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歌舞伎と映画と美術と読書の感想

【歌舞伎】歌舞伎座 二月大歌舞伎 2021年2月

2021-02-21 23:53:37 | 歌舞伎
二月大歌舞伎
歌舞伎座
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◆第一部

一、本朝廿四孝

魁春さんの八重垣姫。
恋に揺さぶられる情動の波が客席に来る。観てて動揺した。
複数の役者さんの八重垣姫を観たけれど、こういう心情になったのは初めてかも。

二、泥棒と若殿

ストーリーは山本周五郎の組み立てがたぶん上手すぎて、
さらっといってしまいそうな流れなのにもかかわらず、泣けた。

松緑さんの昔語り辺りから胸掴まれ始め、見送りの台詞に落涙の方多数。
信の巳之助さんの達観とピュアの同居する風情もよし。

昔話の風情かと思って観始めたけれど、
疑似家族的な視点があって、もしかしてたいへんに現代的かも。

◆第二部

一、於染久松色読販
二、神田祭

玉・仁左、二本立て。
二幕観終わって、ほんわか。
昨今の情勢の中、劇場に通っているみなさんへの贈り物でしょうか。

於染久松色読販、鳥居前~お六のたばこや~油屋、すっきりした運び。
笑いの温度感が春先の印象で、これはこれで心地よい。

花道の出の鬼門の喜兵衛、怖い男。
やれやれと連れ立って油屋を去るふたりの愛嬌。

(2021.2.6)

泥棒と若殿、原作に興味が至り、読んでみた。(青空文庫)
https://www.aozora.gr.jp/cards/001869/files/57689_70766.html

◆第三部

十七世中村勘三郎三十三回忌追善。中村屋さん総出。

一、奥州安達原 袖萩祭文


前半、七之助さん・袖萩と長三郎さん・お君の母娘のけなげ、
両親(歌六さん東蔵さん)との間のままならなさ、胸がもやる。
因果応報の怖さが初演当時の聴衆には身に染みてあったのかもと思う。

後半、勘九郎さんの貞任、かっこいいー。灰汁もある表情、赤はたの扱い。
芝翫さん・宗任の終盤の地を轟かす声の響きとともに。

二、連獅子

親子で演じる連獅子は殊更、観る方の思い入れも強いものですが。
それ抜きにしても、たいへん素晴らしかったです。今日。

狂言師右近・左近が引っ込んだ後の長唄囃子の唄と演奏を聴きながら
風の吹き抜ける川面も見えない深い谷を感じたり。
  今まで幾度も観てるのに。
  座席位置も影響するのだろうか(私は主に三階ですが今回一等席)。

親仔獅子として現れた一対の清冽な緊張感と長唄囃子が混然一体と
なって、森など自然の何かと通底していた気が致します。

鶴松さんと萬太郎さんの道連れ僧(の最後の部分)で森を外から見た感。
なるほどそういう視点の移動を誘うのか。場を和らげるだけでないのね。

(2021.2.21)