人々の苦しみに対し如何に対処すれば良いか、
釈迦は道を求めて野に出て様々な修行をし、
最終的に悟りを開きます。
そこで導き出した一つの回答が
「四諦八正道」(したいはっしょうどう)です。
「四諦」については前回説明しました。
今回は「八正道」について説明します。
物事に対して正しい見解が持てなければ、正しい判断が出来ません。
正しい判断が出来なければ、正しい対処が出来る筈が無いので、
問題解決は出来ないという事になります。
そこで、正しい見解を持つ為の訓練を日頃から心がける必要があります。
その点検項目を八つに分類して、それぞれ正しさを求道する。
それが「八正道」です。
①正見(しょうけん)・・・
縁起の法(因果応報)に則り正しくモノを見ること。*1
まず此処が入り口として重要であり、
此処で間違うと全てが狂ってしまいます。
②正思(しょうし)・・・
正しく見た事に対し、悪しき思いが発したなら、
それが良い方向に繋がっていく事はないので、
どういう思いを持つかという事が、以後に影響を与えます。
悪しき思いを廃し、思いの方向性を正す必要があります。
③正語(しょうご)・・・
正しい言葉を発する。
言葉には言霊があり、形になって現実に物事を動かす力があります。
言葉の善悪、正邪を正す必要があります。
④正業(しょうごう)・・・
正しい行為を心がける。
見て、思って、言葉にしたら、次は行動になって顕れる。
行動の善悪、正邪を正す事が重要です。
⑤正命(しょうみょう)・・・
正しい生活態度を心がける。
正しい生活習慣を身につけると考えて良いです。
⑥正精進(しょうしょうじん)・・・
正しい修行態度、心がけ。
常に向上心を持って日々努力する事。
⑦正念(しょうねん)・・・
目標を掲げて、目標達成の信念を持ち続ける事。
⑧正定(しょうじょう)・・・
正しい禅定。
前の七つの項目を心を静めて点検し、
正しさの軌道修正をする事。
以上の項目を「四諦」に従って、
「苦諦」:心に引っかかっているモノをピックアップし、
「集諦」:その本当の原因を探り
「滅諦」:これを解決しようと決意し、
「道諦」:「八正道」に従って反省する。
これで解る様に、
「他人に原因があるだ!」と外部に原因を求めても、
正しい解決方法は出てきません。
他人の心は自由に出来ませんが、
自分自身の心の持ち方次第で物事を良くも悪くも出来ます。
「八正道」は”反省法”なのです。
反省というと悪いイメージがありますが、
ここでは、起こった事を振り返って今一度、
最善策を検討するという意味合いが強いので、
懺悔するのが反省だと考える必要はありません。
余り強く罪悪感を持つと反って正しくない見解になる恐れがあります。
苦しみを取り去る為に今までとは違う解決策を見つけて行動する。
その方法論を「四諦八正道」といいます。
なので、「四諦」が分析法で、「八正道」は方法論です。
この説明が抽象的でよく解らないと思った人、
それが正解です。
この説明で解った人は、既に固定観念を持ってしまっているので、
一旦リセットした方が良いでしょう。
普通に社会生活をしている人で、
この八正道がちゃんと出来るという人は殆ど居ないだろうと思います。
昔の素朴で単純な生活の中でなら八正道も出来たかもしれませんが、
これだけ清濁合わせて情報が氾濫している中で、
多くの人と接し、分刻みのスケジュールに翻弄されていては、
八正道をじっくり遣っている余裕も無いし、
何が正しいのか判断にも迷うでしょう。
正しさにも段階があると思うし、
正しさの基準が変わって来る事もあるでしょう。
実際には物凄く難しい事ですが、
人として生まれたなら、
一生求め続けなければならない永遠のテーマでしょう。
「八正道は誰もが遣らなければならない事を箇条書きしたものだ」
と考えて良いものです。
しかしながら、基本的な考え方というものはあります。*2
それを骨子にして正しさの基準を構築していく事が大事です。
*1 「縁起の法」
:言い換えれば宇宙の秩序を説明したものと考えて良いでしょう。
コレは別途説明する必要があります。
*2 「三学」
:「八正道」を通じて自己啓発していく際の指針となるものです。
コレは別途説明する必要があります。
*説明の順番がバラバラになってしまっているのはご了承ください。