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80年以上前に書かれた名作サスペンスの新訳版らしい。
主人公の男は、離婚で揉めている妻と喧嘩をした後、街で出会った風変わりな帽子を被った女と酒を
飲み、食事をし、演劇を観て6時間ほどいっしょに過ごした後、家に帰ったら妻が殺害されていた。
警察に妻の殺人容疑で逮捕された主人公は、女と一緒にいたとアリバイを訴えるが、バーやレストランの
従業員、タクシーの運転手の誰もが、主人公は1人だけで同伴の女などいなかったと証言される。
そして、主人公自身も、その幻の女の容姿を何故かまったく憶えていなかった。
本作は、主人公の死刑執行までの5か月間をカウントダウンしていく形で描かれ、その間に主人公の無実を
立証しようと刑事、親友、不倫相手の女性が幻の女を捜すために奮闘する。
主人公と一緒にいたという女は、普通に考えたら幽霊か主人公の幻覚とかでなければ、バーやレストラン
の従業員らの証言が嘘なのだと思うが、彼らを買収して嘘の証言をさせて、尚且つ主人公の妻を殺害した
真犯人は、ミステリーのセオリーで云えば親友の男なんだろうなと思って読んでいた。
しかし、それにしても主人公が、6時間も一緒にいた女の容姿を憶えていないなんてあり得ないだろう。
さすが名作と呼ばれているだけあって面白かったが、真相は大体私の想像した通りで捻りが足りないし、
中盤の中だるみも少しあったりはしたが、一番の致命的なツッコミ所は、犯人である親友が、主人公と
幻の女が一緒にいた所を目撃している人物らを買収するために、レストランも劇場も終わっていて誰にも
訊けない深夜2時から4時までのたった2時間で、名前も住所も分からない目撃者の従業員やタクシー
運転手を捜し出して買収を成功させるなんてどう考えてもできるわけがない。
そして、幻の女の正体もちょっとショボイものだったし、主人公が幻の女の容姿を、まったく憶えていな
かった事に対する理由の説明が何もなくて非常に不明瞭なままだ。