注意欠陥多動性というのは、2~3歳児でしたら皆そうなのです。当たり前の事です。
ところが、この状態が7歳過ぎても続くようですとADHD(注意欠陥多動性障害)ということになります。
そしてADHDと診断された子どものおおよそ3分の1は自然経過の中で症状を消失させていく、
と言われていますが、症状を変化させながらも成人期まで残存するという意見もあるそうです。
注意力が増し、突発的に関心のあるところへ動いてしまう衝動が抑えられるようになれば
もうADHDではない、自然経過の中で症状を消失したということです。
しかし、小学生の頃にADHD症状が顕著であった場合、学力のほうはどうでしょうか。
学習障害(LD)を伴う子どもも多いのです。
13~16歳頃に症状が改善されてきたとしても、その年頃になって小学生の頃に学んでおくべき事柄を
学びなおすのは非常に困難です。
けれども、小学生の頃に学校の授業についていける学力があれば、
本人が「何とかしたい」という年齢に達した時に足掛かりとなるベースがあるわけです。
更に、若干の問題行動があったとしても、学力的に中以上の成績をとれていれば
学校内ではさほどの問題にはなりません。
Nさんの場合は、幼稚園の年中児だった頃に
「この子は何をさせてもトロくて・・・・・・」と入学後を心配したお母さんが来室しました。
幼稚園での着替えや食事に他の子の倍以上の時間がかかるとのこと。
お母さんと私が話しているそばで、キョロキョロすることもなくおとなしく座っていました。
幼児連れの学習時間内の面談には慣れている私としては「あら?」
幼児向けの学習を開始し、進度はゆっくりだったものの
一年生入学前に一桁の足し算やカタカナの読み書きまでは何とかなりました。
学校での授業が始まると、できる事ばかりですから授業についていくのは楽々です。
「できる事はやりたがる」の言葉通り、学習面での不安は少なくなり
生活面でも着替えや給食時間に倍の時間がかかるなどということもなくなりました。
教室では常に先取り学習、一方で宿題では在学年の復習を繰り返しさせていました。
うちの教室に仲良しさんの同学年の女の子がいて、その子が、
アタマのキレる気の強い子だったものですから、学校では何かとカバーしてくれていたようです。
中学生になって部活動ではその仲良しさんと別行動になりました。
お母さんが同じ部活の保護者から聞いたと「部活内でいじめにあっているらしい」と話してくれました。
でも当人に聞いても、「そんなことないよ」とケロっとして部活に行っているというのです。
「トロくて気が付かないみたいで」とお母さんは苦笑い。
高校生の頃、ようやく人間関係のあれこれに悩むようになったとか。
この子は勿論、学校でADHDなどと言われたことはありません。
ちょっと鈍いところのある子とはいえ、一つの個性としてやり過ごせていたということです。
現在、看護士として働いています。やさしくおおような子ですから向いているのかも。
あと、男の子の例が2例あります。
こちらは学校内での問題行動が顕在化して、それぞれ親が大変な思いをしました。
その事例はこの次に。