発達に遅れのある子で目立つのは語彙が少ないということです。
小学校1年生ぐらいで身に付けるものの名称を知らない子はほぼいません。
靴、ズボン、手袋、マスク、とかはちゃんとわかります。しかし、
エスカレーターとエレベーターの区別とか、右左がわからない子や、一階二階がわからない子というのは
けっこういるものです。
本人の発達遅滞というのではなく、育成環境により語彙を増やす機会に恵まれなかったという子もいますが
その場合は幼稚園や学校に通いだすとどんどん語彙は増えていきます。
子どもの語彙を増やすのに有効なのは「読み聞かせ」ということはよく聞きます。
寝る前のひとときに添い寝をしながら本を読んであげる、なんてほのぼのする光景でしょう。
けれど、多くのお母さんが
「うちの子、本には興味がなくてちっとも聞いていないんです。」
オトナといえど人間ですから、相手の反応が鈍いとやる気がなくなってしまいます。
どの子もみんな「ご本読んで」とねだってくるようでしたら、親の方も「めんどうな、」と思っても
「一冊だけね」とか「お話一つだけ」などと、千一夜とはいかなくても読み聞かせができるでしょう。
ですが、なかなかそうはいかないものですから。
まず、定型発達の子でも、自分が他にやりたいことがある時に
「今、お母さんの手が空いたからご本読んであげるね。」と言われても困ります。
そもそも子どもというものは、じっとしていることが苦手なのですから
まだ「お話」というものに興味の湧かない年齢で「読むから聞いていなさい」と言われても無理。
それで、夜、布団に入れて「活動休止状態」にしてから読み聞かせをするのがベストなのですが
中には「布団に入れて、本を開くか開かないうちに、もう寝ちゃっているんです」というお話も。
まあねぇ、ご家庭の事情は様々ですから、「そこまで眠くならないうちに布団に入れましょう」と
言うだけならカンタンですが。
で、もう一つの方法として、要は「本」に興味を持ってもらえばいいわけです。
大抵の1~2歳児は、動かないものよりは動きのあるものに注意が向きます。
それに「いないないバア」などの遊びは1歳未満でも喜びます。
で、あてっこ遊びを絵本でする、ということができます。
赤ちゃん向けの、一ページに一つの絵が描いてあるものを用意して
絵をお母さんの手でかくして「これなあに?」と尋ねます。
一部分をかくして見せるなどの工夫で、興味を持ってくれることうけあいです。
お母さんの手の動きで静的な絵に注意が向いていきます。
そのようにして、「動かない絵」というものに目が行くようになったら
絵だけの絵本で「このうさぎさんは何しているところかな」などと一緒にお話を作っていきます。
次の段階では文字の書いてある絵本で
「子どもとお母さんが考えたことと、お話が合っているかどうか」を読み聞かせ、というわけです。
ついでに「書かれている文字、言葉」に興味を持ってくれれば一石二鳥。
昔、娘のダンナが胡坐を組んだ脚の間に子どもをすっぽり座らせて新聞広告の写真を指差して
「これなあに?」の遊びをしているのを見たことがあります。思わず拍手してしまいました。
こうして、描かれているもの、書かれている言葉に興味を持たせることに成功すれば
基本、子どもは「知りたがり屋」なものですから本への関心が高まり
細かい字、長い文のものは「読んで」ということになります。
それともう一つ、大抵の子は親に相手をしてもらうことが好きです。
「読み聞かせをがんばる」ということでなしに、子どもと遊ぶつもりで楽しんではいかがでしょうか。
で、発達に遅れのある子の場合、身の回りの事に関心が低いことが多いものです。
定型発達の子に比べて「知りたがり屋」でないのです。ですから語彙も増えにくい。
そういう子に本や読み聞かせに注意を向けさせるのは、なかなか大変なものです。
でも、上記のような方法でレベルアップしていけば、少しずつでも改善は可能です。
また、何でも知りたがりはしない子でも、自分の好きなものについては覚えやすいものです。
あるお母さんが「この子は発達に遅れがあるかも」と心配して来室したのですが、そのうちに
ポケモンが好きで、登場するポケモンの名前はすぐに覚えるということがわかりました。
「こういうのは脳に、記憶するということを学習させるのに役立っているので有効です。」
私もポケモンGOはやっているので当人と話も合いますし。
三歳での来室から1年半、一桁の足し算と、国語では小1前半相当の読み書きにすすんでいます。
一年後の入学時には少なくとも小1相当の算数国語は皆できるようになっているはずですから
学習面での「発達遅滞」などは現れようもなく、記憶面でも問題なし。