先日、オバマ大統領は就任後初、9.11同時多発テロに遭った世界貿易センタービルの跡地である「グラウンド・ゼロ」を訪れた。ご自慢の「SEALS」が首謀者の首を取った報告であるが、そもそも日本のマスコミも嬉しそうに「グラウンド・ゼロ」と報道しているが、この言葉は米軍が「広島・長崎」を呼んだ言葉である。アメリカがそれをきっかけとして「テロとの戦い」をいうなら、日本も各地にある「グラウンド・ゼロ」を忘れないようにして「差別主義者との戦い」とか「白人至上主義との戦い」を思い出さねばならぬ。
ところで、オバマから贈られた勲章は「殊勲部隊章」という。これは大統領から贈られる勲章としては最高位のものだ。オバマは「SEALS」の隊員ら一人一人に感謝を述べ、米陸軍「第101空挺師団」2300名を前にして気勢を上げる演説もした。
<パキスタンとアフガニスタンで、我々はアル・カーイダの粉砕と解体に向け成果を上げている。最終的には連中を壊滅させる>
憲法9条を押し戴く「平和国家・日本」の親分は過激な国で、選挙が近い大統領がこう言うと万雷の拍手、歓喜の声が湧き上がる。ニューヨークでは「ビンラディン殺害記念Tシャツ」が売られ、米国民の95%以上が溜飲を下げている。管直人が金正日の首を取り、国会演説で「北朝鮮工作員は壊滅させる」といえば、福島瑞穂あたりは気を失うだろう。言った本人も失神するかもしれない。良くも悪くも日本は平和な国なのだ。
「リメンバー9.11」という聞き慣れたフレーズはまた、アメリカ国民の戦意を高揚させアフガニスタンへの侵攻を支持して、米軍はタリバン政権を倒した。「リメンバーアラモ」の1935年から変わらぬ米国民はまた、息子と税金を合衆国に差し出さねばならない。メキシコ軍と戦っていたディビー・クロケットらの独立義勇軍は「アラモ砦」で全滅するが、その10キロ付近には既にアメリカ軍がいたというから、これも面白おかしく「見殺しにしたんじゃ?」と言われても仕方がない。事実、そのお陰さまでメキシコの過半の領土を奪い取ることもできた。そして1898年には「リメンバーメイン」だ。
ハバナ湾に停泊中の「メイン号」が突如爆発、260名の乗組員と共に沈没した。未だに原因は不明である。今でこそ「石炭の自然発火」による「弾薬庫の爆発」が有力とされているが、そんなことは当時のスペイン政府もずっと言い続けてきた。アメリカもようやく、1976年になってから、米海軍のハイマン・リッコーヴァー提督が再調査、特定はできずとも石炭の自然発火が有力とした。もちろん「スペインの機雷説」などは切って捨てられている。
しかし、当時のアメリカは「スペイン軍の機雷」を真顔で原因だと喧伝し、得意の「リメンバー」を発動、カリブ海に軍隊を出す。結果、南米大陸からスペインは敗走。キューバやプエルトリコがアメリカに支配された。アメリカは「だから知らないってば!」というスペインをフィリピンまで追いかけて、ついでにその地を支配した。そういえば、このときの派遣軍の司令官がアーサー・マッカーサーだ。まさか、その息子が40年ほど過ぎたフィリピンで日本軍の猛攻に逃げ惑い、ミンダナオ島のパイナップル畑からボーイングB-17に乗って、オーストラリアに敵前逃亡するなど夢にも思っていなかっただろう。悔し紛れの「I shall return」には笑う他ないが、当時のアメリカ人は彼を「日本軍と勇敢に戦う男」と尊敬し、息子が生まれたら「ダグラス」と名付けていたらしいが、勝った戦争の元帥の軍歴に付着した汚点もちゃんと忘れないようにしたい。超、カッコ悪い。
そして、もちろん、次の「リメンバー」は真珠湾となった。「リメンバーパールハーバー」はいま、ようやく「日本の騙し打ちだった」から「アメリカは知っていた」になり、ついには「アメリカが仕組んでいた」とバレはじめている。昭和16年12月8日の日本大使館では送別会をしていたかもしれないが、ホワイトハウスの地下でもルーズベルトはアメリカ財界のゲストを夫婦同伴で招待して「お茶会」を開いていた。この「お茶会」のBGMはオーケストラの演奏ではなく、南雲中将以下、日本の機動部隊の無線だった。
日本軍が、いわゆる「無線封止」をしていた――――も真っ赤なウソ。実際はオアフ島付近でも交信が繰り返されていたとわかってきた。アメリカはこのとき、真珠湾に老朽化した軍艦を並べて停泊させていたことも自明となった。アメリカはこうやって「戦争を作ってきた」わけだが、それは今でも基本的には変わらない。「正義」を名乗るなら「悪役」も必要だということで、現在は「テロとの戦い」がまだ続いているだけのことだ。
さて、アメリカの挙げる「テロとの戦い」であるが、これを信じているのはアメリカ人と日本人くらいだろうか。多くの餓死者も出るような貧しい国に、一発いくらするのかわからないミサイルを撃ち込むアメリカの「意図」とは、例えば、その当事者となるアフガニスタンやパキスタンの人々からすれば、アメリカの正義である「テロとの戦い」に対する理解度はどの程度なのだろうか。ブッシュやオバマが言う「テロは許さない」にどれほどの説得力があるのか、と思えば、今回の「ビンラディン殺害」による「日本へのテロ攻撃」も無いとは言い切れない。アメリカの次の「リメンバー」にされる懸念がぬぐい切れない。
ロシアから中央アジアにかけては膨大な天然ガスがあると言われている。事実、アメリカの石油最大手「ユノカル」や日本からも「伊藤忠」などの商社が乗り出してもいた。現地の人間からすれば、アメリカは「テロとの戦い」をしに来たのではなく、実は長大なパイプラインを引き、その利権を奪いに来たのだと自明でもあった。その資金援助をしていたのが当時、経済大国第二位を誇るアメリカの子分である。よくまあ、今までアルカイダも見逃してくれていたものだと思う。
日本がいくら戦争を放棄している、と言っても、世界の「普通の国」からすればそうは思えない。その理由はとりあえず2つあろう。ひとつは「国際常識で考えてそんな国は無い、存在し得ない」ということ、もうひとつは「日米同盟」という軍事同盟を結び、現実に米軍基地が国内にあり、そこに米軍が配備されているという事実だ。それに戦争を作って儲ける親分がいる限り、アメリカの支配が広がれば日本の国益になる、というのは自民党政権時代からの「日本政府の見解」であり、それは本音ではないか。
そんなアメリカ軍の空爆で「誤爆した」といわれ、親兄弟が殺された現地の人間からすれば、アメリカも日本も同罪であり、共に「テロの標的」にされることに問題はない。ただし、日本にはその備えも覚悟も用意できていない。何かあっても菅直人が出てきて「全力を尽くす、死力を振り絞る。歳費は返金する」と言ってお仕舞いである。つまり、具体策など期待できない。
また、あまりに普通になってしまい、なんでもないことだとされがちだが、日本は世界でも有数の原子力技術国であり、他国に原子炉を作ることが出来る国でもある。ある程度のパワーバランスが崩れたとはいえ、日本の三菱、東芝、日立といえば、原子力発電所工事を請け負う世界最大手5大企業の3つを占めることに違いはない。電力不足も計画停電もマスコミを賑わせているが、つまりは、これも日本が原発大国であるという証左なのであり、世界の国からすればそれは周知の事実でもある。すなわち、日本国内だけで通ずる「非核三原則」など冗談にもなっていない。原子力の技術大国が、且つ、世界最強の軍事力を誇る国家の同盟国が「戦争は放棄します。核兵器など議論すらしません」などと、大のオトナが真面目にやっているなど、どこの国の誰も信用しない。CNNニュースでは米軍と自衛隊の合同訓練も流している。キャスターはそこで「専守防衛」も「集団的自衛権」も言わないから、世界の国は「日本にも軍隊がある」と普通に考えている。当たり前なのだ。
菅直人が「浜岡原発の停止要請」を発表した日は普天間基地の「14年移設」を断念する、と政府が方針を決めた日でもあった。「2プラス2」で正式に決定する見込みだ。これは普天間基地の固定化に他ならない。マスコミは予定通り、原発停止ばかりを垂れ流すが、これは前総理の「方便」とやらが方便ではなかったということ、いや、その前に2009年の総選挙における民主党の政権公約が完全に瓦解したことを意味する。つまり、2006年度における日米協議にて決まっていた「普天間基地の移設」がなくなったわけだが、これは「最低でも県外」どころではなく、普天間の負担軽減という観点からは完全に悪化したわけだ。
それでもテレビマスコミは「自分らが作った民主党政権」であるから、かつての自民党のようには叩かない。もう一昨年前になるが、鳩山由紀夫が総理だったとき、本会議中に扇子にサインしていた、というニュースが報じられた。すると、吉永みち子なるコメンテーターが<一所懸命、我々も支持率を下げないで支えているのに>と思わず本音を漏らしたことがあったが、テレビメディアは自分らが(民主党政権の)面倒をみてやっている、というスタンスを忘れていない。
だからこの政権は政治的、経済的にはアメリカに付き従い、外交においては台湾だけに不義理をし、内政については支那朝鮮の意向を汲む。沖縄問題にしても反核運動にしても、極左暴力集団に牛耳られた傀儡政権だからこその「内ゲバ」なのであり、テレビメディアが忌み嫌う、古臭くて加齢臭のする保守派の人間からすれば、その全てが薄っぺらい。
もしかすると、だ。アルカイダが日本を標的にしなかったのは、日本という国を攻撃したところでアメリカにとってはノーダメージだからではないか、とさえ思えてきた。日本の国土でテロ攻撃を行い、それを「リメンバー」とするアメリカのやり口からすれば、その場所とは米軍基地で米兵が死ぬしかないわけで、いや、もっと最悪な考えを発展させれば、日本をテロ攻撃するということは、だ。「日本を喰いモノにする国」を敵に回してしまう可能性がある、もっといえば「止められている」のではないか。貴重な「戦士」を自爆テロさせてまで日本を攻撃しても仕方がない、とすれば、やはり、この国の「平和」とやらは、腹一杯の奴隷の平和あるから、その実、何ら「平和」などではないわけだ。
拉致被害者がそうだ。仮に「日本人拉致被害者の奪還がアメリカの国益になる」ならば、ブッシュはとっくに「SEALS」を平壌に派遣している。北方領土も竹島も、不法占拠している国は日本政府ではなく、ワシントンを相手になら交渉するだろう。尖閣の衝突事件もそうだ。日本の海上保安庁の巡視船だからぶつけてくる。あの巡視船に星条旗が掲げられていれば、支那人船長はピースサインも出せなかった可能性はないか。
2009年の悪夢の政権交代。実はコレ、よかったんじゃないか。中途半端に独立国、主権国家っぽいことを言う自民党政権では気付かなかったが、何をやらしても無能、無策、無謀の素人集団が政権を盗ったことにより、様々な問題が顕在化して国民の目に見えるようになったのは確かだ。今回、民主党は19年7月からほったらかしていた「憲法調査委員会」を再設置して、その会長を在日韓国人から献金を受けて外務大臣を辞任した人間にやらせるようだが、これも実にわかりやすくていい。相変わらず同じ顔でくるくると、国民はちゃんと呆れてくれるだろう。
菅直人は浜岡原発停止を「苦肉の策」と言った。この「苦肉」とは何の肉かと、生で食べても大丈夫なのかと調べてみたら、これは「自分の肉」のことだった。「苦肉計」ともいうが、まあ、わかりやすく解釈すると「肉を切らせて骨を断つ」みたいなものか、ちがうか。
日本国民は、2009年の悪夢の政権交代で思い知った。「肉を切らせた」―――いや、血肉を切られることになった。もちろん、膨大な国益が損なわれており、甚大な災害も情け容赦なく襲いかかった。否が応でも「現実」と向き合う必要にかられた。
テレビマスコミは民主党政権を誕生させて自殺した。肉を切られる激痛で覚醒した国民からすれば、なんとも滑稽な連中、くだらない連中であろうかとバレてしまった。その上にちょこんと乗った菅直人がどれほど無様なのかもわかった。最悪の前総理から最低の現総理のお陰で、なんとも、この国はこのままじゃダメだろう―――と危機意識が芽生えた。
保守系の論客はすべからく、今回の東北を襲った震災、津波により、日本は甦ると口を揃えている。単なる復興ではなく、この危機をして好機と捉え「日本国再生」を語っている。親米派が「ビンラディン殺害」を手放しで評価するようなサービストークでもなく、もちろん、筆が義捐しているわけでもない。これはあくまでも、保守派の「生業」でもある日本の伝統文化、歴史からみた客観的な見解である。間違っても米国産の使い古しの「リメンバー」ではない。
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