常に、勝負事には、勝者と敗者が付き物だ。
それが、多数から少数を選抜する際の鉄則だ。
だから、それがどのようなものであれ、勝って喜ぶ者と、負けて泣く者とに、明確に分別される。
現在、遠く中東のカタールのドーハという、とてつもなく熱く過酷な地で行われている、世界陸上。つまり、陸上競技の世界一を決める、アスリート最高峰の闘い場。
ここでも、もちろん、残酷な程に明暗が別れる。誰しもが、最高に輝く色の金メダルを目指して、日々自分の心と身体にムチ打って、この闘いに掛けて来たと言うのにだ。
自分も、遅い時間の放送ながら、各アスリートの迫力極まる世界に引きずり込まれ、連日テレビに見入ってしまっている。中でも、十種競技の決着の瞬間。これには、正に「感動」の二文字しかなかった。
一つの競技を極めるのすら、至難の技であるのに、走る、跳ぶ、投げる、などといった競技を、全て極めるのであるから、この競技の勝者には、キングオブアスリートとしての栄誉ある称号が与えられる。
全ての競技が終了したその時、その称号の取得者が決まった。その者の顔には、もちろん満面の笑顔がこぼれたのは事実だ。
だが、本当の笑顔と感動はその直後に来た。
十種競技という、あまりにも過酷な競技をやり終えた、各アスリート達が、何の隔たりもわだかまりもなく、瞬時に各々の健闘を讃えあって、次々に溢れる笑顔で抱き合う姿が、そこにあったのだ。
これは、自分自身の限界に挑戦しあった者同士だからこそ分かりあえる世界なのだろう。
だから、この境地に至っては、勝者も敗者もなく、お互いに対する敬慕の念しかないのだろう。
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