日々の寝言~Daily Nonsense~

壁を取り払って話す

今日の「課外授業ようこそ先輩」は、
映画監督の河瀬直美さんで、同窓会バージョンだった。

8年前の小学六年生が、もう二十歳。

小学校のときに撮ったビデオと、
今のビデオを対比させて、トークする。

ふわふわと生きて、何も考えていないように見える二十歳たちに
ちょっと驚いた様子の河瀬さん。

でも、何も考えずに生きられる、というのは、
もしそうできれば、人間にとって、一番幸せなことなんだと思う。
たぶん。

しかし、この八年間に、親を亡くした人のビデオが出てきて、
数年前に親が離婚した人や、小さい頃から親とは会っていない人、
などがコメントすると、そういう、表面的にのどかな雰囲気は消えた。

親のありがたさ、をめぐる、ストレートな意見交換。

自分はまあまあ幸せだとしても、世の中全体を見れば、
何も考えずに生きていられる人は、ごくごく一部なのだ、
ということに気づく。

自分がかなり不幸だとしても、世の中全体を見れば、
同じように不幸な人はかなり多い、ということに気づく。

母親を亡くした人が、
「母親を亡くしてから、壁を取り払って話すことができたのは
はじめてだったので、楽になった」
と言っていた。

「生きるヒント」みたいな本にはよく書いてある言葉だが、
でも、実感がこもっていた。
この言葉を引き出した河瀬さんは、さすがに苦労人だ。

もうひとつ、「本当に一人が好きな人はいるのか?」
という問いかけのほうは、ちょっと不完全燃焼だったが、
これも、よい問いかけだったと思う。

コンビニに代表されるように、
一人でいることが苦にならない方向へと
社会のほうがどんどん促進している面がある。
きっと、個人を相手にすることが儲かる、ということを、
誰かが発見したのだろう。

だから、「一人が好き」という状態が生まれやすいのだが、
これは、けっこう落とし穴っぽいところがあると思う。

一人でも、本を読んだり、漫画を読んだりする、
ということは、身近な人間ではなくて、
でも、誰かとは触れ合っていたい、ということだと思う。

便利なものに囲まれて、
お客様扱いされることに慣れすぎて、
身近な人間とのつきあいが面倒になっているだけ、
なのかもしれない。

「本に書いてあったり、偉い人がいろいろ言ったり
していても、私たち一人ひとりの人生は、そんなに簡単に
割り切れるものではない」

河島さんは、ずっと、育ての親のビデオを
撮り続けているのだという。

親が子供のビデオを撮るのがあたりまえのように、
子供も親のビデオを撮ってみるのが
おもしろいのかもしれない。

もしも誰かが、自分のことを、
愛情を込めてずっと思っていてくれて、
死ぬ前に、それをなんらかの形にしてくれたら、
これは相当嬉しいのではないか、と思うわけで、
相手とのいろいろなことがらを記憶しておくために
写真を撮るというのはよくあるのだが、
ビデオで相手を撮る、というのは、
さらに強化的な代替版で、
なかなか新しい「思い」の表し方なのかもしれない。

出来すぎ、の感はあるが、
いろいろ考えるところのある良い番組だった。

元気が無いときに見るために、再放送を録画予約。
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