本を読まない三十一 2020-10-15 | 混線頭 もし読めばすぐに真似してくだらない俺になるから本は読まない本棚の高いところで客を読む売れない本のたいくつは月ぬ読んだって書いたやつより賢くない読まないやつより自由でもない時計には約束もない遅刻もないすでに時計の形も忘れた本だから偉いのではない全身の文字の刺青のせいもありえないわたくしの壊れた言葉そのこころ。君読みたまうことなかれ
訪問者 2020-10-15 | 混線頭 まだ暗い朝、扉を乱暴に叩く者がいるので鬼ではないかとびくびくしながら誰であるかと問うたが答えはなくその者はいつまでもただ扉を叩き続けるのだった。叩いているのは玄関の扉だけではなく床の間に隠れれば床の間の壁を叩き書斎に隠れれば書斎の本棚の奥の壁を叩き台所に隠れれば竈門に甲高く響く音を立てて竈門のまわりを叩く。きっと一人ではないのだろう。明るくなっても叩く音はやまなかった。