忘憂之物

男はいかに丸くとも、角を持たねばならぬ
             渋沢栄一

ちなみに、私も高いところダメだね

2011年03月03日 | 過去記事
これまた、いつかは行ってみたいのだが、南ドイツ・バイエルン州の山岳地帯にある「ベツヒスガーデン」には「ヒトラーの山荘」がある。ナチス・ドイツの管理下により政党幹部らの別荘が建てられた町だ。名物は豚肉のローストだ。これでドイツワインを飲りたい。野口さん、よろしく(笑。

しかし、ヒトラーは高所恐怖症、山岳地帯が苦手だとのことで、あまり行かなかったらしい。もったいない話だが、そういえば金正日も飛行機が嫌いで、支那詣の際も専用列車で吉林省吉林市に行く。「テロが怖い」のではないか?と言われているが、それなら電車でも車でも同じようなもので、やはり、高いところがダメなのかもしれない。

いま、話題のカダフィも高所恐怖症だ。エジプトとの国境から300キロ、リビアのアルベイダ郊外にはカダフィの別荘があったが、これが反政府デモの民衆の襲撃に遭って、家具やら何やら盗まれたり燃やされたりした。騒ぎに乗じてテレビカメラも入ると、高所恐怖症の独裁者は高いところは苦手だが、往々にして地下に深く潜るのは得意らしく、ここにも地下10メートルに達する施設があった。「ガラス張りのバスルーム」などが完備された核シェルターだ。日本から「回転ベッド」を買っていた独裁者の趣味は「20年前の日本のラブホテル」なのかもしれないが、女性兵士を引き連れて「カダフィガールズ」とする趣味の悪さも他の独裁者に共通するものがある。国民には「前進前進!革命革命!」と言いながら、自分は核攻撃されたらガールズを連れて地下シェルターで生き延びよう、とする姑息も、独裁の先輩諸氏に負けず劣らぬの卑怯っぷりである。

追い込まれたカダフィは、日本の民主党の真似をしてカネをばらまき始めた。首都トリポリに集まる「政府支持派」の民衆に対して、一家族につき500リビアン・ディナール(日本円で3万2千円ほど)を支給するという太っ腹だ。比して、政府を批判する民衆には戦闘ヘリから機銃掃射、銃弾を「ばらまいた」わけだ。また、反政府側が占拠した武器庫も戦闘機で攻撃した。自分の権力維持のためなら自国民に対して空爆も辞さないほどのリーダーシップを発揮したカダフィだったが、さすがにアメリカ国防省は地中海にいた米海軍と空軍を配置することを検討する、とウソかホンマかはともかく、言い出した。

しかしながら、一言で「独裁」といってもいろいろあって、リビアや北朝鮮のような「個人や一族による独裁」もあれば、支那のようにイデオロギー的な「一党独裁」もあるし、アメリカのような「国家としての独裁」もある。要するに世界各国に覇権が及ぶように振舞うことだ。この真似をしようとしているのが支那とロシアだが、無論、これは順を追って悪くなる。

その最小形態は「酒飲みのダメ親父」だ。家の中限定で「独裁者」となれる。次は企業のワンマン経営者などだ。これも社内限定だが独裁できる。好き放題、勝手放題してから「経営者は孤独だ」などと悦に入ればよろしい。ンで、他の業種のトップから各自治体の首長あたりと続き、その次にようやく仙谷やら小沢一郎あたりが続く。その次はヤクザか経済界の大物がいて、マスコミを牛耳る老人などもいる。コレの規模が大きくなるとカダフィや金正日になる。これに人口が多く、イデオロギーと核兵器があれば支那になる。

そして、独裁者がいなくなり、一党独裁もなくなって、自由と民主主義を手に入れると、次は「国家が国家を独裁」しようとする。他国を「独断で裁くことができる」国、といえばアメリカだ。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110301-00000028-jij-int
<凍結資産、2兆4600億円=米のリビア制裁、史上最大規模>

<【ワシントン時事】米財務省は28日、オバマ政権が発動した対リビア制裁で、これまでに少なくとも300億ドル(2兆4600億円)相当の同国政府の資産が凍結されたことを明らかにした。米政府が一度に科した資産凍結措置としては史上最大規模という。
 
コーエン財務次官代行(テロ・金融犯罪担当)は電話記者会見で、「カダフィ大佐や政権がこれらの資産にアクセスすることを阻止し、リビア国民のために保護するのが目的だ」と述べた>

多くの国の独裁者がこれをやられるが、阿呆なタレントの顔で「どうしてアメリカは他国の資産を好きなように出来るんですか?」と池上彰にでも問うてみたい。また、凍らせることができるなら、それまで解かしていたのは誰なのか。何故に一国の財務次官代行が<カダフィ大佐や政権がこれらの資産にアクセスすることを阻止>することが出来るのか。

自由と民主主義を標榜しながら、アメリカに都合の良い独裁は見過ごしてきた、どころか裏では援助すらしてきた。アメリカは「中東社会の大団結」を恐れるあまり、そのパワーバランスを操ろうと、そこに戦争の種を「ばらまき」続けてきた。白人は「ずっと中東に和平が訪れませんように」と願いを込めてイスラエルを作った。怖いのは宗教的な結束だ。ここにはアメリカの自由もエロビデオも麻薬も入り込むには少々難い。だから適度に中東の人々は殺し合わねばならなかった。そのためには「独裁者」の登場が欠かせなかった。

CDや本にもなったオバマの就任演説では、イラクからの撤退とアフガニスタンへの移行が語られた。内容はそれだけだった。アメリカはイランが怖いから、イスラエルがイランの核施設を空爆するため「イラク上空を飛んでもいいか?」と許可を求めると、ブッシュ政権はダメだとやった。バンカーバスターも貸さなかった。このように自己都合を堂々と優先させるのがアメリカだ。こういう二重基準こそ国際的な独裁国家の証だ。

アメリカは良くも悪くも無邪気な国だ。「パンにハンバーグを挟んで喰えばウマいぜ」となれば、勝手に喰っていればいいのに、それを他国にもお勧めする。日本にも広く浅く伝わったが、100年経っても「たまに喰えばウマいね」と言われるポジションから脱せない。大切な客にフライドポテトを振舞う馬鹿はいないし、記念日にハンバーガーと炭酸飲料で済ませる阿呆もいない。だから、マクドナルドは小学生に「誕生日パーティ」を勧める。日本の大人は「なんで誕生日にハンバーガーだョw」と相手にしてくれなかったからだ。

それを中東に持っていくと、もっと露骨に馬鹿にされた。宗教上の理由から牛を喰わない、豚を喰わない、などアメリカ人が理解できるはずもなかった。彼らは掌を上に向けて首を傾げる他なかったが、しばらくすると、それを「未開」だと認識するようになる。毎度おなじみ、白人の驕りだ。

なぜだ?食器もいらないし、歩きながら喰えるし、高カロリーだし、なぜアメリカの文化を受け入れないんだ?こいつらは馬鹿なんじゃないか?劣った民族なんじゃないか?

他国の伝統文化や歴史など、彼らの「合理化」に比べれば1ドルの価値もないわけだ。人工国家アメリカに住む人々は、それらの価値を、あくまでも「知識」としてしか受け入れられない。だから、安易に「変えればいいじゃん」と手を突っ込む。

私も全部観て、最後にずっこけたが、アメリカドラマで「LOST」があった。その中でクレアという妊婦が、長い無人島生活から「ピーナッツバターが舐めたい」というシーンがある。同じく無人島に暮らすことになったチャーリーは、彼女を元気づけようと墜落した飛行機の残骸などを探すのだが見つからない。結局、チャーリーはピーナッツバターの空き瓶を探してきて、二人は空瓶に指を入れて舐める仕草をする。これをアメリカ人は「良いシーンだ」と泣くのかもしれないが、日本人的マインドでコレを見て泣くためには、一度、「これはアメリカドラマなのだ」というフィルターを通さねば泣けない。日本人は無人島で「味噌を舐めたい」とか言わない。すべからく「調理済み」の日本食を希求すると思われる。多くの人はおそらく「白米」を所望するはずだ。

この「お手軽さの奇妙さ」がアメリカ人はわからない。別にピーナッツバターが悪いわけでもない。つまり、それはそれで勝手にしてくれていればいいのだが、武力を持ってしてまで他国に強要するものでは決してない。他国に対して「それよりこれがいい」などと言えるはずもない、と知るのが文明人のマインドだ。むしろ、その短絡的な文化をして、他国の文化を重んじる精神が宿れば言うことはないのだが、原子爆弾を「落とした国」と「作った国」の違いもわからず、スミソニアン博物館には「人類の進歩と夢」として月の石とエノラゲイが並んでいても「変だ」と思わぬ連中には意味が通じない。アメリカ人からすれば、アポロ11号の月面着陸と、日本人の非戦闘員を含む14万人を焼き殺した広島型原子爆弾投下は同じ「人類の進歩と夢」だというわけだ。

エノラゲイの展示が決まった際、アメリカの「USA・TODAY」という新聞が「20世紀最大の出来事」というアンケートを取ったら、アメリカ人は抗生物質の発見やら月面着陸よりも「原子爆弾投下」を選んで、なんと、それが1位になったと高山正之氏も週刊新潮のコラムで驚いていた。50年や100年くらいでは、アメリカ人に「過ちは繰り返しませぬから」は期待できそうもない。原子爆弾は彼らの自慢であり、誇りである。

日本にはロシアが負け、ドイツもやられ、イギリスもフランスもオランダもやられて、植民地支配で得ていた膨大な利益は消え去り、いつのまにか東南アジア全域で独立国が出現すると、かつての宗主国らはド貧乏になった。彼らは「奪う」ことしか思いつかないから、これまた、50年や100年くらいでは経済的にもぱっとしない。しかし、アメリカはやってくれた。クソ生意気な有色人種である日本人に対し、白人の優秀さの証明である原子爆弾を投下して、女子供まで焼き殺してくれた。白人らはそれを思い出すことで溜飲を下げる。だからイランのアフマデネジャド大統領が国連の核不拡散条約会議で「人類の上に原爆を投下して10万人余りを焼き殺す、そういう卑劣で残忍な行為をしたのはアメリカ」だと発言してもアメリカのメディアは報じない。それは「卑劣で残忍な行為」ではなく、あくまでも「人類の進歩と夢」であるからだ。

今月、もうすぐ公開になる「ハート・ロッカー」という映画がある。最初に書いておくが観なくてよろしい。理由は後でわかる。これは2004年頃のイラク、バクダッドに駐留する米軍所属の爆発物処理班をドキュメンタリータッチで描いた映画だそうだ。試写会があったらしく、その感想はまあ、ある意味で素晴らしいものだ。「臨場感があった。戦場に自分がいるのかと思った」とか「爆発物処理という危険な任務に挑む姿に衝撃を受けました」なども、まあ、よろしかろう。気に入らないのは「ひとつの仕事にとりつかれた男の話」などという感想だ。

この映画の主人公「ウィリアム・ジェームズ二等軍曹」は、爆発物処理班の隊長に任命され、常に命知らずの振舞いを行い、周囲の部下をハラハラさせる。演じているのはジェレミー・レナーだ。ジェームズ二等軍曹は基本的な安全対策もせず、死を恐れない態度で爆発物を処理していく。もちろん、映画だからだ。さて、この主人公の行動は虚勢からなる無分別な行動なのか、それとも爆発物処理のプロの姿なのか・・・?というテーマをキャスリン・ビグロー監督は観客に問うているらしい。せっかく元旦那のジェームス・キャメロンが「アバター」で少数民族を近代兵器で虐殺する映画を面白く撮ったのだから、もう少し自虐的な内容にすれば、アメリカ人も少しは賢くなれたのに惜しい限りだ。

しかし、イラクには本物の英雄がいた。私も「さるさる日記」時代に書いているが、それはアリ・ハミードだ。彼は米軍の爆発物処理班「ブラボーチーム」ではなく、イラク内務省の爆発物処理班「バクダッド・ホークチーム」に所属していた訓練生18名のうちの一人だ。2007年2月の時点で生き残っていたのは5名、ハミードは10人目の殉職者だった。33歳だった。

2006年12月13日深夜、バクダッドにあるスラム街「サドルシティ」で自動車爆弾が見つかった。通報を受けたハミードが自宅から駆け付けると、そこにはTNT火薬と迫撃砲弾を満載している自動車があった。ハミードは早くて安全な「爆破処理」を拒んだ。理由は「イラクの子供達を起こしたくない」だった。時間は深夜だ。イラクの子供らは米軍による爆撃の音に怯えきっている。爆破処理とはいえ、この国の子供らをこれ以上、爆音で目覚めさせるのは忍びないとして、起爆装置の解除を専門とするハミードは停電の中、かじかむ手で自動車爆弾に挑んだ。

「ホークチーム」の隊長だったサブリは「アリはチーム一の実績を上げていた。殉職までに処理したのは、仕掛け爆弾385発、自動車爆弾152台。1日に8台の自動車爆弾を解除した記録は、誰にも破られていない」と言った。アリ・ハミードには女の子1人、男の子3人の4人の子供がいた。奥さんが言う。「あの人には、子供が人生のすべてだった。子供が病気になると、アリは情けないくらい慌てた。食欲を失い、時には自分が心労で体調を崩した」・・・・・・・・。

いちばん下の子供は5歳だった。アメリカが自由と民主主義をプレゼントしてくれたおかげで国は荒れに荒れた。アリ・ハミードは自分の子供だけではなく、他の子供らにもカンフーの真似をして喜ばせ、子供らからは「アリ・ブルース・リー」と呼ばれて親しまれた。

強い男は例外なく優しい。アリ・ハミードも同じく、弟のフセインが何度も「仕事を変えるか、せめて他部署へ異動すればどうか」と頼んだが、ハミードはいつもこう言って怒った。

「お前たちは、おれを、自分の生活だけ考えて、他人を顧みない臆病(おくびょう)者にするつもりか」

それでもアリ・ハミードは家族が心配してくれていることを知っていた。だから、彼は爆破処理に成功すれば必ず父親と妻、そして弟に電話してきたという。

「おれたちが、みんなの命を救ったぞ」


イラクの英雄は自分の命を賭けて他の命を救っていた。バクダッドで!爆発物処理で!殉職した英雄で!映画にするなら!アリ・ハミードだろうが!アメリカ人で白人が主人公、あまつさえ「ただの無謀か?爆発物のプロか?」などと矮小化してよいはずもない!

ったく、何にでもケチャップをかけて口に放り込むアメリカ人らしい馬鹿さ加減だが、この簡単便利、安上がりでお手軽に世界は席巻された。アングロサクソンはインディアンを奴隷にしようとしたが無理だった。彼らはプライドが高く、仲間を殺されたら報復に来た。その後は日本人にやられた。「日本人は白人よりも脳が2000年遅れている」というのもウソだった。だから、仕方なく黒人を奴隷にしてインディアンと日本人は殺すことにした。有色人種で喜んで奴隷になったのは支那人だけだった。朝鮮人は日本のお陰で助かった。

しかし、その後は石油燃料が登場したから奴隷の出番は少なくなった。それにもう、白人国家の脅威になりそうな有色人種はいないと安心していたら、石油が出るところの有色人種がチカラをつけてきた。なぜだか、同じ有色人種である支那も恐れをなしている。

中東の民主化のドミノ現象は、なぜだか民主主義を標榜する「自由の国」を脅かす。その偽善が打倒される日が来る。ついでに、なぜだか支那共産党もロシアも北朝鮮も困ることになる。あ、もっとついでに民主党も、だ。

2 コメント

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Unknown (鷹侍)
2011-03-03 15:21:53
いや~分かり易いw
中小企業のワンマンさんからアメリカまで独裁者は当然ながら酷く独善的だ。
独善的なものと云えばオナニーが外せない。だからそれらの行為を見ていると一人よがりで息を荒く高揚した面持で虚ろな目で星条旗を体に巻いた男がそれを興じるシーンが思い浮かんでしまうから、ほくそ笑んでしまってしょうがない。そんなにええかなぁ?おれはイマイチやわー。
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Unknown (久代千代太郎)
2011-03-04 18:37:05
>鷹っちゃん


基本的に独裁者ってバカだね。打算的な私なら独裁だけはしないね。損するからね。

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