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当代一の剣客父子の運命、宿命を描いていく「密命」シリーズの第15作目。
直心影流の剣の達人の金杉父子と妹の結衣が、訳あって大和柳生の里に逗留していると、金杉父子に剣術
の指南を乞う近隣諸国の武士らが毎日集まって来ていたが、中には腕自慢の無頼者が道場破りのように
金杉父子に試合を挑んでくる者もいた。
その頃、金杉が留守をする江戸では、町火消しのめ組の次の纏持ちの件で、金杉の長女みわの想い人の
昇平が、多くの兄貴分を飛び越えて次の纏持ちに内定されて、め組内では第一候補のはずだった兄貴分の
ドス黒い嫉妬と陰謀が渦巻いていた。 そして、兄貴分一派や兄貴分が雇った刺客に狙われる昇平。
一方、柳生の里では、柳生藩の家老と金杉父子が催す近隣諸藩の武士を一堂に集めた大稽古大会が行われ
ようとしていたが、そこへ尾張柳生から大会の邪魔立てと金杉父子の暗殺を命ぜられた刺客一味が送り込
まれ大会に紛れ込んでいた。 金杉父子は一味を暴き出し、大会の最後に参加者一同の前で打ち倒す。
そんな全編通しての金杉父子の天下無双の強さが堪らない。
作者の佐伯泰英は、時代劇小説の第一人者らしく、私も何冊か読んだ事があったが、その時代に関する
作者の豊富な知識を作中でも披露し多くのページを割くので、もっと単純明快な痛快娯楽チャンバラ小説
が好きな私には、ちょっと小難しい感じがする作品が多くて苦手だったが、それが本作では少なめで読み
易くて良かった。