【日野原重明さん死去】延命治療拒否…「望ましい人生の終え方を実践した」 聖路加・福井院長会見
「望ましい生き方と人生の終え方を提言した日野原先生が、それを実践した生を終えられた」。日野原重明さん(105)が名誉院長だった聖路加国際病院(東京都中央区)の福井次矢(つぐや)院長(66)は18日午後、記者会見で感慨深げにそう語った。
福井院長によると、日野原氏は3月下旬に消化機能の衰えにより食べることが難しくなったが、体に管を入れて栄養を取る経管栄養や胃ろうなどの延命治療を「やらない」と拒否。数日後に退院し、自宅で福井院長らの診察を受けながら療養していた。17日夜、福井院長が訪ねた際に「つらいところはありませんか」と聞くと、顔を左右に振って応えた。18日朝は次男夫婦ら家族が見守る中、徐々に呼吸機能が低下していったという。
平成24年に理事長を退くまでの71年間、同病院で現役の医師を続けたほか、昨年まで末期がんの患者が多くいる緩和ケア病棟を訪ね、患者を励まし続けた。日野原氏と話すことで生きがいを感じる患者も多かったといい、病院には患者らから「献花をしたい」などの問い合わせが多く寄せられている。
医学部を卒業した若い医師や看護学生の指導にも熱心で、福井院長も指導を受けた。「毎週火曜午前8時からの回診で、どれだけ勉強しても泣きたくなるほど質問攻めにあった。医師たるもの、毎日が勉強だと教えていただいた」と振り返り、「先生の指導を受け医療者としての人生を決定した人は、日本中に多くいると思う」とその影響力の大きさに触れた。
105歳での大往生について、福井院長は「日野原先生は『年を取ること自体が未知の世界に一歩ずつ足を踏み入れていくこと。こんな楽しい冒険はない』とおっしゃっていた。まさにそんな気持ちで、自分の命がなくなる過程を客観的に眺めていたのではないか」と推し量った。