先日も読書紹介をしましたが、今日も彼の読書感想をブログで紹介いたします



政治の言葉は漢字が多くて、なおかつ分かりにくい。まぁお読みください
著者 柳澤協二:出版 青灯社

40年ものあいだ防衛官僚だった著者の問題提起ですから、いかにもずっしりと重たいものがあります。
安倍首相は、「同盟というのは、もともと血の同盟なのである。アメリカの青年が血を流すのなら、日本もアメリカのために血を流さなければいけない」と言う。
そして、若い人のなかには「自衛隊員は、そのために給料をもらっているのでしょう」と言う人がいる。
しかし、自らは血を流すつもりがないし、そのような立場にもいない人が、他人の流す血について軽々しくしゃべるのには同意できない。
それは、人として大切なことを見失った議論ではないだろうか。

自分の息子が自衛隊にいて、「尖閣を守れ」「上陸作戦に行け」と言われたとき、あなたは親として大喜びで万歳三唱で息子を戦地へ送れますか。
一人の人間としての当然の苦悩もなしに「血の同盟」などという言葉を軽々しく使うのは、本当に許せないことだと思う。
橋下徹・大阪市長は、従軍慰安婦の問題について、そのようなものはあって当然だと発言した。では、「橋下さんには6人も子どもがいるのですから、お嬢さんを出しますか?」と問いかけたい。
わたしにも娘が二人いますけれど絶対に嫌です。あんなひどいことを許すなんていう発想の人は、人間として、まともではないと私は思います。政治家として失格という前の問題です。
安倍首相も橋下市長も、著者の問いかけにまともに答えるべきだと私は考えます。
ポピュリズムの特徴は、理屈や論理ではなく、国民の耳に一番心地よいキーワードを語ること。
安倍首相も、小泉元首相と同じくワンフレーズに近い手法ですすめている。
今の集団的自衛権の議論について、外務官僚の多くは賛成しているが、防衛省のなかでは必ずしももろ手を挙げての賛成ではない。
かりに犠牲が出たら、責任を負うのは防衛省ということになるから・・・。
日本は「二流国」でいいのだ。人を殺さない、殺されない国でいい。強気一辺倒では、かえって相手を強硬にし、しなくてもよい戦争の危機を招くことになりかねない。
自分は一流でなくてもいいのだと考えれば、やたら尖らずに、妥協するところは妥協し、もっと自由に、自分らしい生き方を追求することもができる。
安倍首相は、集団的自衛権を容認しても「他国の戦争に巻き込まれるというのは誤解です」と言うけれど、巻き込まれるどころか、初めから意を決して日本がアメリカの戦争に参加することになる。

集団的自衛権というのは、日本を「自衛」するものではなく、アメリカと一緒になって海外へ戦争しに出かけていくこと。
日本だって、いつ戦場になるか分からないのです。実質的な憲法改正でもあります。
著者の体験に裏付けられた話は、何回聞いても、とても論理的で、かつ説得的です。
毎回、うんうんと深くうなずきながら聞いています。そんな話を聞いているように、すっと胸に落ちてくる本です。ぜひ、ご一読ください。
(2013年10月刊。1400円+税)
