忘憂之物

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             渋沢栄一

消費増税、民自公が合意 実務者協議で(朝日新聞)>2012.6.15

2012年06月15日 | 過去記事

    




消費増税、民自公が合意 実務者協議で(朝日新聞) - goo ニュース

<消費増税関連法案をめぐる民主、自民、公明3党の実務者協議は15日、政府提出の消費増税法案と自民党の社会保障制度改革基本法案の修正で合意した。2014年4月に消費税率8%、15年10月に10%に引き上げる。3党合意で今国会成立の公算が大きくなるが、民主党の小沢一郎元代表のグループや中間派は反発。野田佳彦首相が21日の国会会期末までに衆院採決に踏み切れるかが焦点だ。

 民主党は18日に党内手続きを行う方針。首相は主要20カ国・地域(G20)首脳会議出席のため、17日からメキシコを訪問し、20日朝に帰国する。週明けに党内了承を取り付けたうえで、自民党の谷垣禎一総裁と会談し、法案を衆院通過させたい考えだ。参院での審議時間を確保するため、会期延長も検討している。

 自民党は15日、臨時総務会を開き、修正案を全会一致で了承。石原伸晃幹事長は同日の記者会見で「賛成させていただく」と明言。谷垣氏は同夜のNHK番組で党首会談に応じる姿勢を示したうえで「バラマキ政策に歯止めをかけることができた。消費税をやるなら首相は解散しなければならない」と語った>









国際遭難信号の「SOS」を最初に使ったのは(それ以前はCQD)アゾレス諸島沖で難破した「スラボニア号」、その次は「タイタニック号」になる。1912年4月、この豪華客船はイギリスのサザンプトンからニューヨークに向けて出発、その5日後に氷山にぶつかって沈没するのは映画の通りだが、遭難信号を発信する前に、見張りには双眼鏡くらい持たせておくべきだった。「不沈船」ということで救命ボートも足りなかったが、船長も大いに問題アリな人物だった。E・J・スミス船長だ。

彼は映画にも「実在した人物」として紹介されるが、氷山の情報を得ながら「回避可能」と判断して速度を落とさず、結局、氷山はタイタニック号の右舷を切り裂き、2時間半後に二つに折れて沈没するのは史実と同じ。ただ、彼がオリンピック号の船長時代、これまたイギリス海軍の巡洋艦と衝突事故を起こしている事は触れられていない。

可哀そうな人物もいた。一等航海士のウィリアム・マクマスター・マードック氏も「実在した人物」のひとりだが、映画では賄賂を受け取ってから金持ちを優先して救命ボートに乗せた。それでパニックになった乗客に威嚇射撃、最後はふたりの乗客を射殺して自殺する。これにマードック氏の遺族が怒った。「彼は最後まで職務を遂行した」と生還した乗客や航海士が証言すると20世紀フォックス社は謝罪した。

また、この映画には日本人は出て来ないが、実際はひとり乗船していた。鉄道員官吏の細野正文氏だ。同氏は救出されて一命を取り留めるが、その後、現実の話で甚だ迷惑を被ることになる。

タイタニック号にはイギリス人教師のローレンス・ビーズリーもいた。この教師も救命ボートで助かるのだが、助かったあと「救命ボートに無理やり乗ってきた嫌な日本人がいた」というエピソードを語る。タイタニック号にいた日本人は細野正文氏だけだ。当時の日本のメディアがそのまま報じると、同氏のところには「日本の恥」とか書かれた手紙が全国から届き、メディアも叩いた。彼は失職してしまうが、黙したまま1939年に他界する。

遺品から便箋が出てくる。タイタニックのレターヘッド付きだった。そこには「日本人の恥になるまじ」とか書いてある。パニックの様子を仔細にメモしたモノだった。氏は沈みゆく異国の豪華客船の中、ただひとりの日本人として「日本人の恥にならぬよう」心掛けて行動していたとわかる。氏は「もう二人乗れます」という航海士に案内されていた。

死んでも言い分けせず、ただ、ひたすらに行動で示した細野正文氏は日本人の鏡だが、この遺品にタイタニック研究チームが着目する。調べてみると、細野氏は左舷にあった「10番ボート」に乗っていたとわかる。ビーズリーが乗っていたのは「13番ボート」、なんのことはない、ビーズリーのボートに「無理やり」「強引に」「慌てふためいて」「女子供を押しのけて」乗ってきたのは出稼ぎ中の支那人だった。この話が1997年「TIME」紙に掲載されると世界は納得した。支那人なら仕方ない。細野正文氏の汚名は80年以上ぶりに雪がれるわけだが、ビーズリーが謝ったかどうかはしらない。

それからちょうど100年後の2012年1月13日、コスタ・クルーズ所有のクルーズ客船コスタ・コンコルディアが、イタリアのジリオ島付近にある浅瀬で座礁して浸水、沈没した。

この客船にはタイタニック号の被害者遺族も乗船し、船内のレストランではセリーヌ・ディオンの「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」が流れていた。映画タイタニックのあの歌だ。たぶん、船内では「沈没したらどうするw」的な冗談が飛び交っていたのではないかと察する。そして現地時間午前9時42分、その冗談は現実となった。ジリオ島出身の給仕長の手前、イイカッコウをした船長が進路を変更して島に急接近させたのが原因だった。給仕長の妹がフェイスブックで「コスタ・コンコルディアがとても近くを通過する」と喜んで書いていたこともわかる。お兄ちゃんがすぐ近くを通ると。

この事故も日本で報道された。テレビでは何度も船長とリボルノ港湾監督事務所の交信の様子が流された。事故発生のとき、船長は女性とワインを飲んでいた。つまり、甲板で酒を飲んでいた疑惑があるが、それよりも驚いたのは乗客よりも早くジリオ島に上陸していたことだった。沿岸警備隊がそれを咎めた、と地元メディアは報じたが、最初、船長はコレを否定した。「私たちは最後に船を離れた」と強弁したが、コレがウソだとバレると、今度は「座礁した船の上で転び、偶然、救命ボートの中に落ちた」と管直人顔負けの言い抜けをする。船長はその後、地元警察により過失致死や操船放棄などの容疑で身柄拘束されるが、事故後、いろいろと調べると乗組員の過半以上が船員の資格を持っていなかったとわかる。船長が目立ちたがりで馬鹿、その下部は素人の集まり、40カ国からなる寄せ集めで、緊急時には意思疎通もままならない。つまり、民主党政権のようなモノだった。

生還した乗客は「乗組員がいなかった」とか「客が自分で救命ボートを出していた」と証言する。「具体的な救助作業が行われていなかった」という状況だから、乗客の何人かは真冬の海に飛び込み、島まで泳いで逃げようとして溺死した。日本人の乗客もいた。「救命ボートには乗組員のほうがたくさん乗っていた」という仰天する証言もした。



鳩山由紀夫は2010年4月の国家公務員合同初任研修開講式の訓示で素晴らしいことを言った。<政治家がばか者の集団では(国は)もたない>と<トップの首相が大ばか者であれば、そんな国がもつわけがない>と言って新人公務員の度肝を抜いた。E・J・スミス船長が甦って「わたしは“安全な船長”と呼ばれていたが、流氷群の危険を知らせる緊急警告を6通も受け取りながら、よくあることだ、と楽観視した。もっと南に航路を取るべきだった。処女航海で最短記録、などと浮かれていないで速度を落とすべきだった。その所為で1517名も死んでしまった。今は反省している」と言ったようなもので、その説得力は凄まじいモノがある。この男がこの国の舵取りをしていた、という事実に背筋も凍る思いは伝わったと思われる。

また、鳩山由紀夫は14日、東京都内の憲政記念館で行われた集会で<国民に訴えて政権交代したことが棚上げにされ、増税だけが行われるのは主客転倒だ>と吠えた。民主、自民、公明3党の税と社会保障の一体改革関連法案の修正協議に対して「密室談合だ」と批判したわけだ。コレも「言っていること」は正しいから困る。アレは密室談合だ。

いずれにしても、だ。荒れる大海原にある「日本丸」は何度か沈没の危機に苛まされた。2009年からはとくに、船長も船員もアレでとても困っている。船底には穴があいて浸水が始まり、海賊も乗り込んでいる。船や海に詳しい人や、その近くにいる人間だけがその深刻さを垣間見る。レストランでは優雅に食事が続いているし、デッキではブラスバンドが演奏している。誰も気付いていない。誰も知らぬ顔をしている。危機を訴えれば「おまえは阿呆か」という目で見る。「消費税増税は避けて通れないだろが」と説教される。自民にお灸で民主に一度ヤラせてみた人は、いま、浪速の市長に期待する。3度目の生還は難しい。SOSは届かない。

その耳に届く名曲は「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」かもしれない。




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