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忘憂之物

40年前に比べ…見えない日中関係修復の兆し



40年前に比べ…見えない日中関係修復の兆し

<日中両国は29日、国交正常化40周年を迎える。野田政権の尖閣諸島国有化をめぐる対立で、戦後最大の危機に面した日中関係は、修復の兆しすら見えない。

 1972年に田中角栄首相(当時)が訪中し、国交正常化の共同声明に署名した29日を前に、田中元首相の長女の田中真紀子元外相が北京を訪れた。28日午後には、人民大会堂でトウ小平氏の長男のトウ樸方氏と会談、トウ氏から「我々の親が親しく付き合い、激論を交わしていた頃に比べて大変厳しい情勢になってきたところで40周年を迎えたことは残念だ」と声をかけられた。

 実際、両国に節目を祝う空気は全くない。北京では28日、中国外務省の直属研究機関「中国国際問題研究所」が市内で日中国交正常化40周年を記念する座談会を開き、尖閣諸島国有化を非難する発言が集中。出席者の一人、中国外務省の楽玉成次官補は「日本側が独断専行を続ければ、中日関係という大船は『タイタニック号』同様、座礁し、沈没する」と述べ、日本に国有化撤回を迫った。

 27日には河野洋平前衆院議長はじめ日中友好7団体のトップらが40周年にあわせて北京を訪問したが、予定していた人民大会堂での記念式典は中国側の申し出で中止となった。また、過去の7団体トップの訪中では国家主席か首相が対応する例が多く、今回も当初はその方向だったが、最終的には共産党序列4位の賈慶林人民政治協商会議(政協)主席が会談に臨んだ。民間交流を含め、あらゆる分野で対日圧力を強化する中国の姿勢が際立っている>





村上春樹の「中国行きのスロウボート」。第1章は<最初の中国人に出会ったのはいつのことだったろう?>で始まる。主人公の「僕」がいつ支那人に会ったのかはともかく、日本が支那共産党と付き合い出してから40年、日本国内外にとって実に碌なことがなかったわけだが、村上春樹は支那で著作が引き上げられた、とかでショックを受けたらしく<安酒の酔いに似てる>と心配して朝日新聞に寄稿した。

このエッセイで村上は<この二十年ばかりの、東アジア地域における最も喜ばしい達成のひとつは、そこに固有の「文化圏」が形成されてきたことだ>とか言う。「東アジア文化圏」ということらしく<たとえば韓国のテレビドラマがヒットしたことで、日本人は韓国の文化に対して以前よりずっと親しみを抱くようになったし、韓国語を学習する人の数も急激に増えた>とか朝日新聞対象のサービス文も忘れない。

このエッセイを最後まで読むと、要するに「東アジア文化圏」は素晴らしいモノ、それを阻害するようなことをするなということで、村上は<今回の尖閣諸島問題や、あるいは竹島問題が、そのような地道な達成を大きく破壊してしまうことを、一人のアジアの作家として、また一人の日本人として、僕は恐れる>と不安がっている。邪推して読めば、単純に「(支那朝鮮で)僕の本が売れなくなる」と案じているだけに思うが、そこは天下の村上春樹である。ちゃんとわかっている。

<文化の交換は「我々はたとえ話す言葉が違っても、基本的には感情や感動を共有しあえる人間同士なのだ」という認識をもたらすことをひとつの重要な目的にしている>

その通りなのである。村上春樹が心配せずとも、だからちゃんと「日本の文化」は世界に通用している。「ノルウェイの森」は上下巻合わせて450万部売れたが、ちゃんと「ONE PIECE」は67巻だけで405万部売れている。合わせると2億7000万部だ。だから尾田栄一郎は朝日新聞やら朝鮮日報やらに寄稿しない。

鳥山明もそうだ。「ドラゴンボール」は3億部を越えて売れ続ける。村上の言う通り<我々はたとえ話す言葉が違っても、基本的には感情や感動を共有しあえる人間同士なのだ>ということだ。だからアメリカの歴代アニメDVDで最も売れたのは「ドラゴンボール」になる。スーパーマンやバットマンが束になっても孫悟空に適わなかった。「西遊記」がある支那人は誇って良い。「孫悟空の起源は中国アル」と言えば、それはみんなが「そんなの知ってる」と言ってくれることだろう。しかしそのあと、でもなんで「ドラゴンボールの海賊版」を作るの?と問われるだろが、そんなことはケンチャナヨでよろしい。

在仏日本大使館が毎年行っている「フランスで最も有名な日本人はだれか」という調査では「鳥山明」がトップ。アニメの視聴率は87.5%。これはもう抜くのは無理とされる。ドイツでは「ドラゴンボール」のハードカバーが売られた。これは日本にもない。米アニメ専門チャンネルのニックトゥーン。2010年に『ドラゴンボール改』を放映すると、9歳から17歳までのカテゴリのすべてが「開局以来の最高視聴率」を出した。デンマークの人口は550万人。ドラゴンボールは150万部売れた。たぶん、子供はみんな買って持っている。ニュージランドでは毎年、外国人らしく「かめはめ波コンテスト」が行われる。イギリス移民もマオリ族も仲良く、国民みんなで「か~め~は~め~」とかやってる。

小説だけが文化ではない。村上春樹は心配せずともよろしい。韓国での「ドラゴンボール」販売部数は2000万を越える。これは「韓国史上最高の販売部数」になる。最近まで「親日法」があった国でさえこうだ。もちろん、支那人もドラゴンボール大好き。天安門事件の1989年に「小猴王」として発売されると大爆裂ブーム到来。その後は支那らしく「日本小猴王」とか怪しげなモノも出回るが、1991年に海南撮影美術出版社が「原作者・鳥山明」の「七龍珠」として出すと鉄板、私のメンターだった「とおみい」が好きな言葉で書くと「キラーコンテンツ」になった。

孫悟空は「孫悟空」だが、ピッコロは「笛子魔童」。ベジータは「比達」でクリリンは「少林」。「かめはめ波」は「亀派気功波」。面白いモノだ。セルは「沙魯」。ブウは「布欧」とか。「適役」もちゃんと人気者になっている。それでもやっぱり海賊版の国だから「中国少年児童出版社」は集英社の正式な授権を経て全34巻からなる完全版「龍珠」を販売。空前の大ブーム。これはもう何年か続くだろう。

村上春樹のエッセイに戻る。村上は<最初にも述べたように、中国の書店で日本人著者の書物が引き揚げられたことについて、僕は意見を述べる立場にはない。それはあくまで中国国内の問題である。一人の著者としてきわめて残念には思うが、それについてはどうすることもできない>とあきらめてしまう。その代わり、日本人には<僕に今ここではっきり言えるのは、そのような中国側の行動に対して、どうか報復的行動をとらないでいただきたいということだけだ。もしそんなことをすれば、それは我々の問題となって、我々自身に跳ね返ってくるだろう>と北京みたいなことを言う。中国外務省の楽玉成次官補は日中国交正常化40周年を記念する座談会で<日本側が独断専行を続ければ、中日関係という大船は『タイタニック号』同様、座礁し、沈没する>と言った。要すれば同じ事、日本は何もするな、何も言うなだ。怖い話だ。


ところで、この「世界の村上春樹」を激賞したのは丸谷才一。「群像新人文学賞」で村上を見つけ「この新人の登場は一つの事件」と評した。大した先見の明だが、丸谷は「裏声で歌へ君が代」を書いて朝日新聞の一面で絶賛されたアレだ。結婚式の夜に「僕には帰るべき朝鮮がない」と泣いた変態ノーベル賞、大江健三郎は第81回芥川賞の選考では、ついうっかり、村上の「風の歌を聴け」を批判して選ばなかったが、同じ仲間だとわかった第83回芥川賞選考では「1973年のピンボール」を推薦している。「羊をめぐる冒険」と合わせて三部作、続けて登場する中国人バーテンダーの「ジェイ」が気に入ったのかもしれない。

ま、村上春樹が新作を書きながら、支那語みたいな<報復的行動>と妙な言葉で心配せずとも、日本のテレビにはアグネス・チャンとか不買もされずに好き勝手を抜かしている。

1971年、パンダと一緒にやってきた支那人娘はデビュー当時、支那人だということで事務所から「中華丼ばかり食べさせられた」とか、ホンマかいな、みたいなことも言うが、いま、テレビでまた<反日の教育のことを今日でもうはっきりしましょう。あの、反日教育はしてないんです。 あのね、反日教育してない、歴史を教えてるだけです。中国で教えてる歴史も、韓国で教えてる歴史も、アメリカで私が学んだ中国、アジアの歴史いっしょなんです。日本の歴史だけが違うんです。 教えてもらってない、真実を教えてもらってないんです>と「ツッコミどころ満載」のチャイナジョークを言う。

アグネス・チャンのデビュー曲は、嗚呼、懐かしい「ひなげしの花」。「ひなげし」の花言葉には「妄想」もある。村上春樹もアグネス・チャンもチャイナジョークが過ぎる。
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