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「文春オンライン」編集部
「ふざけんな!」からジャーナリズムが始まる! 実際にユニクロで1年働いて書き上げた潜入ルポ『ユニクロ潜入一年』を刊行した横田増生さんと、菅官房長官を「質問攻め」する東京新聞記者・望月衣塑子さんが初対談。全2回の後編は、嫌われても臆さず取材し続ける2人の信念を語っていただきました。(11月25日のイベントを収録。司会は大山くまおさん) 前編はこちらから。
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取材してユニクロ、官邸は変わったか?
望月 横田さんは『ユニクロ潜入一年』の前に『ユニクロ帝国の光と影』を書かれていますが、この本が出たことでユニクロ自体、変わってきた部分が絶対ありますよね。
横田 僕の本が出たからかどうかは、社長の柳井(正)さんが答えないからわかりませんが、ユニクロの労働環境は良くなっているし、賃金も上がっていると思います。時系列で言うと、『ユニクロ帝国の光と影』が出た後に「地域正社員」という形で1万人以上を正規社員として雇用するようになりました。これはユニクロの雇用戦略の大きな転換です。店長にも残業代が出るようになりました。さらに、店長などの正社員の月の労働時間の上限は、240時間未満から220時間未満に下がっています。閑散期には195時間未満にまで下がりました。
――望月さんは今年6月から官房長官会見に出席していますが、会見自体に何か変化はありますか?
望月 日に日に官邸側が強硬になっていると感じています。これまでは、官房長官会見は質問者の手が挙がらなくなるまで質問に答えるのがルールだったんです。たぶんアメリカの国務省やホワイトハウスの会見の真似ですね。だから納得がいかないときは何回でも聞くことができました。
久々に行った会見で6回質問させてもらったときは逆に感動
――6月8日午前の記者会見で望月さんは、37分間に25回近くの質問をぶつけていましたよね。そのあたりから、望月さんの存在について官邸もメディアもザワザワと……。
望月 ところが、8月の半ばぐらいに今井尚哉・首相秘書官が官邸番の記者たちにオフレコでこう言っていたと聞きました。「東京新聞の望月と朝日新聞の南(彰)という記者は、菅さんがやめるまで質問を続けるつもりだな。お前たちは10年目記者だろう、なんとかしろよ」という内容の。話を聞き、びっくりしました。
横田 えっ、官邸側から記者の側にそういうことを言ってきたんですか。
望月 はい。その後、関連があるのか、ないのかわかりませんが、会見を仕切る幹事社に対して官邸側が「番記者は好きなだけ質問をしてもいいが、部外記者に関しては質問数を制限してもいいか」という打診をしたらしいんですよ。番記者側は、「認めたわけではない」ということのようですが、とはいえ「承った」ということになっており、8月以降は実質的に質問が制限されるようになりました。今では手を挙げて指されても「いま挙げている方、お1人1問でお願いします」と言われますよ(苦笑)。ですので、先日、久々に行った会見で6回質問させてもらったときは逆に感動しました(笑)。
僕も今度、官房長官の記者会見に行ってみようかな
――質問回数が制限されて、質問の仕方を変えましたか?
望月 そうですね。質問を重ねられないので、聞きたいポイントを説明しきってから聞くようにしています。これだと、どうしても「質問が長い」と注意されちゃうんですけどね。
横田 官邸の記者会見って、フリーの記者も入れるんですよね。たしか、フリーの女性記者の方が望月さんがらみの妙なことを聞いてませんでしたか?
望月 私がテロ関連の質問をしたあと、「菅さんはいつもテロに遭っておりますが」という質問がありましたね。それ、私のこと言ってるな、って(笑)。
横田 僕も今度、官房長官の記者会見に行ってみようかな。ユニクロは自浄努力があったのか、経営は良い方向に変わっていきましたが、取材を受けないということでは一緒ですね。ただ、ユニクロは一私企業だけど、政府はそうじゃない。国民の税金で動いているのだから、記者からの質問にはちゃんと答えろってことですよね。
望月 いやもう、この勢いでぜひ潜入していただきたいですね(笑)。
官邸の意を汲んで、メディアに対するクローズが進んでいる
横田 でも、さっき伺ったように番記者以外への締め付けはきついんでしょう。
望月 民主党政権時代に、登録した記者はフリーでも官邸の会見に入れるようになったのですが、今は締め出すようになっています。新たに登録を申請しても、過去に記事を書いた実績のある方でも、なかなか通らないと聞きます。私たち新聞記者は会見に入れるパスが発行されていて、一時期は社会部の記者もみんな持っていましたが、全部官邸に回収されました。
横田 回収ですか。
望月 1年以上出入りしてない記者は、自然消滅です。新たなパスはもうほとんどクラブに所属しているメディアの記者にも出しません。だから、基本的に入れない方向なんですよ。しかもこれは官邸だけじゃなく、法務省や検察庁も同じなんです。検察庁は、久方ぶりに行ったら、昔は開けていた場所が閉められていました。会見も以前は毎日やっていたのが今は週1回とか、夕方の5時から30分だけとか。全般的に、メディアに対するクローズが官邸の意を汲んで全霞が関クラブの中で進んでいると感じます。
横田 そういう閉じられた場所にこそ行って質問してみたいものです。「ふざけんなよ、なんだよ、答えろよ」みたいな。急にガラが悪くなっちゃうかもしれないけど(笑)。
――とはいえ、横田さんとは今日初めてお会いしましたが、こんなに人当たりの良い方だとは思いませんでした(笑)。さすがユニクロでレジ打ちをされていた方だと。
横田 ユニクロでもAmazonでもヤマトでも現場に溶け込んでいましたからね(笑)。
キリング・ザ・メッセンジャーとは何か?
――横田さんは1年間ユニクロに潜入していたわけですが、望月さんが1年潜入取材できるとしたら、どこへ行ってみたいですか?
望月 そうですね……。私は武器輸出問題をやっているので、ロッキード マーティン社に入ってみたい。守秘義務を徹底されるでしょうけど。
横田 ユニクロも入ったとき、守秘義務を守るように一筆書かされました。僕が辞めてからはさらにCOC(企業行動規範)が厳しくなって、辞めるときにも守秘義務を守ると書かされるようになったらしいです。『ユニクロ潜入一年』にも出てくる、柳井さんの温かい言葉が詰まった「部長会議ニュース」も、僕が働いていた時は誰でも読めましたが、今は店長しか読めなくなったようです。僕が一番の愛読者だったのに!
望月 厳しくなったんですね。
横田 これって、組織の内部で不正が行われていても、伝えることができないようにする締め付けとも通じますよね。アメリカには“Killing the Messenger”(よくないことを知らせてくれた人に八つ当たりする)という表現があり、その言葉をそのままタイトルにしたジャーナリズムの学生が必読という書籍まであります。つまり、不正を伝えようとする人間を消す。僕たちジャーナリストや内部告発者が出ないように徹底するという考え方ですね。でも、そもそもこの考え方っておかしいんですよ。何か間違っていることがあるなら、その原因を正さなければいけない。
望月 取材者を排除するのではなく、問題の根幹に向き合って改善しようとするのが本来の姿ですよね。
横田 そうです。いかに取材されないようにするか、外に情報が出ないようにするかに力を入れるより、組織自身を変えんかい、って話なんですよ。ヤマト運輸だったら、もっと労働者の話を聞いたれよ、ドライバーの話を聞いたれよと。企業側が聞かないから、ドライバーが僕のところに内部の情報をくれるんですよ。ユニクロもそうです。
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