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他人の未来が見えるという大学院生の山葉圭史が、各話に重要なキーマンの脇役として登場し、女性の
運命を予言したり、催眠術で少女の1日の記憶を消したり、女性の恋を占ったりと主人公に関わってくる
非現実的な連作短編集。 各内容的には、ミステリー、ファンタジー、ホラー、サスペンスとバラエ
ティーに富んでいるが、なんかと云うか絶対的に山葉圭史の存在が釈然としない。
「6時間後に君は死ぬ」は、突然に知らない男から「6時間後に君は死ぬ」なんて言われたら、その男が
気味が悪くて、女性なら一刻も早く男から離れたいと思うのが普通じゃないのか。
「時の魔法使い」は、心温まる良質のファンタジーだが、珠玉のというほどではないまぁまぁの出来だ。
でも、いい作品には違いないので、もっともっと細部を練り直して長編で読んでみたい。
「恋をしてはいけない日」は、こんな服を着替えるようにしていとも簡単に何度も男を替える女が、
どのような恋をしてもまったく心に響くわけがないし興味もない。
「ド-ルハウスのダンサー」は、プロのダンサーを目指す女性の苦悩と葛藤を描いているが、その女性の
一時期の人生は、20年以上前に山葉圭史の祖母に予言されていてドールハウスの人形で現されていたとい
う話で、これもいい作品なので内容を膨らませて長編にしてもいいかもしれない。
「3時間後に僕は死ぬ」は、山葉圭史が自身の死を予言するが、予言に関係している者が、どう意図的に
行動を変えようが、何があっても山葉圭史の予言は絶対に外れないという事が大前提で成り立っている
はずなのに、最後に予言が関係者の行動によって外れる。 普通なら予言の大惨事がハッピーエンドに
なって良かったなだけど素直には喜べない。 この掟破りの展開で逆に評価が上がったという読者もいる
だろうと思うけど、私的には自分の作品を自分で破壊してどうすんだという思いだ。