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これと言って何の取柄もない学校でも目立たない中三男子が、成り行きで西洋の古城を描いたスケッチ画
を手に入れたが、その絵にアバターを書き込むと絵の中に自分が入れる事に気が付く。 そして、隣の
クラスの絵が上手いハブられ中三女子に協力してもらい単身絵の中に入るのだが、ちょっと待ってくれ、
絵の中に入っても元の世界に戻れるのかどうかも分からないし、絵の世界にどんな恐ろしい敵がいるのか
も分からないのに、普通そんな所へ行こうなんて思うわけがない。
しかし、何故か平然と少年は絵の中に入って、城に囚われている(住んでいる?)少女を見つける。
そして、後日に今度はハブられ女子と2人で絵の中に入るが、そこで同じく絵の中に入って探検している
人の良さそうな小太りの中年男性に出会う。 更に絵の中に入ると非常に激しく体力を消耗し内臓にまで
ダメージを負う事が分かったのに、益々そんなの絶対行こうなんて思うはずがない。
この2人の危機意識の著しい欠如はいったい何なんだろう?
城に囚われているのかもしれない少女を救い出すとか、10年前の少女失踪事件とか、2人には関係のない
事で、絵の秘密や絵を描いた者の正体が明らかになり、少女を救い出せば、もしかしたら現実世界の自分
の状況が変わるかもしれないというあまりに不確定な予想だけで、いろいろ辛い境遇のハブられ女子の、
そこまでの動機には成り得ないと思うし、現在に不満のない少年にとっては別にどうでもいい事だろう。
まずは命を懸けてでも絵の中に入ろうとする2人を突き動かす動機を明確にしてもらわないと物語に感情
移入できない。 てゆーか、少女とハブられ女子の母親に元々何の接点もないのに、何で少女を助けたら
ハブられ女子の母親が交通事故で死なない世界が出現するかもしれないって思ったんだろう?
結局、ひとつの時間軸の10年前の少女は救う事ができたのかもしれないが、もうひとつの時間軸を生き
た、あれから10年が経って19歳になっていたあの時の少女は、まったく何も救われる事なく辛く悲しい
だけの人生を自ら終えたままで、本当は一番この女性こそ救われてほしかった。 そして、中年男性が
自身の母親に対する後悔を吹っ切れて前を向く事ができたのが良かっただけで、ハブられ女子の辛い境遇
も何も変わる事はなくハッピーエンドとは言い難いし、主人公の2人も特に何の魅力もないし、最初の少
年のキャラが途中でブレて別人になってしまっているのも何だこれって感じで、話に納得できる一貫した
スジが通ってなくてファンタジー擬きの荒唐無稽な作品と云えるかもしれない。