「村上春樹を読む」を引っ張り出して
つまみ読みした。
間化の力が作用している「われわれ」の世界で、
人間であろうとするにはいかに苦闘しなくてはならないか。
私にとって、村上の全ての作品が最大の関心を払っているのは
この点だと思う
-マイクル・フジモト・キージキング
人間-間の対立がちょっとあれだが、
さすがにアメリカ人は明快だ。
制御不能な悲劇の場所を「闇」として、
そこへの通路に「井戸」のイメージを与えることで、
作家はつねに、そのエクリチュールと現実のカタストロフィ
との決定的な出会いを回避し続けていることになりはしまいか?
-守中高明
癒すのではなく、慰撫する。
それが、きわめて村上さん的な気持ちよさ
を読者に与える。
読者は、現実を突きつけられることなく、
それについて考えたような気分になる。
これが、村上さんの作品がしばしば
欺瞞的と非難される由縁だが、
しかし、村上さんは、癒すことなどできない
ということを最初から知っているのだと思う。
「結局のところ、文書を書くということは
自己療養の手段ではなく、自己療養への
ささやかな試みにしか過ぎないからだ。」
-風の歌を聴け
現実を突きつけるとか、癒すとか、
そういうことができるかもしれないと
無駄に期待するのではなく、
できないという前提で、
しかしなお何ができるかを考える。
村上さんの小説にはそうした試みの
汗がつまっている感じがする。
だからこそ、欺瞞的であったとしても、
多くの読者の心を打つのではないかと思う。
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