☆☆
9編からなる短編集だが、何でタイトルが「素敵な日本人」なのかはまったく意味不明。
「10年目のバレンタインデー」は、10年前に別れた女性からバレンタインデーに食事の誘いがあり、
いい雰囲気の中でチョコレートらしき物や手紙らしき物を渡されたら、男は誰だって女性が復縁を望んで
いるんだと思ってしまうだろう。 しかし、女性が個人的に男に激しい恨みと怒りを抱いていて、実は
チョコレートらしき物が手錠で、手紙らしき物が逮捕状って、いくら男が10年以上前の事件の真犯人で、
10年経って女性が刑事だとしても非常に悪趣味だと思う。 そんなの普通に逮捕すればいいだけだと思う
が、ベタなミステリーだけどなかなか面白かった。
「君の瞳に乾杯」は、主人公の男性(実は刑事)が、業務上横領で指名手配されていた犯人女性を偶然
発見して逮捕する所がクライマックスで、その後の説明は確かに必要なのだが必要以上にグダグダと長過
ぎる文章で、せっかくのクライマックスのインパクトが薄れてしまってるのが残念。
「レンタルベビー」は、主人公女性がレンタルしたベビーも、女性の恋人も作中ではロボットとなってい
るが、ロボットではなくアンドロイドが正解だと思う。 恋人男性アンドロイドほどの人間と寸分違わず
思考し動作するアンドロイドが制作され普通に市場に出回っているような技術が進歩している近未来のわ
りには、その他の日常生活等が、そこまで進歩、近未来化してるふうがなくて違和感を覚えた。
「壊れた時計」は、犯行現場では指紋を消す等の基本的な事以外の余計な偽装工作を行わないがセオリー
らしいが、部屋の住人を殺害してしまった主人公は、犯行時に被害者の腕時計が壊れた事が警察に作為的
に受け取られるような気がして、すぐに腕時計を時計屋で修理して犯行現場に戻り被害者の腕に付けた
が、実は被害者の腕時計は朝から壊れていて、その事を会社の同僚らも知っていた。 壊れていたはずの
腕時計が動いていた事から警察は時計屋を当たり逆に主人公の犯行がバレてしまう事になる。
「クリスマスミステリ」は、売れない男性役者が人気女性脚本家と男女の関係になって女性脚本家の口利
きで仕事も増え人気役者になれたが、次第に女性が邪魔になり毒殺を企てるが、逆に女性の罠に嵌って
しまう話。 毒殺したはずの女性が普通に生きていた時点で、男性は女性に騙されていた事を疑わないの
が不思議だった。
「水晶の数珠」は、家に代々伝わる秘術の品の水晶の数珠で1日だけ過去にタイムスリップできるという
チートアイテムを使って運命を変える話だが、その家に何でそんなものが代々伝わっているのか謎のまま
だし、世の中の人は、変えたくても変える事のできない昨日があっても、みんな運命を受け入れ必死に
生きているのに、代々の当主が、それぞれたった一度しか使えないとはいえ、その数珠を使って災難に遭
う事を回避したり、相場やギャンブルで財を成したりする事が容易に可能で、何かズル過ぎると云うか凄
くシラける話だった。