少し距離を開けて、私の真後ろに立っている。白い帽子に白のランニングシャツ、そして白い半ズボン。小便器は2つあったが、空いていたのは障害者用だったから、子供はやりにくいのかな?と思った。でも、実はそのくらいから、私の中では「ある感覚」がむくむくと湧き上がっていた。それは否定できぬほど明確で、圧倒的な現実感だった。私は前を閉めて振り返る際、とある覚悟をした。やはり、だった。
―――――いない。
私はゆっくり目を閉じて深呼吸をした。そして手を洗いながらもう一度、大きく深く息を吸い込んだ。そのままゆっくりとドアを開けて、何事もなかったように妻のところに戻る。あそこまではっきりしたのは、ずいぶんと久しぶりだったから、妻に言うかどうか迷った。しかし、私の明らかに違和感のある態度に妻のほうが気付いた。
「どしたん?」
いや―――――
やはり止めた。「ちょっと頭が痛い」と嘘をついた。妻は心配して「くすりかう~~!」と慌てたが、家に帰って少し寝たら治ると言いながら買い物をした。
買い物袋をさげ、車に戻る。屋上の駐車場だ。先に妻と買い物袋を車に乗せて、私がカートを元に戻す。スーパーの入り口付近にカートと買い物かごが積んである。車をみると、妻がさっそくにもアイスクリームを開けて食べ始めている。ガリガリくんだ。
歩み寄る私の方を向いて笑っている。これも、いつものことだ。
私は運転席に座りエンジンをかける。ゆっくりとスロープを下りる途中、妻が言った。
「屋上の入口におった男の子、大丈夫かなぁ。おとしゃんの方みてたけど、迷子かなぁ」
白い帽子の?
「うん。白のシャツで、ズボンも白かった」
後ろにいた?
「うん。おとしゃんの後ろ。ガラスのドアの向こう。ずっと外みてたで」
―――――じゃあ、迷子なんだろう。
はやく、見つかるといいな。
「うん。おとしゃん、ガリガリくん食べる?」
うん、いらない。
(i|i-´д`-)y─┛~~~
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りんりん
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