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TYPE-MOONの「魔法」(6):「第六法」と「第六魔法」という双子
筆者-Townmemory 初稿-2022年3月27日 10時33分56秒
今回はズェピアがなぜワラキアの夜=タタリになったか。それに付随して再び第六魔法と第六法の話。
本稿はTYPE-MOON作品の世界観に設定されている「魔法」に関する仮説です。6回目です。この回から唐突に読み始める方への配慮はしておりませんので、第一回から順繰りにお読み下さい。
これまでの記事は、こちら。
TYPE-MOONの「魔法」(1):無の否定の正体
TYPE-MOONの「魔法」(2):初期三魔法は循環する
TYPE-MOONの「魔法」(3):第四魔法はなぜ消失するのか
TYPE-MOONの「魔法」(4):第五の継承者はなぜ青子なのか
TYPE-MOONの「魔法」(5):第六法という人類滅亡プログラム
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●ワラキアの夜、登場
前回述べましたとおり、ズェピアが死徒になったのは、「第六法を打倒するための力がほしいから」でした。
前回の説にしたがえば、ズェピアは世界のシステムに書き込まれている「人類は滅亡する」というプログラム(第六法)を書き換えようとして失敗し、防御プログラムの反撃を受けて霧散してしまった。
が、ズェピアは頭の回る人なので、「負けて消えたらそれでおしまい」のつもりはサラサラなかった。書き換えに失敗し、自分が霧くらいまでばらばらにされたあとでも、第六法に挑み続けられる次善の策をこうじておいた。
どうやらズェピアは、「プランAが失敗したら自動的にプランBに移行する」といった重層的な計画を立てるのが好きみたいです(頭の良い人のやり方だ)。
ズェピアはさまざまな策を講じて(アルトルージュの力を借りたり、世界のシステムにバグを仕込んだりして)、「自分を現象に変えた」といいます。
ズェピアの身体は霊子レベルまで分解して世界中に散らばったのですが、彼を構成していた霊子が、定期的に世界のどこか一カ所に集まり、ひとつの街を包み込む、というシステムを作った。このシステムを「タタリ」というそうです。
ズェピアの霊子に包まれた街は、「悪いウワサが現実になる」という状態になります。
たとえば「連続殺人鬼が街をうろついている」というウワサが発生したなら、本当に連続殺人鬼が出現して人を殺し始める。
タタリは、人々の立てたウワサがどういう種類のものであろうとも、「当該地域で生きている人間を全員殺害する」という行動を取ります。
そうして、当該地域の人の血を全部吸い尽くしたのち、かれは再び霊子の霧にもどって世界に散らばり、次の再生の時を待ちます。
そんなふうに、「自然災害のように突如として人間の町に現れ、人間を全滅させて、一夜にして姿を消す」というのが、現在のズェピアの姿です。
ズェピアがタタリとして初めて出現した土地がルーマニア=ワラキアだったので、彼はいま、「ワラキアの夜」というコードネームで呼ばれています。
今、ズェピア=ワラキアの夜は、「一夜にしてひとつの町を全滅させる災害級の吸血鬼」です。
でも、それってちょっとおかしい。ズェピアは、確定した人類の滅亡(=第六法)を克服したいと願っていた人ではなかったか。
なんでまた「ウワサを現実にし」「街ひとつの全人間の命を吸い上げ」「どこかに去って行く」なんていう存在になってしまったか。
●タタリになってどうしたいのか
『メルティブラッド』作中で、ワラキアの夜(ズェピア)は、何度も「第六法」「第六法」とくりかえし言っている。
ズェピアはシオンに「自分と融合してタタリになってくれ」とささやきかけます。そうしてくれるならシオンが主導権を握って活動してよいとまで言う。
なぜなら、「シオンと融合すればそのぶん強くなり、第六法に打ち勝てる可能性があがるからだ」と彼はのべます。
また、こんなセリフも。
ワラキア=ズェピアは、第六法に「挑みたい」「打ち勝ちたい」といっている。いまだに彼が第六法にこだわっていることはまちがいない。
人間の形を失ったいまでも、なんとかして人類の滅亡を避けるすべはないかと考えていそうです。
いったいどうして彼は、「ウワサを現実にして街を滅ぼすタタリ」になることが「第六法の克服につながる」と考えたのだろう。
●「朱い月になる」という「第六」
作中、朱い月が現れてズェピアにこう言います。「おまえのやりかたでは第六にはなれない」「おまえは第六には至れない」。ズェピアはそれを聞いて絶望にうちひしがれます。
ズェピアは、第六に「なろう」としていたようです。第六は「なれるもの」という新しい補助線が出てきました。
ここでいう第六を「第六魔法」だとする考え方もありうるでしょう。その場合「第六になれない」は「人類を救済する者にはなれない」という意味になります。が。
ひとつの街をまるごと滅ぼすことを繰り返す、というタタリのあり方と、人類の救済のイメージはいまひとつ合わない。
それに、「おまえのやりかたでは第六にはなれない」と言ったのは朱い月です。朱い月は、人間を滅ぼす意味での第六法を推進してるっぽい人ですので、ここでは「役立たずめ」くらいの意味で言っていると考えるほうが整合しそうです。
じゃあズェピアは人間を滅亡させようとしているのか?
と思うと、直後に次のようなセリフがある。
朱い月に向かって「私はおまえに至れぬのか」といっている。これは朱い月から「おまえは第六に至れぬ」といわれた直後です。
となると、ズェピアの望み「第六になりたい」は、「朱い月になりたい」と同じ意味になる。
これは「第六」のちょっと新しい用法です。「the dark sixの蘇生」や「人類滅亡の絶対的ルール」ではない意味。「第六とは朱い月になること」。
(前者にはちょっと似ているし、「第六は死徒の悲願」は「朱い月になる」の意味でも成立しそうですが)
情報をまとめるとこうなります。
・ズェピアは、人類の滅亡を回避したい(そのためにタタリになった)。
・ズェピアは、朱い月になりたい(そのためにタタリになった)。
この二つの条件を同時に満たす理屈を発見できれば、ズェピアのもくろみを理解できたことになりそうです。
●朱い月になれば人類を救える
それについての私の答案はこう。
まず関係ありそうな周辺情報をまとめましょう。
・ズェピアは死徒二十七祖のひとりである(事実)。
・ズェピアはタタリになるとき、死徒二十七祖のリーダー格・アルトルージュの助力を得た(事実)。
・死徒二十七祖は永遠の存在になる方法を探している(事実)。
・それは朱い月の依り代となる永遠の身体を製造するためである(推定)。
死徒二十七祖は、主人である朱い月復活のための身体を作りたがっている研究者たちです(たぶん)。
ズェピアはべつだん、そんな目的で死徒になったわけではなさそうですが、アルトルージュがズェピアに協力しているので、
「ズェピアがやろうとしていることは、朱い月の復活にもつながることである」
と考えてよさそうです。
死徒二十七祖はそれぞれの方法で永遠の存在になる方法を探しています。それは朱い月の身体をつくるためだと推定されています。
もし、二十七祖のだれかが、「the dark six」の復活儀式より先に、朱い月の身体作りに成功したら、the dark sixの儀式はどうなるのだろう?
the dark sixの儀式は朱い月の依り代となる身体をつくるためのものですから、それより前に身体作りに成功した者がいれば、the dark sixの復活儀式は中止される道理です。
本稿の説では、the dark six復活儀式の過程もしくは結果において人類が滅ぶ、という想定ですから、the dark sixの儀式が中止されるなら、人類は滅ばないことになる。
ほかの滅亡要因はまだあるにせよ、人類の未来を滅亡というかたちでふさいでいる壁に穴が空くことになる。
ようは、ズェピアが朱い月の素体を用意することができれば、人類滅亡の回避の目がみえてくる。
朱い月は魔王なんだから、朱い月が復活したらどのみち人類は滅亡するんじゃないの、という話もありますが、ズェピアが永遠存在になって朱い月の依り代になるということは、「ズェピアと朱い月は融合してひとつになる」ということなので、「ズェピアが朱い月に影響を与えたり、制御したりする」可能性が出てくる。
おあつらえむきに、前述のとおり「ズェピアとシオンは融合することができるし、その場合、ズェピアが主導権を握ることも、シオンが主導権を握ることもできる」という情報が作中に出ている。
この情報は、
「ズェピアの体に朱い月が降臨したとしても、ズェピアの意思が消滅するわけではない」
「ズェピアが朱い月として稼働するという状況もありうる」
という未来図(真相)に関する伏線の可能性があると思います。
このような想定の場合、
「ズェピアが朱い月(第六)になれば、人類の滅亡(第六法)が回避されうる」
「ズェピアは人類の滅亡(第六法)を回避するために、朱い月(第六)になりたい」
という条件が成立します。
……余談っぽい傍証ですが、二十七祖のメレム・ソロモンが、
「朱い月とアルクェイド、両者に対して忠誠を誓っている」
「二十七祖の首領トラフィムが主催する第六(おそらくthe dark sixを蘇生することで朱い月の素体を用意する計画)を阻止したがっている」(『Character material』によれば)
というのも、同様の理屈で説明がつきそうだ。
アルクェイドは、朱い月がゼルレッチに倒されて霧散してから500年くらいあとに生まれた真祖で、朱い月の素体となりうるクオリティを備えています。
メレム・ソロモンが「アルクェイドにも」忠誠を示し、「トラフィムの第六に反対」する理由は、
「アルクェイドの身体に朱い月が降臨するという形での、朱い月復活を望んでいるから」
くらいに考えれば、すじは通りそう。
彼にしてみれば、
「アルクェイドと朱い月が合体するという形で復活してほしいのに、それより前に別の方法で朱い月を復活させてもらっちゃあ困る」
同じく『Character material』によれば、『月姫』でネロ・カオスがアルクェイドを倒しに来た理由は、トラフィムにそそのかされたためらしい。
これはメレムと正反対の理由だと考えても面白い。トラフィムは自分の第六計画によって朱い月が復活してほしいので、「それより前に朱い月がぽろっと復活してもらっちゃ困る」。
なので朱い月の素体となりうるアルクェイドを排除しようとする。
余談終わり。
さて、そこまでの話をOKとしましょう。上記の理屈により、ズェピアが朱い月になることができれば、人類滅亡の可能性が回避されうる。ズェピアはそれを目指している。
しかし、どうして「タタリを起こすと朱い月になれる」のだろう?
●朱い月になるためのメソッド
タタリが発生したとき起きる現象は主に二つです。
・標的となる街において「恐怖の対象」とされるものが実体化する。
・標的となる街の人々の血をズェピアが吸い尽くす。
これを、「ズェピアの情報収集」だと考えてみてはどうでしょう。
大量の人の血を飲み干すのは、エネルギー源にする目的だけではなく、「人間ひとりひとりの情報」を大量に収集しているのだと考える。
人々の恐怖の対象を実体化するのは、実体化そのものが目的ではなく、「人間は、どういった存在に対して致死的な恐怖を感じるのか」という情報を、人々の深層意識から引き出している。
『メルティブラッド』の主人公シオンはエーテライトという先祖伝来の道具を持っています。これは「他人の脳内に記憶されている情報をコピーして自分のものにする」というアイテムです。
ズェピアはシオンのご先祖様なので、エーテライトを持っていて使いこなせます。ズェピアの一族は「他人から情報を搾取する」という手法で成功してきた一族なのです。
朱い月は、人類を皆殺しにし、人理を世界からひっぺがし、地球をまるごと自分一人のものにしようとする最強最悪の魔王です。
これを恣意的に言い換えたら、「全人類にとっての恐怖の結晶」くらいに言える存在です。
ズェピアはきっとこう考えた。
朱い月は全人類の恐怖そのものだ。だから私は、大量の人間の深層意識から「人が思う恐怖のかたち」を情報として吸い上げてみよう。
それを一千年ものあいだ続けたら、その恐怖の情報を元にして、自分自身を朱い月につくりかえることができるのではないか。
先ほども引用しましたが、
ズェピアは、街ひとつの人間の血を飲み干してエネルギーを貯めるごとに、今まで集めた恐怖の情報を元にして、自分を朱い月に作り替えてみる(第六に挑む)、ということをトライしていそうです。
しかし、これまで成功したことはない。(朱い月によれば、今後も成功しない)
常に失敗している。
私が思うに、タタリ発生のたびに行われるこのトライとその失敗が、『メルティブラッド』冒頭で表示される「Program No.6 Error」。
失敗するとズェピアは霊子の霧にもどり、つぎのタタリまで時を待つ。そうして次のタタリで、追加の情報を収集して再トライする。
作中の表現を見るかぎり、ズェピアが実体化させた「恐怖の存在」はすべて人型です。怪獣の形をしているとかそういう例は今のところ見当たらない。
これは、最終的に生成したいものが朱い月の素体、つまり人間型の生成物だからだ。「人の形をした人類最大の恐怖」が朱い月で、それを作ろうとしているから、ズェピアは人型の恐怖情報だけを収集しているのだ、と考えるとすじが通りやすい。
●次善の策たち
先にも書きましたが、どうやらズェピアは、「プランAが失敗したら自動的にプランBに移行する」といった重層的な計画を立てる人っぽいです。
計画がひとつ失敗したらそれでおしまいにならないよう、次の策を用意している。
「千年たっても自分を朱い月に作り替えることができない場合」の次善の策も用意していたと思います。
一言で要約するならば、
「ズェピアは次善の策として、『自分を真祖に作り替える』というプランも用意していた」
「恐怖の対象として真祖アルクェイド・ブリュンスタッドの姿が現れる街」(この場合は三咲町)をあらかじめ計算で割り出しておき、タタリがそこに発生するようプログラムしておいた。
この世にたった一人だけ生き残った真祖、アルクェイド・ブリュンスタッドの構成情報がまるごと手に入る。
自分を朱い月に作り替えることができないのなら、そのかわり自分を真祖アルクェイド・ブリュンスタッドに作り替えればよい。
この世にアルクェイド・ブリュンスタッドが2人いれば、the dark sixの蘇生を阻止したり、復活した朱い月を滅ぼしたり、その他の滅亡要因を排除したりできる目がある。
(もちろん、アルクェイドになったあと朱い月に自分の体を明け渡して、朱い月を復活させることもできる)
だが、もしそれにも失敗した場合はどうなるのか。さらに次の策はあるのか。
どうせ人類が滅ぶなら、二十七祖による第六の成立=朱い月の復活によって滅ぶのがよい、とズェピアは考えていそうな気がする。
本稿の説では、二十七祖による第六が成立したとき、全人類の命が朱い月の構成要素になる。
それは考えようによっては、「全人類は朱い月になって永遠に生き続ける」といえなくもない……。
それが「滅びの回避」だといえるのか? という疑問は当然あるでしょうが、ズェピアの後継者であるオシリスの砂が、似たような発想で人類を救う気になっていました。
それに大前提としてズェピアは気が触れている人です。
『メルティブラッド』作中でズェピアが自分で言ってたことですが、彼はタタリの現場において、人々の願望を悪意で叶えてきました。
豊作を願った村では、村人全員の死体を畑にまいて栄養を与えた。人々が仲違いしている村では、全員をいたぶり殺すことで人々の心を「死にたくない」気持ちでひとつにした。流行病に苦しむ村では、全員を殺すことで病気の進行を止めた。
そういう彼は、「滅亡したくない」という人類の願望を、「人類全員が朱い月に吸われる」というかたちでかなえてしまいそうです。
●滅びという手段による第六魔法
それと同様の発想(人類の願望を曲解して叶える)を、朱い月も持っていそうな感じがします。
朱い月さんも、滅亡したくないという人類の願いを、
「私の一部となって永遠に生きればよかろう」
という形でかなえそうな気がする。
それに朱い月は、
「人間が幸せじゃないのは生きているからだ。生きているのをやめれば不幸も消滅する。幸せなのと同じことになる」
くらいのことを平然といいそうだ。
もし朱い月が、本気でそんなことを思って、実行した場合……。
「みんなを幸せにする」
という第六の魔法が、実現した、と言えてしまう。
人類滅亡を伴う「第六法」が実現したとき、同時に「第六魔法」が、ゆがんだ形ではあっても実現したことになる。
ゲーティアもそうです。彼は、人類と人類史をまるごと燃やして、人間を合理的な形に再デザインしようとしていました。
これは、現行の人類にとっては滅亡ですが、再デザインされた新人類にとっては「みんなを幸せにする」行為です。
ゲーティアの計画は、新人類たちにとっては第六魔法の成就です。
TYPE-MOON世界には「人類悪」という存在が設定されています。これは「人類が好きすぎるあまりに起こした行動で人類を滅ぼしてしまう存在」くらいに言われています。
これを恣意的に言い換えれば、「みんなを幸せにする第六魔法を実現しようとして結果的に人類絶滅の第六法を引き起こしてしまう」と表現できそうだ。
だからたぶん、第六魔法と第六法は表裏一体になっていて、片方を実現しようとすると、もう片方がもれなくついてきてしまう。
そして、そのような「滅びという手段による第六魔法」をなんとかして阻止しようとしているのが、TYPE-MOON作品の主人公たちであり、特に蒼崎青子なのだと私は思っています。
蒼崎青子についての話は次回に続きます。
●死徒に関する余談1:ズェピアと第三
『MELTY BLOOD 路地裏ナイトメア』には、「ズェピアは(第六ではなく)第三魔法に挑んで敗れた」と書いてあります。
これは、「第三魔法で人類を救おうとしたが、できなかったので、第六法の克服=世界ルールのハッキングに方法を切り替えた」くらいの受け取り方でいいのかなって思っています。
前回のラストでちょっと書き添えたのですが、第三魔法の意義は「人間の限界の突破」。第六魔法の意義は「人類の未来をふさいでいる限界の突破」。
「人を新たなステージに導く」という点で同じ意味合いです。
第三魔法によって人類が不滅の存在になれば滅びはスマートに回避できます。ズェピアは、それが最良の解決だと考えていたが、できなかったので、次善の策である第六法ルールの改ざんにとりくんだ。
●余談1.5:なぜ第三魔法は実現できないのか?
余談ついでに。
「第三魔法は、アインツベルンが長年必死になっているのに、いまだに再現できてない」
(ユスティーツァという限定的な例外を除いて)
という話があります。
これは言い換えると、
「第三魔法は、なぜ再現できないのか」
という「謎」があることになります。
この謎に対する私の(本稿の)解答はこうです。
「第三魔法で、物質化された魂の人間が製造されてしまうと、その人物は不滅なので、≪人類は必ず滅ぶという絶対のルール=第六法≫に抵触してしまうから」
ようするに、第三魔法で超人が誕生しちゃうと、人類は絶対に滅ばない。
世界に組み込まれたプログラム第六法が「そいつはまずいぜ」ってことでアインツベルンやコミック版ズェピアに干渉して、絶対に第三魔法が再現できないよう妨害をかけている。
コミック版ズェピアさんは、第三魔法がどうしても実現できないのはなぜか、という謎について本気で考えた(アトラス院の演算能力を借りたかも)。
その結果、
「第三魔法が再現できないのはこの世界のルールによって妨害されているからだ。そのルールとは≪人類はいずれ必ず滅ぶ≫というものにちがいない」
という結論にたどり着いた。
「ならばその≪世界のルール≫プログラムをハッキングして改ざんしてやれば、人類滅亡は回避できるのではないか」
ということになった。
それでズェピアは、第三魔法による人類の生存、というプランを停止し、「第六法に挑む」(人類は滅ぶという絶対的プログラムの改ざん)へと方針を変更した。
以上が私の答案ですが、これだとひとつ疑問が生じます。それは、
「世界のルール=プログラムによって第三魔法が妨害されているのなら、最初の第三魔法使いは、どうして第三魔法を実現できたのか」(というか、できないことになるのでは)
しかしそこは、私は問題ないと思っています。
なぜなら、魔法は、世界にとっても人類にとっても完全に理外の存在、イレギュラーな存在だ、という情報があるからです。
そもそも魔法とは、「どんな手段をもちいたとしても絶対に実現できないこと」なのでした。
魂を物質化して不滅の人間を作る、なんていうことは、絶対に実現不能なことだったので、世界に組み込まれたプログラム第六法は、「魂を物質化することを禁ず」なんていう機能をそもそも持っていなかった。
そんな現象はこの世において絶対に発生しないはずだったのでそれを阻止するシステムもなかった。
しかし、第三魔法の魔法使い(本稿の説では聖母マリア)は、ゲームのバグ技みたいなものを駆使して、そいつを実現してしまいました。
世界に組み込まれたプログラム第六法は、そんなものが実現されてしまったという事実を感知して、ビックリする。
不滅の人間なんてものを作られては、「人類は必ず滅ぶ」というルールが完遂できなくなってしまう!
そこで世界に組み込まれた第六法は、「人類滅亡ルールに抵触する者を消す」攻撃プログラムを起動する。
まず第三の魔法使い(本稿では聖母マリア)を消滅させる。
これによって、「第三魔法の使い手はAD(西暦)前夜にこの世から去った」という現象が発生した。
(これではなくて「第三魔法使いは自分のコピーを生成したので自然消滅」でもかまわない)
続いて第六法は、第三魔法で発生した「物質化された魂の人間」(本稿の説ではジーザス)を消滅させようとする。
しかし「物質化された魂の人間」は不滅の存在なので、消滅させることができなかった。
生存した「物質化された魂の人間」(ジーザス)は第一魔法と呼ばれる一連の事績を発生させたのち、本稿の説のとおり、自ら、不滅の存在であることをやめる。
さて、第六法のシステムは、この一連の事件によって、まったくもって想定外だった第三魔法というものが実現しうるということを把握した。
ジーザスさんは、不滅であることをゴルゴダにおいて自ら辞退したので、世界は致命的なシステムエラーに陥らずにすんだ。でも、ふたたび第三魔法が行使され、その結果物質化された魂の人間が再発生した場合、その不滅人間が、自ら不滅性を放棄してくれるとはかぎらない。
もし放棄してくれなかったら、人類滅亡ルールは完遂できないことになる。
なので第六法としては、「二度と第三魔法を発生させてはならない」。
そこで第六法に、「第三魔法を監視し、妨害する」という機能が(この時点から)組み込まれる。
この機能が組み込まれたのちは、世界を動かしているプログラムが第三魔法への試みを常に監視しており、常に妨害するので、第三魔法は基本的に成功しないことになった。
●死徒に関する余談2:ネロ・カオスの永遠メソッド
死徒二十七祖、ネロ・カオス氏も、なにしろ二十七祖ですから「永遠の実現」をテーマにして研究をしている見込みです。
彼は自分の身体の中に、大量の動物を取り込んで溶かす、というアプローチをしています。このアプローチの行き着く先に「永遠の存在」が生まれるはずだ、と彼は思っていることになる。
ズェピアは「人類が恐怖するものの情報」をやたらめったら手当たりしだい採集するという方法で、朱い月を再生しようとしていました(本稿における推定)。
それに対してネロ・カオスは、人類ではなく「動物すべて」にアプローチしたっぽい。
この世の動物という動物を、現実のものも幻想上のものも、ぜんぶひとまとめに自分の体内にとりこんで、どろどろのスープ状にする。
そうすることで、生命の進化の樹形図という「秩序」をばらばらに解体して、ぐっちゃんぐっちゃんのカオス状態にする。
取り込んだ大量の動物因子を、ランダムにシャッフルする。
そのシャッフルを、無限に実施し続ける。
そうするといつか偶然にも、現状の進化樹形図からは生まれ得ないような、まったく斬新な生物が発生するかもしれない。
そういうトライをいつまでも続けたら、そのうちやがて、「現状の人類の限界を乗り越えた超人類(超生命)」が発生する可能性はゼロではない。
そのような超人類は、おそらく不滅にして永遠の存在たりうるのではないか。そしてそのような超存在は朱い月の素体となりえるのではないか。
というようなことをネロ教授は考えてたりしないかなあ、というぼんやりとした仮説です。
●死徒に関する余談3・ロアの場合
ミハイル・ロア・バルダムヨォン氏は死徒二十七祖に匹敵する力を持った死徒ですが、なぜか死徒二十七祖にカウントしてもらえない(他の二十七祖が認めてくれない)という扱いになっています(注:旧設定)。
これは、ロアが採用した永遠の実現方法が、朱い月の復活に一切寄与しないから、ではないかと考えました。
ロアの手法は、「自分が死んだら、別の人間に乗り移って復活する」というものです。ロア個人は永遠に生き続けられるでしょうが、これを何百回くりかえしたところで、「朱い月の依り代になれる永遠に不滅の肉体」が生成されることはありません。
死徒二十七祖の存在目的は朱い月に物理的な永続性をもたらすことなので(たぶん)、それをする気がないロアは死徒二十七祖に仲間として認められることは決してない……くらいに考えると整合感はあります。
●追記・結局「第六法」って何なの?
ちょっと追加説明しといたほうがいいかなと思ったので、追記。
本稿の説では、「第六」「第六法」の意味が複数あります。とっちらかって混乱しそうなので、まとめておきます。
(以下すべて「本稿における説では」です)
まず、「第六法」のいちばん大きな意味は、
「この世のシステムに書き込まれた《人類はいずれ必ず滅ぶ》という絶対的ルール」
です。
ズェピアが第六法に挑んで敗れ、その結果、霧散してしまった……という「第六法」がこれです。
滅亡要因は複数用意されており、どれかひとつでも起動したらおしまいというものです。
第六法を克服することが「第六魔法」です。
次に、メレム・ソロモンが「第六は死徒たちにとっての悲願だ」といったり、朱い月がズェピアに向かって「その身が第六と成る事はない」といったりするときの「第六」。
タタリモードのズェピアや、ネロ・カオスなど、研究者タイプの死徒が目指しているものです。
これは「朱い月になること」。
具体的には「自らに朱い月を憑依させること」「自分の身体を、朱い月が降臨してくるにふさわしいだけのクオリティを備えた状態に作り替えること」です。
死徒が用意する「朱い月の身体」は地球産ですから、抑止力による排斥対象になりません。この形で復活した朱い月は、どんなに悪辣非道なことをやらかしても誰にも止められないという状態になります。
朱い月はこの状態になったら、誰に邪魔されることもなく人類を皆殺しにします。つまり「人類は滅亡するというルール」の意味での「第六法」が実現します。だから「第六」と呼ばれている。
最後に、死徒トラフィムがアルズベリで実現しようとしている「儀式としての第六」。これは本稿の説では、
「死徒二十七祖のうち6名を六身合体させ、人類の生命を吸い上げ、ひとつの偉大な存在=the dark sixに変える」
というものです。
朱い月はthe dark sixに憑依することが可能、という想定です。the dark sixが生まれても、そこに朱い月が乗り移っても、人類は滅ぶことになるので、「人類滅亡ルール」の意味での「第六法」が成り立つことになります。
ようするに死徒たちは、第六法の手段のことを第六といっている。死徒たちのいう第六の具体的な方法は朱い月が地球産の肉体をそなえて復活することだ。
私の頭の中にあるイメージはこんな感じです。
今回はここまで。続きます。次回は、「蒼崎青子は何を求めてどこへ行くのか」。
続きはこちらです。TYPE-MOONの「魔法」(7):蒼崎青子は何を求めてどこへ行くのか
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TYPE-MOONの「魔法」(6):「第六法」と「第六魔法」という双子
筆者-Townmemory 初稿-2022年3月27日 10時33分56秒
今回はズェピアがなぜワラキアの夜=タタリになったか。それに付随して再び第六魔法と第六法の話。
本稿はTYPE-MOON作品の世界観に設定されている「魔法」に関する仮説です。6回目です。この回から唐突に読み始める方への配慮はしておりませんので、第一回から順繰りにお読み下さい。
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●ワラキアの夜、登場
前回述べましたとおり、ズェピアが死徒になったのは、「第六法を打倒するための力がほしいから」でした。
前回の説にしたがえば、ズェピアは世界のシステムに書き込まれている「人類は滅亡する」というプログラム(第六法)を書き換えようとして失敗し、防御プログラムの反撃を受けて霧散してしまった。
が、ズェピアは頭の回る人なので、「負けて消えたらそれでおしまい」のつもりはサラサラなかった。書き換えに失敗し、自分が霧くらいまでばらばらにされたあとでも、第六法に挑み続けられる次善の策をこうじておいた。
(シオン)『MELTY BLOOD』(傍線は引用者による)
システムそのものを書き換える事はできませんでしたが、システムに留まる事はできたのです。
第六法に敗れたズェピアの体は霧散した。
けれどその霧散は彼が望んだ通りの霧散でした。
ズェピアという死徒を形成していた強大な霊子は拡散し、世界に留まった。
どうやらズェピアは、「プランAが失敗したら自動的にプランBに移行する」といった重層的な計画を立てるのが好きみたいです(頭の良い人のやり方だ)。
ズェピアはさまざまな策を講じて(アルトルージュの力を借りたり、世界のシステムにバグを仕込んだりして)、「自分を現象に変えた」といいます。
ズェピアの身体は霊子レベルまで分解して世界中に散らばったのですが、彼を構成していた霊子が、定期的に世界のどこか一カ所に集まり、ひとつの街を包み込む、というシステムを作った。このシステムを「タタリ」というそうです。
ズェピアの霊子に包まれた街は、「悪いウワサが現実になる」という状態になります。
たとえば「連続殺人鬼が街をうろついている」というウワサが発生したなら、本当に連続殺人鬼が出現して人を殺し始める。
タタリは、人々の立てたウワサがどういう種類のものであろうとも、「当該地域で生きている人間を全員殺害する」という行動を取ります。
そうして、当該地域の人の血を全部吸い尽くしたのち、かれは再び霊子の霧にもどって世界に散らばり、次の再生の時を待ちます。
そんなふうに、「自然災害のように突如として人間の町に現れ、人間を全滅させて、一夜にして姿を消す」というのが、現在のズェピアの姿です。
ズェピアがタタリとして初めて出現した土地がルーマニア=ワラキアだったので、彼はいま、「ワラキアの夜」というコードネームで呼ばれています。
今、ズェピア=ワラキアの夜は、「一夜にしてひとつの町を全滅させる災害級の吸血鬼」です。
でも、それってちょっとおかしい。ズェピアは、確定した人類の滅亡(=第六法)を克服したいと願っていた人ではなかったか。
なんでまた「ウワサを現実にし」「街ひとつの全人間の命を吸い上げ」「どこかに去って行く」なんていう存在になってしまったか。
●タタリになってどうしたいのか
『メルティブラッド』作中で、ワラキアの夜(ズェピア)は、何度も「第六法」「第六法」とくりかえし言っている。
(偽アルクェイド〔=ワラキアの夜〕)『MELTY BLOOD』
「わたしが貴方を取り込むのも、貴方がわたしを理解するのも変わらない。
主導権なんてわたしはいらない。ただ第六法にうち勝てればそれでいい。
ズェピアはシオンに「自分と融合してタタリになってくれ」とささやきかけます。そうしてくれるならシオンが主導権を握って活動してよいとまで言う。
なぜなら、「シオンと融合すればそのぶん強くなり、第六法に打ち勝てる可能性があがるからだ」と彼はのべます。
また、こんなセリフも。
(ワラキアの夜)『MELTY BLOOD』
夜が明けるまでに街中の人間を飲み尽くし、再び第六法に挑まねばならぬのだ。愉しみなど何処にある!」
ワラキア=ズェピアは、第六法に「挑みたい」「打ち勝ちたい」といっている。いまだに彼が第六法にこだわっていることはまちがいない。
人間の形を失ったいまでも、なんとかして人類の滅亡を避けるすべはないかと考えていそうです。
いったいどうして彼は、「ウワサを現実にして街を滅ぼすタタリ」になることが「第六法の克服につながる」と考えたのだろう。
●「朱い月になる」という「第六」
(朱い月)『MELTY BLOOD』(傍線引用者)
「戯け。夢から覚めるがいい、死徒。おまえが望んだ奇跡は叶わぬ。
たとえ何千と年月を重ねようが、その身が第六と成る事はない。
無限の時間を連ねれば第六に至ると思うは自由。僅かな可能性に懸けるもよかろう。
だが奇跡の果てを知れ。
その姿こそ、汝の果てよ」
作中、朱い月が現れてズェピアにこう言います。「おまえのやりかたでは第六にはなれない」「おまえは第六には至れない」。ズェピアはそれを聞いて絶望にうちひしがれます。
ズェピアは、第六に「なろう」としていたようです。第六は「なれるもの」という新しい補助線が出てきました。
ここでいう第六を「第六魔法」だとする考え方もありうるでしょう。その場合「第六になれない」は「人類を救済する者にはなれない」という意味になります。が。
ひとつの街をまるごと滅ぼすことを繰り返す、というタタリのあり方と、人類の救済のイメージはいまひとつ合わない。
それに、「おまえのやりかたでは第六にはなれない」と言ったのは朱い月です。朱い月は、人間を滅ぼす意味での第六法を推進してるっぽい人ですので、ここでは「役立たずめ」くらいの意味で言っていると考えるほうが整合しそうです。
じゃあズェピアは人間を滅亡させようとしているのか?
と思うと、直後に次のようなセリフがある。
(ズェピア)『MELTY BLOOD』
「ハハ、ハハハ、ハハハハハハハハハハハハ!
そうか、至らぬのか。何千年とタタリを続けようが、私ではおまえに至れぬというのか、朱い月よ!」
朱い月に向かって「私はおまえに至れぬのか」といっている。これは朱い月から「おまえは第六に至れぬ」といわれた直後です。
となると、ズェピアの望み「第六になりたい」は、「朱い月になりたい」と同じ意味になる。
これは「第六」のちょっと新しい用法です。「the dark sixの蘇生」や「人類滅亡の絶対的ルール」ではない意味。「第六とは朱い月になること」。
(前者にはちょっと似ているし、「第六は死徒の悲願」は「朱い月になる」の意味でも成立しそうですが)
情報をまとめるとこうなります。
・ズェピアは、人類の滅亡を回避したい(そのためにタタリになった)。
・ズェピアは、朱い月になりたい(そのためにタタリになった)。
この二つの条件を同時に満たす理屈を発見できれば、ズェピアのもくろみを理解できたことになりそうです。
●朱い月になれば人類を救える
それについての私の答案はこう。
まず関係ありそうな周辺情報をまとめましょう。
・ズェピアは死徒二十七祖のひとりである(事実)。
・ズェピアはタタリになるとき、死徒二十七祖のリーダー格・アルトルージュの助力を得た(事実)。
・死徒二十七祖は永遠の存在になる方法を探している(事実)。
・それは朱い月の依り代となる永遠の身体を製造するためである(推定)。
死徒二十七祖は、主人である朱い月復活のための身体を作りたがっている研究者たちです(たぶん)。
ズェピアはべつだん、そんな目的で死徒になったわけではなさそうですが、アルトルージュがズェピアに協力しているので、
「ズェピアがやろうとしていることは、朱い月の復活にもつながることである」
と考えてよさそうです。
死徒二十七祖はそれぞれの方法で永遠の存在になる方法を探しています。それは朱い月の身体をつくるためだと推定されています。
もし、二十七祖のだれかが、「the dark six」の復活儀式より先に、朱い月の身体作りに成功したら、the dark sixの儀式はどうなるのだろう?
the dark sixの儀式は朱い月の依り代となる身体をつくるためのものですから、それより前に身体作りに成功した者がいれば、the dark sixの復活儀式は中止される道理です。
本稿の説では、the dark six復活儀式の過程もしくは結果において人類が滅ぶ、という想定ですから、the dark sixの儀式が中止されるなら、人類は滅ばないことになる。
ほかの滅亡要因はまだあるにせよ、人類の未来を滅亡というかたちでふさいでいる壁に穴が空くことになる。
ようは、ズェピアが朱い月の素体を用意することができれば、人類滅亡の回避の目がみえてくる。
朱い月は魔王なんだから、朱い月が復活したらどのみち人類は滅亡するんじゃないの、という話もありますが、ズェピアが永遠存在になって朱い月の依り代になるということは、「ズェピアと朱い月は融合してひとつになる」ということなので、「ズェピアが朱い月に影響を与えたり、制御したりする」可能性が出てくる。
おあつらえむきに、前述のとおり「ズェピアとシオンは融合することができるし、その場合、ズェピアが主導権を握ることも、シオンが主導権を握ることもできる」という情報が作中に出ている。
この情報は、
「ズェピアの体に朱い月が降臨したとしても、ズェピアの意思が消滅するわけではない」
「ズェピアが朱い月として稼働するという状況もありうる」
という未来図(真相)に関する伏線の可能性があると思います。
このような想定の場合、
「ズェピアが朱い月(第六)になれば、人類の滅亡(第六法)が回避されうる」
「ズェピアは人類の滅亡(第六法)を回避するために、朱い月(第六)になりたい」
という条件が成立します。
……余談っぽい傍証ですが、二十七祖のメレム・ソロモンが、
「朱い月とアルクェイド、両者に対して忠誠を誓っている」
「二十七祖の首領トラフィムが主催する第六(おそらくthe dark sixを蘇生することで朱い月の素体を用意する計画)を阻止したがっている」(『Character material』によれば)
というのも、同様の理屈で説明がつきそうだ。
アルクェイドは、朱い月がゼルレッチに倒されて霧散してから500年くらいあとに生まれた真祖で、朱い月の素体となりうるクオリティを備えています。
メレム・ソロモンが「アルクェイドにも」忠誠を示し、「トラフィムの第六に反対」する理由は、
「アルクェイドの身体に朱い月が降臨するという形での、朱い月復活を望んでいるから」
くらいに考えれば、すじは通りそう。
彼にしてみれば、
「アルクェイドと朱い月が合体するという形で復活してほしいのに、それより前に別の方法で朱い月を復活させてもらっちゃあ困る」
同じく『Character material』によれば、『月姫』でネロ・カオスがアルクェイドを倒しに来た理由は、トラフィムにそそのかされたためらしい。
これはメレムと正反対の理由だと考えても面白い。トラフィムは自分の第六計画によって朱い月が復活してほしいので、「それより前に朱い月がぽろっと復活してもらっちゃ困る」。
なので朱い月の素体となりうるアルクェイドを排除しようとする。
余談終わり。
さて、そこまでの話をOKとしましょう。上記の理屈により、ズェピアが朱い月になることができれば、人類滅亡の可能性が回避されうる。ズェピアはそれを目指している。
しかし、どうして「タタリを起こすと朱い月になれる」のだろう?
●朱い月になるためのメソッド
タタリが発生したとき起きる現象は主に二つです。
・標的となる街において「恐怖の対象」とされるものが実体化する。
・標的となる街の人々の血をズェピアが吸い尽くす。
これを、「ズェピアの情報収集」だと考えてみてはどうでしょう。
大量の人の血を飲み干すのは、エネルギー源にする目的だけではなく、「人間ひとりひとりの情報」を大量に収集しているのだと考える。
人々の恐怖の対象を実体化するのは、実体化そのものが目的ではなく、「人間は、どういった存在に対して致死的な恐怖を感じるのか」という情報を、人々の深層意識から引き出している。
『メルティブラッド』の主人公シオンはエーテライトという先祖伝来の道具を持っています。これは「他人の脳内に記憶されている情報をコピーして自分のものにする」というアイテムです。
ズェピアはシオンのご先祖様なので、エーテライトを持っていて使いこなせます。ズェピアの一族は「他人から情報を搾取する」という手法で成功してきた一族なのです。
朱い月は、人類を皆殺しにし、人理を世界からひっぺがし、地球をまるごと自分一人のものにしようとする最強最悪の魔王です。
これを恣意的に言い換えたら、「全人類にとっての恐怖の結晶」くらいに言える存在です。
ズェピアはきっとこう考えた。
朱い月は全人類の恐怖そのものだ。だから私は、大量の人間の深層意識から「人が思う恐怖のかたち」を情報として吸い上げてみよう。
それを一千年ものあいだ続けたら、その恐怖の情報を元にして、自分自身を朱い月につくりかえることができるのではないか。
先ほども引用しましたが、
(ワラキアの夜)『MELTY BLOOD』
夜が明けるまでに街中の人間を飲み尽くし、再び第六法に挑まねばならぬのだ。愉しみなど何処にある!」
ズェピアは、街ひとつの人間の血を飲み干してエネルギーを貯めるごとに、今まで集めた恐怖の情報を元にして、自分を朱い月に作り替えてみる(第六に挑む)、ということをトライしていそうです。
しかし、これまで成功したことはない。(朱い月によれば、今後も成功しない)
常に失敗している。
私が思うに、タタリ発生のたびに行われるこのトライとその失敗が、『メルティブラッド』冒頭で表示される「Program No.6 Error」。
失敗するとズェピアは霊子の霧にもどり、つぎのタタリまで時を待つ。そうして次のタタリで、追加の情報を収集して再トライする。
作中の表現を見るかぎり、ズェピアが実体化させた「恐怖の存在」はすべて人型です。怪獣の形をしているとかそういう例は今のところ見当たらない。
これは、最終的に生成したいものが朱い月の素体、つまり人間型の生成物だからだ。「人の形をした人類最大の恐怖」が朱い月で、それを作ろうとしているから、ズェピアは人型の恐怖情報だけを収集しているのだ、と考えるとすじが通りやすい。
●次善の策たち
先にも書きましたが、どうやらズェピアは、「プランAが失敗したら自動的にプランBに移行する」といった重層的な計画を立てる人っぽいです。
計画がひとつ失敗したらそれでおしまいにならないよう、次の策を用意している。
「千年たっても自分を朱い月に作り替えることができない場合」の次善の策も用意していたと思います。
(偽アルクェイド)『MELTY BLOOD』(傍線は引用者による)
「当然でしょう。ワラキアの夜の目的はタタリなんかじゃない。ズェピアという祖が試みたのは真祖と成る事。
ズェピアはね、どのような要素が絡んでこうなるかは知らなかったけれど、この時間この街にわたしが留まって、真祖としての在り方を薄めているって答えを出した。
ズェピアは二次的な保険として、真祖の姫が祟りになるような地域を調べ上げ、結果としてわたしはこうしてここにいる。
―――紆余曲折したけど、これがズェピアの目的でもある。
ワラキアの夜の名称は今宵で終わりよ」
一言で要約するならば、
「ズェピアは次善の策として、『自分を真祖に作り替える』というプランも用意していた」
「恐怖の対象として真祖アルクェイド・ブリュンスタッドの姿が現れる街」(この場合は三咲町)をあらかじめ計算で割り出しておき、タタリがそこに発生するようプログラムしておいた。
この世にたった一人だけ生き残った真祖、アルクェイド・ブリュンスタッドの構成情報がまるごと手に入る。
自分を朱い月に作り替えることができないのなら、そのかわり自分を真祖アルクェイド・ブリュンスタッドに作り替えればよい。
この世にアルクェイド・ブリュンスタッドが2人いれば、the dark sixの蘇生を阻止したり、復活した朱い月を滅ぼしたり、その他の滅亡要因を排除したりできる目がある。
(もちろん、アルクェイドになったあと朱い月に自分の体を明け渡して、朱い月を復活させることもできる)
だが、もしそれにも失敗した場合はどうなるのか。さらに次の策はあるのか。
どうせ人類が滅ぶなら、二十七祖による第六の成立=朱い月の復活によって滅ぶのがよい、とズェピアは考えていそうな気がする。
本稿の説では、二十七祖による第六が成立したとき、全人類の命が朱い月の構成要素になる。
それは考えようによっては、「全人類は朱い月になって永遠に生き続ける」といえなくもない……。
それが「滅びの回避」だといえるのか? という疑問は当然あるでしょうが、ズェピアの後継者であるオシリスの砂が、似たような発想で人類を救う気になっていました。
それに大前提としてズェピアは気が触れている人です。
『メルティブラッド』作中でズェピアが自分で言ってたことですが、彼はタタリの現場において、人々の願望を悪意で叶えてきました。
豊作を願った村では、村人全員の死体を畑にまいて栄養を与えた。人々が仲違いしている村では、全員をいたぶり殺すことで人々の心を「死にたくない」気持ちでひとつにした。流行病に苦しむ村では、全員を殺すことで病気の進行を止めた。
そういう彼は、「滅亡したくない」という人類の願望を、「人類全員が朱い月に吸われる」というかたちでかなえてしまいそうです。
●滅びという手段による第六魔法
それと同様の発想(人類の願望を曲解して叶える)を、朱い月も持っていそうな感じがします。
朱い月さんも、滅亡したくないという人類の願いを、
「私の一部となって永遠に生きればよかろう」
という形でかなえそうな気がする。
それに朱い月は、
「人間が幸せじゃないのは生きているからだ。生きているのをやめれば不幸も消滅する。幸せなのと同じことになる」
くらいのことを平然といいそうだ。
もし朱い月が、本気でそんなことを思って、実行した場合……。
「みんなを幸せにする」
という第六の魔法が、実現した、と言えてしまう。
人類滅亡を伴う「第六法」が実現したとき、同時に「第六魔法」が、ゆがんだ形ではあっても実現したことになる。
ゲーティアもそうです。彼は、人類と人類史をまるごと燃やして、人間を合理的な形に再デザインしようとしていました。
これは、現行の人類にとっては滅亡ですが、再デザインされた新人類にとっては「みんなを幸せにする」行為です。
ゲーティアの計画は、新人類たちにとっては第六魔法の成就です。
TYPE-MOON世界には「人類悪」という存在が設定されています。これは「人類が好きすぎるあまりに起こした行動で人類を滅ぼしてしまう存在」くらいに言われています。
これを恣意的に言い換えれば、「みんなを幸せにする第六魔法を実現しようとして結果的に人類絶滅の第六法を引き起こしてしまう」と表現できそうだ。
だからたぶん、第六魔法と第六法は表裏一体になっていて、片方を実現しようとすると、もう片方がもれなくついてきてしまう。
そして、そのような「滅びという手段による第六魔法」をなんとかして阻止しようとしているのが、TYPE-MOON作品の主人公たちであり、特に蒼崎青子なのだと私は思っています。
蒼崎青子についての話は次回に続きます。
●死徒に関する余談1:ズェピアと第三
『MELTY BLOOD 路地裏ナイトメア』には、「ズェピアは(第六ではなく)第三魔法に挑んで敗れた」と書いてあります。
結末は虚しく『MELTY BLOOD 路地裏ナイトメア(1)』桐島たける他 p.157
タタリと成り果てるも
第三魔法という夢に
挑み敗れたがゆえ
これは、「第三魔法で人類を救おうとしたが、できなかったので、第六法の克服=世界ルールのハッキングに方法を切り替えた」くらいの受け取り方でいいのかなって思っています。
前回のラストでちょっと書き添えたのですが、第三魔法の意義は「人間の限界の突破」。第六魔法の意義は「人類の未来をふさいでいる限界の突破」。
「人を新たなステージに導く」という点で同じ意味合いです。
第三魔法によって人類が不滅の存在になれば滅びはスマートに回避できます。ズェピアは、それが最良の解決だと考えていたが、できなかったので、次善の策である第六法ルールの改ざんにとりくんだ。
●余談1.5:なぜ第三魔法は実現できないのか?
余談ついでに。
「第三魔法は、アインツベルンが長年必死になっているのに、いまだに再現できてない」
(ユスティーツァという限定的な例外を除いて)
という話があります。
これは言い換えると、
「第三魔法は、なぜ再現できないのか」
という「謎」があることになります。
この謎に対する私の(本稿の)解答はこうです。
「第三魔法で、物質化された魂の人間が製造されてしまうと、その人物は不滅なので、≪人類は必ず滅ぶという絶対のルール=第六法≫に抵触してしまうから」
ようするに、第三魔法で超人が誕生しちゃうと、人類は絶対に滅ばない。
世界に組み込まれたプログラム第六法が「そいつはまずいぜ」ってことでアインツベルンやコミック版ズェピアに干渉して、絶対に第三魔法が再現できないよう妨害をかけている。
コミック版ズェピアさんは、第三魔法がどうしても実現できないのはなぜか、という謎について本気で考えた(アトラス院の演算能力を借りたかも)。
その結果、
「第三魔法が再現できないのはこの世界のルールによって妨害されているからだ。そのルールとは≪人類はいずれ必ず滅ぶ≫というものにちがいない」
という結論にたどり着いた。
「ならばその≪世界のルール≫プログラムをハッキングして改ざんしてやれば、人類滅亡は回避できるのではないか」
ということになった。
それでズェピアは、第三魔法による人類の生存、というプランを停止し、「第六法に挑む」(人類は滅ぶという絶対的プログラムの改ざん)へと方針を変更した。
以上が私の答案ですが、これだとひとつ疑問が生じます。それは、
「世界のルール=プログラムによって第三魔法が妨害されているのなら、最初の第三魔法使いは、どうして第三魔法を実現できたのか」(というか、できないことになるのでは)
しかしそこは、私は問題ないと思っています。
なぜなら、魔法は、世界にとっても人類にとっても完全に理外の存在、イレギュラーな存在だ、という情報があるからです。
そもそも魔法とは、「どんな手段をもちいたとしても絶対に実現できないこと」なのでした。
魂を物質化して不滅の人間を作る、なんていうことは、絶対に実現不能なことだったので、世界に組み込まれたプログラム第六法は、「魂を物質化することを禁ず」なんていう機能をそもそも持っていなかった。
そんな現象はこの世において絶対に発生しないはずだったのでそれを阻止するシステムもなかった。
しかし、第三魔法の魔法使い(本稿の説では聖母マリア)は、ゲームのバグ技みたいなものを駆使して、そいつを実現してしまいました。
世界に組み込まれたプログラム第六法は、そんなものが実現されてしまったという事実を感知して、ビックリする。
不滅の人間なんてものを作られては、「人類は必ず滅ぶ」というルールが完遂できなくなってしまう!
そこで世界に組み込まれた第六法は、「人類滅亡ルールに抵触する者を消す」攻撃プログラムを起動する。
まず第三の魔法使い(本稿では聖母マリア)を消滅させる。
これによって、「第三魔法の使い手はAD(西暦)前夜にこの世から去った」という現象が発生した。
(これではなくて「第三魔法使いは自分のコピーを生成したので自然消滅」でもかまわない)
続いて第六法は、第三魔法で発生した「物質化された魂の人間」(本稿の説ではジーザス)を消滅させようとする。
しかし「物質化された魂の人間」は不滅の存在なので、消滅させることができなかった。
生存した「物質化された魂の人間」(ジーザス)は第一魔法と呼ばれる一連の事績を発生させたのち、本稿の説のとおり、自ら、不滅の存在であることをやめる。
さて、第六法のシステムは、この一連の事件によって、まったくもって想定外だった第三魔法というものが実現しうるということを把握した。
ジーザスさんは、不滅であることをゴルゴダにおいて自ら辞退したので、世界は致命的なシステムエラーに陥らずにすんだ。でも、ふたたび第三魔法が行使され、その結果物質化された魂の人間が再発生した場合、その不滅人間が、自ら不滅性を放棄してくれるとはかぎらない。
もし放棄してくれなかったら、人類滅亡ルールは完遂できないことになる。
なので第六法としては、「二度と第三魔法を発生させてはならない」。
そこで第六法に、「第三魔法を監視し、妨害する」という機能が(この時点から)組み込まれる。
この機能が組み込まれたのちは、世界を動かしているプログラムが第三魔法への試みを常に監視しており、常に妨害するので、第三魔法は基本的に成功しないことになった。
●死徒に関する余談2:ネロ・カオスの永遠メソッド
死徒二十七祖、ネロ・カオス氏も、なにしろ二十七祖ですから「永遠の実現」をテーマにして研究をしている見込みです。
彼は自分の身体の中に、大量の動物を取り込んで溶かす、というアプローチをしています。このアプローチの行き着く先に「永遠の存在」が生まれるはずだ、と彼は思っていることになる。
ズェピアは「人類が恐怖するものの情報」をやたらめったら手当たりしだい採集するという方法で、朱い月を再生しようとしていました(本稿における推定)。
それに対してネロ・カオスは、人類ではなく「動物すべて」にアプローチしたっぽい。
この世の動物という動物を、現実のものも幻想上のものも、ぜんぶひとまとめに自分の体内にとりこんで、どろどろのスープ状にする。
そうすることで、生命の進化の樹形図という「秩序」をばらばらに解体して、ぐっちゃんぐっちゃんのカオス状態にする。
取り込んだ大量の動物因子を、ランダムにシャッフルする。
そのシャッフルを、無限に実施し続ける。
そうするといつか偶然にも、現状の進化樹形図からは生まれ得ないような、まったく斬新な生物が発生するかもしれない。
そういうトライをいつまでも続けたら、そのうちやがて、「現状の人類の限界を乗り越えた超人類(超生命)」が発生する可能性はゼロではない。
そのような超人類は、おそらく不滅にして永遠の存在たりうるのではないか。そしてそのような超存在は朱い月の素体となりえるのではないか。
というようなことをネロ教授は考えてたりしないかなあ、というぼんやりとした仮説です。
●死徒に関する余談3・ロアの場合
ミハイル・ロア・バルダムヨォン氏は死徒二十七祖に匹敵する力を持った死徒ですが、なぜか死徒二十七祖にカウントしてもらえない(他の二十七祖が認めてくれない)という扱いになっています(注:旧設定)。
これは、ロアが採用した永遠の実現方法が、朱い月の復活に一切寄与しないから、ではないかと考えました。
ロアの手法は、「自分が死んだら、別の人間に乗り移って復活する」というものです。ロア個人は永遠に生き続けられるでしょうが、これを何百回くりかえしたところで、「朱い月の依り代になれる永遠に不滅の肉体」が生成されることはありません。
死徒二十七祖の存在目的は朱い月に物理的な永続性をもたらすことなので(たぶん)、それをする気がないロアは死徒二十七祖に仲間として認められることは決してない……くらいに考えると整合感はあります。
●追記・結局「第六法」って何なの?
ちょっと追加説明しといたほうがいいかなと思ったので、追記。
本稿の説では、「第六」「第六法」の意味が複数あります。とっちらかって混乱しそうなので、まとめておきます。
(以下すべて「本稿における説では」です)
まず、「第六法」のいちばん大きな意味は、
「この世のシステムに書き込まれた《人類はいずれ必ず滅ぶ》という絶対的ルール」
です。
ズェピアが第六法に挑んで敗れ、その結果、霧散してしまった……という「第六法」がこれです。
滅亡要因は複数用意されており、どれかひとつでも起動したらおしまいというものです。
第六法を克服することが「第六魔法」です。
次に、メレム・ソロモンが「第六は死徒たちにとっての悲願だ」といったり、朱い月がズェピアに向かって「その身が第六と成る事はない」といったりするときの「第六」。
タタリモードのズェピアや、ネロ・カオスなど、研究者タイプの死徒が目指しているものです。
これは「朱い月になること」。
具体的には「自らに朱い月を憑依させること」「自分の身体を、朱い月が降臨してくるにふさわしいだけのクオリティを備えた状態に作り替えること」です。
死徒が用意する「朱い月の身体」は地球産ですから、抑止力による排斥対象になりません。この形で復活した朱い月は、どんなに悪辣非道なことをやらかしても誰にも止められないという状態になります。
朱い月はこの状態になったら、誰に邪魔されることもなく人類を皆殺しにします。つまり「人類は滅亡するというルール」の意味での「第六法」が実現します。だから「第六」と呼ばれている。
最後に、死徒トラフィムがアルズベリで実現しようとしている「儀式としての第六」。これは本稿の説では、
「死徒二十七祖のうち6名を六身合体させ、人類の生命を吸い上げ、ひとつの偉大な存在=the dark sixに変える」
というものです。
朱い月はthe dark sixに憑依することが可能、という想定です。the dark sixが生まれても、そこに朱い月が乗り移っても、人類は滅ぶことになるので、「人類滅亡ルール」の意味での「第六法」が成り立つことになります。
ようするに死徒たちは、第六法の手段のことを第六といっている。死徒たちのいう第六の具体的な方法は朱い月が地球産の肉体をそなえて復活することだ。
私の頭の中にあるイメージはこんな感じです。
今回はここまで。続きます。次回は、「蒼崎青子は何を求めてどこへ行くのか」。
続きはこちらです。TYPE-MOONの「魔法」(7):蒼崎青子は何を求めてどこへ行くのか
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※ご注意●本稿は現実に存在する筆者(Townmemory)の思想・信条・思考・研究結果を表現した著作物です。内容の転載・転用・改変等を禁じます。紹介ないし引用を行う際は必ず出典としてブログ名・記事名・筆者名・URLを明示しなければなりません。ネットで流布している噂ないし都市伝説の類としての紹介を固くお断りします。これに反する利用に対して法的手段をとる場合があります。
TYPE-MOONの「魔法」(8)まで拝見させていただきました。どれも面白くて興味深い考察でワクワクさせられた。その中で1つ考えさせられたものがあり、共有させていただければと思います。他の記事ですでに触れられていたらすみません。
自分が考えていたのは「第六法」についてです。基本的に「第六」「第六法」「第六魔法」の解釈はこの記事にほぼほぼ乗っかった上で話すのですが、なぜ、「第六法」は「『第六』法」なのか気になっていました。「第六魔法」はわかります。第一魔法から第五魔法まであるわけですから。
ココで考えたんです、もしかして「第六法」って書き方から第一~第五法まで存在していたのではないかと。『人類はいずれ必ず滅ぶ』ルールというものが。そしてそれを変えてきたのが「魔法」ではないのかと。 ここから更に飛躍しますが、
「第○法」とは『地球が生存するための命題、人類への枷』であり
「魔法」とは『命題を解決出来る事象』である、又は含んでいる。のではと考えました。自分が提示できる根拠は二つです。
1.「魔法」と「魔法級」の違い
これは単純に地球を生存させる事象と規模が揃っているか否かの違いと考えました。同じような事象、例えば第二魔法と燕返しとかです。とんでもない規模の力でも、地球を長生きさせる事象ではないなら「魔法級」であっても「魔法」ではないというわけです。
2.「第一魔法」と「第三魔法」の順番
こっちが説の本命。ここも考察に全乗っかりですが、なぜ第一魔法のほうが後に生まれたのに第一なのか、それは「第一法」『真エーテル枯渇により、資源を貪る人類を滅亡させ、少しでも長く地球を存続させる』等を解決出来る事象、第五架空要素(エーテル)の発見、普及を行い、人類の滅亡をする「第一法」を塗り替えた、第一の魔による法。これこそが「第一魔法」と呼ばれる所以であり、続く「第二法」を解決出来る事象を「第二魔法」、「第三法」には「第三魔法」と呼ぶのではないかと考察しました。
歯切れをよくするために解決と書いていますが、実際は間延びさせているだけだとは思っています。そもそも自分の説だと第四魔法と第五魔法がどう機能するか思い付きません、、、
ただこの説がカスってるかもという要素もあって、それが FateEXRTRA の存在で、HPのサーヴァント紹介文に第三法の記載があること、オーバーカウント1999の事象で第三法の制定が早まって行われた可能性、サーヴァントの紹介が第三魔法だとあまり一致しなそうな点、肉体と地上を捨てる→魂のみで地上に存在できる第三魔法のかみ合い、といった要素も取れるので、もし何かの足しになれたらと思います。
最後に、自分は第六魔法が第六法を対処するとは思っているのですが、それで助かるのは人類だけなのではないかと考えています。共に対処していくはずだった第六法を人類のみが乗り越え、地球は朽ちて自らの屍を踏む人類を恐れ、各惑星に助けをこう、これが一番鋼の大地に繋がってしまいそうだなと思っています。黒桐の発言と噛み合わないのでおかしいとは思っています。
かなり穴だらけな考察で申し訳ございません。いつも考察楽しませてもらっています、これからも期待しております。駄文長文失礼しました。
拝読しました。素晴らしいと思いました。
こういう理解でいいですか? つまり、第六法と第六魔法が「問題」と「解決」の関係になっていると捉える。
だとしたら、第一魔法から第五魔法も、同様に、何らかの問題・課題に対する解決になっているはずである。これを「第一法」「第二法」などと呼ぶのではないか。
第六法が、「人類に課せられた課題」として、世界にあらかじめインストールされたプログラムなのだとしたら、同様に、第一法から第五法という「人類への課題」が存在し、これらもまた、世界にインストールされたプログラムであるはずだ。
そしてこの課題に対する解答・解決法が、第一魔法から第五魔法であるはずだ。
私にはこの発想はなかったし、お話を聞いて、これは魅力的で美しい構造だと感じました。TYPE-MOON作品のどれかに「人類に残される課題は最終的に五つだろう」という話があったと記憶していますが(まほよだったかな)、これは第一法から第五法のことをいっている、と考えるときれいにあてはまりそうです。
あなたがご提供してくださったこのお話をうけて、私ならどういうふうに合わせるかな、と考えたのですが、第一から第五法を、「第六法で人類が滅ぶまでの五段階」みたいに捉える手があるかな、と思うのですが、どうでしょう。
例えば、第一法の中身を、
「人類は神秘的能力を失う」
といった形でとらえるわけです。
具体的には真エーテルが失われる。魔術が使えなくなる。神々の助力も得られなくなる。
これに対応する人類の対抗策が、真がつかないほうのエーテルの発見であった。
第三法は、「人類はこれ以上の進化の可能性を失う」くらいでとらえれば、第三魔法がその解決になりそうです。
そんな感じで、人類にがちゃがちゃ枷がはめられていき、行き着いたところに第六法「人類は滅亡する」が置いてある、みたいな感じで考えると、わたしとしてはわりと気持ちが良いです。
第二・四・五の内容はちょっとわかりません。第四法は「人類は異界からの助力を失う」、第二法は「人類は道筋を大きく変えるような選択肢を失う」みたいな方向性でいけるのかな? なんとなく腑に落ち切らないな、とか、今のところそんな感じです。
ともあれありがとうございました。これはすごく価値の高いご指摘です。