前回の続きです。会議のお飾りかと思っていた市民から「上西郷川に下水処理場の処理水が放出されている。(中略)子供たちが、安心して(上西郷川に)入れるよう、定期的に水質測定をし、数値などを公表して欲しい。新型コロナウイルスの測定もして、安心できることを市が示してほしい。」との住民目線で意見がでました。事務局(うみがめ課)は、「下水は塩素を基準内で維持している。ご意見として下水道課に伝える。」と木で鼻を括ったような回答でした。
後日調べてみると福津市役所が上西郷川の水質測定している場所は、下流の西郷川と合流するところ1箇所のみであり、子どもたちが自然観察で入る地域は完全にカバーされていませんでした。また下水処理場の放流水は塩素消毒で殺菌されていますが、残留塩素濃度は水質測定の項目に入っていませんから基準内の塩素濃度に維持されているのか不明です。なおウイルスは塩素消毒で死滅しませんので、そのまま放流されています。1個でもウイルスが子どもの口に入ると感染症を発症する可能性があります。何故下水処理場が郷川づくりをしている上西郷川の上流に建設されたのか、福津市役所のちぐはぐな都市計画があきらかになった事例と思いました。
下水処理場の下水のウイルス測定は国立感染症研究所で約20年前から研究されています。初期にはSRSV(代表的なものはノロウイルス)を測定し感染予測に利用されてきました。下水の新型コロナウイルス測定は無症状者の感染の予測などにも有効で、イタリアなどの海外でも実施されました。国内では東北大学が仙台市の下水処理場の下水の新型コロナウイルス量を測定して感染状況の把握に威力を発揮したことは、ニュースで報じられましたから、ご存知な方も多いと思います。
下水処理場の放流水の中にウイルスが混入していることは十分に考えられることで、市民が心配するのも、もっともなことです。うみがめ課は福津市の環境保全と市民の不安にもっと真摯に向き合うべきではないでしょうか。
参考資料:上西郷川に流入する高度処理水が水生昆虫に及ぼす影響 土木学会西部支部研究発表会(2015.3)九州大学工学部 インターネットで読むことができます。