私たちスタッフの主な仕事の一つは、入所者の皆さん方に体験活動の説明や直接指導をすることだと言えます。もう2学期になりました。これから次々と小学校団体が研修のためにやってきます。「見るもの」、「やること」全てがはじめての体験となる児童たちは、目を輝かせています。私たちは彼らの期待に応えるために真剣な姿勢で精一杯対応しなければなりません。
さて、ここで表題に掲げたジレンマが発生します。私たちには児童たちに「あれも伝えたいな」「これも話しておきたいな」という事柄が沢山あります。けれども、長時間の話は小学生には耐えられません。集中力ももちません。いかに短く的確に要領よく話をするかが問われるのです。15分以内に話は終えるというスタッフルールがあります。また、私たちは学校の先生方と違い、児童たちとはいわば一期一会の間柄です。話足りないことが山ほどあるのに、それができない・・・これこそがスタッフの大きなジレンマなのです。
では、今回は、「火おこし」体験で皆さんにはあまりお話できない小話をご紹介したいと思います。題して『「先人の知恵がつまった発火法」は今も生きている』です。
下の写真は、当所で使うマイギリ式の火おこし道具(ヒモのついた駒のような道具は「火切り杵、浅いくぼみが沢山つけられている板が乗っている道具は「火切りうす」)と材料などが入っている四角い箱です。この発火法はおよそ200年前に先人が発明したと言われています。浅いくぼみに火切り杵を垂直に立て、ヒモを巻き付け回転摩擦によってヒノキの板の繊維が削れてオガクズができます。熱で高温となり火種が起こるのです。今でも伊勢神宮などでは神事で使用されているそうです。火切り杵の芯は当所にも生えている空木(うつぎ)という木が使われます。ヒノキも当所の至る所にあります。そして、火種を受けるがまの穂綿や松の葉も自生しています。正に自然の草木を利用した先人の知恵による発火法です。極力当施設で活用できる草木で体験できるプログラムと言えます。
補足ですが、もっと古代の発火法で「きりもみ式」というのがあります。ヒノキの板に空木の火切り杵を当てて手で切りもみするものです。出雲大社の千家(せんげ)家の宮司(出雲国造)さんは毎朝、このやり方で火を起こして調理をされていると第82代宮司千家尊統(たかむね)さんが「出雲大社」(学生社)に書かれています。
先人の知恵が今も引き継がれている火おこしが少年自然の家で実体験できます。ぜひご入所の上、挑戦してください。お待ちしています。 by Mr. Young
【火おこし道具一式】
【池に自生するガマの穂】