ぐるぐる・ぶらぶら

歌舞伎と映画と美術と読書の感想

【読書】AUTONOMY 自動運転の開発と未来

2020-08-10 21:45:16 | 読書記録
2000年代の自動運転開発の様子を知ることができる本。

前半、DARPA主宰のレースでのエンジニアチームの模様が仔細に綴られている。
そっち系の技術者には堪らないのかも知れない。
私は半端な技術系なのであんまり垂涎できなかった。残念。

ともあれ、この本で
なにゆえ電気自動車に移行しなければならないのかは冒頭数ページ
だけでも十分わかったし、自動運転というテーマについて日本は
10年くらい(もっと?)出遅れているらしいこともよく分かった。

GoogleとUberの確執に至る過程が興味深かった。

読んでいると、この界隈(USの自動運転技術開発シーンの先端)は
10人くらいの人の間で方向感が決まっているんじゃないか、
という気がしてきた。誤解だろうか?

-----
AUTONOMY 自動運転の開発と未来
ローレンス・D.バーンズ
辰巳出版
http://www.tg-net.co.jp/item/4777824020.html

AUTONOMY、GMのコンセプトカーの名称だったもよう。

(2020.8.10)


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【読書】ノヴァセン

2020-08-10 21:26:28 | 読書記録
「ガイア理論」は聞きかじり程度だったので、
とりあえず、ちゃんと理解したくなった。

主張、8割は腑に落ちた。

そうかもしれない。

昨今顕在化が著しい、ヒトの活動による地球環境への影響ですら、
ヒトが生存・拡大をする上で起こるべくして起こっているような気が
し始めていた。
でも、ロールバックはどこまで戻せばいいか分からないし、
そもそもロールバックは無理じゃないかと、新型ウィルスへの対処を
見ていて思ったり(最善の衛生は、器具を都度都度使い捨てることなり)。
…そうか、戻すという発想には無理があったのだ。

進むのだ。

原状回復ではなく。

ガイアの温度をを上げないように。(すごく明快なビジョンだ)。

量子力学や多元的な思考(のようなもの)はヒトの脳では追従できなくても
"超知能"なら解決可能のはず、という想定も、そうかも知れないと思う。

"超知能"として描かれているものは、シンギュラリティ仮説で言われる
新たな知能と違いはないと思う。重なっている。
違うのは、前者が自身とヒト含め生命が存在可能な温度を保つことを
第一義にしていることだろう(と私は解釈している)。
後者が自己増殖を第一義にしている(と私は解釈している)のに対して。
でも、生じうる未来は、"超知能"のふるまいは、ヒトへの影響は、
どちらからでも同じところに行き着くかもしれない。
そのこと自体がガイアのホメオスタシスの一現象だとしても違和感はない。

腑に落ちなかった2割は、
"超知能"が完全自律選択モードに入った時の、
生存の継続に関する根源的な欲求は、一体どこから来る何なのかということ。
それをヒトがプログラミングで仕込むのだとしたら、そこには
自然(じねん)の生にない、パラドックスを孕むのではないだろうか。
一方それが自律で生じた何かだとしたら、有機生命体の根源的生存本能と
違うものになる気がしないのだ。

-----
ノヴァセン 〈超知能〉が地球を更新する
ジェームズ・ラヴロック 著
NHK出版 2020/04
https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000818152020.html

(2020.8.10)
備忘追記:
そうそう、"超知能"が席巻する「ノヴァセン」に至ったとき、
ガイアの温度を維持するために、このガイアを成している無数の、
それこそ無数の微生物含めたエコシステムに代わる
完全制御の管理システムを入れたりするだろうか?とも思った。
今のシステムで対処する方が効率的ではなかろうか。直感的に。
(ラヴロック先生は直感重視だから許してもらおう)。
だとするとこの有機生命体によるエコシステムの、生かすものと
喪失していいものと、どこで線を引くのだろう。
きれいな線引きができないのではないかな。一体だし。

総とっかえして完全制御になるとしたら、
ガイア全体が人工島みたいな感じになるのかしら。
そうなると、別に地球上になくてもいいんじゃないか?…なるほど、
だから宇宙に出ていく可能性があるのか。(違う??)



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【読書】アルゴリズムフェアネス

2020-05-17 23:45:34 | 読書記録
アーキテクチャに関する言で、ジャン・ティン先生曰くの
「ある構造をつくれば、人間の意思を簡単に左右できる」。
そうそう。そこ気になる。
もうちょっと語ってほしかったかも。

アルゴリズムあるいは規定を以てアーキテクチャを社会にはめ込んで
いってるGAFA、BAT、US、EU、中国、エストニア。
ブロックチェーンへの期待。
初見や学びはじめの方には網羅的でわかりやすいだろうと思います。
(わかりやすくするために少々丸めて書いておられる印象)。

-----
アルゴリズムフェアネス もっと自由に生きるために、ぼくたちが知るべきこと
尾原 和啓
KADOKAWA 2020/01
https://www.kadokawa.co.jp/product/321808000661/

(2020.5.13)


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【読書】ラディカル・マーケット 脱・私有財産の世紀

2020-05-10 23:11:58 | 読書記録
富の集中、民主主義の機能不全、移民、ITプラットフォーマ農場、など
直面する社会課題に対して"ラディカル"=急進的("根"との掛詞でもある)な
提案を示す本書。

過去からの数多の思想を時に引用し時に批判し、今現在の状況を同定して
"市場"をキーに打開策を思考していく。

面白くもあり。
私には知識的な面で読むの辛いところもあり(単に経済学方面の勉強不足です…)。

私有財産制は配分効率が悪い。
なら、私有を減ずるような圧力となる制度を設定してはどう?市場の発想で。
共同所有自己申告税=COST。

主張したい論点とそうでもない論点が、どちらも一票ずつってどうなの?
票を売り買いできるようにしたら?ただし買いたい数が大きいほど高くつく。
二次の投票=QV。

あるいはこれら制度の他分野への応用。

分からなくはない。
数値の論証が軽い感じだけれど、おそらく書かれているようりも数段数十段緻密な
シミュレーションを行った結果であろうとも思うし。
ただ、幾重にも重なった仮説の先にやっと成功があることが想像されるので、
ポンと膝を打つには至らず。
(著者たちも、いきなり全体でなくまずは小さく試すのがよいと言っている)。

読んでいて気になったのは、
・価値の評価の多様性にどう対応するのか
・ゼロベースでなく、既に経済格差が生じている状態からスタートでも
 是正は効くのだろうか
などともやもやしながらも、最終章で、ああ、と少し分かった気がする。

これは、おおむね全てがデジタル化した世界・時代を想定して、
成立する可能性を論じているのだ。
-----
ラディカル・マーケット 脱・私有財産の世紀
エリック・A・ポズナー E・グレン・ワイル 著
東洋経済新報社 2019/12
https://str.toyokeizai.net/books/9784492315224/

(2020.5.10)


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【読書】我々はどう進化すべきか 聖地ガラパゴス諸島の衝撃

2020-05-06 22:17:27 | 読書記録
カート・ヴォネガットの「ガラパゴスの箱舟」を読んで以来、
脳内に定位置を占めている憧憬の地。
観光によるダメージを知って訪ねるのを躊躇したまま行ってない。

動物の話、そうだった、そういうちょっと間の抜けた可愛さのが
いるところだったと思い出してほっこり。
(ヴォネガットはそういう要素を拾っていた)。

生命ドラマの舞台としてのガラパゴス。
交差する複数の海流と、火山。奇跡的に成立している豊穣な環境。
海底。熱水噴出孔の話が面白い。
「太陽の恩恵に預からない」チューブワーム。
微生物が細胞内共生。   ←このネタも大好物。

…鉄散布実験の話。ダイナミックだ。

受難の歴史のこと、
最後に海洋保護区の話。

-----
我々はどう進化すべきか 聖地ガラパゴス諸島の衝撃
長沼 毅 著
さくら舎 2020/01
http://sakurasha.com/2020/01/%e6%88%91%e3%80%85%e3%81%af%e3%81%a9%e3%81%86%e9%80%b2%e5%8c%96%e3%81%99%e3%81%b9%e3%81%8d%e3%81%8b/

(2020.5.6)


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【読書】誤作動する脳

2020-05-06 21:11:42 | 読書記録
レビー小体型認知症の診断を受けている著者による、体験の開示。

個人的にここ10年、家族のアルツハイマー型認知症が進行していくのを見、
職場では老若・複数のメンタル面の不調があるメンバーを見る中で、
脳にかかわる不調は正常・異常の両極にあるのではないと思うようになった。
認知症や精神的な病理と病名を付されるような状態は
私自身の日常のコンディションの揺れと地続きなところにある。

たぶん、私もいつか、なる。
程度や状態はどうあれ。なるときがくる。そう確信している。

本書を読み、ストレスやその他環境によっても変化する症状について知り、
幻聴や幻視のリアルな表現を受け、以前の私の家族のことを思い出し、
分かってあげられてなかったなと思う。
著者が受けたうつ病の誤診の経過はとても苦い。

本書を読んでみて良かったと思うのは、嗅覚や時間間隔が失われる辛さや
不便の痛みを思うことで、いつかの時の心の備えのような感じになったこと。

それと最近視力が落ちて増えた失敗が、著者のエピソードと重なるのが幾つか。
視力の問題か認知力の問題か…。

少々衝撃だったのは、不眠の様子の一節。
健康でないと「睡眠で回復する」ことが難しいのか。
寝て回復できるなら、それは幸いなことなのでしょう。
-----
誤作動する脳
樋口 直美 著
医学書院 2020/03
http://www.igaku-shoin.co.jp/bookDetail.do?book=108712

(2020.5.6)


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【読書】人工培養された脳は「誰」なのか

2020-05-06 18:12:43 | 読書記録
自身の肩から採取された細胞が試験管の中でミニ脳として生きているのを
著者が見ている。印象的な導入で本書は始まる。
自分であったもので、同時に今や独立した何か。
表現に、無垢で健気なものに対する慈しみみたいなのが漂う。

オルガノイド。
ヒトの器官に似せた人工生成は、動物実験批判やヒトでの検証の危険を
低減するのに役立つという。

この培養行為がもう一歩二歩進んでいくとしたら、
どういった問題が、混乱が、起こるのか。

以降、ヒトが2つの細胞から人体になる過程について、
万能細胞が役割を知って器官になるプロセスが提示される。面白い。
遺伝子がすべてを決める訳ではない、というのが新鮮だった。
細胞は隣あう環境を知覚(この言い回しは擬人的だな。物性が影響を
受けるということ)して特定の役割に固定していくという。

20世紀初頭に遡って人工生命に関する歴史を紐解く。
ヒーラ/ヘンリッタ・ラックスの事例は、知るほどすごい話だ。5千万トン。
歴史の振り返りにおいて数多の科学者が連なっているが、
単純に"科学"成果を挙げるのでなく、それらを扱った科学者の
ダークな面(現代から見たら社会的問題。人種間の搾取など)も
併せて述べられている。

振り返りどころかかなり最近の話題まで包括している。
iPS細胞とその適用展開の意義と拡大の先に生じうる論点。
生殖、クローン、CRISPR、デザイナーベイビー。
水槽の脳やトランスヒューマニズム。

様々な「考えるヒント」を
おそらく相当慎重に誤解を生まない正確な伝わり方を選んで、
かつ極力端折らずに伝えるのが、この本の意図ではないだろうか。

発生は本当に複雑で様々な条件を経て個体としての生物に至るのだと
著者は言う。文中何度も繰り返すメッセージの1つ。

ディストピアなどフィクションの作家も、科学者も、思想と時代に、
あるいは大衆の反応に、影響されるとも言っていると思う。

このテーマが複雑であることを複雑なまま受け取って、
そのままおなかに入れておくのが、今とりあえずできる反応かな。
-----
人工培養された脳は「誰」なのか 超先端バイオ技術が変える新生命
フィリップ・ボール 著
原書房 2020/03
http://www.harashobo.co.jp/book/b505071.html

ふいに既視感、細胞生物学でない分野の書籍との重なり。
それは、科学が進む過程で可視化が進んだことで(本書では細胞やゲノム)、
かつての事実は事実として成立できず、前提の抜本変更を迫られるあの感じ。
見えれば見えるほど多様という事実が立ちはだかり、分類不能になっていく。
Deeplearningで答えのようなのは出そうだけど、説明がつかないかもね。
それがこれからの科学の姿なのだろうか。

(2020.5.6)


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【読書】豊田章男

2020-05-05 22:18:06 | 読書記録
ウーブンシティの発表も記憶に新しい。
報道でしか見たことがないけれど、気遣いを伴った明るさの印象。
あまりに巨大な企業を率いる、そのジャッジメントって
どうなっているのだろう、という興味で手に取りました。

豊田章男氏が社長に就任して以降は、同時代に生きているゆえ
世の中の動きとしては多少知っていたつもりでしたが、
こうして時系列で並べられると、途方もない事業環境を背負って
いたことが深く理解できます。

ITに精通している。
リーダーシップ本で言われるような、正解のない時代のリーダー
としての側面もエピソードに表れている。のですが、しかし、
CASEに向かう転換期の自動車業界ですし何しろトヨタだし。
VUCA時代のリーダー素養だけでは足りない、そういうポジション。

リーダーシップ本ではないと思う。(そういう要素もあるけど)。
伝記、評伝、…応援本かな。
豊田章男氏への。
豊田章男氏がトヨタ経営を通じて起こそうとしている変化への。
もしかして日本への。

-----
豊田章男
片山修 著
東洋経済新報社 2020/04
https://str.toyokeizai.net/books/9784492503164/

(2020.5.3)


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【読書】時間とテクノロジー

2020-05-05 22:00:19 | 読書記録
深層学習などのAIが実用度を増し、
大量のデータから何かが導き出されることが増え、
インターネット上の活動は多くの課題が見いだされながらも拡大は止まず、
デジタルツイン(あるいはライフログ的な何か)の実現度が上がってきた昨今に、
テクノロジーと人のありように関するアジェンダを幅広く提示している、
そんな読後の印象。

表題の「時間」に関しては、記憶と記録に関する変化を。
テクノロジーがもたらす変化は、"時間の経過"を無効化する一方で、
記録は改変され、人々が摂取する"物語"の真贋の見極めも困難化する。
さらに真も贋もない。(フェイクニュースは別として)。

…「説教節」について読んだときのことを思い出した。
 あるいはアマビエに関する研究者の解説とか。
 古来、物語は伝搬・伝承を経て変化していくものだった。
 ただ100%の保存はされておらず土台が消失し忘れられているのだ。
 あれ?それは微生物の進化の話とも似ているなぁ。。閑話休題。

後半、オートポイエーシスに関する言及にページを割いていて、
今まで平易に説明した文章はあまり出会えなかったから、
これで理解が深まりました。
-----
時間とテクノロジー 「因果の物語」から「共時の物語」へ
佐々木俊尚 著
光文社 2019/12
https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334951290

(2020.2.11)

投稿は2020.5.5。


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【読書】機械カニバリズム

2020-05-05 21:58:06 | 読書記録
カニバリズム、食人。
エドゥアルド・ヴィヴェイロス・デ・カストロによる
「他者の視点から自らを捉え、自己を他者としてつくりあげるための営為」
に倣って、と著者は本書における視点を示す。

機械―主にここでは、人の記憶を拡張し引用を高速化するアルゴリズムから成る
人工的な何か、といったところか―を取り込むことで、ヒト自体はどう影響され
変化していくのか。

電脳戦についてニュースで見聞きする程度だったので、
ソフトウェア棋士(?)の段階的進化をつぶさに知れた。
ヒト棋士の変化、思考プロセスの転換(イメージとしてはシナプスのつながり方が
再構築される感じの)に、近未来の予感めいたものが立ち現れてくる。

フレーム問題と自己言及問題。
…境界の話。いちばん興味深いところ。

『「デジタルな記号」を用いて「私」を表現できるという想定は必ずしも自明でない』
"資料が独り歩きする"のと似ている?卑近な例ですが。
デジタルではなおのこと。コピーが非常に容易で伝搬速度が非常に速い。
"私"のコンテクストがくっちゃくっちゃになるのにかかる時間も手間も僅かだ。

一方でインターネットの海の底で放置されるがまま(私はそれでもいいと
思うけど)ではなく、他者との相互反応を経ないともはや個が成立できない、
ということかな。

生政治学、生政治学的な統治技法、
再帰プロジェクトとしての自己、
など、知らなかったのでもう少し勉強したい。

"説明責任の様式が日常生活に浸透してきている"以降の論は身につまされた。
意外と身近なのか。機械カニバリズムが指す問題点。
機能として客観で語られうる自己は汎用部品により近づき、その制御の
グリップから自らの手が離れたとき、メンタルが棄損される予感がある。

-----
機械カニバリズム 人間なきあとの人類学へ
久保 明教 著
講談社 2018/09
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000313601

(2020.2.5)

投稿は2020.5.5。

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【読書】時間は存在しない

2020-05-05 21:54:03 | 読書記録
高校大学で物理をかじってた。
「過去と未来の違いは、運動の基本法則のなかにはない」。

え。

物理学では横軸がtのグラフで、ごく当たり前に時間を扱ってきたから、
ちょっと面食らった。

読んでいくと確かにそうなっているとは理解はできる。
ぜんぜん直感は働かないのだけれど。

相互作用と、順序と、結果。
順序がすなわち時間の芽。

閉じた系(とは著者は言っていないけれど)・宇宙の内側で
正規化された振る舞いを観測できたように見える熱量の遷移。

宇宙に"時間"は多様に存在するという。
一方で"私たち"の"時間"は、一様である。なぜか?
解読の仮説を読み進める辺りがいちばん面白かった。
これの筋立ては何かと似ている。
もっと身近で身に覚えのある、
視覚と錯覚とか、ミクロとマクロの見え方(見える限界)とか。

そうして、その理解は袋を裏返すようにくるりと反転する。
記憶と予測というスタイルそのものが私たちである、と。

ループ量子重力理論。
連続的でない"時間"。興味深いけれど、やっぱり直感は働かない。
"淘汰された結果"な私たちだからかしらね。
-----
時間は存在しない
カルロ・ロヴェッリ 著
NHK出版
https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000817902019.html

(2020.1.26)

コロナの影響がリアルになり始めてた頃に読了するも
感想書く気力が出ず本日2020年5月5日に至る。中身かなり忘れてる…。
これとこの後に感想連投予定の2冊、合わせて3冊を読了後、
科学や哲学の難解めなやつは積読ばかり増え続けたが手が出ず、
漫画ばっかり読んでいた。
今思えばコロナ時代とアフターコロナに関する知識層の数多の
論説でおなかが満たされていたのかな。

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【読書】影裏

2020-03-06 23:05:13 | 読書記録
映画の後を追うかたちで手に取った。
SF以外の小説は久しぶりかもしれない。

「影裏」のほか、「廃屋の眺め」「陶片」の計3篇を収める。

「影裏」。
原作にきっちりと依拠している部分と、映画として肉付けされた部分と。
映画はバランスのよい塩梅だったなのだなと思う。
映画では割と痛みを見たけれど、漂泊やもったりとした倦み、
それを孕みながらも主人公が微妙に高いところから自身と世界を
眺めている感じを受け取った。

3篇それぞれ違うけれど、人物の共通項は。

透明感。
卑下しすぎるでなく自分を外から眺めるメタ認知が不思議に潔い。
そして、ゆえにある種の諦念も見えて、胸苦しい。

主人公たちの世代の人は上の世代に「わかった」と言われることは
好まないし信じないだろうな、などという考えが頭を過って、
少し寂しい感じもする。はは。

-----
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163907284
文藝春秋 2017/03
沼田真佑 著

(2020.3.6)


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【歌舞伎】新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』ディレイビューイング

2020-03-06 20:54:18 | 読書記録
少なくともアニメ映画になった部分については、よくよく知られた原作に対し
装置と演出による再現と、割り切った端折り、
伝承風の物語仕立てから歌舞伎仕様への大胆な置き換え。

時に古典から演出を引用。
前編での本水、立回り、宙乗り。後編の舞踊(道成寺?)、獅子頭と毛振り。

歌舞伎から離れすぎないけどいつもと違う音楽。
唄の字幕で理解促進。

歌舞伎に行き過ぎても元のイメージに寄り過ぎても興ざめになるリスクに
真っ向から取り組んで、そこに陥らない境界線を拾って完成させている。

工夫に工夫を重ねて構成された枠組みの内側を、役者さんたちが満たして、
"歌舞伎のナウシカ"が成立していた。

終盤で何度か胸つかまれて涙した。歌舞伎役者ってやっぱりすごいね。
いつもの客席で観るより役者さんの表情や衣装の細かいところが
くっきり見えるのも利点。

世界地図が頭に描き切切れなかったところはあった。
箱庭と焼け野原の距離感とか。

-----
公式サイト:https://www.nausicaa-kabuki.com/

(2020年2月・3月)

主演の菊之助さん・ナウシカ、
(歌舞伎に置き換えてる所為もあり)お姫様度が高いように思ったけど、
考えてみればそもそもお姫様なのである。
見ていたらだんだん引き込まれて途中から違和感は全くなくなった。
後編に至っては全く違和感なくなった。

七之助さんのクシャナ姐さんがかっけー。
松也さんのユパ様は若々しくて、これもアリだなと思う。
巳之助さんのミラルパとナムリスが貫禄。声すごい。
後編、歌昇さん大活躍。種之助さんと要所を押さえる。

腐海の舞台装置はナマで観たかったなぁ。
後編の大海嘯後の胞子の雨。
舞台チケットとれなかったんです。映像で観れてよかった。

一日で前後編続けていっぺんに観れたら更によかったのに、と、
昼の部と夜の部を同日に観ることが多い私は思う。


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【読書】幸福な監視国家・中国

2020-01-19 21:49:20 | 読書記録
去年、NewContextConferenceで高口さんのセッションを聴講。
そこで語られていたエッセンスの詳細と、その後の進展などが
解説されていて、興味深く読了。

中国の現状だけでなく、国家の監視による統制にまつわる
幾つかの議論、「公正」の歴史、GDPRの本質に関することなど、
引用も勉強になります。

中盤の「監視によってストレスを感じるのは社会のエリート層か
意識の高いリベラルな知識人だけ」という一文。強烈。

公共性に関することなど、この本を起点として、引用されている
文献にも手を伸ばしていく、ハブとしての価値も十分。
これで新書なのだから、お得。
-----
幸福な監視国家・中国  
梶谷 懐 高口 康太 著
NHK出版新書
https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000885952019.html

(2019.11.18)


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【読書】ロボットに倫理を教える

2020-01-19 21:34:08 | 読書記録
そもそも倫理とは何か?
どうであれば”正しい”のか?

ロボットに実装する以前に、過去から連綿と議論されてきた
哲学的視点も含めて、このテーマの振れ幅を提示した上で、
更に実装について論じている。

というか、従前からの振れがある状態のまま実装することになるから
要件を一律に定めることはできないだろうなぁ。

大変に面白かった。
でももう一回二回読んだほうが良さそう。

そして何回読んでも多分「正解」はない。

-----
ロボットに倫理を教える:モラル・マシーン
ウェンデル・ウォラック コリン・アレン
名古屋大学出版会 2019/01
http://www.unp.or.jp/ISBN/ISBN978-4-8158-0927-0.html

(2019.12.1)


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