忘憂之物

花子さんのお兄さんは~~その3~~地面は動いているのだった



夜勤を終えて帰宅すると昼だった。何もなければさくっと帰るのだが、その日はお婆さんがベッドから転落。怪我もなく、本人も笑っていたが、こちらはそうはいかない。通常の業務を終えてから報告書を作成するといい時間になっていた。

妻は仕事。倅はバイト。家には犬しかいない。ひとり寂しくシャワーを浴びて冷蔵庫を開けると、豚バラ肉があったからフライパンで焼いて、大量のキャベツの上に載せた。昼過ぎの晩酌だ。しかしまあ、夜勤明けのウィスキーは格別である。至福の瞬間である。ぐっとストレートで飲ると五臓六腑がきゅっとハッピーになる。でも妻がいないから「話し相手」は新聞か本、それから犬となる。ちょっと侘しい。また、基本的に眠ってしまうから映画は観ない。それでもうっかりテレビをつけるときがある。

今日はお笑いコンビの「オセロ」の黒い方をやっていた。詳しくは知らないが、なんでも「悪い占い師」に洗脳されたとかで、家賃は滞納だわ、レギュラー番組は無くなるわ、と面白おかしく報道されていた。もちろん、私の感想は「ふぅ~ん」であったが、まあ、この「悪い占い師」も村の子供を食べたり、夜になると「ふくろう」になって空を飛んだりするのだろう。

人間は昔からオカルトに興味が尽きない。人間は勝手にオカルトを想像して恐れ、好む。

この「悪い占い師」も15世紀~17世紀のヨーロッパにいれば水に浸けられて死んでいる。女子高生が怪しげな「おまじない」をしているのは可愛らしいが、これも時代が時代、国が国なら尋問、拷問されて殺される。なにぃ?恋が適う呪文だと?それは男を虜にする魔術、妖術の類ではないか、とキリスト教徒に捕まって火あぶりにされる。「魔女狩り」だ。

それでも17世紀になると、白人にも賢いのが出てくる。ニュートンとかデカルトとか。近代的なモノの考え方ができる白人が増えると、ようやく、ペストは魔女の所為じゃないかも?と気付き始める。その後、北里柴三郎が上海で「ペスト菌」を見つけてくれた。白人はもう、ペストで死ななくてもよかった。数万人を殺した「魔女狩り」もしなくて済む。

しかし、サウジアラビアなどはいまでも真面目にやっている。イスラム宗教省には「魔法部」がある。ハリーポッターの世界だ。ここは「近所の魔女に魔法にかけられたがどうすればいいか」などの電話相談を受け付ける。「魔女」の摘発は勧善懲悪委員会が行う。なんと、未だに処刑も行われている。我々は先ず、税金の無駄遣いがどした、とやれる日本に住んでいることを喜ぼう。

17世紀に出てきた賢い白人の中にはガリレオ・ガリレイもいた。ガリレオが産まれる20年ほど前に死んだコペルニクスも「地動説」をやった。コペルニクスが習ったのはクラフク大学のアルベルト・ブルゼフスキ教授。この人も「天動説」には懐疑的だった。

宇宙の中心には地球がある。地球が中心なのはそこに人間がいるからだ、というのが「天動説」だ。もちろん、この場合の「人間」とは白人をいう。夜空のお星様は白人のためにあり、それを神が手で押して動かしている。その前は半球体の上に暮らしていると思っていた。それらはすべからく白人のために・・・祈りなさい、ということだが、アルベルト・ブルゼフスキ教授は、こんな白人の身勝手、なんか変だ、と思っていた。それを公に「変だ」と言ったのがコペルニクス、すべてが引っ繰り返る画期的な展開をみせるとき、いまでも「コペルニクス的転回」という謂れだ。つまり、我々白人は威張っているがホントは馬鹿なんじゃないか、とやったわけだ。

それから少しあと「月には海(クレーター)があるじゃないか。アリストテレスは間違いじゃないか」と言っちゃったのがガリレオだ。いまならブログを立ち上げて騒ぎになる。コメント欄が炎上する。ガリレオはコペルニクスらと違い、20倍に改造した望遠鏡を持っていた。つまり「証拠」を出し始める。太陽の黒点も変わる、木星の衛星もある、金星は満ち欠けする、地球が中心で天体が一定で動くなら、これはおかしいじゃないかと。ガリレオはコレをツイッタ―でやらずに本を書いたりした。慌てたローマ教皇庁はコペルニクスの地動説を禁ずる布告を出し、コペルニクスの『天球の回転について』は閲覧禁止、ガリレオは異端審問にかけられて軟禁される。事実かどうかはともかく、白人にとって具合の悪いことは隠される。これはいまでもいろいろある。


また、いまの日本にも同じような「迷信」がある。ある意味ではタブーだ。少し前になるが「日本は良い国だった」と言ってクビになった航空幕僚長がいた。以前、島根県で一緒に「神楽」を観た人だ。もっと前は「日本は韓国併合で良いこともした」と言っただけで国務大臣のクビが飛んだ。いま、名古屋市長が「南京事件はなかったんじゃないの?」と言ったら大騒ぎになっている。交流イベントも中止になったとか、テレビ屋がやっている。

期待された大阪市長もオカルト政党になにかされたのか「発言は慎重に」とか「日本にとってプラスにならない」と遠慮気味だ。つまり「過去の日本」については「悪逆非道な野蛮国家であり、強姦魔で殺人鬼が日本兵であり、世界侵略を企んだ悪の枢軸国家だった」というのが「天動説」のようになっている。反論は一切認めないと。御蔭で日本の総理大臣は日本国内の神社にもお参り出来なくなった。

だから韓国の大統領が「日本は謝罪せよ」と言ったら、日本の官房長官も「今後も何ができるか知恵を絞り検討を進める」とやる。南京事件と同じく「あったことは前提」として話を進めている。これを「なかった」という人がいれば、出来ることなら処刑するか、軟禁するか、どうにかしたいのが本音だが、それは「人権救済法案」が成立するまでお預け、となる。法案さえ通れば、いつでも「魔女狩り」ができる。保守論客は親指を潰されて拷問されるかもしれない。絞首刑にされて水に浸けられ“甦らないよう”に憲法9条を朗読しながら焼却処分され、遺骨は粉砕されて捏ねられ、慰安婦の銅像の一部にされる。





ま、ところで、だ。

米国下院で「日本は朝鮮人らをセックス・スレイプとして強制動員した」との非難決議が出たのは2007年だった。中心人物はマイク・ホンダであるが、この根拠が吉田清治の「私の戦争犯罪―朝鮮人強制連行」(三一書房)だったことに改めて驚く。なんとも古臭い、なんとも酷い「根拠」もあったモノだ。もっと他になかったのか、と悲哀すら感じる。そんなネタ本、とっくに集中攻撃されてボロボロに論破されているではないか。

「天動説」が否定され始めると、望遠鏡は非科学的、それは「呪具」じゃないか、と涙目で反論したキリスト教信者のほうがまだ可愛い。太陽の周りを地球が回っているなら、どうして地球はどこかに飛んで行ってしまわないんだ?という阿呆のほうが親しみを感じる。とっくに化けの皮が剥がれたネタ本を堂々と、知らぬ存ぜぬのドヤ顔で持ち出しているところに「悪質さ」をみる。事実などどうでもよろしい、話題になればいい、騒がせればそれでいい、という本音が透けて見える。吉田本人が決議案提出の10年以上も前に<本に真実を書いても何の利益もない。事実を隠し自分の主張を混ぜて書くなんていうのは、新聞だってやるじゃないか>と開き直っていることをマイク・ホンダは言わない。吉田本人が秦郁彦氏の取材に対し<人権屋に利用された私が悪かった>と悔いている様子も言わない。まさに卑怯千万、だ。売春婦が売るのはカラダだけだが、連中は誇り、プライドを金で売る。およそ最低の部類の醜いイキモノである。

もう書くのもアレだが、吉田のネタ本は1989年、韓国語に翻訳されて発売されている。すぐに済州島の地元紙「済州新聞」の女性記者だった許栄善氏が現地調査を行った。結果は出鱈目。許栄善氏は署名記事を書いた。そこでは当時を知る韓国住民も実名を出して非難した。「250ほどの家しかない村落で15人も強制連行されて騒ぎにならないはずがない」と当たり前のことを言った。許栄善氏は現地を訪れた秦郁彦氏に対し「何が目的でこんな作り話を書くのですか?」と質問して秦氏を困らせた。あまりの出鱈目ぶりに、韓国では「日本の内閣調査室の陰謀ではないか」との憶測も出た。つまり、バカバカしいウソを意図的に流布し、これを完膚なきまでに叩きのめして「日本国の正当化」を言い出すのではないか、ということだ。この手の話はそれほどだった。

しかし、日本と同じく、韓国の大新聞は書かない。朝日新聞の論調だけを取り上げ、そこにオリジナリティを加えて盛り上げた。「朝鮮人強制連行」やら「従軍慰安婦」は小説になり、映画になり、ドラマも作られて若い韓国人を騙し続ける。知らぬ間に強制連行された人数は「なんちゃって南京大虐殺」と同じく膨大な数に膨れ上がり、性奴隷にされた女性は10代前半の少女から乳飲み子を連れた母親までバリエーションが広がる。韓国人は「残虐極まりない日本人を許さない」と激高し、日本人の若者は「嘘吐き朝鮮人を許さない」と憤る。結果、どちらも振り回されている。喜んでいるのはアメリカと支那、北朝鮮だ。


済州島の住民は吉田のネタ本に怒った。そこには「強制連行しようとする日本兵」に立ちはだかる朝鮮人男性が出てくるが、コレがあっけなく銃剣を向けられて怒鳴られると「石垣」の裏に隠れてしまうからだ。そんなことはないと、舐めるんじゃないと怒って当然だ。しかし「強制連行なんてされてない」と言えば、韓国世論の中で「親日派」とされる。声を出しても韓国の大手マスメディアは黙殺する。1993年まで駐日大使を務めた呉在煕氏もそうだ。1992年に宮沢喜一が訪韓するとき「トップ会談で慰安婦の話は止めよ」と韓国政府内でやった。だって証拠もないじゃないかと。記者会見でも「日本側が強制連行の証拠資料などを隠しているとは思えない」とマトモをやった。

すると吊るされる。日本と同じく「市民団体」が湧いてきて騒ぎ出す。大統領就任が決まっていた金泳三も慌てて叩く。大事なときに何を言うのかと焦る。結局、呉氏は市民団体に謝罪させられ、金泳三政権が発足すると切られてしまう。日本は犯罪国家でなければならない。そう決まっている。ガリレオは迷惑、マトモな人はいらないのだとされる。

韓国にも併合前からずっと「ウソは止めて、ちゃんと日本と付き合おう」という人がいる。これはたぶん支那人にもいる。それらは「親日派、民族の裏切り者」として吊るされる。日本でも「ウソは止めて、ちゃんと韓国と付き合おう」と言えば「右翼、民族主義、戦争賛美、危険人物、植民地美化」とかいろいろ言われる。吊るされて干されて切られる。つまり、誰かが得して、誰かが損をするという「同じ構図」がある。ちゃんと既得損益の裏を見れば「同じ顔」がある。「日本人め!」と「朝鮮人め!」を眺めてほくそ笑む連中は同じ連中だ。ったく、邪魔臭いことをしてくれたものだ。


私は社長マンに教えてもらった「朝鮮料理の店」をいくつか知る。こっそり告白すると、いまでも立ち寄る店もある。妻は今頃「朝鮮人きらい」と嫌韓ブームだから一緒には行けないが(というか、辛いモノが喰えない)、その店にいる「オモニ」は優しくて面白い。それに料理は格別、値段も日韓友好だ。その「オモニ」らは「日本とはいろいろあったけど、いまはいま、むかしはむかし、仲良くしなきゃダメだスミダ」とか言う。これも正論なのだが、罪深いのはこういう純朴な年寄りに「ウソ」を塗り込める連中だ。「なかったこと」を「あった」と信じ込ませ、いま、日本列島でも朝鮮半島でもいいが、そこに暮らす「オモニ」や「おばちゃん」をして「悲しい歴史を忘れましょう」という無駄な労力を使わせる。本当は違う。「いろいろあった」のは当然だが、本当はその「いろいろ」を正しく理解すべき、であった。別に併合時、朝鮮半島が真っ暗けでもいい。イザべラ・バードが「北京よりも汚い街」と書くのも勝手にすればいい。19世紀のイギリスも自慢できるほどキレイな街でもなかった。ただ、日本は本当に美しい国だった。韓国はそれを真似て真似た。

日本に教えてもらった。日本に助けてもらった。そして日本と一緒に戦って負けた。それは事実ではあるが、別に恥ずかしいことでもない。台湾のように「誇れること」だ。

「日本人みたい」が褒め言葉として通じる台湾は、例えば支那人を困らせる。アメリカを困らせる。だから韓国が、くだらぬ日本人タレントが台湾でタクシー運転手を殴って捕まっても「それはそれ、これはこれ」と日本人的対応が聞こえる台湾のようになれば困る。共産党は韓国にも支那人のように「反日」と叫び続けてほしい、と願っている。そして、その通りになっている。悲しいことだが、これも現実だ。

「母親が日本人だ」とネガティブキャンペーンを張られ、それをDNA鑑定までして否定せねばならない国の大統領が1日に行われた「三・一独立運動」の記念式典でまた「日本は謝罪せよ」とやった。毎度お馴染み、政権末期の「反日カード」とのことだが、日本の政治家も野田をはじめ、政権をとると(総理になると)左旋回してしまう傾向がある。安倍さんや麻生さんが「靖国神社に参拝しない」など、今更ながら考えられない「変化」だったことも記憶に残る。要するに政治家はコペルニクスになれない。ガリレオになれない。

いや、巷にはいた。学者やジャーナリストもいた。漫画家の凄いのもいた。

その御蔭で―――現実は「地面が動いている」と多くの人が気付き始めてもいる。名古屋市長が市議会で不気味な共産党市議から<市長の発言が外交問題に発展しており、国内の輸出や観光など地域経済にも影響が出ている。謝罪して撤回すべきだ>と質問されたが、これを「発言は撤回しない」と明言しても、もう、だれも「コペルニクス的転回」だとは思わない。ようやく、それは常識だとなりつつある。
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