手術当日は朝の５時半にナースコールで起こされました。なんでも浣腸をするのでナースステーションの脇の小部屋まで来てくださいという事でした。確かに寝る前に下剤を処方されはしましたが、便通で何も変化は来てません。
ただ浣腸の事は麻酔科医からも聞いていたので、眠い目を擦りながらナースステーションに行くと、そこにはナース姿をしたジャバ・ザ・ハットが浣腸の準備して待ち構えて居ました。確かこのジャバ・ザ・ハットは病棟の看護師長だったと思います。担当医はバカボンパパで、病棟の看護師長はジャバ・ザ・ハット。この病院のキャラは濃すぎだなあ、なんて診察台に横になって考えている間に、ジャバ・ザ・ハットから浣腸をされてしまいました。
冗談かと思うかもしれませんが、これが本当に似ていたんですよ。全身体系は正面からみるとひし形体系で、顔はジャバ・ザ・ハット、そこにほっそい両手両足が生えていて、ナースキャップを被っているのです。（ちょっと絵にしてみました）
この手術前の浣腸ですが、今は必須では無いそうです。先日の入院では、手術室移動前に出れば無理してやらないと聞きました。ただし下剤が全く効かない時にはやるそうです。時代と伴に医療行為も変わるんですね。
この浣腸するとひたすら病室とトイレの往復になります。いい加減に疲れた頃に、またナースコールで呼び出されました。今度はライン取り。つまり点滴の針を刺すのですが、私はどうも血管が細く、腕を見ても血管がわからないのです。この時はジャバ・ザ・ハットではなく、若い看護師でしたが、これが血管取りに苦心惨憺してました。初めは右腕の肘内側、次は左腕の肘内側、手の甲や足の甲など、アチラコチラに針を刺されましたが、一向に血管に入りません。看護師も若手からベテランまで入れ替わりましたが結局入らずに、最後には若手の外科医が呼び出されました。
「これは難しいですねぇ」
若手の外科医も腕周りを探りながらボヤいていましたが、右腕の手首より上辺りに血管を感じたらしく、そこに一発差し込むと、無事にライン取りが完了したのです。
「さすがは先生！」なんて看護師達に言われて、苦笑いながら満足そうな若手先生でしたが、私もこれで一息つけました。
手術時間は午後三時。昼過ぎにはプリメティという、麻酔をより効きやすくする為に、太い筋肉注射を右肩にブスッとされましたが、これが結構痛かった。そう言えばこの注射も先日の手術ではやりませんでした。
その後、手術着に着替えて褌のようなT字帯に履き替え待っていると、時間前に看護師がストレッチャー（寝台）を押して病室に入ってきました。どうやら手術室にはストレッチャーで移動するんだとか。個人的には歩けるんですが、既にプリメティを打っているので安全を考えてストレッチャーで移動するとの事でした。
病室は四階で中央手術室は二階なので、そのままエレベーターに載せられて、二階におりて手術室に入っていきます。ストレッチャーに寝かされて良く周りを見回せなかったのですが、幾つかの手術室があり、その中の一つに入っていきます。もうこの辺りで私の緊張感はマックスです。
手術室に入ると、先の若い医者が手術着で入ってきましたので「あれ？先生が手術するの？」と聞くと、苦笑いして「私はお手伝いの助手だよ」と話してました。無影灯の下には黒革張りの手術台があって、壁は薄緑色のタイル張り、下はリノリウムの黒っぽい床というのは記憶にあります。
ストレッチャーが手術台に横付けされて「ご自分で移動できますか？」と看護師から言われたので、横移動して手術台に、すると太ももと両腕をバンドで固定され、もう「まな板の上の鯉」状態です。手術室の中にはクラシック音楽が流れています
自分の周囲には器械出して恐らく様々な器具が出され始めているのでしょう。何やらガチャガチャと金属類のぶつかる音がします。そこで私の鼻と口を覆う様なマスクをされ、麻酔科医からは「これから麻酔します。眠くなりますからねー。深呼吸をしてください。」と声掛けが。そこで点滴から麻酔薬を入れられたと思いますが、急に目が回る感覚がきました。例えるならテキーラ二十杯程の酔が数秒で来る感じでしょうか。
そこで私は意識を失ったのです。
