日々の寝言~Daily Nonsense~

村上春樹を読む

ユリイカ 2000年3月臨時増刊
「村上春樹を読む」を引っ張り出して
つまみ読みした。

間化の力が作用している「われわれ」の世界で、
人間であろうとするにはいかに苦闘しなくてはならないか。
私にとって、村上の全ての作品が最大の関心を払っているのは
この点だと思う
-マイクル・フジモト・キージキング

人間-間の対立がちょっとあれだが、
さすがにアメリカ人は明快だ。

制御不能な悲劇の場所を「闇」として、
そこへの通路に「井戸」のイメージを与えることで、
作家はつねに、そのエクリチュールと現実のカタストロフィ
との決定的な出会いを回避し続けていることになりはしまいか?
-守中高明

癒すのではなく、慰撫する。

それが、きわめて村上さん的な気持ちよさ
を読者に与える。

読者は、現実を突きつけられることなく、
それについて考えたような気分になる。

これが、村上さんの作品がしばしば
欺瞞的と非難される由縁だが、
しかし、村上さんは、癒すことなどできない
ということを最初から知っているのだと思う。

「結局のところ、文書を書くということは
自己療養の手段ではなく、自己療養への
ささやかな試みにしか過ぎないからだ。」
-風の歌を聴け

現実を突きつけるとか、癒すとか、
そういうことができるかもしれないと
無駄に期待するのではなく、
できないという前提で、
しかしなお何ができるかを考える。

村上さんの小説にはそうした試みの
汗がつまっている感じがする。

だからこそ、欺瞞的であったとしても、
多くの読者の心を打つのではないかと思う。
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