忘憂之物

男はいかに丸くとも、角を持たねばならぬ
             渋沢栄一

ウクライナの人道回廊に地雷赤十字が指摘

2022年03月08日 | 忘憂之物






ウクライナのゼレンスキー大統領が人気だ。「祖国と国民のために命を賭して戦う元タレントの大統領」は戦後、ハリウッドが放っておかないと思うが、同じ「タレント出身」ながら、日本の無責任コメンテーターの不人気とは雲泥の差か。ま、当たり前ではある。

でも一応、念のために「コメンテーター」とかのタイトルでドラマ化してネットフィリックスでもすればいい。協賛は東京新聞と朝日新聞、テレビ朝日やNHKもいるから安心だ。東京新聞は本社も貸してくれるし、きっと維新も協力してくれるだろう。大人気の市長と知事で番宣もありだ。隠し子のいるMCの番組など、地上波でがんがん宣伝できる。アニキ儲かりまっせ、だ。

宣伝のナレーションでは「威勢のよい口だけの連中から批判されてもめげず、ウクライナ国民の命のため、祖国から逃げろ、ロシアに降伏しろ、中国に譲歩して制裁に協力してもらえ、と叫んだ慈愛と勇気、平和と正義のコメンテーターがいた」とか姜尚中に頼めばよろしい。イイ声じゃないか。私は見ない。

ところで、橋下徹氏は日本の国会議員にも「ウクライナと共にあるなら戦場へ行け」とやんちゃを言ったが、2月27日の朝日新聞記事に対しても「究極の圧力は戦闘、軍事力なんだから、朝日社員をごっそり外国人部隊としてウクライナに送ってな (原文ママ)」とリツイートしていた。己の意に添わぬ人間はみんな戦場に放り込む。まるで悪いプーチンだが、朝日新聞の社員で部隊を組む、ということは「味方」に限らないから注意したい。


3回目の停戦協議は「人道回廊」ということで、住民は避難しろとなったが、赤十字国際委員会のドミニク・シュティルハルト事務局長は、マリウポリで職員が調べたら道路に地雷が埋設されていた、と報告を受けたとBBCラジオで言った。記事は「ウクライナとロシアの双方が、相手側による停戦合意違反を非難している」とのことだ。「双方が非難している」は注意ポイントだ。

協議後、ウクライナのイリナ・ベレシュチュク副首相は「退避ルートがロシアやベラルーシになっている」として不快感を表明、拒否するとしていた。つまり、ロシアなどに行けば人質にされる。弾圧される。虐殺される。なにが悲しくてそんなことしなければならないのか、と突っぱねている。

そこに地雷が埋設されている、とのことだ。しかも、ロシアは停戦合意を守らず攻撃を続けている、とのことだから「避難行動は中止」になる。日本の保守論者も「ロシアはそういうことをやる」「シリアでも同じことをやった」と興奮している。退避する道すがら、秘密警察がいて取り調べがある、反ロシアなら捕まって拷問されて殺される、と怖いことを言う。そんなの逃げる気も失せる。まさにおそロシア、である。

こんなことを質問すると、また叱られるかもしれないのだが、わからないから「わからない」と言っているだけのおっさん、どうか、見逃してほしいと願いながら問いたいのだが、相も変わらず、疑問は単純だ。つまり、

「なんで?」に尽きる。

 「プーチンの目的はウクライナ人の皆殺しだ」と言っている人もいた。まるでショッカーだが、もちろん、あの暗黒皇帝のことだ、それが必要だと判断したなら、何ら躊躇いもなくやるのかもしれない。それよりむしろ、プーチンは69歳と高齢で病気、死期が近いという情報(不明)もある、それに「ロシアがない世界に意味はない」みたいなことも言っていたとか(不明)も聞こえてくる。それなら最後に自棄のやんパチ、世界中は核の炎に包まれて世紀末、一子相伝の暗殺拳でもなんでも好きにすればいい、と考えている、というのも不気味ではある。そのほうが怖い。嫌だ。やめてくれ。あと30年マテ。

まあ、そこまでプーチンが壊れているなら、動機の解明も情勢の分析もなにもかもが無意味化するので、自棄を起こしていない前提で考えると、だ。

人質かどうかはともかく、いや、仮に人質でもいいが、ロシアやベラルーシにウクライナの避難民を迎え入れようとする側が「停戦合意を守らず」攻撃を止めず、ましてや人道回廊に指定されている道路に地雷を埋めて、世界中から更に非難されて敵を増やす。ますます孤立化して人質も取れない。制圧する都市に非戦闘員がたくさん残る。どうにもすとんと落ちない。戦争だから複雑なのは仕方がないが、なんというか、意味が通らない。

プーチンはウクライナの非武装化と中立を求めている。だから停戦協議が進まない。攻撃対象の都市に非戦闘員がいる、という事実は「非武装化を求める」という目的において好ましい状況だろうか。戦意の高いウクライナ兵は祖国と自国民の生命と財産を護ろうとしているから降参しない、というなら尚更だが、もちろん、ロシアやベラルーシに逃げたら「殺される」となれば見過ごせないのも理解できるが、いったんそこで考える。

「ロシアが地雷埋設したなら、その理由は?」。

要するに「人質にしてやる」という犯行動機からは人道回廊に攻撃する、地雷を埋設する、という行動は矛盾する。来てくれないと人質にもできないし、拷問もできない。それに繰り返すが、そんなことをしてもプーチンは損はすれども得はしない。すると、やはり「閉じ込めて皆殺しにしてやる」くらいの犯行動機しかない。大阪北区の放火殺人犯と同じだ。これに「そうだ!同じだ!」という人には逆らわないが、私はそうは思わない、というだけのことだ。意見の相違だ。持続可能的にも「違い」を認め合おう。多様化多様化。

あと「シリアでもやった」についても、だ。シリア内戦の際、ロシアはアサド政権を通じて人道回廊を設置したが、前提条件は守られず攻撃は止まなかった。停戦期間が過ぎて「もう住民は退避していないはずだ」として総攻撃を開始した。要するに「一般市民を殺す口実」にした、というのが通説だ。今回もそれと同じだから「気をつけろ、騙されるな」と右のほうから聞こえてくる。

アサド政権はシリア内戦における人道回廊の設置の際「第三者機関による関与」を蹴っているが、今回、地雷をみつけた、と言ったのは赤十字国際連盟だ。それにシリアのときは過激派組織IS(イスラミックステート )の台頭もあった。三つ巴だった。状況と条件に差異がある。ごちゃ混ぜは乱暴だ。

いまのところ、というか、とくに最近は西側の情報ばかりが溢れて、どれも似たり寄ったりかと思うが、本当に不気味ではある。「Newsweek」の日本語版などでもカーネギー国際平和財団のポール・ストロンスキ上級研究員などが出てきて「人命に対する関心の欠如はこれまでと非常によく似ており、考えていたより速いペースで進んでいる」と案じている。「より慎重に目標を定める能力が足りないのか、その意思がないのかは分からない。おそらく両方だろう」と小馬鹿にする。

カーネギー国際平和財団の本部はワシントンにある。日本人ならどこの国が「人命に対する関心が欠如」していて「より慎重に目標を定める能力が足りないのか、その意思がないのか」だったのか知っているはずだ。

「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」の本部はニューヨークだ。そこのスティーブ・グース武器調査局長も「クラスター爆弾はその無差別性と、攻撃時だけでなく長年にわたり民間人を容認できない危険にさらすことから、国際的に禁止されている」として「誰も、どんなときも、使ってはならない。特に人口密集地では絶対に許されない」と人権派らしいことう言うが、誰も、どんなときも、使ってはならない。特に人口密集地では絶対に許されない大量破壊兵器を人口密集地で使った国を日本人は覚えている。忘れはしないだろう。



「戦争は悲惨」は小学生でも作文に書ける。「戦争反対」も辻元清美ですら言う。「民間人を攻撃してはならない」もハーグに行かなくてもわかる。ただ、それをやる国はごまんとある。だからロシアは悪い、に異論はない。しかし、重要なことは「怖い国」というのはロシアだけでもない、ということだ。

それらが見えてきたいま、日本も昼行燈みたいな総理大臣のままでは不安だし、公然と阿呆を晒す議員連中、無責任コメンテーターばかり出てくるメディアは危険だということだ。警戒して注視すべき、である。







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