おもい出し日記

UA値を疑え!

建築知識ビルダーズという住宅雑誌の広告に、このような題を見つけました。



ガラス繊維協会の広告で「GWS工法」と大きな文字がのっています。
弊社でもこの工法を利用していますが…。

今回は「UA値を疑え!」について取り上げ、考えたいと思います。

UA値とは外皮による平均熱貫流率のことで、住宅の床・壁・天井などのいわゆる外皮から外に逃げる熱量を外皮の面積で割った値ですが、気密性能や換気性能の考えは含まれていません。

Q値は外皮と換気から外に逃げる熱量を、延べ床面積で割った数値になり、24時間換気によって排出される熱、及び家中の隙間から抜ける熱を含むもので、住宅全体の熱損失を見る上ではUA値よりQ値のほうがより適切では!ということです。

快適でより省エネな家づくりを目指すのであれば、熱計算ソフトを用いて無暖房時の自然室温や年間連暖房費などを設定した上で最適なUA値、Q値を決め適切なプランニングを必要では!ということが記されています。

その通りだと思います。UA値が小さければいいというものではありませんし、そこで競っても意味がありません…。

それでは快適性をもっとよくするには、熱交換の換気設備を導入すればいいのでしょうか?


新建ハウジング20/12号に、もるくす建築社(秋田県大仙市)さんの「広面の家」が掲載されていました。

プランはH字をしており、右手が駐車スペース、キッチン、左手がリビング、中央にダイニングが配置されています。
くぼんでいるダイニングの南北には全面ガラスの大開口があるプランになっています。

UA値:0.24W/㎡K
C値:0.3㎠/㎡
設計一次エネルギー消費量:95.8GJ
エネルギー消費量:198.7GJ
冷暖房:温水パネルヒーター、壁かけエアコン
換気:第3種換気設備

複雑な形状は外皮面積が大きくなり、熱損失が増え数値的には悪くなりますが…。
それでUA値0.24は立派です。

中央のダイニングの空間はすばらしいです。くぼみ部の南北に植栽を配し、日射取得・遮蔽の「装置」として施しています。

夏季の日射遮蔽やさらに、陽の当らない北側の庭にも植栽をして「夏のクールスポット」をつくっています。

設計者は暑さや寒さの感覚を室内でも住まい手が感じられるよう考えているとのこと。

驚くのはUA値0.24と、かなりレベルが高い家ですが、換気設備は第3種を採用しているところです。

気密性が高ければ、第3種換気設備でも全く問題ないと言い切っています。

第1種の熱交換換気を導入すれば快適性と省エネ性は両立できるが機器の差額を光熱費の差で元を取るには長い時間がかかる。多少エネルギー消費が増えたとしても、より安いコストで快適に暮らせばよし、という考えです。

多少の温度差があっても、季節を感じられる「ゆらぎのある」空間のほうが人間らしい空間になるとのこと…。

室内空間、外部とのつながり、仕上げ材の選択、地域材の利用、断熱性能のレベルと考え方、すべてにおいて素晴らしい家です。

性能値だけを追うのはやめましょう。



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