昨日(5月17日)の日曜日、いつものようにGOTO製8cmの対物レンズを覗いてみると細かなほこりが付着していることに気付いた。コロナのおかげでかつてないほど望遠鏡群のメンテが行き届くようになってきているので、一連の流れで直ぐに掃除をすることに。
鏡筒先端の露よけフードを外し、アルコールで丁寧に汚れを除去。。掃除を終え、きれいになった対物レンズを確認するために接眼レンズを外して対物レンズを覗いてみた。今までこれだけ長く触れてきていながら始めて気付いたのだが、鏡筒内の2か所が光っている。
ドローチューブ内を外して見てみると、しっかりとつや消し塗装が施されていて何も問題は無い。鏡筒側もしっかり塗装がされており、これも特に問題なし(写真)。 結局開口部全面にわたる明るい入射光が、細いドローチューブ先端部分を照らしているだけだった。 これで何か支障が有るだろうかと考えてみたが、恐らく低倍率で青空のなかで金星を探す際に非常にわずかながらコントラストが落ちる事くらいしか無いだろうと思う。 ただ光っているからには対策を取りたいと、折角なので家にある黒い部材を探し回り、布地、ゴムなど試した結果、たまたまあった黒い不織布を切って両面テープでそれぞれの部分に貼り付けて一件落着。
1箇所はごく手前側の31.7mm接眼鏡用に取りつけた他社製の接続リングの内側(①)だった。もう1箇所はドロチューブの奥の先端部(②)で、写真では内部を見え易くするために強調処理はしてあるものの、そこそこ光っている。 購入当時の24.5mm径アイピースの差し込み口から31.7mm径に変えたことでより角度をつけて覗きやすくなったこともある。
使用しているアイピースの中で、唯一大きな視野レンズを持つK40mmでもこの反射光を直接視野レンズで拾うことも無いし、この部分の二次反射光が迷光となることも考えづらい。
が、いずれにせよ光っているからにはコントラストを落とす要因には違いない、ということで接眼部を取り外してみてみることに(本ページTOPの写真)。
晴れていたので金星を早く覗いてみたくなった。
今回のこの作業で改めて感じたことが有る。
このブログを始めるにあたって何故この8cm屈折赤道儀が私の愛機なのかを述べたが、当時の五藤光学研究所の物づくりに関する真面目さがこの製品から大いに感じ取れるからだ。 今回も接眼部を外してみてじっくりと眺めてみて再度それを実感させられた。接眼部を支える肉厚の金属部分、ドローチューブの内側の小さな3枚の遮光絞り(8cmの鏡筒内に計6枚の絞りが取り付けられているのである)、それと丁寧なつや消し塗装。見えない部分に関しても決して手を抜いていない事が良く分かる。
更にラック部分をよく見てみると、ドローチューブとの間にわずかな隙間を敢えて作っている事が分かるだろうか。
ピニオンとのかみ合わせで、上からのピント固定ねじを強く締めても柔軟性を持たせ、刃こぼれ防止や、そのばね力で光軸補正の役割も果たしているのではないかと思われる。 このような細かな配慮をみていると涙が出そうなくらい嬉しくなってくるのである。
現在の8cm屈折望遠鏡といえば入門機に位置づけられ、いくら細部にわたり作りこんでそれぞれがわずかでも天体望遠鏡としてのパフォーマンスを向上させてもコストが上がってしまっては市場に受け入れてはもらえない。
当時まだ中口径としての位置付けで光学精密機器として製造された本製品は、メーカのプライドを持って世に出た製品だと言える。そういった意味で今後もこれほど作りこまれた8cm屈折赤道儀は出てこないだろうと思っている。
薄明から薄雲の中、金星を覗いてみた。心なしかコントラストが向上したような気がしている(!?)。 写真はD80mm、F12.5屈折にPL10mmを装着(×100):Nikon Coolpixで30秒コリメート動画撮影:その中から200枚ほどをスタック・画像処理したもの。