁ・・・」というのがくる。どうせ糞尿の掃除係、吐瀉物の後始末係、年寄りの奴隷くらい自分でも出来る、と自信を持ってやってくる。

集まったソレを適当なジャージに着替えさせれば、その日から職員、すなわち「労働力」として数える。職場には「命令口調は止めましょう」とか「挨拶をしましょう」という貼り紙がなされる。「丁寧な言葉遣いを心掛けましょう」とか「互いにマナーを守りましょう」もある。事実、利用者に対する「おい」とか「こら」は無くならない。半ば冗談のつもりか、人生の先輩である利用者をからかったり、馬鹿にしたりする不届きモノはいる。心の腐った真面目なアレは、本人の前で「認知症が進んだ。もうダメだ。廃人だ」とか暴言を放ち、認知症のはずのお婆ちゃんを泣かせる。中年と呼んで差し支えない大人の女性が「振られた」とか「喧嘩した」で当日欠勤する。NHKか朝日新聞か、人権擁護委員会か社民党か知らんが、どこかで妙な知恵を得ていて、心療内科の「診断書」だけは用意する。




「サービス」とは生産と消費が同時である。工場の製造ラインにあるわけではないから、不良品のチェックもできない。出来たモノをそのまま提供することになる。それでも「サービスの質」が悪ければ、それはその組織や企業が淘汰されていくだけで済む。介護施設でも民間企業でも同じだ。また、そういう低レベルな組織からはマトモな人材もいなくなる。つまるところ「人間の質」が落ちる。劣化する。腐敗する。そうなればいよいよダイレクトに「安全」を脅かす。安全とはサービスではなく、最低条件であり、何事にも優先されるべき項目であることに論は俟たない。



スカイマークも2005年以降、パイロットや整備士が数十人規模で去って行った。その翌年3月、抜本修理すべき、とされた機体を放置していたとバレる。乗っていた客も、さっき飛んでいた飛行機は、実のところ修理すべき期限を9カ月も過ぎていた、と知って大騒ぎになる。国交省は慌てて「スカイマーク専従」の特別監査チームを作った。しかし、その翌年、この会社はまた「航空機に整備漏れ」があったのに航空機を飛ばしたと発覚した。なんと「整備漏れを把握した上」での運航だった。落ちへん落ちへんwということだが、コスト削減が「安全」よりも優先されていた証左だ。

この会社はそれにも懲りず不祥事を繰り返し、2010年にも飛行中、機長らが記念撮影して遊んでいた、とバレる。遊んでいたから「飛行高度」も設定ミスをしていた。また国交省は特別安全監査として職員を放り込む。税金を使って「おまえら阿呆か。安全優先でやれ」ということだが、スカイマークは記念撮影問題でクビになった副操縦士を、こっそりと地上職員に再雇用したりしていた。世の中を馬鹿にしているわけだ。

そんなスカイマークが座席ポケットに「サービスコンセプト」を入れた。そこには<「機内での苦情は一切受け付けません」「客室乗務員に丁寧な言葉遣いを義務付けておりません」>と書いてある。文句があるなら東京都の消費生活センターに言えと。

独立行政法人とはいえ「消費者生活センター」は公共という観念から成立している。東京都が抗議するのは当然のことだが、これも「採用コスト」の概念がぶっ壊れているからこういうことになる。普通、マトモな民間企業なら「従業員の質」というものは落とせない、と知っている。それはそのほうがリスクは高いからだ。だから民間企業は「採用コスト」を削減するために離職率を下げる。再教育もする。賃金の見直しをする。「量を吐けないならば質を上げる」という方向に舵を切る。これがわからないのは介護業界も同じだ。




スカイマークの航空運賃は、他社よりも4割程度安いらしい。言葉遣いがどうとか、茶髪がいるとかはどうでもよろしい。機内食も要らないし、ドリンク有料も飲みたければ買うだけのことだ。しかし、それよりもパイロットは?整備士は?とならねばならない。

「自己負担金を40%安くします」という介護施設があればどうか。介護技術も素人、マナーは最悪、社会常識など持ち合わせておりません。職員の態度が悪いとお怒りの方は、どうぞ、最寄りの福祉事務所か市役所の「虐待防止センター」にでも申し付けてください、という施設に親を入所させる人はいるだろうか。

私ならそんな航空会社の飛行機は避けるし、そんな施設もお断りだ。デフレであろうがなんだろうが、消費者からすれば「安い」は悪いことではないが、その裏にある企業努力、つまり、なんで安くできるのか、には注視が必要だ。安易に飛びつくのは危険である。
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