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まほろ駅前多田便利軒 / 三浦しをん

2024年11月07日 | 読んだ小説
                    

☆☆
東京の外れにあるまほろ市で便利屋を営む主人公の所に、高校時代の同級生の男が突然転がり込んで来て
共同生活する事になる。 しかし、その男とは友達でもないし、高校時代に1度も会話すらした事がな
かった。 ただ高校時代に主人公のちょっとした悪意で、その男は小指を切断する事故に合い、手術で
繋げた指はいまだに上手く動かせないようだった。 こんなチグハグな2人が、バディを組んで(とは
云っても仕事をしているのは大方主人公の方だが)便利屋に依頼が来る仕事を通していろいろ厄介事に
巻き込まれながら、ぎこちなくもふれあい次第にお互いを必要としていく。

登場人物の病院に入院しているばぁちゃんも、便利屋に犬を預けたまま逃げた家の小学生の女の子も、
まほろ駅裏で立ちんぼをしている娼婦の2人も、便利屋に塾の帰りに迎えに来てもらう少年も、親を
殺害した少女とその友達も、みんな心に悲しみを抱えながら必死に生きているが、主人公とバディの
2人も辛く重く悲しい過去によって心に深い傷を負っている。 

何かこの2人の投げやりで自堕落で適当だけど、どこかピュアで心に優しさを秘めた姿を読んでいると、
子供の頃に観ていたTVドラマの「傷だらけの天使」のショーケンと水谷豊を凄く思い出してしまった。
でも、当時は子供だったからハッキリと内容は憶えてない所もあるが、ショーケンと水谷豊が扮する2人
の自堕落で適当だけどピュアな優しさと生き方に憧れてカッコいいと思っていたけど、今この年齢になっ
た私が本作を読むと、だらしなくてカッコ悪くて嫌悪感を覚えてしまう所もある。

まともに働かないし厄介事を呼び込むようなバディの男が終始鬱陶しかったし、中盤以降に中だるみも
感じられ、最後に主人公が出て行ってくれないかと言ってバディの男は事務所兼住居の便利屋を出てい
くが、その事を主人公が後悔し、また一緒に共同生活がしたいと思っても、もう二度と再び会える事は
なかったという結末の方が、あれが今生の別れだったという寂しさと悲しみの余韻が残って良かった気
がするが、また主人公の前にバディが現れて元の鞘に収まるというは自分的にはどうもイマイチで残念
だった。 何でこの作品で直木賞が取れたんだろうか。