Yassie Araiのメッセージ

ときどきの自分のエッセイを載せます

朝日記211206  随想~漱石の『こころ』と今日の絵(2022/1/16掲載)

2021-12-05 21:02:46 | 自分史

 

朝日記211206  随想~漱石の『こころ』と今日の絵

This is a short note on Natsume Sosekis novel "Kokoro", where 13s of painting by Yassie, are disposed along the discourse.
Sumika Tachiban and Kimiko Arai are thankfully selecting and compiling each of pieces from Yassies gallery.
Mrs. Beth Gordon selection of English verse are printed along with Japanese translation.

 この朝日記は[HEARTの会]会報への掲載予定原稿を想定している。絵画選定と構成は橘樹住香さんと荒井公子さんによるものです。原彩色絵画をここでおたのしみください。(会報No.108, 2022 新春号掲載隅(2022/1/16))

~~~~~~~

 

―随想―

漱石の『こころ』

こころ1  


                            会員 荒井康全

 

もう八十年近くも、まえのことである。この小説を手に取った。飽きないが、その語るなかの先が謎のままであった。中学生であった。そのころ、なにか高い知性をもったひとの世界を覗き見たおもいで読んだ記憶がよみがえってきました。

先生との出会い、鎌倉の夏、本郷界隈、そして自分の郷里での両親との会話、父の病、卒業のあと社会への急くことがないが展望の茫漠さ、先生からの手紙、先生のまた孤独な日々、その追憶である友人Kとの邂逅と恋にかかわる確執と裏切り、Kの死にかかわる精神の出口のないアポリア、美しい妻への真実をかたらぬ不実さ、それがさらなる深みにはまる孤独感、教養が自らの人格形成とならず、社会への職業的関与もない。

アポリアの意識がみえざる内的な声となり、「原罪」を彩った意識へと駆り立てる。

さらに駆り立てる、先生と私淑している「わたくし」への遺書として送られてくる。

はじめて語られる告白として、それが精神の解放とする自死つまり自殺というポリアつまり「可能となるかもしれない」出口を意味させようとした。

ふしぎなことに、それを日本近代の開明としての明治天皇の崩御へ、殉死としての乃木希典大将夫妻として締めくくる。

こころ2  


今見るとふしぎな小説である。ことの成り行きは、ほんのちょっとした

こころ3  


会話のやり取りで、言いそびれた自分の意思の言明が、不鮮明が、相手を裏切る必然性へとなる、自分の「こころ」のなかみをシェルで覆って固めてしまっている。

     
  こころ4    
 


これは本人も友人のKもまったく、自分の意を表明する言語的な技をもたない。能舞のような非言語所作の思いなしがまさり、ひどいほどの言語表現の幼稚さが、学問の徒であることからまわりが一定の敬意をはらう、真価を問われるべき彼らの学問の過程が内的つまり精神の高揚(つまり教養形成)さらに進歩を独占する見掛け倒しのエリートの意識をほしいままにしている。

教養がこの世にいきていくための力をなんら発揮する意志力もない、否見いだせない、そういう精神のすがたを作者漱石は描いた。

それがなぜ日本文学として一定の評価を勝ち得ているのか不可解である印象をいまにして拭いえないのである。彼自身の自分への告白かもしれない。

わが少年期に日本を代表する文学者であること、その背景の東京帝国大学にまなぶ知的人間像、世界に奇跡として躍進する近代日本の旗手たちのこころの様態が、そのひとつひとつがロマン性のある高貴なる描写映像を記憶にのこしたのが一方で不思議でもある。

こころ5  


これ自体、明治という時代の虚構を表現したということか。現実にそういうひとは事実でないにしても、そういうモデルを虚構、つまり小説の世界で存在せしめてみる。そういう世界に読者を共有させてみる。それが何の役にたつ、と切り込むひともあろうが、だから小説なのだ、ロマンなのだということになろうか。

非存在の対象と場を用意することで、読者のこころをさ迷わせ、喜怒哀楽の経験をいっとき享受するということになろうか。

この読後感でのこるキーワードは、精神的進歩とは、その努力が教養の形成になる、それが人格としての品性や道徳性、つまり社会生活へ関心、関与、できれば貢献へというそういう進化過程;そのようなごく近代的倫理観や価値観へとは何ら語られないが、これにあらためて思いをいたす。その西洋近代の価値観と日本の伝統的価値観との間のギャッ

こころ6  


プはあまりにも大きかったのかもしれない。漱石にして、彼がみたロンドン、大英帝国の概容のなかで、このギャップを消化しようとしたであろう。自己の価値を第一とする個人基盤という価値観と、日本の伝統的価値観との相克が始まったばかりであったと言っておくことにするが、それにしても読後印象に深く刻みこまれる不思議な作品と言っておきたい。老齢八十路にはいった昔の青年が、いまにして秋のおもいを深くすると感謝しておく。この私自分への告白かもしれない。

こころ7  

 

友人Mrs.Beth Gordon(Denver, Colorado)から送られてきたメッセージに邦訳をつけてみました。

 

Life is too short to wake up in the morning with regrets.

So,love the people who treat you right,

forgive the ones who don’t

and believe that everything happens for a reason.

If you get the chance,take it.

If it changes your life ,let it.

Nobody said it would be easy,

they just promised it would be worth it.  Dr.Seuss

 

朝の目覚めのさわやかなるをみるに

人生はあまりに短い。

そうだ、自分を理解してくれてるひとを愛そう。

赦しえないひとを赦そう。

すべてのことにはわけがあっておきることを信じよう。

チャンスがくればそれに乗ろう。

それが人生をかえるならそれもよかろう。

だれもそれは易しいとは言わないが、

彼らはそれが価値あるものだと約束している。

 

こころ8  

 

こころ9

 

こころ10

 

こころ11

 

こころ12

こころ13

おわり


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5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
 親愛なる旧友村山直廣から ( )
2022-01-20 21:47:52
荒井様 お元気で何よりです。素晴らしい活力です。
今年もよろしく。 村山直廣 1/20
返信する
明治学院の、そして商船大学の先輩との会話 (鎌田 豊さんから)
2022-01-20 21:55:41
鎌田;
汝らは世の光、。、は中学時代からの親友で誓い合った言葉で俺たちは光にはなれないけど、塩には努力すればなれると、思った。それぞれ異なる道を歩んできました。その内日向は東洋紡で不織布の父と言われ。島村ヨハネは岩波の世界の編集長になり、岩瀬は集英社の写真になり数々の作品を遺し、平見は木馬座、俳優養成所、野鳥会、ロタ島の観光開発に関わった、多彩な活動してる。私は石鹸や家庭マーガリン等コンシュマープロダクトに努力しました。いま生きているのは私だけです。もっと早くきみとしり合っていたら紹介できたのに残念です。
鎌田 豊
080-5176-8428
kmtjp1@docomo.ne.jp

荒井;
2022/01/20
鎌田さん
こんばんは。

聖書科での宿題ですね。
ただ 記憶をたどったまでです。
久しく新約聖書をひらきました。
 答案は以下です;
蛇のように賢く、鳩のように素直に
 マタイ10・16  マルコ13・9-13 ルカ 21・12-17

あなたがたは地の塩である
 マタイ 5・13  マルコ9・50 ルカ 14・34-35

何をこたえるべきかを為すことはせず、
とりあえず ご用件のみとしました。さて?

荒井2022/1/20



鎌田さん:

もう一つ、お願いがあります、聖句で 汝らは世の光、地の塩、が何章何節にあるか教えてください。
鎌田 豊

鎌田さん:
2022/01/19 17:33
メール有難う、漱石に関しては、私はあまり関心がなかった。こころも読んだけ、受験勉強の時だけです。知に働けば角が立つ情に竿さば、流される。との文書を見てから、あまり関心がなくなった。聖句の中に、蛇の様に、聡く、鳩の様に、優しく。と比べると範囲の深さ、広さ、普遍性から見てスケールの違いを感じたからだとの思います。何章何節か教えてください。
鎌田 豊

返信する
Unknown (from Leona Syke from Cape town)
2022-01-20 22:36:27
20:48 (火)
Leona
It is a long series with an interesting story. The beautiful artwork, the paper, and the sensitivity of the words and poems. And of course, it's a



Leona
Your art as always is beautiful. Nature is the best subject ❤️

Leona
Leona Sykes
Did you see the pictures on my facebook of the little dove my son and I rescued on Thursday.
返信する
Unknown (Tukatani,U3J)
2022-01-20 23:34:34
From Tsukatani san;
荒井康全さん、
あまりにも素晴らしい作品で、私にはうまく表現できません。荒井康全さんも、
橘さんの、作品も其々個性があり、その素晴らしさをどの様に伝えるか、私の能力の限界です。全世界に伝えたいです。
ACJは、今では、全世界と交流してますので、私たちのルートで、全世界に発信します。内閣府や、世界中の、NPOに、どの様に上手く発信するか、みんなと相談します。荒井康全さんもハートの会以外のルートがありましたら、教えて下さい。もう素晴らしさに、感動して、頭が一杯になります。全世界の、人達に、ACJのネットワークで、勿論内閣府にも、高齢者福祉団体、日本、英国、アメリカ、など、又私もお世話になっている、物忘れ、認知症の、精神科の組織にも、情報を流して、幅広く、内外に知らせます。本当に深く感動して、いかに上手く世界中にその素晴らしさを伝えるかで、頭が一杯です!!!
私の能力を超えてます。素晴らしいの一言です。出来るだけ、世界中の、高齢者福祉の人たちを中心に、楽しんでもらいたいです。もっと良い発信方法があれば、同時に私に伝えて下さい。頭が一杯です!!!ACJにも画廊を作りたいです!!!感動で一杯です!!全世界に、発信します!塚谷
iPhoneから送信


2021/12/15 10:18、
To Madame A. Tsukatani
Hello, Tsukatani san.
I send three of Tachibana’s articles of two and Yasumasa Arai article of one with this e mail attached,
which will be supposed to be uploaded on HEART NO KAI journal, at coming issue of January or of March .
So, yet be open to public field, please keep them held at your site.
However, I am convinced that you would be surely enjoying both of them.
And if you like them, please circulate them to Mr. Vellas site at any date you set up.
I am applauding of Tachibana as a generous, really.
Have keep well for your health and be having Merry Christmas.
Best regarding, Yasumasa Arai
December 15, 2021
Yasumasa Arai
返信する
橘樹住香へのmessage (あらいやすまさ、)
2022-01-31 22:26:36
2022/1/31
住夫さん 公子さん
cc. 塚谷さん
U3j塚谷理事長から以下の激励がきています。
項目1 AIUTA本部から塚谷理事長宛ての手紙 (英および仏文)
項目2 和訳項目1 (荒井康全)
項目3  日本組織Acj塚谷理事長から荒井宛の手紙
日本政府が2025に国際高齢者年企画を公表していること。
そのさきがけの材料として、今回のHEART 会の記事3点を賞揚し、全世界向け
紹介することをAIUTAが賛意し推進するとともに、日本政府にもなげかけるという
ものです。 
またアメリカのAIUTAとの組織パートナーはPass it on で、これで世界に対して
影響力を確保するものと持つものしています。
塚谷さんからはHEARTの会へに該記事使用の要請があります。また、氏自身が日本としての橘樹兄弟をサプライズ売りと
するお考えのようです。
新年、よろこばしい知らせとして 送ります。
康 2922/1/31


項目1 AIUTA本部からの手紙
差出人: Secretariat Aiuta <secretariat.aiuta@gmail.com>
日時: 2022年1月18日 17:33:16 JST
件名: JAPAN: Acj Japan to Elderly Society 2025 and Tachibana's articles
宛先: undisclosed-recipients:;
Akiko Tsukatani, Director Osaka U3A Acj, Japan AIUTA member sent three of Tachibana’s articles of two and Yasumasa Arai articles of one on HEART NO KAI journal. AIUTA and Acj congratulate Tachibana. Japan Government grants a Plan for the elderly society towards 2025. Akiko Tsukatani is one of the 8 members of the working committee organized by the Cabinet Office.
AIUTA will support this important initiative and will disseminate results to U3As all over the World.
Akiko Tsukatani, Directrice de l'Université du Troisième Age d'Osaka Acj et membre de l'AIUTA a adressé trois contributions de Tachibana et Yasumasa Arai de "HEART NO KAI journal". L'AIUTA avec Acj Japan félicite Tachibana pour cette contribution.
Le Gouvernement du Japon a mis en place un Plan 2025 pour une société du vieillissement et Akiko Tsukatani est l'une des 8 membres du comité de travail mis en place par le Conseil des Ministres. L'AIUTA apporte son soutien à cette importante initiative et participera à la diffusion des résultats auprès des universités du troisième âge dans le Monde.
Secrétariat de l'AIUTA

項目2 和訳 (荒井康全)
件名: 日本:AcjからElderly Society2025へのなげかけとTachibana記事
   Aiuta秘書室<secretariat.aiuta@gmail.com>  2022年1月18日:
塚谷あき子氏、U3J大阪の理事長であり、AIUTAの日本側会員はHEART NO KAI journalに掲載された橘樹住香の記事と荒井康全のそれ3点について、AIUTA本部ならびにその日本組織Acjが、橘樹への賞賛の手紙を送った。
日本政府は2025年に向け、高齢者社会のための企画を承認している、塚谷氏は政府組織である運営委員会の8人のメンバーの1人である。
AIUTAは今回の対象作品が、そのための重要なさきがとして、これらを全世界にむかって紹介していくことを支援するものである。
Aiuta秘書

項目3  日本組織Acj塚谷理事長からの手紙
日時:2022年1月18日2:13 PM
荒井さん、
その後コロナに迫られながらも、精力的に活動されていて、感心します。橘花さんの作品の素晴らしさに、感動してすぐAIUTAに知らせましたが、同じく大変感動されたとのことです。ACJの方でも、なんか作品をもっと沢山の方々に見て頂きたく、宣伝を考えております。何回見ても日本画の素晴らしさに、心を動かされています!!AIUTA以外にアメリカの、pass it onにも、紹介しようと思ってます。AIUTAと、Pass iT onのルートで、全世界に、紹介されるでしょう!
また、なんらかのえごきがあればおしらせいたします。
塚谷  iPhoneから送信


Yasumasa Arai
194 0002
4-11-22 Minami-Tsukushino, Machida City, Tokyo,Japan
Cellure phone; 080 8834 8411
E-mail; araraiypol1a@ozzio.jp
Blog keywords; (Yasumasa Arai, Asanikki, Ongaku kaiga)




From: Akiko Tsukatani <acj.tsuka@gmail.com>
Sent: Sunday, January 30, 2022 2:13 PM
To: Yasumasa Arai <araraiypol1a@ozzio.jp>
Subject: Fwd: JAPAN: Acj Japan to Elderly Society 2025 and Tachibana's articles

荒井さん、
その後コロナに迫られながらも、精力的に活動されていて、感心します。橘花さんの作品の素晴らしさに、感動してすぐAIUTAに知らせましたが、同じく大変感動されたとのことです。ACJの方でも、なんか作品をもっと沢山の方々に見て頂きたく、宣伝を考えております。何回見ても日本画の素晴らしさに、心を動かされています!!AIUTA以外にアメリカの、pass it onにも、紹介しようと思ってます。AIUTAと、Pass iT onのルートで、全世界に、紹介されるでしょう!
また、なんらかのえごきがあればおしらせいたします。
塚谷

iPhoneから送信

転送されたメッセージ:
差出人: Secretariat Aiuta <secretariat.aiuta@gmail.com>
日時: 2022年1月18日 17:33:16 JST
宛先: undisclosed-recipients:;
件名: JAPAN: Acj Japan to Elderly Society 2025 and Tachibana's articles

Akiko Tsukatani, Director Osaka U3A Acj, Japan AIUTA member sent three of Tachibana’s articles of two and Yasumasa Arai articles of one on HEART NO KAI journal. AIUTA and Acj congratulate Tachibana. Japan Government grants a Plan for the elderly society towards 2025. Akiko Tsukatani is one of the 8 members of the working committee organized by the Cabinet Office.
AIUTA will support this important initiative and will disseminate results to U3As all over the World.

Akiko Tsukatani, Directrice de l'Université du Troisième Age d'Osaka Acj et membre de l'AIUTA a adressé trois contributions de Tachibana et Yasumasa Arai de "HEART NO KAI journal". L'AIUTA avec Acj Japan félicite Tachibana pour cette contribution.
Le Gouvernement du Japon a mis en place un Plan 2025 pour une société du vieillissement et Akiko Tsukatani est l'une des 8 membres du comité de travail mis en place par le Conseil des Ministres. L'AIUTA apporte son soutien à cette importante initiative et participera à la diffusion des résultats auprès des universités du troisième âge dans le Monde.

Secrétariat de l'AIUTA
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