
池井戸潤シリーズ三冊目は「銀行狐」(全320項)を選びました
「狐」というと「こずるい」イメージがあるんですが・・・見当違いもはなはだしいデシタ
この本には、これまで読んだ銀行員の仕事から派生する問題とは違い、「殺人事件」を解決する刑事ものになっています。もちろん舞台は銀行です
「金庫室の死体P9-82」「現金その場かぎりP85-118」「口座相違P121-170」
「銀行狐P173-254」「ローンカウンターP257-312」の5話
今回は花咲舞のようなスーパー・テリーは出てきません
「金庫室の死体」は閉鎖された支店の(廃墟)銀行の金庫室で、おばあさんが殺されていた所から、警察・刑事が謎解きをしていく話でしたので新鮮でした
さて、どうしておばあさんは殺されたか?理由は?
ヒントは、「おばあさんは利子率にとてもうるさい(細かい)人だった」
面白かったです
「口座相違」はコレまで読んだ短編にも類似のがあったので「似てるな~」と思いながら読みましたが、だいぶ違いました
話の中で著者が一番「いいたい気持ち」が表れているところを抜粋します
(話のつながりが分からないから???と思われるかもしれませんが・・・)
「横川社長は今まで散々東都銀行渋谷支店のために尽くしてくれたと君は言った。
その誠意に対して当行はどんなお返しをしただろうか
いいか、これは銀行員としてではなく、一個人の意見として横川社長の気持ちになって言わせてもらう
業務運動があれば真っ先に協力し、懇親会の幹事も務め、気を遣って差し入れまでする
そこまで尽くしてきたのは、いざというとき助けてもらえるという気持ちがあたからだろう
ところが、当行は横川プラスチックを管理先(格落ちの位置)に移し、新規融資を断った
貰うものだけ貰い、与えるものは何も与えない。
いろんなことに担ぎ出し、さんざん協力を頼んできたくせに、いざとなったら全て引揚げようとする これが裏切りじゃなくてなんだ (抜粋終 )
「銀行狐」では帝都銀行頭取へ脅迫状が送られてくる
銀行内でも特別に調査担当がつき、警察と共に事件を解決していく
脅迫状の差出人は「狐」
この1話は銀行が持っている利益最優先の経営に乗って、支店長が行員に目標以上の目標を上げさせ、頭取へスピード昇進していったエリートへの復讐でした
さて「狐」とはなんだったか?だれなのか?
「ローンカウンター」は美しい三人の女性が暴行され殺害される事件
三人は見も知らない者どうしだったし、謎を解く共通点は銀行だったが、互換性のない他銀行ゆえに捜査は思うように進まない
ところが、刑事の家庭の事情で借入をすることになり、銀行に赴き書類を整えていると、担当銀行員がなにかと丁寧に説明してくれる
業務に疎い刑事が行員に教えてもらったことでヒントとなり、解決の道筋がみえてくる
銀行に限らず舞台裏は興味がありますが「へ~・そうなんだ」と思いながら読み終えました