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犯行告発ep5・サファイア・アキュゼイション5(下)
筆者-初出●Townmemory -(2010/05/02(Sun) 10:52:24)・(2010/05/10(Mon) 20:35:35)
http://naderika.com/Cgi/mxisxi_index/link.cgi?bbs=u_No&mode=red&namber=45874,46318&no=0 (ミラー)
[Ep6当時に執筆されました]
●再掲にあたっての筆者注
「サファイア・アキュゼイション」第5回(後半)です。
前回を先にお読み下さい→ 「犯行告発ep5・サファイア・アキュゼイション5(上)」
☆
●6つの死体移動について
前回のエントリで、古戸ヱリカは、譲治、朱志香、真里亞、楼座、源次、蔵臼の6名をみごと殺害することができました。
が、それだけではまだ足りません。この後、死体が次々に消えていくという現象が発生します。
古戸ヱリカは、この死体消失現象を発生させます。
蔵臼の首を切った直後から話をスタートします。
まずヱリカは、蔵臼の死体をかついで、使われていなさそうな別室に運び、クローゼットの中にでも放り込んでおきます。
基本的にこのエピソードにおける「死体消失」はすべて、「別室に運んで鍵をかけておく」だけです。あとで屋敷の全部屋が捜索されるわけなのですが、捜索するのはヱリカ本人なのです。
いや、それどころか、捜索なんかまったくせずに、「全部屋を捜索しときました」と口で言うだけで良いのです。誰かを連れて一緒に家捜しをしたわけじゃないのです。
(「譲治は死後、遺体は一切、移動されていない!」という赤字については、後述します。今はとりあえず「何か抜け方があるんだな」くらいに思って下さい)
ヱリカは、蔵臼の死体をなんとしてでも隠さなければなりませんでした。なぜなら、蔵臼の死体を隠蔽することではじめて、夏妃に対して、
「蔵臼は拉致した。返してほしければ……」
という脅迫が可能になるのです。
ところが、蔵臼の死体を隠しただけではだめなのです。問題が発生します。
「蔵臼の姿が見えない。蔵臼が殺人犯であり、おじけづいて逃げ出したのだ」
という主張が、このままだと可能です。
ヱリカは、この主張が発生しない(通らない)ように仕向けなければなりません。
「いったん発見させた死体を全部、どこかに隠す」というアクションは、そのための手段なのです。
全部の死体を隠すとどうなるか。
「なんでかわからないが、この殺人犯は死体を隠したがるらしいぞ?」
ということになる。
蔵臼逃亡説の印象は急激に消え失せ、「あ、きっと、蔵臼は真っ先に殺されて、死体を運び去られたんだ」という印象がきわめて濃厚になります。
*
そういうことですから、ヱリカは、いとこ部屋の4つの死体を消しに行くことにします。
方法ですが、まず、いとこ部屋の惨状を見て、絵羽が泣き叫んでいる場面から。
ここにヱリカがおっとり刀で現れ、探偵権限とやらをふりかざして、現場検証を始めます。
その後、とにかく警察のために、現場を保存しよう。全員が退出して、ドアを施錠しようということになるはずです。
のちに死体消失が判明する場面で、ヱリカは一同に、
「この部屋はちゃんと施錠して行きましたよね?」
と確認しています。つまり、いとこ部屋には鍵を掛けたのです。ということは、誰かが現場に残ったりはせず、全員が「せーの」でいとこ部屋から退出したのです。悲嘆にくれる絵羽がひとり現場に残るということもなかった。
さて、いとこ部屋に鍵をかけ、とりあえず本館に行こうということになって、全員がぞろぞろと移動します。
ヱリカはさりげなくゲストハウスに残り、いとこ部屋に戻り、マスターキーで鍵をあけて、死体をかついで隣室に運び出します。4人ぶん運びおえたら隣室をロックして、死体消失完了です。
めんどくさかったら、「いとこ部屋のクローゼットに詰め込んだ」でもかまわないくらいです。
そんなんじゃすぐに見つかっちゃいそうですね。
でも見つかっても良いのです。ここでの死体消失の目的は、「この犯人は死体を隠したがる」という印象を作ることなのです。その印象さえ作ることができれば、べつだん、あとで死体が見つかってもかまわない。
隠蔽作業が終わったら、小走りで本館の客間に追いつきます。「ちょっと気になることがあったので、廊下を調べてました」くらいのことを言えば、全員が納得します。
*
いとこ部屋で死体発見と現場検証が行なわれているころ、熊沢と嘉音が、使用人控え室で源次の死体を発見しています。
右代宮一族の面々が、いとこ部屋から本館客間へと移動してくると、熊沢(と嘉音)によって、源次の死が知らされます。
ここの描写を見ると、使用人控え室に行って源次の死体を確認した人と、しなかった人がいるようです。
「源次さんまでかよ!?」などといって、留弗夫が客間で検死報告を聞いていますので、留弗夫は使用人控え室に行かなかった。
いっぽう、検死をした南條はもちろん行きました。ヱリカはもちろん行ったでしょう。
雰囲気的に、使用人控え室で現場検証をしたのは、最少人数ではヱリカ、南條、熊沢、(嘉音)、くらいじゃないかな。
(源次の死体の現場検証シーンは描かれていません)
源次殺しの現場検証が終わると、生存者全員が客間に集まることになります。
このタイミングで、ロノウェが、
「……ヱリカが全員を集めたのは、むしろ我らには好都合です」
なんてことを言うのです。
つまり、客間に全員が集まったのは、ヱリカの指示があったからだ、ということになります。
ヱリカは、使用人控え室で源次の死体を検分して、満足したあと、こんなことを言ったんじゃないかしら。
「とにかく、いったん全員を一カ所に集めましょう。熊沢さん、南條さん、すみませんがみなさんに客間に集まるよう呼びかけていただけませんか?」
その指示を受けて熊沢と南條(他に数人いてもよろしい)が、集合を呼びかけるために屋敷中に散っていきます。ヱリカは彼らと一緒に使用人控え室を出て、ドアを施錠し、南條たちが小走りに立ち去るのを見届けてから、おもむろにドアを開けて使用人控え室に入り、源次の死体をヨソに移します。
移す場所は任意の空き部屋。もしくは、使用人控え室にあると思われる押し入れです。
その作業を終えたら、余裕の顔で客間に現れ、全員が集まったところで、「おや蔵臼さんがいませんね? もう1人くらい死んでそうですよねー」みたいなことを言い出すのです。
*
このように、当推理では、ヱリカは殺した後で死体をばんばん移動させています。
ところが、
「譲治は死後、遺体は一切、移動されていない!」というシリーズの赤字があります。
この赤字があるので、譲治、朱志香、真里亞、楼座、源次、蔵臼の死体を動かしてはいけないのではないか。そういう疑問が生じます。
「譲治は死後、遺体は一切、移動されていない!」
という、この赤字の文章。
これは文法的に言ってひじょうに悪文なのです。主従関係のない同格の主語がふたつ入ってる。
文章として、ほとんど破綻しているといってもいい。
けれど、フワッと印象を受け取ると、
「譲治が死んだあと、譲治の死体は別の場所に動かされてはいないよ」
という意味に受け取れてしまいますよね。
そういう意味だと思わせておいて、実はちがうことを言っている、そんな叙述トリックの可能性があるんじゃないでしょうか。
たとえば、
「譲治の死後、金蔵の遺体は、一切移動されていない」とか、
(遺体は譲治のことじゃないので、移動可能になる)
「譲治の遺体は、秀吉の死後、一切移動されていない」とか、
(秀吉が死ぬまでは移動可能になる)
「譲治さんは死後、遺体(というもの)を一切、移動なさっていない(「されて」を尊敬語に取る)」とか。
(単に「死んだ人には物を動かすとかできないよ」という意味になる)
この赤字を「譲治の遺体は一切移動していない!」とシンプルに言うこともできるはずなのです。
このようにシンプルに言った場合、上記したようなへりくつ的な解釈は一切入り込めなくなります。
どうしてシンプルに言えなかったのか。
それは、譲治の遺体は移動したからだ、というお話。
「譲治は死後、遺体は一切、移動されていない!」という赤字を言ったのは、戦人側についた煉獄七姉妹です。
この赤字を言うことによって、
「譲治の遺体は移動した」かもしれないのに、「移動していない」ことにしてしまえますね。
すなわち、遺体が発見されたとき、譲治たちはまだ生きていたのだよ、という主張が「この場では」通ってしまいます。
するとどうなるか。
「ゲストハウスにやって来た夏妃が、譲治をいとこ部屋で殺したのだ」というヱリカの推理は破綻します。
戦人と煉獄七姉妹は、ヱリカの推理を破綻させたいのですから、この赤字の「変な言い回し」は、実に、彼らに都合が良いのです。
この推理(Townmemoryのこの推理)では、譲治の死体を動かしたのはヱリカです。つまり、「譲治の遺体は死後、移動したことがある」が真実なのですし、そのことをヱリカは知っているのです。
にもかかわらず、ヱリカが知っている真実は、煉獄七姉妹の言い回しひとつで、真実でないことにされてしまいました。
「右代宮夏妃は犯人ではない」という真実を、真実でないことにしてしまった古戸ヱリカへの反撃として、これほどふさわしい手はないと思えるのです。
Ep6で古戸ヱリカは、この局面を回想して、こんなコメントをしています。
古戸ヱリカはあれを「魔法」だというのですね。
存在する真実を、ただ大声で叫んだとしても、それは「魔法」とは言えないような気がするのです。
魔法って何だったかしら。
魔法って例えば、
仕掛けのないカップの中から、出るはずのない飴玉を出したり。
無生物であるさくたろうを、生命体にしてしまったり。
存在するはずのない悪魔を、存在することにしてしまったり。
存在しない真実を、存在することにしてしまったり……。
妥当性はともかく、つなげ方はわりと面白い……と自分では思っていて、おもしろさ優先で採用しているのであります。
*
> 【EP5】第2の晩? 客室
> 〔被害者〕右代宮秀吉
パターン1(のみ):古戸ヱリカ(殺害・夏妃のボタン仕込み)
古戸ヱリカは絵羽、秀吉夫妻の殺害を図ります。
「午後1時にクローゼットに隠れろ」という指示を夏妃に出しておき、夏妃のアリバイを奪い、その間に絵羽と秀吉を殺すことで、夏妃が犯人であるという印象を決定的にするためです。
手順ですが、
夏妃は午後1時にクローゼットに入らなければならないので、1時近くになると、ヱリカに対して逆上したふりをし、客間から退出します。
ヱリカはそのタイミングを捉えて、こんなことを言ったんじゃないかな。
「ちょっと休息を取りませんか。私もちょっと言い過ぎたようです」
「こうやって全員でずっと顔をつきあわせていると、気持ちが煮詰まって、どうしても疑心暗鬼が生まれるものですね」
「いくつか客室を用意してもらって、家族単位で休息することにしてはどうでしょう。皆さん用心のため、しっかりと施錠なさって下さい」
絵羽夫妻の部屋、留弗夫一家の部屋、ヱリカの部屋、南條の部屋、が用意されます。鍵がそれぞれ配布されます。ここでヱリカは、客室番号を全部チェックしておきます。絵羽夫妻を殺しに行くのに必要だからです。
さて、部屋番号を聞いたら、ヱリカは先回りをして、秀吉より先にその部屋に潜伏します。そして秀吉、絵羽を殺す……という計画です。
が、2人の人間を、1人でいっぺんに殺すのはかなり難しいです。
そこで、「2人同時にではなく、1人ずつ殺す」という算段が必要になります。
具体的には、絵羽に何か用事を与えておき、遅れて客室にやってくるようにし向けたい。
なので、ヱリカはあらかじめ、絵羽にこんなことを耳打ちしておくことにしましょう。
「絵羽さん、昨日やっていただいた使用人控え室の封印、あれは大当たりでした」
「もう一回やりましょう」
「手分けして各部屋をもう一回封印することにしません? この1時間で何か起こったら、誰にアリバイがないのか確認することができますよ」
これで絵羽は、秀吉のいる客室にだいぶ遅れて現れることになります。
そんなふうにして、絵羽が、夏妃の部屋とか使用人室とかいった、怪しい部屋にせっせとガムテープを貼っているあいだに、ヱリカは秀吉をブッスリと刺し殺します。
具体的には、バスルームに隠れていて、ふらりと現れ、刺し殺せば良い。
このとき、ヱリカは厨房から持ち出してきたゴミ袋をかぶることにします。返り血をさけるためです。
ゴミ袋をかぶった怪人を見た秀吉は、「誰やあんた!」と叫ぶことになります。
*
さて、第2の晩は2人死ぬのですから、秀吉に続いて絵羽も殺さなければならないはずですが、そうはなりませんでした。
絵羽が客室にやってきたタイミングが悪すぎて、大騒ぎになったので、殺す機会を逸した。これで良いのですが、
「ヱリカは、絵羽をあえて殺さずにおくことにした」
という考えも、魅力的です。
ヱリカはいとこ部屋で、絵羽が息子を亡くして泣き崩れる様子を見ています。つまり、「この人はこの家でいちばん感情的な人だ、しかも家族を溺愛してる」という観測がなされています。
だからヱリカは、譲治に続いて秀吉を殺し、絵羽は生かす。
絵羽はあられもなく泣き叫ぶことになります。すると、絵羽の感情が場の雰囲気を支配することになります。
場の雰囲気は「絵羽への同情」一色になるはずです。
「絵羽さんがかわいそう」
「この、かわいそうな、やるせない気持ちを消化するために、誰かを罰したい」
そういう感情的土壌を作ったところに、
「犯人はあなたです、夏妃さん」
これで夏妃犯人説を、さらっと通してしまうことができます。場の全員に「犯人を罰して、溜飲を下げたい」という感情が芽生えたところに、「あいつが犯人だ」と言う。これで論理は吹っ飛んで、感情の雪崩が起こせるのです。
*
ところで、描写に従えば、秀吉が殺されたこの部屋のクローゼットに、夏妃がひそんでいたことになります。
これもヱリカが、「秀吉が殺された部屋に、夏妃がいた」という状況を意図的につくろうとしたのでしょうか?
ちょっとそれは、考えづらいように思います。
夏妃はわりあいあわてんぼうさんですから、クローゼットの扉一枚ごしに殺人が行なわれたら、きゃあと叫んで飛び出してきてもおかしくないのです。
たまたま、そういう状況にはならなかったのですが、そうなっても、全然、おかしくなかった。
つまり「意図的にそこに夏妃を配置した」のだったら、完全にギャンブルです。リスクが高すぎる。
もうひとつ。夏妃は客室のクローゼットに入るとき、熟考したあげく、「電話の男の機嫌をそこねるべきではない」ということで、客室のドアにチェーンロックをかけないでおきました。
もし、夏妃が深く考えずに、いつも自室でそうしているクセが出て、チェーンロックをかけてしまった場合、秀吉は客室に入室できませんので、殺害計画は失敗に終わります。
そこで論理的帰結としてこうなります。
「ヱリカは、『秀吉を殺す部屋』と、『夏妃を閉じこめる部屋』を、一致させようとは思っていなかった」
可能性を2つに分け、以下のようになります。
1.「夏妃がクローゼットの中で犯行の様子を聞いていた」という描写は幻想描写である。
(夏妃は「秀吉さんの客室になんか隠れていません」「秀吉さんが殺された状況なんて知りません」と証言するはず。その証言をウソではなく「まったくの本当のこと」と受け取る)
2.「夏妃が秀吉の客室のクローゼットに入ったのは、まったくの偶然だった」
(たまたま、ヱリカが夏妃に対して指定した客室が、秀吉の部屋としてあてがわれてしまった)
2の場合は、ヱリカの犯行が露見しなかったのは、偶然に偶然が重なった大ラッキーということになります。夏妃より先に、ヱリカが客室に潜伏するのは難しいので、1が有望です。
*
殺すところまではこれでOKですが、秀吉の客室は密室だったので、ヱリカは鍵がかかったままここから脱出しなければなりません。
以下のような形で良いです。
ヱリカ、窓ガラスをガラガラっと開ける。
続いて鎧戸をぱんと開ける。
そこからよいしょっと庭に出る。
窓ガラスをガラガラっと閉める。
鎧戸をぱたんと閉める。
ワイヤー、または針金を使って、鎧戸の掛け金をくいっとかける。
これで、ドアにはチェーンロックがかかっていますし、鎧戸も鍵がかかるので、密室状態の完成です。
この一連のシーンを見返すとわかるのですが、「窓」(ガラス窓)に対する言及が、異様に少ないのです。皆無と言い切ってもいいくらい。
秀吉が用心のために閉めて鍵をかけるのは「鎧戸」だけなのです。その内側にあるはずの窓ガラスを施錠したということは、一切書かれない。
秀吉の死体が発見されたときも、留弗夫や嘉音は、
「鎧戸が施錠されてる、これは密室だ!」
とは言うのですが、ガラス窓がどうなのかについては一切言わない。
不自然なほどガラス窓が言及されないのです。
そこで「鎧戸って何なのか」というお話をします。
例外的に、シャッターを指すこともなくはないのですが、辞書的な意味では、鎧戸とはルーバーのことです。
ルーバーというのは、ナナメ下を向いた細長い板を組み合わせた板戸のことです。
木の板でできてて、角度の調整が利かないブラインド、みたいなやつ。
小学校に百葉箱があった方は、それを思い出して下さい。あれルーバーでできてます。
つまり鎧戸って、光や視線は遮るけれど、風通しはすごくいい板戸です。ほとんど「格子」に近い。ちょいと指先やら糸やらををスキマにつっこむくらいのことは楽勝なのです。
当然、それで掛け金をひょいと掛けたりするくらいのこともできてしまいます。
そんな、三文推理小説的な、テグス系の施錠トリックが使われたという判断。
窓ガラスに対してテグス系トリックを使うのは難しいですが、窓ガラスは開いていて、鎧戸だけが施錠されていたのなら、それに対してテグス系トリックを使うのは簡単。
そんなふうにして、窓から庭に出て鎧戸を閉めたヱリカは、ビニール袋を植え込みの中に隠し、屋敷の壁ぞいにぐるっと歩いて、玄関から屋敷内に入り、廊下経由で客室に現れます。
そしてこんなことを言います。
えー、なんと。
「鎧戸は外から鍵をかけられるものではない」ということを調べて保証しているのはヱリカさん本人でした。
すなわち、「実は鎧戸は外から鍵をかけられる」ものであるにも関わらず、ヱリカは「鎧戸は外から鍵をかけられない」ことにしてしまえる立場でした。
Ep6では、「右代宮邸には、針金の束がある」ことが明示されています。
最後に、ヱリカはどこかのタイミングで夏妃の服のボタンを入手しておき、これまたどこかのタイミングで秀吉の客室のクローゼットに放り込んでおくことにします。
*
以上をもって、「夏妃を犯人に仕立てる計画」は完成。ゲーム盤はここで中断するわけなのですが、もし中断しなかった場合、ヱリカは、このまま連続殺人を続け、島の全員を殺して自分一人が生き残るつもりだった。そういう想像をしています。
なんでまた、そんなことをする必要があるのか。
それは、アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』と島田荘司の『占星術殺人事件』を足した数よりも多い連続殺人記録の歴史的快挙、を、自分の手でなしとげてみたい誘惑にかられたから。
それについての詳細はこちら→ 「【ヱリカ犯人説】Ep5第二の晩以降の展開は?」
以上です。
続き→ 犯行告発ep6・サファイア・アキュゼイション6
犯行告発ep5・サファイア・アキュゼイション5(下)
筆者-初出●Townmemory -(2010/05/02(Sun) 10:52:24)・(2010/05/10(Mon) 20:35:35)
http://naderika.com/Cgi/mxisxi_index/link.cgi?bbs=u_No&mode=red&namber=45874,46318&no=0 (ミラー)
[Ep6当時に執筆されました]
●再掲にあたっての筆者注
「サファイア・アキュゼイション」第5回(後半)です。
前回を先にお読み下さい→ 「犯行告発ep5・サファイア・アキュゼイション5(上)」
☆
●6つの死体移動について
前回のエントリで、古戸ヱリカは、譲治、朱志香、真里亞、楼座、源次、蔵臼の6名をみごと殺害することができました。
が、それだけではまだ足りません。この後、死体が次々に消えていくという現象が発生します。
古戸ヱリカは、この死体消失現象を発生させます。
蔵臼の首を切った直後から話をスタートします。
まずヱリカは、蔵臼の死体をかついで、使われていなさそうな別室に運び、クローゼットの中にでも放り込んでおきます。
基本的にこのエピソードにおける「死体消失」はすべて、「別室に運んで鍵をかけておく」だけです。あとで屋敷の全部屋が捜索されるわけなのですが、捜索するのはヱリカ本人なのです。
いや、それどころか、捜索なんかまったくせずに、「全部屋を捜索しときました」と口で言うだけで良いのです。誰かを連れて一緒に家捜しをしたわけじゃないのです。
(「譲治は死後、遺体は一切、移動されていない!」という赤字については、後述します。今はとりあえず「何か抜け方があるんだな」くらいに思って下さい)
ヱリカは、蔵臼の死体をなんとしてでも隠さなければなりませんでした。なぜなら、蔵臼の死体を隠蔽することではじめて、夏妃に対して、
「蔵臼は拉致した。返してほしければ……」
という脅迫が可能になるのです。
ところが、蔵臼の死体を隠しただけではだめなのです。問題が発生します。
「蔵臼の姿が見えない。蔵臼が殺人犯であり、おじけづいて逃げ出したのだ」
という主張が、このままだと可能です。
ヱリカは、この主張が発生しない(通らない)ように仕向けなければなりません。
「いったん発見させた死体を全部、どこかに隠す」というアクションは、そのための手段なのです。
全部の死体を隠すとどうなるか。
「なんでかわからないが、この殺人犯は死体を隠したがるらしいぞ?」
ということになる。
蔵臼逃亡説の印象は急激に消え失せ、「あ、きっと、蔵臼は真っ先に殺されて、死体を運び去られたんだ」という印象がきわめて濃厚になります。
*
そういうことですから、ヱリカは、いとこ部屋の4つの死体を消しに行くことにします。
方法ですが、まず、いとこ部屋の惨状を見て、絵羽が泣き叫んでいる場面から。
ここにヱリカがおっとり刀で現れ、探偵権限とやらをふりかざして、現場検証を始めます。
その後、とにかく警察のために、現場を保存しよう。全員が退出して、ドアを施錠しようということになるはずです。
のちに死体消失が判明する場面で、ヱリカは一同に、
「この部屋はちゃんと施錠して行きましたよね?」
と確認しています。つまり、いとこ部屋には鍵を掛けたのです。ということは、誰かが現場に残ったりはせず、全員が「せーの」でいとこ部屋から退出したのです。悲嘆にくれる絵羽がひとり現場に残るということもなかった。
さて、いとこ部屋に鍵をかけ、とりあえず本館に行こうということになって、全員がぞろぞろと移動します。
ヱリカはさりげなくゲストハウスに残り、いとこ部屋に戻り、マスターキーで鍵をあけて、死体をかついで隣室に運び出します。4人ぶん運びおえたら隣室をロックして、死体消失完了です。
めんどくさかったら、「いとこ部屋のクローゼットに詰め込んだ」でもかまわないくらいです。
そんなんじゃすぐに見つかっちゃいそうですね。
でも見つかっても良いのです。ここでの死体消失の目的は、「この犯人は死体を隠したがる」という印象を作ることなのです。その印象さえ作ることができれば、べつだん、あとで死体が見つかってもかまわない。
隠蔽作業が終わったら、小走りで本館の客間に追いつきます。「ちょっと気になることがあったので、廊下を調べてました」くらいのことを言えば、全員が納得します。
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いとこ部屋で死体発見と現場検証が行なわれているころ、熊沢と嘉音が、使用人控え室で源次の死体を発見しています。
右代宮一族の面々が、いとこ部屋から本館客間へと移動してくると、熊沢(と嘉音)によって、源次の死が知らされます。
ここの描写を見ると、使用人控え室に行って源次の死体を確認した人と、しなかった人がいるようです。
「源次さんまでかよ!?」などといって、留弗夫が客間で検死報告を聞いていますので、留弗夫は使用人控え室に行かなかった。
いっぽう、検死をした南條はもちろん行きました。ヱリカはもちろん行ったでしょう。
雰囲気的に、使用人控え室で現場検証をしたのは、最少人数ではヱリカ、南條、熊沢、(嘉音)、くらいじゃないかな。
(源次の死体の現場検証シーンは描かれていません)
源次殺しの現場検証が終わると、生存者全員が客間に集まることになります。
このタイミングで、ロノウェが、
「……ヱリカが全員を集めたのは、むしろ我らには好都合です」
なんてことを言うのです。
つまり、客間に全員が集まったのは、ヱリカの指示があったからだ、ということになります。
ヱリカは、使用人控え室で源次の死体を検分して、満足したあと、こんなことを言ったんじゃないかしら。
「とにかく、いったん全員を一カ所に集めましょう。熊沢さん、南條さん、すみませんがみなさんに客間に集まるよう呼びかけていただけませんか?」
その指示を受けて熊沢と南條(他に数人いてもよろしい)が、集合を呼びかけるために屋敷中に散っていきます。ヱリカは彼らと一緒に使用人控え室を出て、ドアを施錠し、南條たちが小走りに立ち去るのを見届けてから、おもむろにドアを開けて使用人控え室に入り、源次の死体をヨソに移します。
移す場所は任意の空き部屋。もしくは、使用人控え室にあると思われる押し入れです。
その作業を終えたら、余裕の顔で客間に現れ、全員が集まったところで、「おや蔵臼さんがいませんね? もう1人くらい死んでそうですよねー」みたいなことを言い出すのです。
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このように、当推理では、ヱリカは殺した後で死体をばんばん移動させています。
ところが、
「譲治は死後、遺体は一切、移動されていない!」というシリーズの赤字があります。
この赤字があるので、譲治、朱志香、真里亞、楼座、源次、蔵臼の死体を動かしてはいけないのではないか。そういう疑問が生じます。
「譲治は死後、遺体は一切、移動されていない!」
という、この赤字の文章。
これは文法的に言ってひじょうに悪文なのです。主従関係のない同格の主語がふたつ入ってる。
文章として、ほとんど破綻しているといってもいい。
けれど、フワッと印象を受け取ると、
「譲治が死んだあと、譲治の死体は別の場所に動かされてはいないよ」
という意味に受け取れてしまいますよね。
そういう意味だと思わせておいて、実はちがうことを言っている、そんな叙述トリックの可能性があるんじゃないでしょうか。
たとえば、
「譲治の死後、金蔵の遺体は、一切移動されていない」とか、
(遺体は譲治のことじゃないので、移動可能になる)
「譲治の遺体は、秀吉の死後、一切移動されていない」とか、
(秀吉が死ぬまでは移動可能になる)
「譲治さんは死後、遺体(というもの)を一切、移動なさっていない(「されて」を尊敬語に取る)」とか。
(単に「死んだ人には物を動かすとかできないよ」という意味になる)
この赤字を「譲治の遺体は一切移動していない!」とシンプルに言うこともできるはずなのです。
このようにシンプルに言った場合、上記したようなへりくつ的な解釈は一切入り込めなくなります。
どうしてシンプルに言えなかったのか。
それは、譲治の遺体は移動したからだ、というお話。
「譲治は死後、遺体は一切、移動されていない!」という赤字を言ったのは、戦人側についた煉獄七姉妹です。
この赤字を言うことによって、
「譲治の遺体は移動した」かもしれないのに、「移動していない」ことにしてしまえますね。
すなわち、遺体が発見されたとき、譲治たちはまだ生きていたのだよ、という主張が「この場では」通ってしまいます。
するとどうなるか。
「ゲストハウスにやって来た夏妃が、譲治をいとこ部屋で殺したのだ」というヱリカの推理は破綻します。
戦人と煉獄七姉妹は、ヱリカの推理を破綻させたいのですから、この赤字の「変な言い回し」は、実に、彼らに都合が良いのです。
この推理(Townmemoryのこの推理)では、譲治の死体を動かしたのはヱリカです。つまり、「譲治の遺体は死後、移動したことがある」が真実なのですし、そのことをヱリカは知っているのです。
にもかかわらず、ヱリカが知っている真実は、煉獄七姉妹の言い回しひとつで、真実でないことにされてしまいました。
「右代宮夏妃は犯人ではない」という真実を、真実でないことにしてしまった古戸ヱリカへの反撃として、これほどふさわしい手はないと思えるのです。
Ep6で古戸ヱリカは、この局面を回想して、こんなコメントをしています。
……前回、遺体の確認を疎かにすることで、……とんでもない“魔法”を許した。
古戸ヱリカはあれを「魔法」だというのですね。
存在する真実を、ただ大声で叫んだとしても、それは「魔法」とは言えないような気がするのです。
魔法って何だったかしら。
魔法って例えば、
仕掛けのないカップの中から、出るはずのない飴玉を出したり。
無生物であるさくたろうを、生命体にしてしまったり。
存在するはずのない悪魔を、存在することにしてしまったり。
存在しない真実を、存在することにしてしまったり……。
妥当性はともかく、つなげ方はわりと面白い……と自分では思っていて、おもしろさ優先で採用しているのであります。
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> 【EP5】第2の晩? 客室
> 〔被害者〕右代宮秀吉
パターン1(のみ):古戸ヱリカ(殺害・夏妃のボタン仕込み)
古戸ヱリカは絵羽、秀吉夫妻の殺害を図ります。
「午後1時にクローゼットに隠れろ」という指示を夏妃に出しておき、夏妃のアリバイを奪い、その間に絵羽と秀吉を殺すことで、夏妃が犯人であるという印象を決定的にするためです。
手順ですが、
夏妃は午後1時にクローゼットに入らなければならないので、1時近くになると、ヱリカに対して逆上したふりをし、客間から退出します。
ヱリカはそのタイミングを捉えて、こんなことを言ったんじゃないかな。
「ちょっと休息を取りませんか。私もちょっと言い過ぎたようです」
「こうやって全員でずっと顔をつきあわせていると、気持ちが煮詰まって、どうしても疑心暗鬼が生まれるものですね」
「いくつか客室を用意してもらって、家族単位で休息することにしてはどうでしょう。皆さん用心のため、しっかりと施錠なさって下さい」
絵羽夫妻の部屋、留弗夫一家の部屋、ヱリカの部屋、南條の部屋、が用意されます。鍵がそれぞれ配布されます。ここでヱリカは、客室番号を全部チェックしておきます。絵羽夫妻を殺しに行くのに必要だからです。
さて、部屋番号を聞いたら、ヱリカは先回りをして、秀吉より先にその部屋に潜伏します。そして秀吉、絵羽を殺す……という計画です。
が、2人の人間を、1人でいっぺんに殺すのはかなり難しいです。
そこで、「2人同時にではなく、1人ずつ殺す」という算段が必要になります。
具体的には、絵羽に何か用事を与えておき、遅れて客室にやってくるようにし向けたい。
なので、ヱリカはあらかじめ、絵羽にこんなことを耳打ちしておくことにしましょう。
「絵羽さん、昨日やっていただいた使用人控え室の封印、あれは大当たりでした」
「もう一回やりましょう」
「手分けして各部屋をもう一回封印することにしません? この1時間で何か起こったら、誰にアリバイがないのか確認することができますよ」
これで絵羽は、秀吉のいる客室にだいぶ遅れて現れることになります。
そんなふうにして、絵羽が、夏妃の部屋とか使用人室とかいった、怪しい部屋にせっせとガムテープを貼っているあいだに、ヱリカは秀吉をブッスリと刺し殺します。
具体的には、バスルームに隠れていて、ふらりと現れ、刺し殺せば良い。
このとき、ヱリカは厨房から持ち出してきたゴミ袋をかぶることにします。返り血をさけるためです。
ゴミ袋をかぶった怪人を見た秀吉は、「誰やあんた!」と叫ぶことになります。
*
さて、第2の晩は2人死ぬのですから、秀吉に続いて絵羽も殺さなければならないはずですが、そうはなりませんでした。
絵羽が客室にやってきたタイミングが悪すぎて、大騒ぎになったので、殺す機会を逸した。これで良いのですが、
「ヱリカは、絵羽をあえて殺さずにおくことにした」
という考えも、魅力的です。
ヱリカはいとこ部屋で、絵羽が息子を亡くして泣き崩れる様子を見ています。つまり、「この人はこの家でいちばん感情的な人だ、しかも家族を溺愛してる」という観測がなされています。
だからヱリカは、譲治に続いて秀吉を殺し、絵羽は生かす。
絵羽はあられもなく泣き叫ぶことになります。すると、絵羽の感情が場の雰囲気を支配することになります。
場の雰囲気は「絵羽への同情」一色になるはずです。
「絵羽さんがかわいそう」
「この、かわいそうな、やるせない気持ちを消化するために、誰かを罰したい」
そういう感情的土壌を作ったところに、
「犯人はあなたです、夏妃さん」
これで夏妃犯人説を、さらっと通してしまうことができます。場の全員に「犯人を罰して、溜飲を下げたい」という感情が芽生えたところに、「あいつが犯人だ」と言う。これで論理は吹っ飛んで、感情の雪崩が起こせるのです。
*
ところで、描写に従えば、秀吉が殺されたこの部屋のクローゼットに、夏妃がひそんでいたことになります。
これもヱリカが、「秀吉が殺された部屋に、夏妃がいた」という状況を意図的につくろうとしたのでしょうか?
ちょっとそれは、考えづらいように思います。
夏妃はわりあいあわてんぼうさんですから、クローゼットの扉一枚ごしに殺人が行なわれたら、きゃあと叫んで飛び出してきてもおかしくないのです。
たまたま、そういう状況にはならなかったのですが、そうなっても、全然、おかしくなかった。
つまり「意図的にそこに夏妃を配置した」のだったら、完全にギャンブルです。リスクが高すぎる。
もうひとつ。夏妃は客室のクローゼットに入るとき、熟考したあげく、「電話の男の機嫌をそこねるべきではない」ということで、客室のドアにチェーンロックをかけないでおきました。
もし、夏妃が深く考えずに、いつも自室でそうしているクセが出て、チェーンロックをかけてしまった場合、秀吉は客室に入室できませんので、殺害計画は失敗に終わります。
そこで論理的帰結としてこうなります。
「ヱリカは、『秀吉を殺す部屋』と、『夏妃を閉じこめる部屋』を、一致させようとは思っていなかった」
可能性を2つに分け、以下のようになります。
1.「夏妃がクローゼットの中で犯行の様子を聞いていた」という描写は幻想描写である。
(夏妃は「秀吉さんの客室になんか隠れていません」「秀吉さんが殺された状況なんて知りません」と証言するはず。その証言をウソではなく「まったくの本当のこと」と受け取る)
2.「夏妃が秀吉の客室のクローゼットに入ったのは、まったくの偶然だった」
(たまたま、ヱリカが夏妃に対して指定した客室が、秀吉の部屋としてあてがわれてしまった)
2の場合は、ヱリカの犯行が露見しなかったのは、偶然に偶然が重なった大ラッキーということになります。夏妃より先に、ヱリカが客室に潜伏するのは難しいので、1が有望です。
*
殺すところまではこれでOKですが、秀吉の客室は密室だったので、ヱリカは鍵がかかったままここから脱出しなければなりません。
以下のような形で良いです。
ヱリカ、窓ガラスをガラガラっと開ける。
続いて鎧戸をぱんと開ける。
そこからよいしょっと庭に出る。
窓ガラスをガラガラっと閉める。
鎧戸をぱたんと閉める。
ワイヤー、または針金を使って、鎧戸の掛け金をくいっとかける。
これで、ドアにはチェーンロックがかかっていますし、鎧戸も鍵がかかるので、密室状態の完成です。
この一連のシーンを見返すとわかるのですが、「窓」(ガラス窓)に対する言及が、異様に少ないのです。皆無と言い切ってもいいくらい。
秀吉が用心のために閉めて鍵をかけるのは「鎧戸」だけなのです。その内側にあるはずの窓ガラスを施錠したということは、一切書かれない。
秀吉の死体が発見されたときも、留弗夫や嘉音は、
「鎧戸が施錠されてる、これは密室だ!」
とは言うのですが、ガラス窓がどうなのかについては一切言わない。
不自然なほどガラス窓が言及されないのです。
そこで「鎧戸って何なのか」というお話をします。
例外的に、シャッターを指すこともなくはないのですが、辞書的な意味では、鎧戸とはルーバーのことです。
ルーバーというのは、ナナメ下を向いた細長い板を組み合わせた板戸のことです。
木の板でできてて、角度の調整が利かないブラインド、みたいなやつ。
小学校に百葉箱があった方は、それを思い出して下さい。あれルーバーでできてます。
つまり鎧戸って、光や視線は遮るけれど、風通しはすごくいい板戸です。ほとんど「格子」に近い。ちょいと指先やら糸やらををスキマにつっこむくらいのことは楽勝なのです。
当然、それで掛け金をひょいと掛けたりするくらいのこともできてしまいます。
そんな、三文推理小説的な、テグス系の施錠トリックが使われたという判断。
窓ガラスに対してテグス系トリックを使うのは難しいですが、窓ガラスは開いていて、鎧戸だけが施錠されていたのなら、それに対してテグス系トリックを使うのは簡単。
そんなふうにして、窓から庭に出て鎧戸を閉めたヱリカは、ビニール袋を植え込みの中に隠し、屋敷の壁ぞいにぐるっと歩いて、玄関から屋敷内に入り、廊下経由で客室に現れます。
そしてこんなことを言います。
「……そうと決め付けるのは早いぜ。風呂場の天井を外して天井裏に逃げたとか、あるいは鎧戸が実は外からでも閉められるとかな。」
「鎧戸は。…………外からはびくともしませんでした。今、確認してきました。」
えー、なんと。
「鎧戸は外から鍵をかけられるものではない」ということを調べて保証しているのはヱリカさん本人でした。
すなわち、「実は鎧戸は外から鍵をかけられる」ものであるにも関わらず、ヱリカは「鎧戸は外から鍵をかけられない」ことにしてしまえる立場でした。
Ep6では、「右代宮邸には、針金の束がある」ことが明示されています。
最後に、ヱリカはどこかのタイミングで夏妃の服のボタンを入手しておき、これまたどこかのタイミングで秀吉の客室のクローゼットに放り込んでおくことにします。
*
以上をもって、「夏妃を犯人に仕立てる計画」は完成。ゲーム盤はここで中断するわけなのですが、もし中断しなかった場合、ヱリカは、このまま連続殺人を続け、島の全員を殺して自分一人が生き残るつもりだった。そういう想像をしています。
なんでまた、そんなことをする必要があるのか。
それは、アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』と島田荘司の『占星術殺人事件』を足した数よりも多い連続殺人記録の歴史的快挙、を、自分の手でなしとげてみたい誘惑にかられたから。
それについての詳細はこちら→ 「【ヱリカ犯人説】Ep5第二の晩以降の展開は?」
以上です。
続き→ 犯行告発ep6・サファイア・アキュゼイション6
ルシファーの「よって ~ 貴様の推理、遺体は金蔵が運び出したは、破綻する!」が赤字です。
これは逆に「譲治は死後~」が
「譲治の死んだ後、本人の遺体は移動されていない」
であることの証明になっているのではありませんか。
まあグランドマスターキーと同じであなたにとっては
こんなの大した問題にはなりませんか。
こんにちは。確かにその合鍵で開けちゃっても良いわけなのですが、あの幻想法廷では、ラムダデルタとベルンカステルが、ヱリカの推理の破綻を宣告したわけですので、
「物理的な事実はともかく、“この場では”ヱリカの推理は破綻した」
よって、「貴様の推理、遺体は金蔵が運び出したは、破綻する!」という赤字は、命題として真である。(ヱリカの推理の破綻をルシファーが予言した。その予言は的中した)これで抜けられる気もするのです。どうでしょうか?
赤字は
「全ゲーム開始時に金蔵は死亡している」の赤字によって最初から赤で言えるのではないでしょうか?
これが「遺体は『何者か』が運び出した」ならば赤字では言えなかった気がします。
あ、その通りですね。確かに。どっちみち破綻はしているのですね。
わたしの推理に都合のいいことを言えば、ヱリカ推理の破綻だけを目的とするなら本来必要のない「譲治は死後、遺体は一切、移動されていない」。これが必要なのは「遺体は動いたことがない」と読者をミスリードさせるため……とかいう感じになるわけです。
幻想法廷のあたりは、うさんくさい展開が多いなあ……
Townmemoryさんの推理を読んでずっと考えていたのですが、
ヱリカが犯人という結末をもって、どのようにしてEP1~EP4の展開となり得るのでしょうか。
それとも、そのあたりの話は、Townmemoryさんが竜騎士07先生の示すいわゆる「解答」を探し当てる事を目指してはいない点で、没関係なのでしょうか。
こんにちは。わたしは、「ヱリカはEp5、Ep6の犯人であるが、Ep1~4の犯人ではない」という解釈です。Ep1~4は、朱志香犯人説をとなえています。
Ep5、6は「おなじ舞台、おなじ条件を使って、別の犯人が連続殺人をくわだてたらどうなるか」というお話だと受け取っています。これで疑問へのお答えになっていますでしょうか。
「Ep5、Ep6の犯人はヱリカで、Ep1~4の犯人は朱志香」というのは理解しているのですが、
もしそうだとすると出題編と散編で殺人に対するアプローチが異なっていますよね。
朱志香は皆を黄金郷(観測不可能な猫箱)に導くために全員を殺害しますが、
ヱリカは自説を現実のものとするために全員を殺害します。
この二つの間で、物語全体の構造なり、出題編で特徴的だった謎なりの、何かが展開されているのだろうか?(ヱリカの行動から何か朱志香の行動や六軒島の謎が解けるのだろうか?)という、質問をさせていただこうと思い、投稿した次第です。
たまたまブログをいじっていたところでして……(^_^)。
例えば、Ep5でヱリカが碑文を解き、黄金の間を公開したことで、
「朱志香は碑文が解かれた場合、本当に殺人を中止する」
という条件がはじめて確認された、といえないでしょうか。それは新たな展開といっていいのかも。
また、ヱリカが夏妃を陥れようとしなかった場合、
「19年前の赤ん坊と夏妃の物語」
は、決して明らかになることはなかった(秘されたまま終わるはずだった)。これもいえそうな感じがします。夏妃が経済戦争のトロフィーであるといった話なんかもそうですね。
そんな感じで、ヱリカがいなければ決して明らかになることはなかった、
「この条件が揃ったとき、このイベント(情報公開)が発生する」
が、他にもいくつもあるように思うのです。
そういう「展開」ということで、かまわないんじゃないかなあと漠然と受け取っていました。うーん、あまり考えたことのなかったポイントですね。おかしな部分が出てきそうかなあ……。
それぞれに反証を挙げてみたいと思います。
違っていたら教えていただければ嬉しいです。
1.
戦人(+ヱリカ)が黄金を発見したのにも関わらず、
いちおう形式としては碑文殺人の最初の晩が実行されていると思います。
そして、なぜかいとこ部屋には下手な魔法陣もありました。
もしヱリカが犯人なら、この魔法陣を描くのも謎な感じです。
(ヱリカは島に魔女伝説が古くから伝わっているという事実は知らず、
その印象を利用した殺人の方法までは思いつかなそう)
それに、いきなり朱志香が殺されているので、殺人が中止されたかは不明だと思います。
2.
Townmemoryさんのお話では、ヱリカが19年前の話を利用するのは、
朱志香が電話しているのを聞いたから、ということでしたよね?
(3回の電話の内、最後のものだけヱリカ)
それなら、朱志香メインのストーリーでも、
19年前の赤ん坊の話に展開させることができるのでは?
ヱリカがいることで可能となる…
あるとすれば、解答となってしまう戦人視点ではなく、
戦人以外のプレイヤー視点で物語を進めてくれるキャラが必要だったことでしょうか。
物語の展開的には、探偵能力にしても封印にしても、
ヱリカじゃなくても出しようがあったかなぁ…と。
唯一あるとすれば、「ノックスで戦えばいいところまで行けるよ」という、
竜騎士07先生のヒントな気もしています。
うーん、ちょっとうまく言い表せないです。すみません。
でも、「朱志香が犯人のままでは表に出ることのなかったさまざまなことがあらわになった」という印象はわりと強いけどなあ……。