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忘憂之物

淡い期待の話 2021年総裁選

野生の生き物は偽装や擬態を得意とするものが少なくない。安全を確保したり、捕食し繁殖したりするため、つまり生きるためだ。

例えば、アメリカ大陸の乾燥地にいるオビオノスリという猛禽はヒメコンドルの真似をして飛ぶ。ヒメコンドルは腐肉しか喰わないから、小型の鳥や哺乳類は警戒しない。なんだ、ヒメコンドルかと気を抜いたら群れの中からオビオノスリが飛び出して襲われる。これが偽装だ。

喰ったことはないが、アマゾン川周辺に生息するドクチョウはとても不味いらしい。だから鳥も喰わない。これもたぶん喰ったことはないが、同じ地域にいるシロチョウは美味い。だから鳥はこれを喰いたい。すると、シロチョウはドクチョウそっくりに進化した。鳥は丁半博打を避けて喰わない。ちなみに、この両種に類縁関係は一切ない。つまり、擬態である。

他にもこのような偽装や擬態はトカゲやヘビなどの爬虫類、昆虫、海洋生物など枚挙にいとまない。多くの哺乳類が背中側の色が濃くて腹が白いのもそうだ。外側に色がついていると日の光を反射し難い。身を伏せてにじり寄ると獲物も気づかないし、隠れたりするにも保護色みたいで便利。実に理に適っているわけだ。

我が家は残念ながらテレビがなく、NHKの教育テレビなどは観れないが、たぶん、このような楽しい野生動物や植物なんかを紹介する番組もあるだろう。非常に残念だが、それでも面白い偽装や擬態を行う動植物は他にもいくつか知っている。ダーウィンが来なくても本やネットがある。

また機会があれば調べて書くが、アフリカ南部カラハリ砂漠に生息するブッシュヴェルトトカゲや北アメリカに住むハナダカヘビや永田町に事務所がある河野太郎なども偽装や擬態が得意である。このオスの河野太郎はブルーリボンバッジなんかも相手によって、あるいは場所によってつけたり外したりして偽装する。ここまでわかりやすいと非常に興味深い。


さて―――少し前の永田町周辺の偽装、擬態をもう少しだけ思い出してみる。


「第一次安倍内閣」が誕生する、となったときマスコミは本気で潰しに来た。安倍氏はとくに偽装も擬態もせず、日本を取り戻す、とそのまま言った。だからその天敵の朝日新聞も鼻息荒く、総裁選から「安倍は3500円のカツカレーを喰っている。庶民感覚などない」と可愛らしい因縁をつけて、その後、朝日新聞本社内のレストランメニューから「カツカレーコース6300円」がバレるというオチの反日芸だった。その他、形振り構わぬマスメディアの猛攻撃は記憶に残る。ある意味、必死の絨毯爆撃だった。

そりゃ「美しい国」はともかく「戦後レジームからの脱却」とか言われたら、反日を生業とする連中は夜も寝れない。いまさら勝手に「脱却」とか困る。せっかく上手く、有利に進んでいる「擬似戦争」にも支障が出て北京から叱られる。だから朝日幹部も「安倍の葬式はうちで出す」と言い、若宮啓文は故・三宅久之氏に「安倍叩きは社是」と言い放っていた。

まあ、社是なら仕方ないが、ともかく宣言通り、安倍政権批判や自民党批判ならなんでも、あることないこと、ないことないことやった。他の反日メディアも総出で安倍内閣ぶっ叩きキャンペーンを張り巡らせ、政治と金に閣僚の失言を騒ぎ立て、とっておきの「消えた年金」で大ダメージを与えた。それでようやく、支持率も下がり、参院選で自民党を負けさせることができた。朝日は部数が伸びるよりうれしかったはずだ。朝日社員の何人かは宴会して非常階段から飛んだかもしれない。

安倍総理は続投表明して改造内閣で奮闘するも、ついに安倍総理自身の体調が悪化して辞任。「安倍を不眠症にしよう」と気勢をあげた野党はよく知っていただろうが、潰瘍性大腸炎の天敵はストレスだった。その後の大復活が想像できないほど、テレビで見た顔は疲れ果てていた。

そしてお待ちかね福田内閣だ。就任した最初の会見で福田康夫は「男女共同参画社会の実現」と言った。一瞬、上野千鶴子がズラで偽装しているのかと思ったが、取り急ぎ、反日メディアは「敵じゃない」と判断した。まともな自民党支持者が引き出しの中、お灸を探し始めたころだが、続けて「男女平等」「女系天皇」「ひとの嫌がることはやりません」。

明確だった。これも偽装も擬態もない。だってお友達は山崎拓に加藤紘一、それから古賀誠。カラスがカーと鳴くように、そらそうだろうと納得もした。最後も「あなたと違うんです」と断言した。つまり、解剖学的特徴における形態的種の概念は同じでも、個体としての生物分類上では異なる、すなわち、よくわからんが、あなたと違うんです、ということだった。同種に偽装してもいない、他種に擬態もしない。期待を裏切らない、意外性もない、実にわかりやすい左巻き性質だった。ある意味、とても正直だった。

しかしながら、野生の動植物に限らず、政治家でも一般人でも偽装や擬態はやっているし、生きていくうえでの必須条件ですらある。なんでも馬鹿正直に清廉潔白など不気味だし、先ず、生きていけない。偽善もある程度なら許容範囲、やらない善意よりやる偽善、もたしかに言い得ている。人を騙し欺く、つまり欺瞞も別にいい。虚言も愛嬌だ。

でも偽証はダメだと常識ある社会人なら知っている。場合によっては犯罪行為だし、いくら清濁併せ呑む社会でも、それは信用を失うことになるからだ。

そこで、その差異はなにかと考えたら、たぶん、公共性を伴う言動のことだとわかる。

例えば、選挙公約などもその代表か。「悪夢のなんとか政権」は酷いもんだったが、その所為で未だに分裂しようが政党名を変えようが、有権者は忘れていないし、これからも絶対に信用しない。逮捕者が出ていないだけで、あのような行為が犯罪的であることは周知の事実だからだ。公党、それも野党第一党の支持率が消費税に及ばない現実が証左である。

しかしながら、せめて悪夢のなんとかは「言ってることとやってることが違う」レベルだった。また変な擁護をすると、多くのマトモな人らは最初からできると思ってもいなかった。だから阿呆以外は「裏切られた」ではなく「だから言っただろう」と怒っていた。

岡田元副総理、当時はなんとか政権の幹事長だったが、神奈川県連の政治パーティーで、帰れ帰れのヤジの中「誰が見てもできないことをいつまでも、できるできるというのは、国民に対する不正直だと思います」と普通の心臓なら言えないことを言った。たしかにさっさと帰るべきだが、それでも最低でもこうだった。ちゃんと馬鹿にされて支持を失った。


今回の自民党総裁選。河野太郎はどうか。

河野太郎が共同代表を務める「原発ゼロ。再エネ100の会」。政策提言にはこうある。


「参加される各議員は、有権者たる国民にそれを自らの政治的公約とするとともに、その所属政党を問わず信念を持って実現させることに全力をあげる」


だったら総裁選出馬表明でこれを言うのかと誰でも思った。公式の特設サイトにも「産業界も安心できる現実的なエネルギー政策をすすめます」しかない。爽やかさはないが、一試合一試合、これが最後だと思って一所懸命に勝ちに行きます、とインタビューに答える高校球児みたいにあっさりだ。具体性が乏しいことしか書けなくなっている。

福田元総理もそうだったように、何を言われようが、普段から公言している政策、あるいは信念を堂々と述べる。国民はそれで自民党員、所属議員がどうするのかをみたい。これは言うまでもなく、次の総選挙で有権者の大きな判断基準になるからだ。些末な問題ではない。今後の日本のエネルギー政策における重要ポイントである。賛成反対の前に、ここで深い議論をしてもらわないと困る。偽装や擬態を引きはがす手間はかけてられない。それに公示日を過ぎて論戦が始まったら逃げられない。

「女系天皇」については「政府の「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議に関する有識者会議」の議論を尊重します」と書いてあった。

これくらい鳩山由紀夫でも言える。これも昨年8月はこうだ。


「男系は遺伝子の問題。Y染色体が繋がっていることしかない。600年前の方を元に戻して、国民が受け入れられるのか」「側室制度がない今、クローンというわけにもいかない」


ニコ動でも熱く語り、二日後の防衛大臣記者会見でも述べていたが、いまでも読んだら眩暈がする。河野太郎にとっての男系は日本国の伝統でもなく、歴史でもなく、先ずは「遺伝子の問題」だそうだ。「クローンというわけにもいかない」だと。皇室とトウモロコシの区別がつかないのか、と思うのは私の勝手だが、しかしながら、それはそれで結構なわけだ。どうぞ勝手にそう思っていてください、というのみだ。

そしてその価値観が自民党内において、あるいは有権者からの判断において、受け入れられて選ばれるなら、これはもう仕方がない。2009年と同じだが、当時の悪夢のなんとかは、せめて阿呆なことを書いていた。政策集に書いていたのである。

高速道路無料化とか子供手当、ひとり年額31万円とか、岡田元幹事長が言う通り「誰が見てもできないこと」を書いていた。それで「できるかも」とか「できたらいいな」で投票した有権者は憂い目に遭った。お灸の火傷は国民も負った。「できるわけないだろ」という声はついに届かなかった。しかし、まあ、それだけのことだった。


河野太郎の公式サイト。「Q&A」だ。



Q:「河野談話」を修正、または撤回するためにはどうしたらよいのでしょうか。誰がやればよいのでしょうか。


A:「内閣の意思」は、総理大臣が明示的に踏襲すると発言しなくとも、明示的に否定しない限り、新しい内閣に引き継がれます。

「河野談話」を修正または撤回するためには、これまでの内閣の意思を変更するわけですから、「河野談話」に替わる内閣の新しい見解、意思を発表する、「河野談話」を踏襲しないという内閣の意思を明示する、または何らかの形での否定をすることが必要だと思われます。

内閣の意思をとりまとめ、総理または官房長官が新しい見解を発表するなどが必要です。

そのためには、1993年8月4日付け内閣官房内閣外政審議室の「いわゆる従軍慰安婦問題について」に替わる事実が出てくるか、あるいはこの調査結果を破棄するかということが必要になります。





インドネシアのスラウェン沖合に住むタコ。これは偽装も擬態もする。毒をもつカレイになったり、棘のあるミノカサゴに化けたり。長い触手を漂わせてウミヘビ2匹にみせかけたりもする。ちゃんと青白い色にもなる。何通りにも変化する。たぶん、忍者レベルだ。



淡い期待を書いておく。



「河野談話」を破棄する条件は揃っている。賢いタコのように幾重にも偽装と擬態を繰り返し、反日も親中も取り込んでだまくらかして頭から喰い殺し、見事、総理総裁になった暁には、新たに談話を上書きし、日本の名誉を挽回する「新・河野談話」を発表すれば歴史に残る宰相となるかもしれない。

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