日々の寝言~Daily Nonsense~

ウェブ時代をゆく

「ウェブ進化論」の続編。
ウェブ時代の生き方について梅田望夫さんが
約一年間?Web上でのフィードバックを受けながら
考え続けたことが書かれている。

キーワードは、
「けものみち」「志向性の共同体」「スモールビジネス」
「ロールモデル思考法」「自助の精神」

全体的には、Google の成功を「稀なこと」と位置づけ、
「スモールビジネス」を強調するなど、
前著よりはトーンダウンした感じになっているが、
それは、梅田さんがまじめに考えたからだろう。
まじめに考えれば、「革命だ」「ばら色の未来だ」とは言えない。

それでも、全体は前向きなトーンで貫かれていて、
池田信夫氏が指摘しているとおり、
ネットの影の部分、とか、日本のIT産業の悲惨な現状、
についてはほとんど書かれていない。
これは、梅田氏のキャラクターももちろんあるが、
もともとそういう人たちのことは切り捨てた、
(新種の)エリート候補のための本なのだと思う。

基本的には、頭は良くて、コミュニケーション能力もあるが、
志向性が強いために大企業で働くのに向かない人が、
ネットを活かして志向性の共同体を作り、
スモールビジネスで世界を相手に活躍する、というイメージの本。

それを、保守本流のエリートの行き方に対して
「けものみち」と呼んでいる。

頭が良くて、自分を殺して組織に奉仕できる人は、
大きな組織で働けばよいし、
頭が良くても怠惰な人(安定志向な人)
は今後没落する、とはっきり書いてある。

学校ではしっかり勉強しよう、
とも書いてある。

Webに代表される情報機器が、
知能増幅装置であれば、それが
自助の精神、新取の精神が豊かな人とそうでない人との
格差を拡大するのは自然なことだ。

それでも、全体としてパイが大きくなれば、
そうでない人の生活も向上するだろう、
というのがエリーティズムを肯定するためのロジックで、
「スモールビジネス」や「けものみち」が
繁盛することには期待したい。

「好きを仕事に」については、最近では
おまじないのようになっているので、
いろいろなところで揶揄されているが、
たとえば、いつのまにか復活していた分裂勘違い君劇場でも
こんなふうに茶かされている。

池田氏のblogもそうだが、
ある方向への偏りや、ある種のカリスマ化に対して
反対方向の言葉が出るのは健全だと思う。

ただ、社会にとって都合が良いから
そういうふうに思わせている部分がある、
というのは良いとしても、
この本は「一生ステーキを食べろ」
と言っているわけではないので、
ちょっと的外れな部分も多いかも。

それに、人柱になるのはごめんだ、というのもわかるけど、
人柱になりたい、と思ってくれる人はいるわけで、
そういう人は素直にリスペクトするほうが良いと思う。

梅田氏に、ニーチェのような近代の超克を期待するのも、
気持ちはわからなくもないけど、さすがに無理がある。

むしろ、好きなことがたくさんあるので、
数年区切りで、いろいろな好きなことに集中する、
というような形で生きたい、
と思っている人向けの本だろう。

先駆者としてそういう生き方を実現してきたことは
素晴らしいと思う。

梅田氏は極めてプラグマティックな人だし、
実用性を意識して、梅田氏の経験も明かされている。
かなり読者サービスしていると思う。

ただし、後から振り返って見ると、
梅田氏のポジションはかなり特殊かもしれないので、
これからの人に参考になるかどうかは微妙。

最後に、上の分裂勘違い君のエントリーでちょっと印象的だったのは、
梅田氏と、2ちゃんねるやニコニコ動画のひろゆき氏を並べているところ。
確かに、二人のスタイルは一見すごく対照的で、
並べて対比しながら考えてみるのは面白いかもしれない。

しかし、私は、ちょっと前まで、
Rubyのまつもとゆきひろ氏と2ちゃんねるのひろゆき氏が
同じ人だと思っていたので・・・
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