東西冷戦期の1961年8月13日未明、当時の東ドイツ政府が国民の西側への脱出を防ぐため、西ドイツの飛び地だった西ベルリンの周囲に有刺鉄線を敷設。その後、全長約160キロにも及ぶコンクリート製の壁を設置した。「ベルリンの壁」だ。
この壁はいろいろと悲劇を生んだ。旧東ドイツ出身のメルケル首相も「壁」の所為で親類に会えなくなった。この人はすっかり共産主義に嫌気を差し<多文化主義は見事に失敗した>と言った。胡散臭い「地球市民」など、我がドイツはいらないのだと言った。支那に対しても<中国は我々のように知的財産権を尊重することを学ばねばならない>と公言した。それは普通、窃盗というのだと断じて批判した。訪米した際、ブッシュの息子の元大統領が肩に手を回すと、彼女は反射的に肩をいからせて拒絶した。アメリカ人の女みたいな扱いをするなというリアクションだ。どこかの国の民主党の総理には逆立ちしても真似できない。「ケツを出せ」と言われたらスラックスを下ろしそうな連中ばかりだ。
ま、ところで、だ。そんな東欧で民主化要求の流れが強まると、支那の天安門事件から5ヶ月ほど過ぎた1989年11月9日、東独市民が検問所に殺到した。警備兵は支那共産党のように戦車で轢き潰したり、重火器を水平射撃するでもなく、すぐに検問所を開放して市民を見逃した。おかげで壁は事実上崩壊した。ちなみに朝鮮半島には鉄条網しかないが、韓国人観光客が付近を散歩していただけで未だに銃殺される。
しかし、そんなドイツも周囲のヨーロッパ諸国がダメだから不景気になっている。構図は日本と似る。日本も他国に援助、という言い抜けで反日国に金を盗られながら増税して不景気が加速する。敗戦国で枢軸国、国連憲章に「敵国条項」と加えられ続ける悲しい運命、殺して奪うか、盗んで誤魔化すしか能がない戦勝国を背負って立つには骨が折れるが、いま、共産主義の怖さを知らぬドイツの若者は金融資本主義に嫌悪感を隠さない。政治が悪い、社会が悪い、企業が悪い、オレは悪くない、となる。コレも今の日本と似る。
ドイツの世論調査会社がアンケートすると3分の1が「東独からの難民流入を阻止し、緊張を安定化させるのに必要だった」と「ベルリンの壁」を肯定した。一読、溜息が出る。<難民流入を阻止>とは酷い認識だ。壁を建設したのは「西側に逃れようとする人々」を閉じ込めるため、東ドイツが建設した。<緊張を安定化>どころか、緊張そのものだった。
いま、同じく金のないイギリスでは、筋金入りのマルクス主義、テリー・イーグルトンが書いた「マルクスはなぜ正しかったのか」などのマルクス関連本が売れる。「資本論」も今更ながらベストセラーになる。喉元過ぎればなんとか、どこもかしこも共産主義の怖さが失念されている。しかし、まあ、コレも日本と似るわけだ。
人は贅沢を覚えてから困ると、あなたは悪くない、人類は平等なはずだから、悪いのは政府と資本家、あなたに問題はない・・・とか左の耳に優しい言葉が聞こえてきて熱が出る。朝日新聞を購読したりもする。それから急に左旋回する病気がある。左側が毛嫌いする金融資本主義とやらは、例えば支那人を何億人か餓死せずに生きていける状態を教えた。インド人の何億人かも極貧生活から抜け出した。当然、そこに「競争」は発生したが、その勝者が敗者を広く浅く助ける社会とは、多くの人を粛清したり、独裁者が無茶をしたりということも防ぐ。殺すか殺されるか、という乱暴な論理ではなく、そこにはとりあえずは「健全」な雰囲気の競い合いが生まれた。勝つか負けるか、勝ったり負けたり、という社会は「ベルリンの壁」とは一味違う緊張も生み出し、共産主義特有の「負けた者」に拡がる弛緩したムード、すなわち、為政者に逆らわねば殺されない、とか、何をやっても生活は良くならない、というあきらめムードは消え去る。
生きてゆかねばならない、と義務を知った人間は「愛のために」とか「平和のために」という不気味なことではなく、目的意識の明確な「社会のために」が具現化する可能性が高い。つまり、本当の意味での「国のために」に繋がることになる。神聖なる「勝負の場」を守ろうとする。力の限り戦った敗者にも称賛の声も出る社会、価値観を共有できる社会、国柄や国体を意識せざるを得ない社会、すなわち、公共心という概念が存在する社会だ。
普通に物事を考えれば、既に共産主義の結末はわかっている。わからないなら今の北朝鮮を見ればいい。毎年、他国にたからないと冬も越せない。愛する人民が飢えて死んでいるのにミサイルの発射実験をする。社会主義では御法度の一族世襲で独裁を止めない。その親分の支那もそう。弾道ミサイルを運搬・発射する大型特殊車両4両を北朝鮮に輸出していた、と最近バレた。国連安全保障理事会の決議への明白な違反であるが、支那は国連安保理の理事国。これほどの落語もあるまいが、日本でもコレの劣化コピーがあった。憲法75条を利用した「国務大臣はその在任中、内閣総理大臣の同意がなければ訴追されない」というアレだ。コレは日本で「鳩山システム」と呼ばれて困ったことになっている。
この件ではさすがの朝日新聞も怒っている。14日の社説<ミサイル車両―中国の輸出は許されぬ>がそれだ。朝日は唇を震わせて<輸出は、国連安全保障理事会の決議への明らかな違反だ。東アジアの安全を乱し、中国の国益も害するはずだ>と涙ながらに訴える。支那様の国益も失ってしまうではありませんか、と縋って泣く。
ところで、最近「週刊文春」で、あの若宮啓文主筆のスキャンダルがすっぱ抜かれた。記事は「朝日新聞社幹部の告白」ということで、若宮が自分の著作の出版記念パーティとして北京に行った際、女性秘書、つまりオンナを連れて行って、その費用を社に負担させた、という内部告発だった。ビジネスクラスに高級ホテルで50万ほど使ったと。朝日幹部は「社の内部監査室による調査で不正が発覚したのですが、彼はこれを認め、全額を会社に返済しました」ということだが、他の幹部社員も「独裁国家の政府機関に自らの言論活動をお祝いされるというのは本来ありえない」と批判しているとある。実にマトモな幹部もいる。
それより驚くのは、朝日新聞紙面で週刊文春の広告を掲載したことだ。いくら広告代が欲しいとはいえ、オノレのところの「主筆」をすっぱ抜いた週刊誌、見出しには「朝日新聞主筆 女・カネ・中国の醜聞」の文字が躍る週刊誌の広告、以前の朝日新聞なら断ったはずだが、今回はちゃんと掲載したのである。この新聞もようやく、共産主義の結末に気付き、心を入れ替え、日本国民に対し、いままですいませんでした、という謝罪広告を50年くらい掲載して、社の玄関前にサンゴでも飾るのかと見直したモノだ。
それでこの社説になる。理屈をこねて日本をくさし、無茶でも嘘でも支那を擁護するのが朝日新聞の仕事だったはずだが、本件では<弾道ミサイル関連の物資などの取引が禁じられ、運搬車両も対象になっている。中国は「木材運搬用」と説明しているが、北朝鮮はそんなに巨木に恵まれているのか>と痛烈な皮肉も書く。私はびっくりしてマッコリを噴き出したのだった。
しかし、よく読むと<中国が何より優先するのは、朝鮮半島の安定だ。北朝鮮が不安定になれば、国境を越えて大勢の人が逃げてくるだろう。金正恩(キム・ジョンウン)体制が崩壊すれば、中国より米国に親密な統一朝鮮が隣に出来るかもしれない>とある。
私は真の意味での「朝鮮半島の安定化」とは金一族の崩壊後、韓国が主導した民主国家が誕生し、拉致被害者を救出し、ミサイルや核を破棄し、哀れな北朝鮮人民が救われることだと思っていた。ここまであっさりと「支那共産党の本音」を書くまで朝日は焦っていたのだろうか。<中国より米国に親密な統一朝鮮が隣に出来るかもしれない>には腰を抜かす他ない。コレの何がどう悪いのか、朝日新聞は説明せねばなるまい。朝日新聞読者とは、そうか、なるほど、中国様よりアメリカ野郎に近い統一朝鮮などけしからんな、と思う人ばかりなのか。
それに<国境を越えて大勢の人が逃げてくるだろう>にも恐れ入った。朝日は赤くとも日本の新聞社だ。ならば普通、そこは「日本海を超えて武装難民が我が国に来るだろう」と憂慮することになる。それを一行も触れず、支那様、国境の警備も大変でございましょう、と具申する。これはもう気がふれているというか、支那共産党の内部争い、内輪揉めのレベルだ。つまり、朝日のスタンスが北京なのだ。さすがにヤバいんじゃないのか、ということだ。
この社説を書いた朝日新聞記者は気をつけたほうが良い。朝日新聞には若宮を売るマトモな幹部もいる。独裁国家にお祝いされるって・・・とマトモを言う幹部もいるらしい。原稿を書き上げてから、デスクに投げ放っていてはいけない。共産主義の結末を知らぬまま、こっそりと若宮が書き足している可能性がある。
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