妻との、いつかだったかの「新世界デート」。
その日は「シチューうどん」を食べさせることになっていた。が、しかし、モノが「うどん」だし「汁物」だということで、これは先に「串カツ」をいっとかねばなるまい。そして、そのあとは「寿司屋」で『3個100円』という格安の寿司を摘みながら、焼酎濃い目のホッピーなんぞをグイっとせねばならないと「法律で決まっている」と妻を騙す。許せ。
ほろ酔い気分でじゃんじゃん横丁を歩いていると、妻が「プリクラ」なんぞを撮りたいと抜かす。ふとみると、ゲームセンターがある。将棋屋の斜め向かいのあそこである。
しかし、夜になったら、コインゲームのあちらこちらで「老人が寝ている」あのゲームセンターにプリクラは無い。さすがにあきらめた妻は『老人の生死』を確認しだす。ついでにトイレも借りる。暇な私は、その辺のテーブルゲームを物色する。
見慣れないゲームがたくさんあった。よくみると面白そうなのもあるではないか。まあ、普通にゲームセンターなど「UFOキャッチャー」とか「プリクラ」しか用がなかったが、なかなか・・・・む??こ、これは・・・!!などと、私は童心に返っていた。
「格闘ゲーム」は好きである。あの、「しょうりゅうけん!」とかいうやつも少しはハマッたもんだ。当時、私の「ダルシム」は最強であった。見た目で判断してはいけない。野球ならキャッチャー、サッカーならキーパー、ストリートファイターならエドモンド本田というのは決め付けである。
ともかく、地元のゲームセンターではいつも、私と「ダルシム」の「ヨガヨガヨガヨガヨガヨガ・・・ww」という笑い声が響いていたもんだ。
遅いヨガファイヤー(弱パンチボタン)を繰り出した瞬間、ジャンプして放つドリル頭突きは、どちらもゆったりした動きとなるため、非常にタイミングが計りにくいのであった。
それでも、距離をとられたらドリル頭突きの体勢を解き、すかさず足を伸ばして蹴る!ヨガ!!当たれば捕まえてヨガヨガパンチ!ヨガ!!迂闊に空中攻撃を仕掛ける相手の着地点を読み切りヨガフレイム!5HIT!!ヨガヨガヨガヨガヨガヨガwww
「2」へ
■2008/03/24 (月) ガチコメ的「ヨガファイヤー」2
ほ、ほほぉ・・あるぢゃないか。
なんか知らんが、格闘ゲームだな・・・むふふ・・・
100円いれて・・・っと・・・
new challenger!!
ん?
なんだ?
まあ、いい。うむ・・・これでいくとしよう・・・
私が選んだのは、なんか「木人拳」のキャラクターみたいな、頭から葉っぱが生えている木の人形みたいなやつだった。こ、これが・・・「強・攻撃」だな・・・ふむふむ・・
らうんどわん!ふぁいっ!
え・・・っと・・・む??
一方的に攻撃されている「木」・・・っと・・・!!
KO
ちょ、ちょっと、マテ。
なんだこのゲーム・・・?強すぎるだろ・・・ぜんぜん、なんにもしてな・・・
らうんどつー!ふぁいっ!
一方的にボコられる「木」・・・
おいおい・・・私がオサーンになったのか?ゲームのレベルがあがったのか?
最近の餓鬼はこんなにハードなゲームセンターで遊んでいると・・・!!
ああ!!
こ、これは!!対戦型!!相手はコンピューターではなく、人間だ!!
お・・・おのれ・・・
妻が戻ってきた。
「あんなぁ、おばあちゃん寝てたよ。」
それどころではない。も、もう100円だ!
もちろん、次も「木」で勝負だ。なんとなくわかった。よし。
「おとうしゃん、ゲームしてるの?」
そ、そうだ!妻よ!このゲームセンターのどこかにいる対戦相手を見つけてくるのだ!わかるか?この画面と同じゲーム、同じ動き、同じキャラクターのゲームを探してくるのだ!
「うん。わかた。」
くっ・・・おのれ・・・手も足も出ん・・・も、もう100円だ!
「おとうしゃん!!おった!!おった!!」
くっ・・・どこだ!!このゲーマー野郎は!!少しくらい手加減しろとあれほど・・・
「すぐ前だよ。ここ。」
2人組みのオタクっぽい餓鬼がいた。もう、きゃっきゃと笑っていた。
「なんで、こいつ、木人ばっかだよっwwありえねーwww」
「3」へ
■2008/03/24 (月) ガチコメ的「ヨガファイヤー」3
も、盲点だった・・・まさか・・・すぐ前とは・・・しかも、木人は関係ないだろ!!
You lose
くっ・・・も、もう100円・・・
も、もちろん、「木」のやつ・・だ・・
「おとうしゃん、もう行こうよ。」
妻よ。おとしゃんがここで帰ると・・・だ。すぐ後ろから餓鬼どもの勝ち誇った笑い声がするだろう。そしてそれは、おとうしゃんが笑われているんだぞ?餓鬼どもにいいようにされて、おとうしゃんが情けなくも下を向いて帰り、そのあと「シチューうどん」を食べたとしてだ・・・キミはそれでもいいというのか?
「アカン。腹立つ。殺す。」
よし!!ならば、両替を頼む!!
「わかた!!」
いくぞ。餓鬼どもよ。覚悟はいいか?れでぃ?ご!
ちょ、ちょっと、「くま」に変えてみたが、相手はかなりの腕前なんだろう。やはり、やられた。しかし・・・だ。もう気付いているだろう。少しずつ、少しずつだが・・・私は上手くなっている。
20年前・・・こんなリアルでよくできたゲームは無かった。それでも、己の想像力をフル回転させて楽しめたのだ。格闘ゲームというジャンルもできていないころ、風呂屋の帰りに湯冷めして、オカンがぶち切れるほど「イーアルカンフー」をした経験を舐めるんぢゃない!!ああ、くそ!また負けた!!
「4」へ
■2008/03/24 (月) ガチコメ的「ヨガファイヤー」4
貴様ら、いい加減にせんと、リアルで格闘ゲームの相手になってやろうか?ああ?もう、いくらつぎ込んでいると思っておるのだ!!つ、妻よ!両替だ!!
「あっはっははは!!なにこいつwwww」
聞こえた。2度目だ。
“こいつ”だぁ?
餓鬼ども・・・上等だ。
貴様らが餓死するか、私の財産が尽きるまで勝負だ。そこを動くな。
私は思わず立ち上がって背伸びをした。肩がこったのだろう。うぅ~~~んっと・・・
目が合った。そこは私もフェアプレイ精神溢れんばかりの笑顔で返す。
なぜだか、向こうでボソボソと話し出した。なんだぁ?作戦かぁ?こちらは妻しかおらんのだぞ?ゲームについては素人だ。家ではコントローラーを反対に持っていた妻だぞ?その妻に「スト2」で負ける倅とはいったい・・・倅曰く「動きが読めない」と嘆いていたが・・・ん??
・・・・・!!
よくみると「エドモンド本田」いるっぢゃないかぁ!!名前も顔も少しだけ違うが、同じ様なモンだろう。親戚かなんかだろう。よし!使い慣れたキャラならば・・・
ひゃくれつ!!ひゃくれつ!!
ふはははは!!!
張り手!!張り手!!
「おとうしゃん!!すごい!!」
むははははははははははははは!!!!
You win
そうだろうそうだろう!!ふはははははは!!!
新世界を舐めるんぢゃない!!ふはははは!!
正面側から2人の餓鬼がトボトボと立ち去る。
『どうだ!!おとうしゃんの強さをみたか!!』
「すごいすごい!!おとうしゃぁん♪おとうしゃん♪」
『よし!シチューうどんを食いに行くぞ!!ふはははは!!』
-
-
・・・・!!
「準備中」
・・・・はっ!!・・・あの・・・
「もう、終わったんよ。ごめんなさいねぇ~~」
・・・・・。
・・・・・は・・・はあ・・・
妻は「ブランカ」のように泣いていた。
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