小さい頃 裏戸をあけると
真っ白い さるすべりの花が アーチ状になって咲いていた
庭木が好きだった 亡き父親が たくましく古木になったさるすべりの木を
大きくアーチ状に仕立てていた
暑い暑い夏になると それはみごとに大きくたっぷりと咲かせていた
風にゆっくり揺れる
その 揺れは
「ほら! このアーチをくぐってごらん」 そう言っているようにみえる
アーチ状の木の下をいったりきたり
白いちょうちん袖ブラウスに ヒマワリの絵がいっぱいのゴムスカートの
おかっぱ頭の女の子は 真っ黒に日焼けし
元気 いっぱいのお転婆ッ子
お兄ちゃんが「おーい ひろちゃーん」と呼ぶ
行ってみると ちぎったばかりのきゅうりに塩をつけて
「はい オヤツ」
また ある日は 収穫したばかりのトマトにお醤油をかけて ←塩ではなかった
「ほれっ」
ノドが渇いていて 食べるもぎたての野菜は 栄養価とともに水分補給でした
6人のお兄ちゃんがいました
長兄は太平洋戦争 特攻隊でなくなり 次兄は東京の大学へ
残った4人の兄ちゃんに からかわれるというか 可愛がられるというか
大事にされたというか その当時つらいことはありませんでしたねぇ~
さるすべりの花の咲くころ
思い出す 故郷の光景
先日から故郷の果樹園の手伝いに行ってきた
今はもう そのさるすべりの大きくアーチ状になった古木はない
そう そのころは この木に猿が登ると
スッテンコロリと
滑って落ちるんだ~~~~そう思っていた
勝手に想像して 楽しんでいた
その父は 私の子に会えることなく
お空に 長期出張となった
さるすべり
ただそれだけのこと