公文で九年

公文式教室を9年間経営していた学習塾経営者です。
公文教室とはどういうものか私の視点で公開したくなりました。

公文との契約解除、知人の場合。

2006-08-29 | 契約解除・脱公文
Aさんは、体調を崩し、公文の組織の中でがんばっていく気力をなくしていました。
「いくら一生懸命生徒指導に努めても、結局評価されるのは新入会の数・現在の生徒数で、指導技術とか、これまでの功績なんて関係ないのよね、積み上げてきたものなんて事務局の局長が変わったり担当者が変わればまたゼロからなんだから・・・・今まで私のやってきたことって何だったんだろうって思うとむなしくなって・・・・」
開設以来二十数年、「公文教育研究会の一員」としての意識とヤル気でがんばってきた彼女は、
研究会が大きくなり組織が変わり、指導者の、研究会内部での位置づけが変わってきたこともあり、
公文の為=自分の為、という感覚が保てなくなってきたようなのです。
私の場合ははじめから、研究会という組織は自分とは別物で、取引相手という感覚でしたから、
「教材を購入している(ロイヤルティを支払っている)客へのサービスが足りない」「支払っているロイヤルティに見合うだけのサービスを提供されていない」という思いが募る一方でしたけれど、
公文への帰属意識が高かったAさんは、一味違った疎外感に悩んでいたようでした。
きっと、彼女が開設した当時は、「同じ釜の飯を食った仲間」意識で、事務局員も指導者も一体となって公文式の指導を世に広めていこうという使命感に燃えてもいたのでしょう。
でも、気がついてみれば各事務局はそれぞれのノルマの達成に汲々とし、前年対比の生徒数の増減が何よりも優先し・・・・・企業なのですから当たり前のことと私あたりは思うのですが・・・・

そういえば、以前、《来て見て遊ぼう》のイベントを、個人の指導者がやるのでなく、事務局主体でやるべきだという提案を当時の局長にした際に、私が
「サラリーマンである局長に、一教室経営者と同じ感覚で市場を見て欲しいというのはむずかしいことかもしれませんね・・・・」と皮肉を言ったら、どうとられたのか
「ボクは、サラリーマンではありません、教育者です・・・・」という返事が返ってきたのには
びっくりして二の句が継げませんでした。
いまどき、学校の先生だって、教育者としての立場と組織の中のサラリーマンとしての立場を
両立させて働いています。
私自身が、子どもたちを教育するという現場での顔と、そのために教室の経営をするという経営者としての立場とのバランスをとりながら、その二つは私にとって表裏一体のものであるからこそ
------教室経営が順調に行き、儲かっていなければ子どもたちを育て続けることができない------
------学習成果が上がり、子どもたちが伸びなければ入会者がなくなり教室の維持ができない-------
ので、自分自身について教育者であり教室経営者であるということに納得はしているのですが、
一介の教室経営者(指導者)の立場から見て、事務局長はサラリーマンとしか言いようが無いと
思っていましたから。

よく、Aさんは「研究会での評価」ということを言っていました。
それは私とは視点が異なり、私は「五十人の保護者がこの教室でわが子の教育を」と考えていていてくれることこそ、私への評価であり、またその方々が、知り合いに紹介してもいいと思ってくれることこそ何より大切、と思ってきました。そういう人たちがいる限り、研究会が、事務局長が、
局の担当者がどう思おうと関係ないね・・・・・第一、そっちの評価とやらは耳には快いかもしれないけれど一文にもならないので・・・・ま、教室の宣伝材料にはなるかもしれませんが。

ともあれ、Aさんは「この際、友達の誘いもあることだし、公文からは独立して自分なりの教室を展開していこう」と決意するに至ったのでした。
そこで、保護者会を開き、まず自分の教室にお子さんを通わせている方々へのご説明をしたのですけれども。その席上、途中から参加された保護者の一人が、翌日電話で事務局へ問い合わせをしたのです。
「うちの子が行ってる公文の先生が公文じゃなくなるという話らしいのですが、どういうことですか」と。
中途参加だったので、一通りの説明が終ってからその方へはご説明をしようとしていたところ、
混雑にまぎれて帰られてしまった、とはあとからの話。
とにかく、その一報があって、事務局ではAさんに尋ねる前に、他の生徒の家庭へ電話で
「どんな内容の保護者会だったのか」と問い合わせをし・・・・・
《契約義務違反である》ということで、Aさんからの契約解除の申し出が届く前に
《即刻、今月限りで教室を閉鎖していただく》という態度に出ました。
確か、保護者会から三日後にはその連絡があり、事務局では引継ぎ教室の準備も進められていたようです。で、実際の閉鎖までには一ヶ月以上の猶予があろうと思っていたのに、現実には一週間も無く、新教材の準備やらなにやら、私も駆り出されて徹夜で付き合う羽目になりました。
その頃には、まだ私は公文教室をやっていたのですけれど。
私自身も近いうちに、公文との解約を、と考えていましたので、この一件は
「公文の事務局って、聞きしに勝るあこぎなことをやるのね」と背中を押してくれることになりました。
Aさんが二言目には「公文のために・・・・公文がいいから・・・・公文だからこそ・・・・」というのを
長年見聞してきているだけに、
この時の指導者に流れたFAXの内容、親戚がAさんの教室に通っているといううちの保護者からの、事務局の対応の話には、本当に腹が立ちました。
特にその保護者から
「先生、公文教室でだいじょうぶなの?」とご心配をいただいたのにはガックリきました。
「あ~あ、何てことでしょ、事務局が率先して公文の評判を落としてくれちゃって・・・・」と。

で、自分が契約解除の時には、
「やめた指導者に対する誹謗中傷は、逆に公文教育研究会の品位を貶めることになります。
ご近所のお教室へ迷惑がかかりますし、私の教室でなく公文式教材で学習を続けたいという生徒の脚を引っ張ることにもなりかねませんから、ご注意ください。」としっかり念押ししておきました。
おかげかどうか、保護者にその後送付された文面でも
「○○先生は、今後独自の教室展開を決意され・・・・残念ではありますが・・・・」ということで
既設の、他の教室を紹介する程度のことで、前述の保護者からはAさんの時のとは大違いだったと
連絡があったほどです。
Aさんのときも、その前のBさんのときも、公文ではすぐ近くに新たな教室を同名で作り、
「こちらで公文の継続学習を」とご案内したりしたようですが、そういうことも無く。
ただ、他の教室へ移籍する場合には一ヶ月分の会費は無料・・・・ぐらいの勧誘はした様子です。


公文教育研究会との関係を
教材提供会社と自教室との対等な関係と捕らえるか
研究会へ就職したつもりで、組織のメンバーとして考えるか・・・・
発足当時はいざ知らず、現在、研究会と教室開設者の間には雇用関係はないということだけは
しっかりお腹にいれておくべきだとは思います。
Aさんが「研究会から裏切られた想い」を払拭するのに、半年以上もかかり、今はしっかり前向きになり元気になりましたけれど、やはり、その悔しさは後を引いているようなのを見るにつけ、
フランチャイズ契約の、契約書はよくよく、読んでおかなくちゃいけないんですよ、といいたくなります。
今の教材屋さんとは、教材提供してもらっているだけで、一切、フランチャイズ等の契約はしていません。お気楽お気楽。
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