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FGO:ブルーブックと地球白紙化に関するわりと壮大な話(置換魔術4)
筆者-Townmemory 初稿-2025年2月1日
FGO(Fate/Grand Order)に関する記事です。
掲題について取り上げます。
ブルーブックとは何者なのか、ブルーブックはトラオムのマスターだったのか、白紙化地球と関係あるのか、それらはこの物語にどう関わっているのか。
そういうことについて、現状の情報から、何らかの有意なバックグラウンドストーリーを再構成してみようという試みです。
先回りしておきますが、本稿が奈須きのこさんの頭の中にあるアイデアと一致しているかどうかについては、原則、興味がないです。当ブログにおける筆者の興味は「自分の頭から何が出てくるのか」です。
本稿は原則的に私の想像です。なるべくドラマチックなものを出力しようと試みています。
本稿執筆時に筆者が持っているのは「奏章3アーキタイプ・インセプション」までの情報だと思って下さい。
なお本稿は一連の記事「置換魔術シリーズ」に連なります。直前の記事
「FGO:マリスビリーの目的と事象収納(置換魔術その3)」を読んでおいていただくと理解が容易になる可能性があります。
ちょっと長いので、休み休み、お読み下さい。
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■ブルーブックとは何か
FGO第二部には、
デイヴィッド・ブルーブックという謎の人物の旅行記が、ときおり挿入されます。
この人物は、おそらく白紙化を生き残った最後の人類です(カルデア勢は除外するとして)。
ブルーブック氏は人類が謎の樹木型宇宙人に絶滅させられるところを目撃し、世界が白紙になるところを目撃し、「なぜ、そうなったのか」という理由を求めて、オーストラリアからアメリカ合衆国ネバダ州のエリア51までオートバイで旅します。
(白紙化によって、海洋も平面になってるようですね)
どうやら人類が宇宙人を人体実験したので報復にあったんだ、ということがわかり、地下の手術室にたどり着いたところで、赤くてグロテスクな謎の怪人によって射殺されました(たぶん)。
その後トラオムでカルデア一行はこの手術室(らしき場所)にたどり着き、死体を発見し、この死体がトラオム特異点を作ったマスターらしいということを知ります。
ブルーブックは、白紙化地球や第二部の事件の重要イベントに遭遇した重要人物らしい、という雰囲気になっています。でも具体的に、上記のエピソードが第二部の物語のどういうところにどう接続しているのかははっきりしません。
■検体E
地球に落ちてきて、地球人に回収され、エリア51の手術室で
100年間人体実験を受けた宇宙人がいたとされます。
2016年にエリア51にいた研究員はこれを「検体:E」と呼び、
2117年ごろ(推定)エリア51にたどりつき、記録を読んだブルーブックは「E検体」と呼び、
トラオムで登場した若いモリアーティは「被検体:E」と呼びます。
この表記ゆれにもし意味があるとすればそれは何か、については多少考えがありますが、今は置いておきます。
本稿では「検体:E」と「E検体」と「被検体:E」は、同一のものとして扱い(今のところは)、暫定的に、どれでもない表記「検体E」を使います。
■検体Eとカルデアスの白紙化に関する情報まとめ
ブルーブックと検体Eまわりの情報を、作中に出てきた順にならべるとこうなります。忘れているのを思い出すのにご利用ください。
(冗長ですので、知ってる人は次項に飛んでください)
・宇宙人の襲撃により、人類は3か月でほぼ絶滅して地球は白紙化した(ブルーブック談)
・ブルーブック、オートバイでオーストラリアからエリア51へ向かう。
・2016年のエリア51研究員、樹の根状の宇宙人「検体:E」の救命活動に入る。
・ブルーブックが立ち寄った残留物エリア、建築が前衛的(だがブルーブックは疑問を持たない)。
・ブルーブックのセリフ表記、なぜか伏字的になっている。
・ブルーブックの回想。(1)まず「樹枝」のドームが地球を覆い、(2)ソラから伸びてきた「樹」が人間一人一人の心臓を刺突し、(3)世界が漂白された。
・ブルーブック、実は超記憶を持っていて、映像を忘れない。
・ロシア、北欧、中国、インドの方角の空に変化があった(ブルーブック談)。
・ブルーブックの見たエリア51、白紙化していない。軍事兵器は見当たらない。
・ブルーブックの見たエリア51、雨雲があり、雨が降る。
・ブルーブックの調査。2016年ニューメキシコ州に宇宙人が飛来。エリア51は宇宙人「E検体」を、当初救命しようとしたが、その後人体実験。拷問で新たな宇宙人を呼び寄せようと画策していた。
・ブルーブック、ゼリーのような通路の先にある手術室へ。ブルーブックから見て設備がレトロ。診察台の上に枯れ木のような物体。
・グロテスクな赤い人物(左手に銃)が「待っていたよ、ブルーブック」直後に銃声、倒れる音。
・トラオムのぐだ、ブルーブックの旅の記憶を夢に見る。
・トラオムのモリアーティ、カルデア一行をエリア51に案内。基地ではなく荒野に地下通路の入り口。
・トラオムのぐだたち、宇宙の廊下を進む。モリアーティ「この先に特異点のマスターがいる。目的は汎人類史への報復」。
・トラオムのぐだたち、手術室へ。モリアーティ曰く「装置は最新式」。
・モリアーティ「これがトラオム特異点すべての始まり、100年前に地球に落ちてきたとされる生命体、100年間この場所であらゆる実験に晒され、人類への憎しみを募らせたもの、被検体:Eだ」
・手術室の診察台に樹の枝、床に血管人間。
・ぐだ、手術室で異星の巫女を目撃。
■広く言われている説で賛同するもの
ブルーブックの視点では、
「地球人が宇宙人を人体実験した」→「宇宙人が地球に報復して地球白紙化した」
という感じになっています。これは現状それでいいと思います。
ブルーブックが到達した手術室は、我々の目からみるときわめて現代的ですが、なぜかブルーブックは「レトロだ」と評しています。
モリアーティは検体Eを「100年間実験にさらされた」といっています。検体Eは100年間手術室にいたのです。
100年、といえば、カルデアス。
カルデアスは100年後の地球をシミュレートしたシムアースみたいなもので、地球時間が2017年(ぐだが白紙化を目撃した年)のとき、カルデアスは2117年です。
エリア51の研究員は、2016年に検体Eが飛来した、といってます。2016年から人体実験が始まり、2117年まで続いたのなら100年くらいになります。
こうした情報から、
「ブルーブックは2117年のカルデアスにいたカルデアス人類である」
「ブルーブックの体験は、原則、2117年のカルデアスにおけるものである」
という説が広く通用しています。これもその通りだと思います。
■問題の分解
さてここから先ですが。
ブルーブック、検体E、トラオム、白紙化、カルデアス、U-オルガマリー、マリスビリーの思惑、といったことは、すべてが複雑にからみあっていて、めちゃくちゃややこしいので歯が立ちません。変数が多すぎます。
なので、私の頭で取り扱い可能なサイズまで問題を
サイズダウンします。
まず、「カルデアスにオルガマリーが落ちた」という情報を頭から取り除きます。マリスビリーが何を考えていたのかというのも横に置いておきます。「異星とはカルデアスのことである」というのもややこしそうなので外します。
「ブルーブック、宇宙人(検体E)、白紙化」
取り扱う情報がこの3つしかなかったらどういう話になる? というところから始めます。
■ブルーブック、宇宙人(検体E)、白紙化
ブルーブックがエリア51の調査で知ったところによると、検体Eは謎の電磁波を発しており、おそらく同胞にSOSを発しているとのことでした。
なのでブルーブックが生前に入手した物語はこうです。
・人類、宇宙人(検体E)を拷問
・検体E、本星にSOS
・宇宙人、人類に報復。人類絶滅および白紙化
FGOの物語上では、現在、「地球の表面とカルデアスの表面が魔術で入れ替えられた」ということになっています。
地球の白紙化はなぜ起こったのか。まずカルデアスを白紙化する。次にカルデアスと地球の表面を入れ替える。すると地球の表面は一瞬にして白紙になる。そして本来の地球の表面はカルデアスに保存される。
たぶんその通りなのでしょうけど、疑問に思うのは
「どうやってカルデアスを白紙化したの?」
カルデアスはほとんど地球同然のものであり、カルデアスを破壊するには地球を破壊するのと同じエネルギーがいるそうです。だからこそデイビット・ゼム・ヴォイドは、カルデアスと地球を破壊するために、フルスペックのORTを必要としたのでした。
ならば、カルデアスを白紙化するためには、マリスビリー氏が端末でプログラムをちょいちょいっとして、ハイできましたという感じにはいかないでしょう、きっと。
地球そのものを白紙化するのと同じ労力が必要そうです。
でもその労力をだれがどうやってつぎこむ?
その答えがここにありました。
「そういう能力を持った宇宙の勢力(宇宙人)がいる」
そいつが地球に(カルデアスに)やってくる。
マリスビリーは、そういう存在がやってくることを知っていた。それを利用した。
なので、地球白紙化の実行犯ならびに犯行方法は、こんな感じになりましょうか。
・ブルーブックの世界を襲った「宇宙から来た樹枝」は、検体EからのSOSをうけて報復にやってきた宇宙文明の粛清兵器である。
・人類の絶滅と地表の白紙化は、粛清兵器に備わった機能である。
ただ、「宇宙文明」の「粛清兵器」と言い切ってしまうのは、ちょっと違和感があります。というのも。
■ヤバイ星、修正してやる
これはフィーリングで言いますが、遠い星になんかこう銀河帝国みたいな文明があって、宇宙人たちが「チキュウジン、ホロボス…」みたいなことを言いだしたというよりは、
「宇宙そのものに備わった、秩序維持システム」
みたいなものを想定するほうが、TYPE-MOONっぽい気がします。
宇宙にはあまたの星にあまたの文明があるけれど、そのうちのどれかが大変
ヤバイ方向に進歩してしまうことがある。
そういうのが見つかると、ヤバさがこれ以上悪化する前に、宇宙に備わったシステムが強制的に
修正をかける。
たとえば宇宙のすべてを侵略する意思を持った文明があったらやばいから修正をかけましょうとか。
異星人のサンプルを100年間拷問することをなんとも思わない文明があったら危険だから修正しましょうとか、そういう感じ。
なぜ修正をかけるのかといえば、例えば、
「そういうヤバい文明から宇宙に射出されたアーキタイプはヤバさを煮詰めた蟲毒かもしれない」
『奏章3 新霊長後継戦アーキタイプ・インセプション』というストーリーが2024年に公開されました。
それによると、星から発生した霊長(人類)は、いずれ
「アーキタイプ」というものを作成して、宇宙に送り出すことになる。
アーキタイプは、宇宙にただよい、いずれ新しい星の核になる。
その新しい星で発生した霊長は、またアーキタイプを作って、宇宙へ射出するだろう。
という、星→人類→星→のサイクルがあるのだ、という世界観が提示されたのです。
そのアーキタイプがヤバイ感じに汚染されていたら、新たに生まれる星はヤバイ感じだろうし、そこから出てくる霊長もますますヤバイものになり、次のアーキタイプも当然ヤバイ。
そういうヤバさの再生産を避けるために、どっかで歯止めがかかる機構が存在している、そいつが例の
「宇宙から来た樹枝」である……という想像だと思って下さい。
この場合、検体Eは、星々の文明がどうなっているかをチェックする調査員というか生体調査端末で、これが発した電磁波は、SOSというよりは地球人類の実態報告。この報告を受けて、「地球は修正が必要」と判断した宇宙が「樹枝システム」を派遣した、といったディテールになります。
■どのように修正するのか
さて「地球人類ヤバイので修正をかけます」ということになりました。どうするか。
まず地球を樹枝のドームで覆って完全に宇宙と遮断します。地球人類が逃げたりして、宇宙に地球の悪徳がばらまかれないよう隔離病棟にするわけです。「いま地球人類、こんな目にあってます!」みたいな情報が他の星に漏れないようにする意図もあるかもしれません。「粛清機構がある」という情報はそれ自体が文明の方向をゆがめますしね。
現行の地球人類については、ヤバイので
まるごと消去します。樹枝で心臓つらぬいて一人ひとり殺します。一人ひとり殺しているのは、殺すついでに人類全体の個体情報を収集しているからかもしれません。
次に現行のテクスチャーを没収します。テクスチャーは現行の人類が敷いたもので、ヤバさの原因かもしれないからです。
地球は白紙化します。
続いて、
剪定事象になった並行世界を調べます。無数の剪定事象のなかから、
「うまく育てば今よりマシな文明が発生しそうかな」というのを7つ選んで限定的に復活させます。つまり
異聞帯を発生させます。
異聞帯の維持と評価のために空想樹をたてます。空想樹は地球を覆っている樹枝のドームと接続しているそうです。
あるていど異聞帯を育ててみて、これがいちばん強度があって将来性もあるかな? というものが選ばれ、
地球全体がその異聞帯に書き換わります。
選ばれた異聞帯の空想樹には
異星の神が降りてきます。FGOの物語上にあらわれた異星の神は(外見やパーソナリティは横に置いときましょう)「地球大統領」を名乗っており、「地球人類を正しく導く」みたいなニュアンスのことを言っていました。
樹枝システムが生成した異星の神は、新たなテクスチャーとなった異聞帯と人類を、間違った方向にいかないよう監督指導していくことになります。
なぜ、「滅ぼしちゃって、それでオシマイ」にしないのかというと、それでは
新たなアーキタイプが射出されないからです。新たなアーキタイプが生まれて、それによって別の星が生まれるのでなければ、地球を育てるのについやした宇宙エネルギー(的なもの)はまったくムダになります。なので、地球上に「もうちょいマシな人類」を置き換えて、アーキタイプが作成されるところまで見守るという作業は必要なのだろうと思います。
異聞帯に
クリプターが配置されている理由は、「異聞帯に、行き詰まらないような方向性を与えるため」かもしれませんね。
異聞帯がなぜ剪定事象になったかといえば、それ以上発展しなくて行き詰まっているからです。これをただただ育てても、行き詰まった状態が続くだけであり、たぶんアーキタイプが作成されることはないでしょう。
そこで、「行き詰まらなかった歴史の人類」を王様のとなりに配置する。この人物の影響で、行き詰まりが解消される可能性がある。
■ブルーブックの死の謎
ブルーブックの死と手術室についてはいくつか不明瞭な部分があります。
1)手術室にいたグロテスクな赤い人物は誰なのか。
2)発砲音で死んだのは赤い人物なのかブルーブックなのか。
2b)トラオムでぐだが見た血管人間の死体は赤い人物なのかブルーブックなのか。
2c)ブルーブックはなぜ殺されなければならなかったのか。
3)手術台の上の「木の根」は検体Eなのか。
4)手術室は地球にあったのか、カルデアスにあったのか。
4b)手術室はレトロなのか最新なのか。
これも例によって、すべてを同時に満たすストーリーは取り扱い困難なので、まずは(4)と(4b)のみについて考えます。
手術室にたどりついたブルーブックは、その設備を
「レトロ」と表現しています。ようするにすげー昔の機械が置いてあると。
いっぽう
シオンは、ぐだが見た手術室の設備を、
「2017年と同レベル」とみています。
普通に考えれば、「あの手術室は2017年ごろに作り出された」となります。
ブルーブックは2117年のカルデアス人類ですので(推定)、100年後の人間が100年前の手術室を見て「レトロだ」と感じるのは当然です。
しかし。
ブルーブックが2117年のカルデアスの人間なら、彼がたどりついたエリア51の手術室も、2117年のカルデアスにあるもの、ということになります、ね。普通に考えれば。
ダ・ヴィンチちゃんも「あの手術室ってカルデアスのものだったんじゃないかな」という推論を述べ、その方向で議論が進んでいました。
その2117年の手術室に、なぜか100年前の技術しかなかった。
なんでかわからないが100年間、機材の更新がなされなかったことになります。
この疑問に対して、シオンとトリスメギストスが与える解はこうです。
(シオン)
解析3。カルデアス地球における研究施設の
機材は年代物であり、
2017年から2117年の100年の間に発展した技術は
すべて機能不全になっている。
『Fate/Grand Order』オーディール・コール 序
つまり、
「2017年以降の技術は何らかの理由で動かなくなっているので、2117年カルデアスの手術室は、2017年の技術で100年間やってくしかなかった」とシオンは結論付けているわけですが。
この推論には
疑問符がつくと思います。なんかすげぇ迂遠で変だと感じます。
シオンの推論は
「ぐだは地球上のトラオム特異点から、宇宙の通路を通じて、カルデアスの手術室に行けた」ということが大前提です。ぐだは地球からカルデアスに移動して、また戻ってきたってことですよね。
この前提が成り立つなら、同時に、こういうことも成り立ちそうじゃありませんか。
「ブルーブックはカルデアスのエリア51から、宇宙の通路を通って、地球の手術室にたどりついた」
つまり、ブルーブックから見て「レトロな」手術室は
「2017年現代の地球の手術室」だった。
ぐだがたどりついた「現代なりに見える」手術室も、「2017年現代地球の」ものだった。
この想定をとれば、「100年間の技術的機能不全」といったトリッキーな仮説は必要ありません。2017年の手術室に2017年の技術が使われているのはあたりまえだからです。
もし私があのときストームボーダーの管制室にいたら、絶対にそういう方向の意見を言うと思います。
ダ・ヴィンチちゃんたちが「あの手術室ってカルデアスのものだったとしたらどうかな? でもそれにしちゃ機材が古いから変だよね」と言い出したとき、
「単純に地球のだ、としておけば、機材の古さは問題でなくなりますよ」と。
「手術室は2117年カルデアスのもの説」の大きな根拠は、
「死体がカルデアス人類のものだった」ことでしょう。カルデアス人類が死んでるのだから、あの場所はカルデアスだろうと。
でも、ぐだが地球からカルデアスに行ける前提なら、同じルートを使って、カルデアス人類も地球に来られる。
カルデアス人類の死体があるから、手術室はカルデアスだ、ではなく、
地球の手術室に、カルデアスから来た人の死体があるのだ。
そっちのほうも検討に値しませんか、と。
最終的に地球手術室説が否定されるとしても、議論が深まり、結論が強固になる。ホームズがいたら、絶対にその方向も検討したはずだ。
でもそういう意見を
「シオンは言わなかった」。
言わなかったというか、そっちの方向に話が向かうのをシオンが避けてたように私には見えました。
(シオン)
事実として100年の差がある以上、そこは
『機材の更新ができなかった』と考える他ありません。
(ゴルドルフ)
う、うむ? そんな事があり得るのか?
(シオン)
そこは、そうせざるを得ない事情があった、と
考えましょう。
たとえば、予算不足、人材不足です。
(略)
その理由は重要ではないので先に進みましょう。
『Fate/Grand Order』オーディール・コール 序
シオンは、地球手術室説を本命にしていて、なおかつそれを
隠している可能性があるんじゃないかな……。
ふたつまえの引用部(「解析3」のところ)、シオンが「技術的機能不全説」をいったとき、その直後に「オートバイなど、単純な燃焼機関であれば稼働しただろう」という例を挙げています。これ見たとき、私の中の古畑任三郎がささやきました。
「おやぁ、この人、ブルーブックがオートバイで長い旅をした逸話を知っているぞ」
もしシオンがブルーブックを知っているのなら、隠し事をしていることになる。隠し事をしているのなら、シオンの推論も隠し事まじりかもしれない。シオンの「技術的機能不全説」がぎこちなく感じられるのは、そこに本命を隠す意図があるからかもしれない。
ということを思っているのですが、しかし、地球手術室説には大きな
否定要素があります。
■重なったひとつの手術室
(モリアーティ)
ソレ(引用者注*被検体:E)は地球の生命体ではない。
あの施設で100年もの間、人間の手で隠蔽され、
検査され、実験され続けてきた生き物の残骸だ。
『Fate/Grand Order』黄金樹海紀行ナウイ・ミクトラン 序章
モリアーティによれば検体E(被検体:E)は
100年間人体実験を受けています。2016年に飛来した検体Eが100年間人体実験を受けて、
2117年のカルデアス手術室でぐだに再発見されたのなら計算は合います。
逆に言うと、ぐだの入った手術室が2017年の地球のものであった場合、「100年人体実験」という条件は成り立ちません。
もし手術室が2017年の地球のものであったのなら、2016年に飛来した検体Eが2017年に再発見されたことになりますから人体実験は
1年未満です。
こっちの要素を重視するのなら、「手術室はカルデアス産である」という推論は否定できない(地球手術室説は否定される)ことになります。が。
a)手術室の技術レベルは低いので、手術室は2017年の地球のものだ。
b)手術室の検体Eは2016年から100年間実験を受けているから、手術室は2017年の地球のものではないはずだ。
これを
うっかり同時に満たしちゃうような何らかの理屈が存在したらオモシロいのになぁ、ないのかなぁ……というのが私の考え方です。
ところでいったん話はずれるのですが、
・地球の白紙化は、エリア51を起点に始まった。
という情報があります。ダ・ヴィンチちゃんがそうおっしゃってた。
一方で、
・カルデアス(ブルーブック世界)の白紙化は、エリア51のみ白紙化されずに残った。
というブルーブックの観測があります。
で、
・地球白紙化現象は、白紙化したカルデアスと地球とが置換魔術されたものである。
というダ・ヴィンチちゃんの推論があります。
これらを足し合わせると、こんな感じになりませんか。
・カルデアスと地球は、エリア51の手術室でつながっている。カルデアスと地球の置換魔術は、エリア51手術室というパイプを通じて入れ替えが行われた。
つまり地球とカルデアスは、
砂時計みたいにふたつの空間が一点でつながる接し方をしている。
カルデアスと地球の地表の置換は、砂時計の砂が、一方の室からもう一方の室へ移動するようなイメージで行われた。
ブルーブックは「エリア51だけ白紙化されず残っている」と認識したけれど、実は白紙化されなかったのではなく、「そこを起点に、カルデアス表面が地球に書き換わりだしている」と考えるのです。
ブルーブックがエリア51にきて、地面や雨雲が残っているのを見たが、実はそれは「地球の」地面や雨雲なのであるということです。
さてそうすると、砂時計のいちばん
くびれている位置にあるのは、エリア51の中枢、
手術室です。ここが、地球とカルデアスの接する「点」だ。
接しているということは、点を
「共有」しているということだ。
となるとこういうことが言えそうではないでしょうか。
・エリア51の手術室は、地球の手術室と、カルデアスの手術室が、重なり合ってひとつになったものである。
つまり現時点において、FGOの世界全体におけるエリア51の手術室は
ひとつしかない。本来は地球とカルデアスにひとつずつ、合計ふたつの手術室が存在したのだが、それが
ぴったり重なってひとつになっている。
手術室は、2017年地球の手術室であると同時に、2117年カルデアスの手術室である。
シュレディンガーの猫のたとえ話に似ていて、手術室は50%カルデアスであり、50%地球である(といったイメージ)。
こういう想定の場合、「2017年の機材しかない」という観測と、「2016年から100年間人体実験された検体E」という情報の両方を、あの手術室から手に入れることができそうです。
手術室は2017年の地球と2117年のカルデアスが重なって同居した状態にあるので、2017年の地球側に存在する「2017年の機材」を観測することができるし、2117年のカルデアス側にしかない「100年たった検体E」を観測することができる。
でも、もしそんな状態になってたとしたら、存在にゆらぎが生じているはずで、オルテナウスのサーチ結果から何らかの異常数値が検出されててもおかしくない。なのにそういう報告は出ていない。それはどうしてでしょう。
分析結果を報告するのは結局のところ
とてもあやしいシオン女史です。シオンがあらかじめトリスメギストスに「手術室が重なり状態にあるという結論につながるデータを出力してはならない」というコマンドを入力しておけばそれで済んでしまうかもしれません。
ああそうだ、異星側の勢力が、トラオムでどうしてもホームズを殺害しなければならなかった(唯一それが可能そうなモリアーティをわざわざ用意してまで)理由がこれかもしれませんね。「シオンが今後、大々的にウソをつきはじめるため」
ホームズが手術室に到達したら、「この場所は地球とカルデアスの重なる点である(本稿の仮定)」といった真相が一発でばれてしまいそうだ。
また、「あれ、シオン女史は、本来なら真っ先に検討しなければいけない仮説をわざと避けて通ってるな、それはなぜだ?」というところから、いろんなことを見破ってしまいそうだ。
モリアーティは、ホームズを殺したあとになると、急にノリノリでカルデア御一行を手術室に案内しはじめます。これは「絶対にホームズを手術室に到達させてはならないが、それ以外ならよい」という動きに見えます。
なんかこう、「カルデアに手術室の情報を与えねばならないが、そこからたどりつける真相には到達させてはならない」みたいな条件があって、そのためにホームズを排除し、そのあとでシオンがデタラメを言い始める……。人狼ゲームでいうと、霊能者を排除したあとで、ニセ占い師がニセ結果を言い始めるみたいな匂いがちょっとします。
■両方の世界にイベントが起こる
「手術室はカルデアスと地球が重なり合っている特殊なポイントだ」という仮定を、ここからさらにむやみに広げます。
(ついてこれない人もいそうなので、適当に読んで下さい)
ほとんど同じ二つの世界が、この点でだけ重なり合っていると考える場合、ここではどんな
特殊なことが起こりえるのだろうか。
手術室は(もっと広げて、エリア51は、くらいでもいいが)、地球でもあり、同時にカルデアスでもあるという場所です(仮定)から、こういうことになるんじゃないでしょうか。
「地球の手術室で起こったことは、カルデアスの手術室でも起こったことになる」
(逆も成り立つ)
例えばですね。
「宇宙人が落ちてきて米軍に回収される」というイベントが、地球とカルデアスのうち、
どちらか片方でしか発生しなかったとする。
かたっぽの世界で回収された宇宙人が、手術室に
「入る」。
すると、もう片方の世界でも、宇宙人は飛来していないのにも関わらず、宇宙人が手術室に
「入ったことになる」。
宇宙人が手術室に入ったということは、宇宙人が飛来してないとおかしいので、もう片方の世界でも、宇宙人が
「飛来したことになる」。
かたっぽの世界の手術室で、宇宙人が
「人体実験される」。
もうかたっぽの世界でも、宇宙人は本来飛来していなかったのにもかかわらず、宇宙人が
「人体実験されたことになる」。
さてそこで疑問なのですが、
カルデアス人類がロケットを作って宇宙に飛び立ったらどうなるんでしょう。
彼らは、宇宙や、別の星々の存在を発見するんだろうか。
発見する、と考えないと、おかしいことになるので、
発見するんだろうと思います。何がおかしいかというと、「人類の宇宙開発に関する推移」がシミュレーションできないことになります。
おそらく、現行の2017年までの地球で観測されている宇宙のデータがカルデアスに入力されていて、その範囲内で宇宙開発がシミュレーションされているとか、そんな感じでいいでしょう。
つまりカルデアスの宇宙進出は、データ上の演算にとどまり、「本当には宇宙に進出してはいない」くらいの想定となります。だって「地球のミニチュアを作ったら、自然に宇宙のミニチュアまでついてきた」はさすがに無理がありそうですからね。
じゃあ逆はどうでしょう。
「カルデアスに本物の宇宙人は飛来するのか?」
カルデアスの周囲に、本物の宇宙はない想定をしていますから、
「カルデアスに本物の宇宙人は飛来しない」ことになります。
つまり
「カルデアスに樹の根そっくりな宇宙人は飛来しないし、宇宙の粛清機構が到来することもない」ということになります。
じゃあなんでカルデアスの人類は抹殺されて地表は白紙化されたのか。
■巌窟王としてのカルデアス
前段の流れに従えば、樹の枝のかたちをした宇宙人は地球にしか飛来しません。
よって、
「2016年の地球」にのみ、樹枝の宇宙人(検体E)は飛来しました。
検体Eは地球のエリア51の手術室に搬入されます。
手術室は、地球とカルデアスが重なる場所ですから、カルデアスの手術室にも検体Eが搬入された「ことになります」。
地球人類は検体Eの拷問を始めます。
カルデアスには本来、検体Eは飛来していないのですが、カルデアス人類も検体Eの拷問を始めた「ことになります」。
このまま推移すると、100年後の
地球に宇宙の粛清機構がやってきます。
カルデアスの外に宇宙はない想定なので、
カルデアスに粛清機構はやってきません。
しかし、「何者かの」「何らかの」トリックによって、宇宙の粛清機構が、
カルデアスを地球だと誤認するとしたらどうでしょう。
わたしがイメージしていたのは『ドラえもん のび太と鉄人兵団』。宇宙から来たロボットの侵略者に対し、ドラえもんは鏡の中に地球のコピーを作り出し、敵をそこに誘い込みます。敵ロボット兵団は鏡面世界を地球だと思い込んで破壊のかぎりをつくします。
粛清機構と地球との関係でも、これとほぼ同様のことが起こると考える。粛清機構は何らかの詐術にひっかかり、
2117年の地球に来るつもりで2117年のカルデアスに誘い込まれる。
カルデアスは地球と寸分たがわないし、カルデアスにも「検体Eを拷問した」という事実は存在してしまっています。粛清機構は誤認に気づくことができません。
粛清機構はカルデアス人類を抹殺し、カルデアスを白紙化します。
黒幕(たぶんマリスビリー)はほくそえみながら、白紙化カルデアスと地球を置換します。
簡単に流れをまとめるとこう。
1)地球に検体E、落ちてくる
2)地球人類、検体Eに人体実験
3)検体E、宇宙に向かってSOS
4)宇宙の粛清機構、カルデアスを地球と誤認、カルデアス人類を虐殺
5)宇宙の粛清機構、カルデアスを白紙化
6)マリスビリー、カルデアスの白紙化表面と地球表面を置換
■トラオムのマスターの憎悪
上記のような想定の場合、
「トラオムのマスターの憎悪」をごく自然に設定できます。
検体Eを拷問した
罪は地球人類にあるのですが、
罰はカルデアスに与えられたからです。
「この中にトラオムのマスターがいる」というモリアーティの紹介でぐだたちが入った手術室の中に、血管人間としかいいようのない謎の死体がありました。
あの死体がトラオムのマスターで、その正体はブルーブックであるというのが、広く流通している説だと思います。私も現状、それでいいと思います。
カルデアス最後の人類となったブルーブックは、死の直前に、上記のような
白紙化の真相を知った(と仮定する)。
ブルーブックが最後の命をかけても知りたかった「どうして世界と人類はこうならなければならなかったのか」の答えが
これ。
他人の罪を着せられて、すべてを奪い取られた。
奪い取られてまっさらになった地表すら、地球にごっそりさらわれた。
しかも、それすらも陰謀の一部にすぎず、すべては、カルデアスという世界をおもちゃのようにもてあそぶヤカラのなせるわざだったのだ。
ブルーブックはおそらく
カルデアス最後の人類であり、彼の意思や感情は
全人類の感情にひとしい。彼の精神状態はおそらく全人類の
集合意識に直結する。カルデアス全人類の集合意識が、地球に向かって憎悪を向け、ブルーブックはその
憎悪の受け皿となる。
ブルーブック本人の憎悪がどのレベルだったかは定かではない(それほどでもなかったフシもある)。
けれど、カルデアス全人類の集合意識の受け皿になったブルーブックは、いやおうなく、カルデアス全人類の憎悪の代表者をつとめなければならなくなる。
(モリアーティ)
彼は、そうしなければならない立場だった。
そうする義務が、責任があった。
たとえ、本人に報復の意思がなくとも、存在として、
彼はそうしなければならない立場になっていた。
『Fate/Grand Order』死想顕現界域トラオム 22節
カルデアス全人類の命とこれまで積み上げてきた文明が、まとめて地球の歴史の養分になったようなものだ。
もう、地球をめちゃめちゃにしないと気が済まない。
最も溜飲の下がる復讐方法とは何か。
それが
トラオム特異点である。
カルデアス全人類のうちマスター適性のある全員が、地球上で、汎人類史のサーヴァントを大量に召喚する。
汎人類史のサーヴァントに、大軍同士の凄惨な殺し合いをさせる。
その大戦争の果てに、地球のテクスチャーが致命的に毀損されればよい。
「人類史のガーディアン」たちに醜い同士討ちをさせて、その結果、人類史がぶっこわれる。これは最も皮肉で溜飲の下がるやり方だ。
だからトラオムのマスターは「たった一人であり」「同時に大勢であり」「三国鼎立からの大戦争が演じられ」「その情勢を作るために三国時代の張角が呼ばれた」。
ところで疑問。
「地球への罰がカルデアスに与えられた」という真相を、ブルーブックは
いつどうやって知るのか。
■血管人間とネットワーク生物
(シオン)
けれどデータにある『被検体:E』の死亡時間は数日前。
『Fate/Grand Order』オーディール・コール 序
ここでいう被検体:Eを、血管人間ブルーブックのことだとすると、ブルーブックは数日前まで生きていました。
モリアーティとぐだが、ライヘンバッハの滝からエリア51に移動するのに四日かかっていますから、だいたい、トラオム最後の界域王クリームヒルトが死んだあたりで、ブルーブックも死んだ、くらいでしょうか。トラオムで大戦争が行われているあいだ、ブルーブックは生きていた。
ブルーブックは
血管人間と化しています。筋肉や内臓がごっそり消え失せ、脳と血管だけになり、なのに人体の形状を保っています。
ブルーブックは死後即座に血管人間になったのでしょうか。それとも生前、生きてトラオムを維持しているころから血管人間だったのでしょうか。それとも、カルデアス人類はそもそも全員が最初から血管人間なのでしょうか。
最後のやつがなかなかおもしろくて追及したいところですが、とりあえず前の二つについて考えます。
生きてるあいだは肉があったけど、死ぬと同時に血管人間になったという場合。例えば今まではトラオムの維持のために必死で気を張っていたけれど、ついに力尽きて死んで、気力を尽き果たしてゲッソリやせた(かわいそう!)。
血管人間になったのは、謎の人物に撃たれた後から、トラオムが攻略されて死亡するまでの間のどこかだという場合は?
独力でトラオム特異点を作成維持しようとすると人間はああなる、くらいでも間に合いますが、
ブルーブックを撃った赤っぽいグロ人間の赤っぽいグロさが気になります。あの人、死んだら血管人間になりそうな姿をしていた。
そもそも人間が血管と脳だけになり、しかも血管は重力に引かれて地面に落ちることなく人体の厚みのまま宙に浮かんでるという状態は、何らかの
異常な作用の結果でないとおかしい。
あの手術室に、そんな「異常な作用」を及ぼしそうなものは
「樹の根」しかない。推定ブルーブックの死体が血管人間化しているのは手術台の上にのっかってる樹の根のしわざかもしれません。
樹木、とりわけ根っこというのは、ある種
「ネットワーク」を連想させるものです。たしかキリシュタリアによれば、空想樹は空を覆う樹枝のドームと接続して(だったかな?)ネットワークを形成しているのだったはずです。
(キリシュタリア)
成層圏まで育ち切った空想樹たちは、
その枝が干渉し合い、ネットワークを形成する。
『Fate/Grand Order』神代巨神海洋アトランティス プロローグ intro.5-3
(ペペロンチーノ)
となると、空を覆う天幕と繋がっている枝は、
この大西洋異聞帯の空想樹だけってコトでいいの?
『Fate/Grand Order』神代巨神海洋アトランティス プロローグ intro.5-3(傍点原文ママ)
そして
脳と血管というのは、人体に縦横無尽にはりめぐらされた
ネットワークといえるものではないでしょうか。
つまり手術台の「樹の根」は、
ネットワークを形成することに主眼をおいた生物で、死にかけた樹の根は死にかけたブルーブックと
ネットワーク接続した。
ブルーブックと樹の根は、もともとは異なる二つの端末だったが、つながってひとつのネットワークになった。
ブルーブックは情報のやりとりを主眼とする生物に
変換されていった。必要ない筋肉や内臓はそぎ落とされて、ネットワークに必要な脳と血管と神経だけが残る形になった。
情報の交換が行われて、カルデアスの白紙化の理由を、
樹の根経由で知った。
ネットワーク生物としての力を手に入れた死にかけのブルーブックは、カルデアス人類の
集合意識にネットワーク接続できるようになった。
カルデアス人類の集合意識が、カルデアス白紙化の真相を知って憎悪にふるえた。
その憎悪がブルーブックにフィードバックされ、彼はトラオムのマスターになり、ブルーブック・ネットワーク経由でカルデアス人類の集合意識が大量のサーヴァントを召喚することになった……。
トラオムのモリアーティは、「ここにトラオムのマスターがいます」と言って扉を開け、「被検体:Eをご紹介します」と言って去っていきました。部屋の中には樹の根と血管人間がいました。
どっちが被検体:Eなのかわかりません。
が、「樹の根と血管人間はネットワーク接続してもはや一つのものである」とすれば、これは謎ではなくなるのです。
これは二つのものに見えるが一つのものである。
(ここはひとつの部屋に見えるが実は二つの部屋である、の裏返しになっている)
エリア51の研究員は、宇宙人の姿を「グロテスクな樹の根」としていました。でも手術台にはちっちゃな枝の端っこしかありませんでした。
これを、「人体実験ですり減った」のではなく、「ブルーブックの血管に触手を伸ばして、その中に大部分入り込んでいる」くらいに想定してもいいかもしれません。
この場合は、検体:Eがブルーブックのガワを
被っているから
被・検体:Eであるといった言葉遊びもできちゃいます。
とまあ、こういったストーリーを想像し、これ結構おもしろいな、いいんじゃないかな、って
自画自賛していると思って下さい。
ところでブルーブックを撃ったのは誰だ。
■血管人間マリスビリー
たぶん、
「ブルーブックが死んでくれないと、地球とカルデアスの置換魔術がうまくいかない」といった事情があるんだと思います。
ブルーブックは推定、最後のカルデアス人類です。生きている人間は、「いま、この世界にいる」という自意識をもつので、「この世界」を「この場所」につなぎとめる
アンカーのような役割を果たしてしまう、といった設定はありそうな感じだ。
カルデアスからすべての人類がいなくなれば、「いま」「ここ」を定義する意識が存在しなくなりますので、いまとかこことかこの世界という定義があやふやになり、つまり地表に定着する力が弱くなり、白紙化した表面をずるっと吸引して地球に持ってくることができる(できそう)。
そうだとすると、ブルーブックを殺した人物は、地球とカルデアスの
置換魔術を成功させたい人物です。それは
マリスビリーだということになります。
さてそのマリスビリーと思われる男は、赤黒い、ぐちょぐちょした、たいへんグロテスクな姿をしていた。ちょっと前にも言いましたが、なんかこの後、血管人間になりそうな気がする。
じゃあ、「マリスビリーはこのあと血管人間になる」と
決めてしまいましょう。
本稿の話の流れからすると、血管人間になるためには、樹の根とネットワーク接続して融合しないといけません。
なので
樹の根と融合したことにします。
本稿の説では、マリスビリーは「粛正機構がやってきて地球を白紙化する」という未来を
あらかじめ知っていないといけません。でないと、「地球じゃなくてカルデアスを白紙化させて、そのあと地球とカルデアスを置換して、白紙になった地球をつかってさらなる悪巧みを実現しよう!」と思いつくことができないからです。
でもそんなことは普通知り得ません。
知ることができる方法はただひとつ、粛正機構の端末である樹の根とネットワーク接続して情報をやりとりすることです。
(今更なことですが、想像をかってに広げてストーリーを作っているだけなのでお気楽にお読み下さい)
マリスビリーが接続した樹の根は検体Eとは
別個体としたほうが、おもしろそうです。
検体E以外にも、樹の根は地球に飛来していて、そのうちのひとつがマリスビリーにとっつかまって調べられ、半融合してネットワーク形成する。
マリスビリーはネットワークをたどって、
宇宙の粛正機構の存在と、仕組みを知ることになる。
こいつを使って、いっちょ大がかりな悪巧みを起こしてやるか! 具体的には、白紙化した地球に銀河(空想樹)が散らばっているというモデルを、宇宙に見立てて、宇宙と地球をまるごと置換してやろう、みたいなことを思いつく(
前回をご参照下さい)。
マリスビリーの考えてることは、ネットワーク経由で樹の根にも把握されるので、こりゃたいへんだ! と樹の根は思う。こんなことを思いつく文明は修正しないとやばいですぜ。
ということで100年かかって粛清機構がやってくることになる……。
ここまでの話では、「粛清機構が粛正にやってくるのは、樹の根を拷問したからだ」ということにしていましたが、ブルーブックは「そんな理由で世界が滅ぼされることってあるのか?」という疑問もさしはさんでいました。
その疑問に答えが必要なのだとしたらそれは、
「マリスビリーみたいな宇宙強奪犯を生む文明はやばいから修正をかけよう」が有望なんじゃないかと思います。
■異星の神
マリスビリーはデイビット・ゼム・ヴォイドにあっさり
射殺されます。
が、マリスビリーはすでに、ネットワーク形成を主眼とする
情報生物と化している想定ですから、肉体の死はなんてことありません。
自分の全情報をネットワークに送信しておけば、ネットワーク形成生物である「宇宙の粛清機構」の中に自分自身を保存しておけます。
逆に言うと、宇宙の粛清機構の中に、
マリスビリーというウィルスが侵入している。
FGOの物語には
「異星」ないしは
「異星の神」という存在がいて、何らかの意思を持ち、地球に干渉を加えているわけです。
本稿の話では、こいつの正体は宇宙の粛清機構の粛清プログラムだ、ということになります。
が、このプログラムはマリスビリーウィルスに
汚染されている。
地球を正しい方向に修正するための「異星」のアクションは、その実、マリスビリーによってさりげなくゆがめられているのかもしれない。
つまり、異星の神は(ここでは、キリシュタリアを生き返らせた
謎の光のことを主に指します)、自分のことを異星の神だと思っているが、
実はマリスビリーにまるごと乗っ取られていて、自分でそのことに気づいていないといった可能性が考えられるのです。
粛清機構=異星は、プログラムに沿って自分の役目を粛々と果たしているつもりでいるが、じつはマリスビリーにあやつられていて、要所要所でマリスビリーの悪巧みの役に立つようなことを積み上げさせられている。ぶっちゃけ、ラスプーチンが「異星にご報告だ」かなんか言ってるときの異星とは、マリスビリーのことだろう。
異星の神(謎の光)が、異聞帯のの育て役としてキリシュタリアを指名した、そのための試練として独力で人理焼却を解決しろというクエストを与えた、なんてのは、キリシュタリアやカルデアのことをよく知る人物=マリスビリーの横やりがないと思いつかないようなアイデアです。
異星の神といえば。
謎の光のほうじゃない異星の神もいました。ビーストのサーヴァント霊基を持ってるほうのやつ。
いちばんよく育った異聞帯の空想樹から、異星の神が生まれ出てくるという設定がありました。そして、そこから生まれ出てきたのは
オルガマリー所長にうりふたつのU-オルガマリー自称地球大統領でした。なんでしょうこれは。
■検体Eが異星の神になる
オルガマリーはもとカルデアの所長。
カルデア爆破事件で爆死し、魂だけ特異点Fにレイシフトし、その魂もカルデアスに放り込まれて消滅したことになっています。
魂がカルデアスに落ちていった……。
この話においては、地球ないしカルデアスに
落ちてきたものがすべての始まりでした。地球に「樹の根」が落ちてきた。そしてカルデアスにオルガマリーの魂が落ちてきた。
地球に落ちてきた樹の根が、手術室に運び込まれます。本稿では手術室は地球とカルデアスが重なる場所なので、カルデアスの手術室にも樹の根が運び込まれたことになります。樹の根が運び込まれたということは、樹の根が落ちてこないと困るので、因果が逆転してカルデアスにも樹の根が落ちてきたという「過去の書き換え」が発生します。
というのが今までの説でしたが、こういうのはどうでしょう。
地球に樹の根が落ちてきて、手術室に運び込まれる。
まったく同時に、カルデアスにオルガマリーが落ちてきて、
まったく同時に手術室に運び込まれる。
地球の手術室とカルデアスの手術室は重なり合っていて、
「一方で起こったことはもう一方でも起きないとおかしい」というルールになっている(とする)。
ということは、同時に二つのドアから一つの部屋に運び込まれた樹の根とオルガマリーは、
「同一のものでないとおかしい」。
そこで、
「樹の根とオルガマリーは同一のものである」という整合がとられ、そういう事実が発生してしまう。
樹の根とオルガマリーは融合して
ひとつのものとなる。
樹の根は人体実験されるので、オルガマリーは100年間人体実験されることになる(気の毒すぎる)。
印象的な場面なのでご存じとは思いますが、ナウイミクトランで書かれたことによれば、U-オルガマリーは
拷問を受けたっぽい過去があるようです。確か「人間だと、仲間だと、叫んだのに誰も聞いてくれなかった」的なことをおっしゃっておいででした(これ、ミクトランの第何節だったか思い出せる方、こっそり教えて下さい)。
オルガマリーは相手のことを人間だと認識できるが、相手はオルガマリーのことを人間だと認識できない、という状況が発生しているように見えます。オルガマリーは樹の根の姿だったので人間とは気づかれずいつまでも拷問された、で整合します。
さてそこで「異星の神」。
本稿の説では、「空想樹から誕生する異星の神」は、現行人類の文明をキャンセルしたあと、新たに選ばれた異聞帯が、以前よりマトモに育つように指導する
監督係です。
こいつがなぜかU-オルガマリーになっちまうわけです。
オルガマリーと検体Eは同一存在になっている、というのが本稿の仮定です。
なので、本来のプログラムでは、
「異星の神として検体Eが降臨するはずだった」んじゃないでしょうか。
つまり宇宙の粛清機構の端末が、いくつも地球に散らばって情報収集している。
それら端末のうち、
最も地球に詳しく、情報を蓄積している個体が、「監督係・異星の神」に昇格して、地球を教え導いていく……というシステムになっていた。
異星の神になるにふさわしい個体として、
検体Eが選ばれた。
ところが検体Eはオルガマリーと
合体していたので、降臨した異星の神は、オルガマリーのパーソナリティが前面に出たオモシロ大統領になっちまった。
そしてこの一連の事象を、デイビット・ゼム・ヴォイドは
「オレたちに逆転の道をもたらした奇跡の一手」と呼ぶのです。
■マリスビリーが降臨するはずだった
「地球に潜入していた樹の根のうちのいずれかが昇格して監督係・異星の神になる」という仮定をOKとする場合。
本稿の説では、地球に飛来していた樹の根は
二体あるわけです。
ひとつは
検体E。オルガマリーと融合した。
もうひとつは、存在が確認されていない
仮説上の個体X。マリスビリーと融合した。
つまり、後者が異星の神に選抜されていた場合、オルガマリーではなく
U-マリスビリーが異星の神として降臨していた可能性があることになります。
うわ。
マリスビリーは樹の根ネットワークにウィルスとして侵入しているので、メインシステムに干渉して、自分(の樹の根X)が異星の神として選抜されるよう
工作していた(だろう)。
ところが、もう一体、非常に強力な異星の神候補が台頭してきた。この樹の根、検体Eは、オルガマリーからもたらされた「寂しい」「誰かと寄り添いたい」「何かをやり直したい」という
モチベーションを持っている。
そのモチベーションが、他の候補をはねのける。マリスビリーを押しのける。
そうして検体Eが選ばれ、検体Eはオルガマリーでもあるので、地球大統領U-オルガマリーが誕生したのである。
……なんてのは、なかなか泣かせるでしょう。
オルガマリーは素直になれないだけで根本的に
善性だ。しかも、人類の未来を守る組織の長官だった人だ。
だからU-オルガマリーは固有スキルに
「人理の防人」を持っている。
(デイビット)
あの時点でゲーティアの手管は、
魔神柱の企みは完璧だったが……
その中でも、さらに奇跡の一手と言えるものが
レフ・ライノールが君に向けた感情だ。
あれがなければオレたちに逆転の道はなかった。
魔術王ソロモン。いや、魔神王ゲーティア。
彼はあの時、人理を焼却しながら、
同時に人理の防人(さきもり)を生みだした。
『Fate/Grand Order』黄金樹海紀行ナウイ・ミクトラン 第19節(傍点原文ママ)
もし、レフ教授がオルガマリーの魂をカルデアスに放り込まなかったら、検体Eは異星の神に昇格することはなかった。
検体Eが異星の神になれなかった場合、マリスビリーが異星の神になってしまっていた。
マリスビリーが異星の神になったら、たぶんマリスビリーの悪巧みは、
これ以降すべて成立してゲームセットになっていただろう(たぶん、そんなフィーリング)。
ところがオルガマリーが異星の神になったので、マリスビリーの
手が崩れた。彼の計画は破綻はしないまでも
遅延した。
ここで稼げた時間を使って、デイビットは地球とカルデアスを破壊し、マリスビリーの計画を打ち砕くことが可能だ……。
という意味に見えました。
■異星の巫女の正体
異星の巫女の正体は何か、について書こうと思ったのですが、考えたけどわかりません。「異星の巫女の正体はオルガマリー」というのが、描写といちばん整合しやすそうなのですが、その真相はちょっと
小さいです。
異星の巫女の中身は
検体Eの本来の人格、くらいにすると広がりがありそうかな、どうかなって感じです。私がこの物語を書くとしたら、まったくの非人間、宇宙人個人から見た傍観視点がほしいです。地球の状況の傍観は、検体Eが本来やってきていたと推定される行為です。そのくらいでどうかな?
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